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雑誌目次

雑誌文献

病院25巻11号

1966年10月発行

雑誌目次

特集 物品補給と倉庫管理

管理者からみた物品管理の意義

著者: 森直一

ページ範囲:P.15 - P.21

1.はじめに
 医業は,一つの企業であるといわれている。企業の本質は,「人」「物」「金」という3つの要素で組織されている単位なわけであり,さらに,いいかえれば,企業は,生産を目的とするものであって,この企業のなかで,その生産目的からいって,純粋に営利を目的とする私企業と,非営利的な目的をもつ公企業に分けられる。これらの区分は,誰が所有しているかによるものであって,出資ないし所有者が,国家または公共団体である公共機関であれば,公企業であり,これに反して,私企業は出資,所有とも個人または,不特定多数の人的集団(株主等)のため,長期かつ適正な利益を実現し,企業の維持発展を図ることを目的としているのである。
 ここまでの段階では,企業は単に静態的,構造的な面だけであるが,企業が,その発展と,利益の永続性といったことを考える場合は,動態的,行動的な面がなければならない。これが経営である。企業は,その経営活動をとおして,その本来の目的に焦点を合わせて,合目的的な活動をするため管理しようとするものであるから,経営管理ということは,企業という1つの構造体を,その目的のために合理主義によって把握しようとすることにある。したがって,いわゆる経営管理の根本的な理念は,合理主義の実現にほかならないと了解できるのである。

物品補給における標準的手続き

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.22 - P.26

1.はじめに
 近代病院の医療は,そこで消費されるおびただしい物品の使用の上に成り立っているといえよう。病棟の看護詰所に所せましと置かれた「物品」の山,薬局の窓口を通過するおびただしい薬品類,中央材料室で処理される注射器,注射針,ガーゼ類の多種多量さ,給食室の材料類などを想像するだけで,病院はその機能である医療の提供に実に多くの物品を使しているかが分かる。その数は,薬品類(投薬,注射,検査用など)だけでも,数千種類といわれ,病院全体では6千種類を越すといわれている。
 病院で使用される物品はきわめて多種多様であるが,一応以下の厚生省の病院勘定科目の棚卸し資産の分類のごとく考えられよう。

物品管理における内部牽制問題

著者: 落合勝一郎

ページ範囲:P.27 - P.31

はじめに
 一般に,病院で使用,消費する物品は,薬品・注射薬・衛生材料・X線フィルムなどの診療用消耗品,注射器・体温計・シャーレ・薬包紙などの医療用消耗品,そのほか多数の看護用品,および生鮮食料品・瓶缶詰・調味料などの給食材料,陶磁器など給食用用品,重油軽油石炭など燃料,毛布・シーツ・布団などの寝具用品,ユニフォーム・ガウン・カーテンなどリネン用品,鉛筆・ノート・インク・伝票帳簿などの事務用品,診療記録などの印刷物,木材,ペンキ,配線配管用資材など実に多種多様で,種類にして,5,000種から6,000種に達する。また金額にして,患者収益の30〜40パーセントを占める。特に近年は健保料金の改訂を上廻る一般物価高の傾向がいちじるしい。そのほか,医薬品購買額増大の傾向も顕著であって,これがますます対患者収益比率を悪化してゆく。
 このように,病院で取り扱う物品は,金額・種類・量ともに膨大で多彩であるから,請求,入出庫,保管,払出し,運搬などに付帯する事務手続も,よほどしっかりしていないと,単純な事務の不手際によって,まちがい,誤り,過失をおこしやすいし,また,時には故意の不正もおこし得る可能性もあり得る。

物品補給の機械化

著者: 藤井正七

ページ範囲:P.32 - P.36

はじめに
 病院は診療業務を中心とし,それに伴う諸業務は手作業が従来からの根強い習慣となっている。
 したがって,われわれはややもすると,合理化には縁遠いもののような錯覚に落ちいりやすい。

病院の倉庫

著者: 中村彰吾 ,   落合勝一郎

ページ範囲:P.37 - P.42

1.病院倉庫の本質
 病院倉庫の本質は,その根本的概念に二面性をもっている。第1は,「患者診療に直接,間接必要とする物品の補給」ということである。病院の本来の目的である「完全なる患者の治療」には,診療,看護に付随して,医薬品をはじめとする多種多様の物品群が使用されるが,これを,適正かつ円滑に補給して,支障をきたさないようにこころがけ,いつでも多岐にわたる需要に応ぜられる態勢を備えるべきである。すなわち倉庫は,後方業務で,診療,看護の第一線と連絡をもち,組織され能率化された一定のルートを通じて,物品を補給することである。病院活動は生きものであるから例え一定の補給ルートが確立されている場合でも例外,応急,緊急の事態は常におこりうる。
 すなわち病棟,外来の手持ち物品が偶発的事故により破損または不足することもある。そして,これが患者の治療に対して支障をきたすと,担当医師,看護婦その他職員が判断した場合には,すみやかな補充が行なわれるような事務的手続きが整備されていなければならない。このような処理はあくまでも例外行為であって,補給後,厳重にそのような事故の原因分析が行なわれ,同じような事態が,同様の原因で再発することを防ぐようにしなければならない。

座談会

物品補給と倉庫管理

著者: 一条勝夫 ,   落合勝一郎 ,   吉武香代子 ,   羽山正一 ,   小林仙次

ページ範囲:P.44 - P.55

 6千余種もの物品を,いかにして,必要とする時間に必要とする量と品質を,必要とする場所に配給するか。
 倉庫は"物置き"と考えられ,ママコ扱いされがちな病院の"物品"をここで明るい場所に引き出してみると……。

グラビア

物品、資材の保管と補給

ページ範囲:P.5 - P.12

 病院で使用する物品、資材は、数千種類にも及ぶものである。これを保管し補給する業務は、病院の機能を円滑に発揮させるうえに駐要なものである。また病院経営に影響するところも大きい。しかしながら物品や資材の管理には、なお改善すべき点が少なくない。今回は、この管理の各場面をグラフによってたずねてみることにした。

病院の広場

分派主義と全体主義—総合病院のあり方の一つの面について

著者: 桂重鴻

ページ範囲:P.13 - P.13

 やがて半世紀近くにもなろうとする昔,筆者が内科医としての教育を受け始めたころは,何ごとでも自分1人でできなければいけない,人をたよってはいけないというように教えられた。たとえば虫垂炎の患者なども,穿孔でも起こした場合は別として,できるだけ,内科医が責任を持つべきであると教えられた。虫垂炎の早期手術が主張され始めた頃のことではあったが…。
 人に依存しないという心がけは限度があるにせよ,大切なことにちがいない。しかし一方,そのあたりから病院医療のセクショナリズムが芽生えたことも否めないと思う。

研究と報告【投稿】

リハビリテーションの建築—2つの計画案を中心に

著者: 栗原嘉一郎

ページ範囲:P.61 - P.72

I.望まれる施設体系の確立
 最近わが国においてリハビリテーションの問題がようやく脚光を浴びてきたが,それに伴ってこれを受け止めるべき施設の充実や,施設群の体系的整備についての検討が同時に進められなければならないことは当然といえよう。
わが国の病院におけるリハビリテーション活動およびその施設の実態については,永沢滋教授ら9氏による全国的な調査があるが,それによれば現状は総体的にみてきわめて貧弱であることが明きらかにされている。

4年間の患者調査の結果について

著者: 佐野忠正 ,   佐藤富也

ページ範囲:P.73 - P.81

はじめに
 この調査は,大田原赤十病院を利用する入院および外来患者の当院利用の動機,満足度,診療圏の広狭などを知ることによって,医療サービスと医業経営の改善をはかる基礎的資料を得ることを目的とした。
 この調査を開始した昭和38年当時は,調査の方法,内容などについて,研究不足のまま発足したことが,年を追うごとにその欠点が発見された。しかし,調査過程で内容などを変更することは,調査結果の共通性,判断,推定などを見誤るのをおそれて,これを変更しないで調査を行ない,一応の結論をみたものである。

高圧蒸気滅菌の理解とその効果の確認

著者: 長田博之 ,   神木照雄

ページ範囲:P.83 - P.89

いとぐち
 消毒とか滅菌というと,今ごろ何をと,きついおしかりを被ることであろう。しかし,本題が現在,どのような考え方で現実の臨床医学の中に取り入れられ,操作されているかを確かめることはけっしてムダなことではないと思う。
 滅菌とは微生物の生きとし生きているものをすべて殺し,いわゆるAsepsisの状態にすることであり,消毒とは対象とする病原体の生活力を破壊することで,非病原性の微生物が生き残っていてもよいとのことである。

病院図書館

—安冨 徹他著—「病院外来の運営」

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.72 - P.72

名司会のもと外来改善に貢献
 わが国の病院外来の現況は幾多の問題をかかえている。特に国民からは病院外来の混雑,受付の不親切,待ち時間の長いことに怨嗟の声が上っており,早急に対処を迫られている。日本病院学会が専門集会のテーマにこれをとり上げたことは当然といわねばならない。そして国立京都病院の安冨外科医長の名司会の下に各問題の先覚者の建設的発言や経験が語られ,実のある集会となった。本書はその時の発表を主体として編集された時宜に適した企画というべく,わが国の病院外来改善のよき指導書として価値の高いものができあがった。
 本書の内容は,(1)外来事務の問題点と能率化(東義晴氏,紀伊国献三氏)(2)病歴管理(高橋政祺氏)(3)レントゲンフィルム管理(今田拓氏)(4)外来の臨床検査(村上元正氏)(5)アポイントメントシステム(浅井一太郎氏,相良貞直氏,左奈田幸夫氏)について,それぞれの担当者が執筆し,また問題ごとに全体討議を行なっている。

院長訪問

—山口労災病院長—石田 一夫先生

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.93 - P.93

 山口労災病院といっても山口市ではなく,小野田市の中央部山手にあって宇部市にもごく近い。外来通院にはいくぶん不便な台地にあるが,病院としては静かなよい環境である。現在312床になっているこの病院も,昭和30年3月発足当時には整地もろくろくできない台地に1棟があるだけで,職員もわずか40人の50床病院に過ぎなかった。この小病院を初めから手がけて大病院に育てあげてきたのが石田院長である。
 先生は昭和12年九州大学医学部を卒業して第2外科後藤教授の教室へ入局した。昭和17年炭鉱の飯塚病院外科部長になったが,昭和19年には応召して満州に渡り,敦化陸軍病院で終戦を迎えた。ソ連抑留中にドイツ人医師と一緒に働いたり,ソ連人医師との接触も多かった。ソ連では治療医学の技術普及は当時それほど十分とは思われなかったが,予防医学に重点を置き,病院でもハウスキーピングの要員が豊富で清潔整頓が大変によかった。病歴などの記録も大変によく,死亡者はすべて解剖していた。この時の経験が潜在的に先生の病院管理に役立っているのかも知れない。この抑留生活中に人間関係のむずかしさ,人間の弱さ,醜悪さなどについてもいろいろ経験し,深く考えさせられたということである。

ホスピタルトピックス 経営

女子パートタイマーの労働力型と労働条件

著者: 菅谷章

ページ範囲:P.94 - P.94

 去る7月に,労働省婦人少年局で行なった「製造業における女子パートタイム雇用個人調査」の中旬報告が発表された。この調査の詳しい解析は,今年の暮にまとめられる予定であるが,周知の通り,病院では女子パートタイマーの需要が年々高まる傾向にあり,前記の調査結果がたいへん参考になると思われるので,この欄を通じて,その概要を簡単に紹介しておきたい。
 この調査は昭和41年2月15日現在,30人以上の常用労働者を雇用し,女子パートタイマーを5人以上雇用する183事業所の女子パートタイマー1,500人を対象として,個人別に面接調査したものである。では内容にはいる。

霞ガ関だより

重症心身障害児(者)の療育

著者: K.T.

ページ範囲:P.98 - P.99

はじめに
 重症心身障害というコトバは,病名でもなければ,また学問上の分類でもない。まったく行政上便宜的な分類であって,社会的要請によって生まれたコトバといってよかろう。
 重症心身障害とは,身体の障害と精神発達の遅滞せる状態である精神薄弱とが重複し,かつそのいずれもが重要であるところの児童をいうのであって,昭和40年8月の厚生省調査によると17,300名と推計されており,この他18歳以上の成人も2,000名といわれ,重症心身障害児(者)は約2万名いることになる。

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編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.100 - P.100

 本号は「物品補給と倉庫管理」を特集しました。病院の各部門では各種の物品が絶えまなく刻々に費消されてゆきます。この物資を能率的に補給する問題が本号特集の物品補給と倉庫管理であることはいうまでもありません。おびただしい種類,患者の生命にも関係する物品,それを能率的に適材を適所に適時に分配する機能と機構は,人体の循環器や淋巴管にも匹敵する重大なものとして認識する必要があるでしょう。
 この補給の問題についてはこういう挿話があります。終戦後軍病院が国立病院として国民に開放されて間もない頃でした。占領軍からパージの旋風が巻き起こり,全国を吹き荒らしましたが,国立病院もご他聞にもれず,医師さえ元職業軍人は退職しなければならなくなりました。ましてや事務に働いていたものは貴重な元衛生兵もその対象となりました。事実,事務はこの人びとでようやく維持されていたので,何んとか少しでも確保するようにいろいろの理由を上げて司令部に抵抗しました。ところがその中で思いがけなく当ったのが用度係でした。「この職のものは除外してもよろしい。病院のsuply officerは容易に養成できないものである」ということで,X線や検査の衛生兵出身の技官と一緒にこの種の事務官だけは特に対象から除外してもらえることになりました。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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