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雑誌目次

雑誌文献

病院24巻7号

1965年07月発行

雑誌目次

特集 リネン・サプライの合理化

リネン・サプライ管理の実際

著者: 落合勝一郎

ページ範囲:P.15 - P.18

1.病院組織内におけるリネン・サプライ部門の位置
 リネン・サプライは事務部門に属して,裁縫工場を加え,一つの課となって,リネン裁縫課を形成している。したがって,組織上リネン・サプライ部門は,洗濯部門,およびハウスキーピング部門と同列で,ハウスキーピングに従属するものではない。
 病院の働きが大きく複雑になる一方,リネン・サプライの仕事もハウスキーピングの仕事も,いわゆるまに合わせでなく,本格的になってくると,分業化,専門化の方向をたどるのは当然で,ハウスキーピングは院内清掃と環境整備を分担し,リネン・サプライはリネンの供給と補給,および修理を分担して,相互に交差する部面はあっても,仕事の内容は画然と分けられている。

基準寝具の現状

著者: 小沼幸夫

ページ範囲:P.19 - P.21

 近時,社会保険における基準寝具の承認医療機関数は,年々増高の一途をたどり,今や,基準寝具は社会保険医療において欠くことのできないほど重要な役割を果たしつつある。増高の原因は,主として,医療法上および健康保険法上における寝具類の取り扱いが,医療機関の実態を考慮して改められたことにより,医療機関においては従前に比し,此較的容易に基準寝具実施の体制を整い得るようになったためと思われる。特にこの傾向は,後述のごとく,昭和37年後期以降に顕著となってあらわれている。

看護からみたリネン・サプライの問題点

著者: 栗原やま

ページ範囲:P.22 - P.24

 病院におけるリネン管理は,かつて看護業務の中に含まれていたものであったが,看護婦がしだいに専門化されるとともに,看護業務のなかから分離して,家政学の専門家であるハウスキーパーによって管理されることとなった。したがって,両者の関係はきわめて密接ではあるが,その"かなめ"は,正しい理解と協力でなければならない。また,そうした関係にあって始めて,それぞれ業務の本分を発揮できるというものであるが,実際にはなかなかむずかしい問題である。特に,リネン類の補給が円滑に行なわれるか否かということは,すなわち病棟での看護業務がスムーズに行なえるか否かということに直結する問題でもあるので,今回,病棟看護の立場からリネン・サプライの問題について,平素考えていることを少しく例をあげてのべたいと思う。

リネンと消毒

著者: 長田博之 ,   神木照雄 ,   佐藤きみ恵

ページ範囲:P.26 - P.31

 一時的であれ,半永久的であれ,形がどうであろうとも,人の住む建物は,合理的で住み心地がよく,環境が衛生的であることが望まれている。
 病院においては,病人自身が思うような居住性を作ることができないので,病人は病院が患者に与える居住性に順応して,療養生活を送らなければならない。

基準寝具類の外注

著者: 宮本正雄

ページ範囲:P.33 - P.35

 基準寝具類の洗濯に必要な労働力,およびこれを確保するための給与,あるいはこれらの洗濯物を外部業者に依頼するための費用は,いずれにしても,病院経営上必要なものである。しかし,これをいずれの方法で行なうかは,その病院の特殊性,あるいはその病院の事情により異なることと思う。これをいずれの方法で行なうにしても,それぞれの利害得失があることは止むを得ないことでもある。当病院においては,基準寝具類は完備しているので,借り入れのための外注は必要ないのであるが,この種の洗濯については洗濯場の設備あるいは定員の関係上,一部を除いての大部分は外部業者に依存しているのである。
 基準寝具類の外注の一環として,外部業者に依存しなければならなかった理由,現状はどうであるか,その利害得失はどうであるかなどについて,当病院の現状から判断して述べてみたい。

基準寝具の原価計算

著者: 中村英子

ページ範囲:P.36 - P.39

 小原療養所基準寝具の実体はいかにあるかと,常に心労しておられた上司の命により,昭和38年度において長時間をかけ,職場各係の協力を得て算出したものである。次に当所基準寝具の概要を述べ,算出の過程を順をおって記していく。
 当所基準寝具の実施は,昭和29年9月1日より開始され現在に至っている。病床数は300,患者1人に対しての寝具は,昭和39年度から幾分更新しつつはあるが,天竺木綿掛布団2枚〃敷布団2〃毛布1〃枕1個シーツ4枚枕カバー2〃包布3〃と規定し,シーツ,枕カバーは週1回,包布は月1回の洗濯交換を実施してきた。これら管理および洗濯については,事務室,リネン倉庫,寝具倉庫,補修室,洗濯作業場,仕分室,SK消毒室などの木造平家の建物,延べ391.72m2(118坪)他に142m2(40坪)の干し場をもち(第1図),洗濯設備は,ワッシャー2台,脱水機,乾燥機,プレス機,ローラー機,補修用動力ミシンなどを備えている(第1表)。なお基準寝具に関係すを作業員は,ハウスキーパーを入れて現在男3,女3の6名である。

アメリカの病院におけるリネン・サプライ

著者: 森田昌子

ページ範囲:P.40 - P.42

 1962年9月からアメリカ・ミネソタ州・ミネアポリス市のノースウエスタン病院において,国際看護協会の特恵交換看護婦として1年間すごしました折のことを述べさせていただきます。
 最初,回復室に参りましたが,まず感じましたことは,リネン類が湯水のごとく使用されているということでした。まっ白なシーツで回復ベッドが作られ,手術室に運びますと手術を終えた患者を収容して次々に回復室へ帰って参ります。その回復室は麻酔覚醒までで,患者の平均滞在時間は約1時間30分,その間に血液や浸出物でリネンが少しでも汚れますとすぐに取り替え汗が出たり,嘔吐したりすると,回復トレーの中の小タオルで簡単に拭くことができますし,悪感のきた患者には,乾熱保温器の中のあたたかい毛布で,ほかほか包んであげることもまことに容易です。かくして,患者を心持よく清潔に乾燥させるという看護の第一目標をたやすく果たすことができます。この回復室で患者が支払う料金は5ドル,少し滞在時間が長くなると10ドルです。
 清潔区域である回復室,手術室や新生児室で働くもののための特別なユニホームがありますが,私も出勤と同時に白木綿のキモノスリーヴのドレスを着用しました。よくプレスのきいたユニホームの寸法はいろいろあり,これも少しでも汚すと着替えるように注意されます。そこでかぶる帽子は紙製のものが使用されていました。

座談会

リネン・サプライの運営をめぐって

著者: 原素行 ,   大野菊枝 ,   石原信吾 ,   吉川遼子 ,   八板作子 ,   斎藤弥吉

ページ範囲:P.44 - P.55

リネンをめぐるいくつかの間題を各方面から検討してきましたがここではリネン・サプライの"運営"にしぼって話しあってもらいました

グラビア

ハウスキーピング美しく,清潔に—淀川基督教病院

ページ範囲:P.5 - P.8

 入院患者が安全に,快く生活できるように,美しい清潔な環境をつくりだすこと--それがハウスキーピングの任務である。
 淀川基督教病院(大阪市東淀川区淡路本町1の57)は,昭和29年開設以来家政管理部を設け,清掃,寝具・リネンの管理だけでなく,職員に清潔でからだに合ったユニフォームを補給するなど,ハウスキーピングの活用に努力してきている。

近代化する産院—東京都立築地産院

ページ範囲:P.9 - P.12

 20年前の産院の印象は,みすぼらしく雑然としていた。しかし医学の進歩と病院管理の知恵は,産院にも近代化の風を吹きこんだ。そして母子保健法の提案は,母子の福祉に一段の飛躍を期待させるものがある。
 東京都立築地産院(東京都中央区明石町14)は大正14年に発足したが,昭和37年にその古い殻を脱ぎ捨て,新しい設備と進歩した機能を具えた偉容を示すにいたった。新しい建物は,地上4階で,産褥婦80床,新生児80床,未熟児20床を収容する規模をもっている。

病院の広場

診療管理への提案

著者: 小原辰三

ページ範囲:P.13 - P.13

 病院管理は,病院の各分野において業務の分析,業務量の検討など,経営の面では相当に突っ込んだ研究が行なわれて,日本の病院もしだいに面目を一新しつつあることは慶賀に堪えない。ここにただ一つとり残されているのは,医師の診療の面である。病院の唯一の収入源である医療収入をあげて,経営内容の充実をはかり,診療内容を充実させたいと念願するのは,院長,事務長ばかりではない。最近は,企業会計を病院にとり入れることのあおりをくって,人件費のもっとも多額を占める医師の数を最小限にとどめようとする傾向もみられる。
 この問題の底には,現在の健康保険による診療費の低さということが大きな障害となっている。医師が良心的に診療するには,十分な時間をかけて患者を診察し,適当な検査を行なって適確な診断を下し,適切な治療を行なうことであり,その経過を患者によく説明して納得させることである。

ニュース

厚生省(医務局関係)人事移動

ページ範囲:P.39 - P.39

旧新氏名
医務局総務課長医務局次長渥美節夫
社会保険庁長官官房経理課長〃総務課長中村一成

院長訪問・2

—順天堂大学付属病院長—福田保先生

著者: 姉崎正平

ページ範囲:P.56 - P.56

 院長訪問第2回として,本誌4月号グラビアでも紹介され,特に大学付属病院として管理面の改革において最近注目されている順天堂大学付属病院に福田保院長を訪ねた。同先生は当大学第一外科教授に就任されてから13年,院長は4期勤められ9年目になられる。それ以前は戦後の最も困難な時代数年を東大第二外科教授,さらに戦前はいくつかの病院の外科医長を歴任された。
 それらを回顧され,戦前の看護婦勤務条件は今から考えると実に苛酷であったが,本人たちをはじめ誰もがそれを当然と思い不平も出なかった。しかし,戦後は社会事情,労働事情も一変し,同先生は東大教授時代に学生スト,順天堂院長になってから病院ストを経験された。温厚かつ厳格な先生は争議そのものより,外部の煽動者の欺瞞や法無視の態度に憤慨されたとのことである。

病院管理講座 実務編・21

内科病棟管理の実際

著者: 内田郷子

ページ範囲:P.59 - P.63

はじめに
 内科病棟では近年の傾向として,医学の発達に伴い寿命がのびたので,高齢者の入院が多くなっている。慢性疾患でも長期にわたり,たびたび入院して生活の方針を定めたり,治療をうけるようになり,患者が増している。また,健康ではあるが,念のため精密検査を受けたいと入院する者も多い。特に家族間係が親子より,夫婦単位となった今日では,家庭における老人の扱いが変わり,時には病棟が養老院に近い様相を呈してくる。そこで看護する側も,いつも時の流れに合わせ,適切な方法で看護しなければならないと思う。
 その他,内科病棟は看護の基礎の勉強,実習をする看護学生を受けいれる場所として,大きな意義をもっている。

座談会

病院医療の評価

著者: ペペル夫妻 ,   吉田幸雄 ,   小野田敏郎 ,   月橋得郎 ,   岩佐潔 ,   津田豊和 ,   鈴木淳 ,   紀伊国献三

ページ範囲:P.64 - P.72

 ペペル博士(Howard Peppel, M.D.)は,米国における病院認可合同委員会(Joint Commission on Accreditation of Hospitals)の調査員として活躍中の方で,今回オーストラリア,太平洋地区の観光旅行の途中,日本にも立寄られた機会に,米国病院協会の推せんで病院管理研究所を訪問され,この座談会が持たれた。
 病院認可合同委員会は,座談会記事にもある通り,米国病院が自らの手で病院の水準を高めんとする努力の結晶であり,故マッケクレン博士を始め,多くの分野からの協力が,現在ではこの認可をはなはだ価値のある権威あるものとしている。その内容は同委員会編の『病院認可要覧』にまとめられ,病院管理のよき指導書となっている。

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診療伝票の完全実施による利点と問題点

著者: 佐久間梅太郎 ,   小関英子 ,   鈴木博 ,   大槻秀雄

ページ範囲:P.73 - P.79

1.はじめに
 公立病院のあり方は地域住民に対する医療福祉の充実にそのすべてがあることはいうまでもない。その点,一般企業とはその本質は異なるにもかかわらず独立採算制による病院経営が要求されている。しかも医学の進歩にともなった医療器具の購入,あるいは病院の建築,さらに院内組織の問題などあらゆる分野の改革も要求されている。今日,どこの病院も経営が苦しいことはすでに常識となっている。われわれはこの苦しい状態の中にも幾分でもそれを合理化して経営内容の改善をはからなければならない。当病院もこうした観点から内部的組織の統一,合理化を実施し昭和38年4月公営企業会計方式を採用すると同時に,入院については診療伝票の完全実施にふみ切った。われわれの診療伝票は院内の各スタッフの半年にわたる研究の結果生まれたもので,2,3の新しい点を折りこんだのである。もちろんこの診療伝票が完全なものとはいいがたいが,経営の合理化に一歩進んだものと信じている。この診療伝票についての紹介と,その経験による反省などをのべてみたいと思う。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.100 - P.100

 本号の巻頭には,国立東京第一病院副院長の小原先生から御提案をいただきました。病院外来の改善と医師のパートタイマー制の2提案は,わが国の病院の近代化に,ぜひ必要な問題です。外来を制限するということよりも,予約制をとることにより,医師は入院患者の診療に支障をきたさないで,しかも計画的に外来患者を診療することができるでしょう。そして,病院外来が絶対に必要な患者は,適確に受診することができるでしょう。今の状態はまったく前近代的と申さねばなりません。また指導医として活躍してもらうべき医師は,生活を保障して数か所の病院をかけ持つことができるpart-ti—merにすべきでしょう。そして,中堅の医師は主治医として独立し,十分活躍が期待されるようにしたいものです。全国病床数に対して医師がますます不足してくる現状に対し,医師は能率的に働くことができる体制を早急に確立すべきと思います。
 さて本号は「リネン・サプライ」を特集しました。本誌として,本問題をはじめて意識的にとり上げました。病院で療養する患者の衣食住の衣の問題です。患者を気持ち良く衛生的に看護するためには,適切なリネン・サプライが行なわれねばなりません。しかも病院内のこれら繊維製品は100種を越えています。

論壇

病院と交通事故

著者: 菊地博

ページ範囲:P.82 - P.83

 病院が地域社会において果たす役割はいろいろの意味で大きいが,最近のように人口が大都市周辺に密集してくると,救急事故に対する役割はなお一層大きくなってくる。無床診療所や有床診療所ではどうにもならないような事故が多い。したがって,病院は十分にベッドを確保しておかなければならない。一方,開業医も往診の際には,自動車にある程度の救急処置のできる態勢は整えておくべきで,たえず地区の病院と緊密な連携を行ない,交通事故収容に対しては万全の策を講ずべきである。
 交通事故はひとりわが国だけの問題ではなく,世界の先進国に共通に見られる現象である。またどこの国でも事故による死亡率が上位を占めているということである。われわれもこの点よく考えて,診療側も警察側も交通関係者も真に三者一体となってこの問題の早急な解決に当たらねばならない。そこで,診療者側としては病院に十分なる機能を発揮してもらうことであるが,とくに人事の面で円滑を欠くようなことがあってはならない。このことは特に官公立病院に希望する。私立の病院に対しても,政府は救急病院には十分なる補助金を出して,それが整備を急ぐと同時に十分に機能を果たさせなければならない。いやしくも経済的に損をさせるようなことがゆめあってはならない。また,われわれがいちばん困る問題は夜間の事故に対してであるが,そのためには夜間勤務医師の優遇を忘れぬことである。

私の一週間

理解されない助産婦の業務

著者: 青木康子

ページ範囲:P.84 - P.86

 厚生大臣だって,ドジョウヒゲの院長だって,みんな最初は赤ん坊。ゆかたのお古で作ったオシメの厄介になったはず……。

ホスピタルトピックス 経営

西ドイツの病院数とその規模(2)

著者: 菅谷章

ページ範囲:P.88 - P.90

 第3表は,公的病院をさらに細かく経営主体別に分類したものであるが,公的病院のうち,市町村立・その連合体立の病院は,病院の数においても病床数においてもその比率はきわめて大であり,公的病院の3/4はこれらの病院によって運営されているのである。
 1,300ほどある公的病院について,規模別に病院数の割合についてみると,その4/5(79.2%)は300床以下の規模の小さい病院であり,300〜600床の中規模の病院は11%,600床以上の規模の大きい病院は9.5%である。だがこれを病院床数の割合でみると,ほとんど公的病院の病床総数の1/3(33.4%)は1,000床以上の病院が占め,さらに1/3(31.7%)が300〜1,000床までの病院,残りの1/3(34.8%)は規模の小さい300床以下の病院となっている。

診療

中央検査室の問題点

著者: J.S.

ページ範囲:P.90 - P.91

 フランス国立衛生試験所長J.Desbordesは近着のTechniguesHospitalières (N°229)に,中央検査室の建築上誤りやすい問題として,つぎのことをのべている。

看護

進行性筋ジストロフィーの子どもたちに援助の手を

著者: 今井敬子

ページ範囲:P.91 - P.92

 最近,リハビリテーションというコトバがさかんにつかわれだすようになり,リハビリテーションに対する理解や知識もふかまってきているのは喜ばしい。今年の4月11日,12日には,東京の虎の門ホールで第2回リハビリテーション医学会が開かれたし,4月13日から17日にかけては,東京ヒルトンホテルで第3回パン太平洋リハビリテーション学会が開かれ,海外24か国から300名の参加者のほか,日本から600名の参加者があった。
 リハビリテーションという第4医学でとりあげられている患者には,いろいろな種類の疾患にかかっている者がいる。脳卒中の患者,心臓疾患のあるもの,脳性麻痺の患者。眼,耳,言語障害のあるもの,肢体不自由者,整型外科的な障害のあるもの,脊髄損障のあるもの,関節炎のあるもの,精神障害のあるもの,ライ疾患にかかっているものなど前述の学会にとりあげられたものは多数にのぼっている。

給食

給食に関する衛生教育(2)

著者: 森田百合子

ページ範囲:P.92 - P.93

 配食および冷蔵をはやくすること食品は調理を終わり,配食の用意ができたらただちに配食すべきである。もし待つ場合でも,オーブンその他の料理器から出してから配食するまで,4時間以上経過してはならない。
 冷蔵庫から出しておく時間は(50度から140度の温度範囲で)4時間を超えてはならない。

特殊病院

脳性マヒの療育施設

著者: 柳瀬正之

ページ範囲:P.93 - P.94

 昭和27年の実態調査によれば,児童人口の0.67%が肢体不自由児であり,その15%が脳性マヒであった。この児童1,000人のうち1人が脳性マヒであるという発生頻度は,その後の調査でも,その原因の周産期における未熟,仮死,黄疽などによる脳傷害があまり解決されていないからには,それほど変わっていないといえる。それどころか,全国62か所の肢体不自由児施設に入所している患児の占める割合からみると,昭和35年は30%,39年は37%であり45年は半数を占めると予想される。
 脳性マヒは,リハビリテーションのもっとも困難な対象であり,四肢体幹の機能障害のみならず,言語障害を有するもの80%,知能障害は50%,そして約30%にテンカン発作をみ,視聴覚その他の感覚に障害を伴う場合が少なくないのであるが,リハビリテーションでの拡大とともに,今までリハビリが不可能とされて重症心身障害児施設の対象とされていたものが,障体不自由児施設重度病棟の対象となりつつある。

建築設備

慶応病院の特等病室

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.94 - P.95

 慶応義塾大学病院の新病棟が最近竣工した(設計:三菱地所株式会社)。特等・1等・2等など,いわゆる差額徴収を前提とした病室ばかりの棟である。各室ともいたれりつくせりの豪華さであるが,その中でもとりわけ特等病室には目をみはる。室内の仕上げや家具造作,設備の程度の立派さはいうまでもないが,面積的な点についてだけでも従来のものには比類がない。25.6m2(7.7坪)の病室に,18.9m2(5.7坪)の応接室と約1間半の押入をもった畳敷きの副室とがついている。このほかに,洗面所,浴室,便所,調理室があり,専用のバルコニーだけでも19.5m2(5.9坪)ある。バルコニーを除いて,合計76.6m2(23.2坪)を1人の患者が占有するわけで,個室1室当たりの面積は6.3m2以上なければならないとしている医療法の規定など,何だか奇妙にさえ思えてくる。これは,住宅公団が最近,団地のアパートのごく一部に建設している最大規模の住戸にほぼ匹敵し,夫婦に子供2人ぐらいの家族を対象としたいわゆる2DK型(寝室になり得るへやが2つとダイニングキッチンをもつタイプで,もっとも一般的な規模のもの)の倍に近い。
 医療収入にきつい枠をはめられている病院が,唯一の活路のごとく差額病室の建設を競っている現状には,すでに各方面から批判の声があがっている。

霞ガ関だより

病院とシステム工学

著者: T.S

ページ範囲:P.96 - P.97

 最近の企業管理の傾向として,システム思考(System thinking)ということが強調されている。システム思考とは"物事を全体のシステムから考えてみる"ということにほかならないが,要するに,ある計画の全体の段取りのなかで,どの経路にどの程度の重要性が分担されているかを考えようとするものである。このようなシステム思考の定量化をおこなう学問がシステム工学で,これは物を対象とする諸科学とことなり,"物の動き"とか"やり方"だけを抽出して,その能率化をはかることを目的としている。
 システム工学は,その誕生以来急速に進歩し,その重要性が現実に強く認識されはじめている。それで,システム工学的手法が病院管理にどの程度有効であるか,その可能性を実例をあげながら検討してみよう。

病院図書館

—吉岡修一郎著—「医学的・心理学的にみた思春期」,他

著者: 新福尚武

ページ範囲:P.98 - P.99

多角的総合的にとらえた思春期
 本書はひと口にいうと,青年期前期(ロー・ティーン)の心理的生理的,さまざまな問題を具体的にとりあげ,わかりやすく説明し,明瞭な指針をあたえる教養書である。
 この期はこんにち親,教師,一般社会の最大の悩みのタネとなっているが,その原因などに対する見解はまことにまちまちである。あるものは教育,わけても中学教育に欠陥があるという。それは正しいが,さて教育をしっかりしろといっても,どう教育するのがよいのか,教育すべきものについてよく知らないでは,どうにもならない。ところが,著者によると,この期の研究は医学的・心理学的にほとんど進んでいないという。それで本書は最近の医学的・心理学的知識をまとめ,それによってさまざまの問題に多面的,総合的に光をあて,いくべき方向を明らかにしようとする。けだし,このような多面的な問題をもつ著書の著者として,この著者ほど適任のものも少ないであろう。心理学を専攻し,社会,歴史,哲学にふかい造詣をもち,さらに医学とくに精神医学の研究にたずさわっているので,著者の知識は豊かで,視野は広く,考えは中正かつ進歩的である。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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