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雑誌目次

雑誌文献

病院25巻1号

1966年01月発行

雑誌目次

特集 病院と医療制度

現行医療制度下における病院の役割

著者: 島内武文

ページ範囲:P.23 - P.26

 病院のおのおのの機能とそれらの役割はそれぞれに論じられていて,これらをあらためてのべる必要はないので,ここには病院が種々の要因と要請の下に今日あるに至った過程を通じて病院のもつ役割を考えてみたい。

医療保険制度に対する病院人の希望

著者: 神崎三益

ページ範囲:P.27 - P.29

 いつもいつも同じようなことを訴えているが,いっこうに反応もないので熱意も意欲もさめてきた。
 ところが,昨年あたりから保険は大赤字を出すし,医療費は国民所得の伸びとは無関係に膨脹するので,これはこのままには放っておけないという気運が動いてきたし,鈴木厚相も基本的な改革をやりたいと声明を出した。

医療制度と病院経営

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.30 - P.36

経営体としての病院
 病院は医療の提供を目的とする組織的な事業体である。わが国の病院を経営経済的な立場からみるならば,資本主義経済体制のもとのひとつの生産経済体に外ならない。つまり医療サービスを生産する独立した企業的な経済体をなしているということである。
 このことを具体的にいうならば,医療を行なうために必要な人的・物的な要素,つまり生産手段をととのえ,開設すること,これを駆使して医療サービスを提供すること,そして努力の結果として得られた生産結果を処分することによって,資金を回収し生産過程において消耗された生産手段を補填し,次段階の生産にはいるといった一連の循環過程が常態的な働きとして存続しているということである。この場合,消費は生産目的の消耗であり,生産のための手段にほかならない。また生産は医療サービスの提供に終わるのではなく,その成果を処分することによって,消耗した生産手段を回復し,生産体制を維持存続することにある。

医師と病院制度の関連についての諸問題

著者: 守屋博

ページ範囲:P.37 - P.40

医師と病院の関係
 医師といい,病院といい,いずれも患者の診療に関する仕事をやっているからには,お互いの接触点について問題が起こらぬはずはない。どのような点でタッチしているか見方によっていろいろの解釈があろう。
1)医師は患者の診療に際して常に病院機能のお世話にならねばならんという理のものではない。ある場合は,病院外で十分に腕をふるうこともありうる。むしろ90%までは病院機能を必要としない病気をあつかうのではあるまいか。しかし残りの10%の病気については,病院的機械化装備なくしては,手が出せぬ場合もあり得るのである。つまり,医師は必要によって病院的装備を利用したり,自山に病院をはずすことができれば理想的ということができる。この場合の病院機能とは現在の日本の病院から医師を除いた部分と考えることができる。

開業医と病院

著者: 春日豊和

ページ範囲:P.41 - P.46

 大きなステンレス枠の1枚ガラスの自動ドアーは自然に開いた。いわゆるゴージャスを極めた待合室には美しい大きな日本人形や,フランス人形も飾られ,清々として美しく生けられた草花がふんだんにおかれ,時に私は病院にあることを忘れ,新築のホテルのロビーにいる錯覚さえ催す。そしてそれが本当であり,そうあるべきだと自問し自答する。
 さらに私は仲間に誘われて,善美を尽した設備に驚嘆を発しつつ歩を進める,○○室,××室…と学生のころ夢みていた私の医人としての未来図が,白衣姿の自分とともにその壮美な構図の中で立派な画面を作る。私は気も遠くなり,驚喜し,胸の鼓動はいやが上にも高鳴る。学生のころと異なり,手術野は手にとるごとく,そしてインターホーンを介しての術者の懇切な説明は,これまた私自身が手術をしているような錯覚までも…,そして控室に戻れば大きな撮影機を狙いだ映画専門の先生は,これまた手術衣でまことに甲斐甲斐しく立ち働いている。

座談会

病院から望む好ましい医療制度

著者: 岩佐潔 ,   川上武 ,   安冨徹 ,   井上昌彦 ,   加納寛一 ,   川島みどり

ページ範囲:P.48 - P.60

病院の中で仕事をしている人間にとっていろいろな意味で現行の医療制度に無関心ではいられないつもる不満や将来の夢を語ってもらうと……

グラビア

第14回国際病院連盟会議

ページ範囲:P.5 - P.8

国際病院連盟は,去年第14回の会議をスエーデンのストックホルムで開催した。40数か国から1,500人に及ぶ人々が参集し,病院の問題をめぐって熱心な討議が行なわれた。わが国からも,日本病院協会の橋本寛敏会長その他が参加した。(本文参照)

病院におけるボランティア活動—病院奉仕団の活動

ページ範囲:P.9 - P.12

 病院は地域社会と結びついてあるべきものである。しかし,わが国の病院は地域社会の中の離れ島のような存在であることもある。
 病院が地域社会に働きかけるだけでなく,地域社会が病院に手をさしのべるということも必要である。病院におけるボランティア活動は,病院と地域社会との結びつきの橋渡しでもある。わが国では,この活動はまだ限られているが,今後の開発が望まれる。

病院の広場

年頭にあたって

著者: 橋本寛敏

ページ範囲:P.13 - P.13

 戦後,満20年を過ごし,ことしから新しい時代にはいるような気がする。次の10年に,われわれはどんな歩みの道をとるだろうか。
 過ぎた20年の間に日本の病院医療は復興したばかりでなく,はなはだしく発展し,画期的に近代化された。しかし,それが均斉がとれていない発達であることは,私どもの生活が不揃いであると同様である。先端を行く近代医学の知識と技術が,高級の科学器械によって応用されるかたわらに,古い不合理な患者取り扱いも行なわれている。今後の10年あるいは20年には,あらゆる意味での均斉のとれた病院医療を育て上げるために努めなけれならない。

新春断想

著者: 美甘義夫

ページ範囲:P.14 - P.15

 最近,日本においても病院の新築や改築増築が盛んに行なわれ,外観的には近代病院の様相を示すものが少なくないようである。これは本病院学会の強い主張やたゆまぬ努力の方向が実現しつつあるものとして慶賀すべきである。しかし病院は外観や建物ばかりでなく,内容と運営がより重要であることも申すまでもない。いわゆる公的病院の開設者たちは,立派な外観を持つ病院の建物を作ることには理解が深く,予算の獲得も比較的容易であるが,運営費具体的には建物補習や維持のための予算はしぶられ勝ちで,十分な額を望めない傾向がある。これでは近代建築の維持は困難である。
 国・公立病院以外では独立採算原則が適用され,建物の原価消却費が課せられる。現在の保健医療費では原価消却費は計算にはいっていないのではなかろうか。開設者が病院を開設することは,地域社会の福祉に貢献する所以だと考える雅量を持ってもらいたいものだ。

計画性

著者: 倉田正一

ページ範囲:P.15 - P.16

 1年の計は元旦にありという。計画はいつも重要な意味をもつ。さきごろ,一般企業体に種々な経営管理技術が導入されブームをさえ形成したことは人の知るところである。その技術そのものの批判は別としても,一体その理由はなんであろうか。これはそれらの技法がもつ合理性,科学性の故であって,従来の管理にこの面が欠けていたことを端的に示しているとみることができよう。プラニングを含めた管理機能を考えた場合,管理者が求めてやまないものは客観的な判断資料,正確な情報だからである。
 ベルナールの昔から自然科学における仕事には一定の手順があった。客観的な観察,推論,実験,法則性の開発。このいずれの段階にも環境や組織化された経験が大きな意味をもち,帰納と演繹が向上の循環をしだいに高めてゆく。特に推論の段階では科学者の独創的な考えが勝負を決してゆく。しかしまず求められるものは客観的な冷静な観察である。経験はたしかに大切であるが,偶然的な未整理な経験は偏見を強める以外の何ものでもないし,雑然たる常識もそれだけのことである。組織化された経験,組織化された常識こそが大切であろう。病院においても実務に追い回されているだけではなく,時には瞑想にふける哲学者の態度が管理者に必要ではないだろうか。空理空論ではなく理論議論はつくさねばなるまい。

看護の課題

著者: 湯槙ます

ページ範囲:P.16 - P.17

 年があらたまるということを基準にものを考える習慣はあまりないのだが,年頭所感を求められてみると,やはり年のはじめには特別の気分というものがあるようだ。たとえば看護制度の問題などでは,予算編成の時期の直後であるだけに,念願が果たされそうにない現実に長嘆息をつくことが多かったこの幾年かではあるが,それでも「やはり少しずつは動いてきているのだ」と気をとり直すことのできるのは,お正月のもつおおらかな雰囲気のせいかも知れない。
 さて,昨年度は私にとっては大きな動きのある年であった。11年間の東大生活に別れをつげ,その間の1つの夢でもあった,「教育の場と臨床の場との有機的なつながりの中で看護を実践する」という願いを実現させる機会を得て新しい職場に着任した。そして毎日の業務がまことに具体的であるのに今さらのごとく感心した。その中にいると,まるで世界の動きとはまったく関係のないところに閉じ込められたかのような感じさえ持つ。時として,これまでただひたすらに求めてきた「看護」とはまったく縁のない世界であるかのような錯覚に陥ったりもする。しかしこのような概念の先行の中で,やはり若いエネルギーにふれ,この人たちの願いや夢をつぶさないように,伸ばせるようにするには何が必要なのか考えさせられている。

最近の病院建築

著者: 浦良一

ページ範囲:P.17 - P.19

 私が最近関係した仕事を通じて感じていることを書いてみたい。
 その1病院建築を建築のなかでいいものの部類にいれたい。

これからの日本の国際活動

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.19 - P.20

 戦後20年にして,ようやくわが国の国際的地位が確立されてきた。同時に,わが国に国際的責任が荷重してきたことも認めざるをえない。今までは精いっぱい欧米の知識と技術を吸収し,自国の発展のためにのみ努力してきたが,ここにいたると,おのずからあたえられた地位から,先進国に伍して世界文化に貢献しなければならないし,遅れた国のお手伝いにも応じなければならないことも当然である。
 戦後のわが国病院の発展はめざましいもので,日本の医学の驚異的進歩とともに,十分高く評価されるべきものである。その数の増加は世界医療界にその比を見ないし,病院の職員の能力および管理,そして建築設備も戦前の比ではない。世界一流とはいえないとしても,乏しい病院経済の中でよくもこれまで発達したものといわざるをえない。日本人の勤勉と能力のしからしめるもので正当に評価すべきである。

院長訪問・7

—佼成病院長—小野田敏郎先生

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.63 - P.63

 小野田敏郎先生は永らく本誌編集幹事で,われわれには馴染み深い仲であるが,40年8月佼成病院長に就任されたので,新院長としての抱負を尋ねてみた。
 先生は昭和10年に東大を卒業し,陸軍軍医学校で4年間軍陣衛生学の教官として勤務した。その後陸軍省医務局課員として教育および衛生に関する事項を担当し,軍医中佐で終戦を迎えた。終戦の12月から翌21年5月まで国立東京第一病院に勤め,その後復員船が帰港し温泉があり官舎もある国立大阪病院白浜分院に転じた。先生は復員者の医療に責任を感じてここで診療に従事していたのであるが,この仕事も一段落したと考え,22年7月職を辞し,白浜からほど近い郷里の海南市に引揚げ開業した。しかし開業3年にして再び東京の病院に勤務することになった。先生の説明では,高い税金にへこたれて開業を中止したということであるから,患者が来すぎて困ったのかも知れない。それとも先生にはsolo-practiceより組織の内にあるほうがふさわしく思われたのかも知れない。

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第14回国際病院連盟会議の印象

著者: 落合勝一郎

ページ範囲:P.64 - P.69

 6月の季節にはいると,ヨーロッパのさいはての地スカンジナビアの国ぐにに住む人たちにとっては,1年中でもっとも楽しいシーズンとなる。太陽のない,うっとおしく,きびしい冬が9月の終わりから5月の初めまで続くと,急に短い春を素通りして,夏がやってくる。リラ,コデイン,名も知らない花々が,むせかえるように一度に咲きほこる。木も森も林も若葉青葉でふくらむ。空は青く,水は豊かに澄んで美しい。そして太陽はこの季節になると早暁の4時にはもう,さんさんと輝いて深夜まで沈まない。—白夜である—。
 こうして,スエーデンの人たちは,6月の終わりに何日かつづく白夜祭には職場も学校も休みになって,老いも若きも男も女もこの短い太陽の季節を楽しむのである。

第3回日本病院管理学会印象記

著者: 前田信雄

ページ範囲:P.70 - P.76

1.はじめに
 病院管理の学問的な発展を目的とし,単なる管理技術の公開普及,啓蒙や政治的活動を目的とするのではなく,かつ「恒常的な学問の団体をつくる」べく昭和38年7月20日に呱々の声をあげた本学会も,早いもので今回で第3回の発表会をむかえたのである。会場は第1回と同様,日大駿河台病院講堂であった。第1回のさいの,何となくととのわない感じにくらべ,この3回めは,さすがに会の進行といい討論の焦点や集中具合といい,全体としていわば"板についてきた"という感じであった。華々しいよそおいはないけれども,なかでしっかりとまとまっていて,腰を落ち着けて1か年間の学問上の実りをだしあった2日間である。
 筆者は浅学菲才であるので,以下この印象記はなるべく「写実性」に力点をおいて綴るつもりではあるけれども,多少の屈折投影をおこしている懸念なしとしない。あらかじめご容赦を願う次第である。

病院におけるボランティアの活動—赤十字・病院奉仕団活動の現況

著者: 原素行

ページ範囲:P.78 - P.81

まえがき
 わが国では,病院における奉仕者の活動がいまだ社会の常識として,広く行なわれていない。わずかに,社会の隅で,行なわれているが,それは稀に見る例外である。
 本稿には,東京における日本赤十字社傘下の病院奉仕団活動の現況紹介を主題とし,あわせて病院におけるボランティア活動の種々相について略述し,さらに筆をすすめて,わが国の病院と地域社会との関係などについて,いささか考察を試み,病院におけるボランティア活動の不振のありかに触れることにしたい。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.94 - P.94

 新春号巻頭には,恒例にしたがって,橋本寛敏協会長をはじめ,関係各界の代表者から年頭所感をいただきました。この先生方の所感にもうかがえることは,過去20年間の日本の病院の生長発展の結果,新時代におけるわれわれの国際的責任です。わが国の病院管理,看護,そして医療の進歩には,この20年間の先進国技術的援助が大きく与って力のあったことを忘れることはできません。まがりなりにも一人前となった現在,このお返しをしなければならぬ国際的責任が生じていることを認識しないわけに参らぬでしょう。
 特に東南アジアの現状に対し,できることがあるのならば手を差しのべるべきです。もちろん橋本先生がいわれるように安うけあいは禁物でしょう。しかし地理的,文化的,民族的に共通の基盤にあるものが,おたがいに信じて力になり合うことは当然のことです。病院の問題では,経済的協力は不可能であるし,またすべきでないでしょうが,同様後進国であったわれわれの経験から導きだされる知恵を借すことくらいはできそうです。今年はまず病院人の交流からはじめたいものです。

私の一週間

日曜出勤も何のその

著者: 三浦敏雄

ページ範囲:P.84 - P.86

 新院長を迎えて,院内は再び活気にあふれている。委員会制度の実施。クローズアップされる医事課。さあ,わが病院のためならば,全身全霊なげ打っても……。ハッスルする医事課長の1週間の奮闘記。

ホスピタルトピックス 特殊病院

1962年のフランスの精神病院

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.88 - P.89

 近着のフランス国立公衆衛生院紀要(Bulletin de l'Institut National de la Santé et de la Recherche Médicale)の20巻1号に53頁にわたって,1962年度のフランス公立と指定精神病院の入・退院患者の動向が掲載されている。この報告は毎年末調査の集計であり,1961年の動向については昨年の本誌のこの欄で紹介した。
 フランスの県立または指定病院は107あって,調査対象となったのは105で,2つの病院(ナント地方のブレンとリール地方のバイリエル)が欠けている。公的機関が内閣統計局承認のもとに公的に行なう調査について,どんな理由があるにせよ,公的医療機関が非協力であり,しかも1961年も1962年も2回にわたって資料提出拒否したのはまことに示唆にとむ事実である。

霞ガ関だより

病院経営収支調査

著者: E.N.

ページ範囲:P.90 - P.92

 今月は医務局指導課主管の標記の調査を紹介してみる。この調査は昭和40年4月からはじまった新しい調査で,公的病院の毎月の経営状況を継続的に把握して,医療行政に敏速に反映させるとともに,経営管理の指標を作成して,病院の健全な運営に資することを目的としている。
 調査対象は「病院勘定科目」に準拠し,企業会計方式を採用している病院で,調査客体は県・市・町村立などの地方公共団体,日赤,済生会および厚生連の経営する病院のうちから約150の施設を事例的に選定した。その内訳は県立37,市立19,町村立13,日赤29,済生会12,厚生連26,計136である。これを病床規模別にみると第1表のとおりで,調査客体は各病床規模にわたってまんべんなく選定されている。しかし,甲表と乙表に分けてみると,甲表では99床以下の事例が少なく,乙表では300床以上の事例が少ない。したがって,甲表病院全体の1病院当たり平均病床数は約380,乙表病院全体の1病院当たり平均病床数は約180で,乙表のほうが小規模の方に偏っており,今後この穴をうめることが希望されている。なお,この病院数は月により多少変動している。

病院図書館

—澤瀉久敬著—「医学概論」

著者: 小野田敏郎

ページ範囲:P.93 - P.93

心うたれる"医の理念"
 この雑誌の読者の多くは,ことしの日本病院学会に出席されて,特別講演「医の理念」として澤瀉教授のおはなしをうかがったに違いない。そしてその真摯な講演とふかい内容に1時間のときを忘れるほどに感銘を覚えられたに違いない。ことし第15回の学会長萩原先生(国立京都病院長)が,大阪大学医学部において医学概論を講ぜられている澤瀉教授のおはなしをぜひ全国の病院人に聞いてもらいたいものとその講演を依頼されたのであるが,萩原先生の思いの的はみごと中られたわけである。
 「医学概論」第1部・第2部・第3部はその澤瀉教授の著わされたものである。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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