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雑誌目次

雑誌文献

病院24巻9号

1965年09月発行

雑誌目次

特集 病院業務の委託・外注

外注問題の基本的考察

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.17 - P.21

1.「外注」の意味
 自給自足経済は,経済発達史的にみれば原始的段階に属するといわれる。その意味からいって,消費場面にせよ生産場面にせよ,そこで必要とするものを,何でもかでも自分で作り出さねばならないとする考え方は,遅れた考え方であるといわなければならない。しかし,これは何も生活や生産に必要な「もの」を作るという場合には限らない。それに必要な「こと」をするという場合にも当然あてはまるはずである。
 生活に必要な「もの」とは消費資材であり,生産に必要な「もの」とは生産資材であるが,今日のように交換経済の発達した時代に,それらの「もの」をみな自分で作らなければならないと考えるような人は,まずないであろう。「もの」についての場合はそうであるが,一方,生活に必要な「こと」,あるいは生産に必要な「こと」という問題になると,事情は多少異なってくる。人々の認識や考え方も,その点については必ずしも明確ではなくなる。それは「もの」の場合は手段的性格がはっきりしているが,「こと」の場合にはそこに目的々性格が加わってくるからである。そして,最終的には「こと」は,「生活すること」「生産すること」というように,それ自体がすべて目的というところにまで至る。

病院業務の多角的外注例

著者: 大津陽一

ページ範囲:P.22 - P.24

はじめに
 外注の問題は外注業種の数が増加するにつれて,管理の条件もちがってくるし,大都市の病院と中小都市病院では,求人状況の差もでてくる。もちろん病院の規模,あるいは建物の構造配置によっても外注の方法が異なるので,画一的には論じられない。
 本学の付属病院についても,本院は東京都港区新橋にあり,800床の病床と1日平均2,000名に近い外来患者を扱っているし,葛飾区には青戸分院(病床2701日平均外来患者670名)があり,北多摩郡に第三分院(病床3121日平均外来患者660名)がある。各病院とも業務外注を実施しているが,説明の煩雑をさけるために本院の業務外注について紹介いたしたいと思う。

病院清掃外注の問題点

著者: 井上昌彦

ページ範囲:P.25 - P.31

はじめに
 本稿を執筆するに当たって,最近に行なわれた日本病院協会広報委員会と,病院ハウスキーパー会との協同による病院清掃業務についてのアンケート調査の結果のうちから,清掃外注に関する部分を資料として抜萃させていただいた。本稿中に,アンケートまたは調査とあるのは同調査のことである。ここに日本病院協会,病院ハウスキーパー会,ならびに同調査にご多用のところをご協力をいただき,面倒な調査にご回答をいただいた病院の各位に,厚く感謝の意を表する次第である。なお同調査の結果については,日本病院協会会報昭和40年8月号(130号)に報告される予定である。

給食業務の委託例

著者: 佐藤主一

ページ範囲:P.32 - P.36

はじめに
 国鉄の直営医療機関は,国鉄の事業の特性上,各職種の職員が危険度の高い作業に従事しているため,災害の発生率が多く,これに対処するための医療と,職員の健康管理および旅客の救護など,国鉄業務遂行上の医療を行なうとともに,厚生福祉施策の一環として,職員およびその家族に対する私傷病の予防,治療を行なうことを目的として設置されている。
 直営医療機関としは鉄道病院(付属機関としての保健管理部を含む),鉄道診療所,鉄道療養所,保健管理所などがあり,その数は第1表のとおりである。

清掃の外注例

著者: 吉川遼

ページ範囲:P.37 - P.39

I.まえがき
 関東逓信病院が,その特色である院内全般の清掃を委託請負化したのは,今を去る昭和29年12月で,早くも11年近い歳月を経ているのである。委託請負当初は,まだこの制度も珍しく,早くから実施中の欧米の様式に学ぶところも多かったが,10年余りを経た今日では,わが国なりに検討された新しい様式に変わり,また,当院としても,実地に即した委託制度に作り変えたことは論をまたない。
 何がゆえに,委託あるいは請負制度が,日を経るごとに,年を経るごとに,その必要性がこのようにさけばれることになってきたか。これは,いまさら私がいうまでもなく,まずその機関の管理運営の合理化に基づく経営の一端であることは当然で,近代の大施設の運営には,もっとも適した方法であり,また合理的実施法ともいえるからなのである。

職員給食の委託例

著者: 松本吉友

ページ範囲:P.40 - P.41

 病院給食は,食餌療法として治療の一端をになうもので,病院業務遂行上必須の要件である。これとは別に,職員給食は病院の性格上,昼夜を通じ間断なく業務を続けなければならないことから,また,従業員の福利厚生の一環として,多くの病院で実施せられている。よって患者給食は公的条件であり,職員給食は私的条件であるとの見方もある。
 本院においては,従来,全寮制である高等看護学院の学生給食を始め,寄宿舎収容の看護婦の食事,および通勤職員に対する昼食などは,病院の厨房において,患者の普通食とともに調理供給していた。このような炊事設備の共用は,会計処理に当たって,患者給食費と患者外給食費,または看護婦養成費などの区分に困難であって,それぞれの負担額の決定や実施上にいくたの問題点があり,健康保険法,生活保護法の監査や病院分類検査などに際して,材料の取り扱い伝票や,帳簿上の区分記載などについて手ちがいを生じ,しばしば注意を受けていた。

医療法令と外注

著者: 下村健

ページ範囲:P.42 - P.46

1.医療法,医師法などの基本的な考え方
 病院経営の合理化が進められるにつれて,病院業務の委託・外注が行なわれる事例が次第に増加してきている。もちろん,病院業務の委託・外注は,従来でも限られた範囲で,あるいは一時的なものとしては,かなりの程度に行なわれていたものと思われるが,最近の委託・外注の特色は,従来まで病院の固有の業務であって,病院みずからが処理すべきものと思われていた分野において,しかも恒常的に行なわれるようになり,病院についての概念にまで影響を及ぼし始めているところにあるといってよかろう。
 また,最近の病院業務の委託・外注が病院経営の合理化といった角度から問題にされ,病院の収支にいかに寄支するかということで主として評価されているのも,特徴的なことであろう。

座談会

病院における外注の問題点

著者: 石原信吾 ,   落合勝一郎 ,   温井美沙 ,   川内愛子 ,   末川勝彦

ページ範囲:P.48 - P.58

 病院でも,最近は外注の項目が増えてきているようです。しかし,病院の特殊性は,この外注にも多くの問題点を投げかけてきます。そこで,外注をいろんな角度から眺めてみますと…。

グラビア

良い医師をつくるために大学病院も新築・改築—東邦大学病院

ページ範囲:P.5 - P.8

 医師が病院を正しく活用するためには,医学教育を受ける大学病院が正しく運営され,機能を完備していなければならない。
 しかし大学は教育,研究,診療と任務が重く,付属病院の施設や管理に手の届かないところもあり,また経済上の困難も克服しなければならない。

偉容を整える小形病院—東芝中央病院

ページ範囲:P.9 - P.12

 病院の設備を整え,機能を高めるための構想は作られる。しかしその実現は容易でない。東芝中央病院(東京都品川区東大井6丁目3番22号)は,病床数100,外来患者60名ほどの小型病院であるが,建築設備や医療器械に近代的装備を整え,従来の小病院の概念を拭い去らせるものがある。
 近代的病院の小型モデルのようなこの病院は,昭和39年9月に開設されたものであり,建物は地下1階,地上4階,建物面積は1,931m2である。東芝の従業員とその家族の診療を目的とし,一般患者は扱わない。

病院の広場

国際病院連盟と日本の役割

著者: 橋本寛敏

ページ範囲:P.14 - P.15

 日本病院協会が国際病院連盟に加入したのは1956年であって,荘さんが外遊の折にロンドンの連盟事務所に事務総長のストーンを訪ねて,こちらの連盟加入の布望を述べたところが,「日本はアジアの灯台であるから是非連盟に加わって欲しい」と歓迎されたということである。
 その年の夏,上条秀介君が亡くなったので,私が日本病院協会長に選ばれたが,その年の暮れ,米国病院協会からクロスビーが日本の厚生省に招かれて来朝し,日本の病院を視察して,その改善策について勧告した。私は日本病院協会長として彼を迎えて応待し,日本の病院事業を刷新するについて彼と懇談を重ねた。その翌年,1957年には,ジェネバに開かれるWHOの保健大会に日本代表顧問として出席し,討議に加わり,さらに厚生省の医療保障制度委員会の一員として葛西委員とともに英国の国営医療制度の視察もした。その年の夏には,折よく国際病院連盟の年次大会がポルトガルのリスボンに開かれたので,それにも神崎,永沢(日大)の両君とともに日本代表者として出席して,世界の病院事業担当者と友好関係を結んだ。

自治体病院の問題点

著者: 室賀不二男

ページ範囲:P.15 - P.15

 自治体病院とは都道府県,市町村,一部事務組合立などの病院である。全国に1,020病院,その数ではわが国全病院の18%,病床数では23%をしめるなど,わが国医療機関の大きな位置にある。共通の点は,地方公務員法,地方自治法,地方財政法などの制約をうけるものであり,予算は地方議会にかけられる。お役所的病院であり,規模が小,設備貧しく,人件費が高く,赤字経営が最大の悩みである。
 昭和39年度より,地方公営企業法の一部適用(独立採算は免ずる)病院が倍増した。官庁簿記より複式簿記となり,企業性を発揮することにはなった。しかし,全面適用と異なり,地方自治法などの制約は,病院事業としての管理,運営に支障がまだ多い。

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一級臨床病理技術士第10回資格認定試験(昭和40年度)実施についての公示

ページ範囲:P.59 - P.59

 一級臨床病理技術士資格認定試験は,日本臨床病理学会が,その責任と標準において行なう臨床病理技術士資格認定制度による最高級の試験であって,全科二級ならびに単科二級臨床病理技術士の資格を有するものに対して行なうものである。

医の理念—第15回日本病院学会特別講演より

著者: 澤瀉久敬

ページ範囲:P.64 - P.76

 1.
 医療の実際にたずさわっておられます皆さまの前で,私が「医の理念」について申し上げるなどということはまことに僭越な次第でございますが,会長萩原先生のお言葉に甘えまして,日ごろ考えておりますことを述べさせていただきます。
 医学とは何か,という問いに対して,「医学とは生命現象を自然科学的に研究する学問である」という一つの考え方があります。それは医学とは生理学であるという意見であります。もちろんその場合の生理学とは広い意味の生理学でありまして,正常の生理現象も異常な或いは病的な,生理現象も含めての生理学であります。しかし,私は医学は単に生命現象を研究するものではなく,病気を治すということをその本来の目的とすると考えるべきではないかと思います。「生理学」という言葉のほかに「医学」という言葉があるのもそのためではないかと思います。「医学」は「医の学」であるということほど明らかなことはないはずでありますのに,ともすると医学と生理学とが同一視されるのであります。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.96 - P.96

 初秋の歩みよりによって,仕事の上にもおのずから落ち着きを覚えます。本号は「外注問題」特集号としてお送りします。
 外注は戦前からあったのではないかと思う。栄養士もいなかった給食の認識の低調な時代には,弁当屋式のものもあったにちがいない。現在「外注」として意識すること自体,病院機能の自覚が高まったと見るべきだろう。すなわち,本来自前でやるべきであるが,外注したほうがサービスの向上になるということからおそるおそる外注がはじまったように思う。

研究と報告【投稿】

病院におけるボイラーの活用範囲と経費

著者: 片山弘

ページ範囲:P.77 - P.80

緒言
 病院は診療圏の人たちの要望にこたえる医療組織で,時代に応じたものでなければならない。要望は種々雑多で,もとより上手な医者を集め,親切な看護婦を配し,その他サービス満点でなければならないが,これは別として,つぎの問題は建物,設備である。建物はそう簡単には動かせぬが設備なら手が届く。設備で単独に解決できるものはすべてやった結果,すべての道は蒸気に通ずることになった。しかし,一足飛びに完備した蒸気設備に切りかえるほど資力はないので,ちょびりちょびりと小出しに蒸気設備を加えて,そのつどボイラーを取り替えてゆき,現在,終点にきたのでその経過を発表する。
 その要旨は第15回日本病院学会に発表したものである。演説後,きわめて少数ではあるが,熱心な質問者があったので,その方たちのために,私の病院の数字をお目にかける。

院長訪問・3

—国立埼玉病院院長—左奈田幸夫先生

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.83 - P.83

 東京・池袋駅から東上線でわずか16分の成増駅から病院行バスで10分もかからずに,この病院に着く。したがって国立埼玉病院というけれども,埼玉県と東京都にまたがる診療圏を持つ県境の病院である。ことに川越街道バイパス線と環状8号線につらなる浦和--田無オリンピック道路の交点に位置し,付近には住宅団地の建設も多いのでこれからの大発展が期待できる楽しみの多い病院である。
 左奈田先生は昭和10年慶大卒。伊藤前院長の急死のあとを受けて昭和39年2月,国立世田谷病院副院長から,ここの院長へ移られた。

私の一週間

多忙なる病院のホステス

著者: 沢井美智子

ページ範囲:P.84 - P.86

 病室にはいると,もう出る時の話題を考える……看護婦とはインガな職業である。しかし純白のユニフォームに身を包むと,暑さ・寒さも感じない。心身ともにシャンとする……。

ホスピタルトピックス 給食

病院給食にもっと牛乳を

著者: 森田百合子

ページ範囲:P.88 - P.88

 牛乳は完全栄養にちかい食品であるといわれ,健康な大人にとってももちろん,子供や病人にとって最も好ましい,場合によっては不可欠の食品であることは,今さらいうまでもないことであろう。
 治療食における牛乳の使用について例をあげると,水分と蛋白質を相当厳重に制限する腎臓病食においても,急性腎炎の固定した時例では1日360g (2合)ぐらいは許されるし,その反対の糖質制限食である糖尿病の食事でも,回復期には毎食ごとに牛乳1本(180g)ぐらいをそえることが,米飯やパンが少量であることを補って,満腹感をあたえる意味からも適当であるといわれ,この食糧構成を実施している例も多く見うけられ,食事療法の代表と思われている胃潰瘍の食事療法では,南氏食養表のように,最終出血後6日目に150gの牛乳を,体温程度にあたためてあたえるよう処方されている。

霞ガ関だより

看護婦などの夜勤問題に関する人事院の判定

著者: S.M

ページ範囲:P.92 - P.93

 昭和38年4月19日付で,全日本国立医療労働組合(全医労)から人事院に対して,看護婦・准看護婦などの夜勤などに関して,人事院規則で規制するよう要求した。このことについて人事院が調査して,昭和40年5月24日付で厚生省に判定書を送付した。
 人事院という国の機関が,非常に困難な問題のひとつである,看護婦などの夜勤問題について,各方面から検討して,その見解を明らかにし,また,それをうけた厚生省としても慎重に対策を検討しているしだいである。これらのことは,厚生省所管の施設以外の病院についても,今後影響するところが大きく,また参考となることでもあろうと考えるのでその概要を紹介する。

病院図書館

—一条勝夫著—「病院経営分析」/—日本病院建築協会編—「日本病院建築図集」

著者: 古川栄一

ページ範囲:P.94 - P.95

病院経営のあり方を示唆
 病院の科学的管理の重要性は,わが国でも,戦後ひろく痛感されるようになり,その努力と研究がつづけられている。しかし,病院はたんなる営利事業として管理運営されるものではなく,大切な人命にたいする医療事業である。したがって,一般企業の経営管理の科学的方法が,そのまま適用され得ない。このため,病院経営の重要性にもかかわらず,経営学の研究対象から除外されてきている。
 さいわい著者の一条勝夫氏は経営学者であるとともに,多年病院管理の研究に従事されており,現在,病院管理研究所の経営管理部長の重責にある。その点先人未熟の病院経営の科学的研究の最適任者である。著者は,経営学の領域で発展した経営分析の手段を適切かつ縦横に駆使し,しかも特異な病院経営にたいして科学的メスを入れて,病院経営の実態を科学的に分析し,今後の病院経営のあり方について多くの示唆を与えられている。このことは,わが国の病院経営の近代化と,その新しい研究の展開に多大の貢献をしているといわれよう。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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