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雑誌目次

雑誌文献

病院25巻12号

1966年11月発行

雑誌目次

特集 夜間の看護

夜間看護のあり方

著者: 住井ヤエコ

ページ範囲:P.15 - P.19

はじめに
 夜間における看護と,それに関連のある種々の問題は直接に看護にあたっている看護婦,その他の要員にとってはもちろん,監督,管理の責任をもっている者にとっても,長年の宿題のようなものでいよいよ難題となり,公的医療機関に勤務している私などには果てしもない道をゆっくり歩いている感じで,どこまで行けば答が出て来るのかと少々悲観的でもあります。ですから夜間看護はこうあってほしいとか,こうあるべきとか述べる資料も乏しく資格もありません。
 しかし何年か後に希望の一部,または全部が実現するかもわかりません。ぜひそうあってもらいたいと願いながら私ども看護部門の意見をまとめてみました。

夜間看護の合理化

著者: 大森文子

ページ範囲:P.20 - P.25

はじめに
 夜間の病院体制といえば,必ずしも看護婦のみの問題ではなく,病院全体としての夜間勤務体制と,それぞれの責任があり,その協力関係において夜間看護の万全が期せられる,というのが私の持説であるが,日本の病院でもとかく看護婦に夜間業務の責任が集中し,特に救急患者を扱わない私どものような療養所では看護のみならず,もろもろの処理を担当することになり,なお一層,夜勤業務の重大さを痛感させられるという不合理がある。この意味で今回の課題が「夜間の病院体制」でなく「夜間の看護」であることにも,いささか抵抗を感じるが,一応与えられた課題に従って,国立結核療養所として当所で行なっていることをのべてみる。
 夜間の看護とは,いわゆる深夜勤務手当の対象となる22時以後を呼ぶのであろうと思うが,現在の3交替制では準夜勤もこの中に含めて考えることになる。

夜勤婦長の業務—その権限と責任

著者: 金子久子

ページ範囲:P.35 - P.37

はじめに
 わが国における看護は,戦後行なわれた病院管理の改善にともなって,日本のながい看護の歴史においてもみられなかった大きな転換がひきおこされた。
 また「保健婦助産婦看護婦法」の制定により,看護教育も促進され,よりよい看護への方向にあゆみはじめ,看護内容の向上と充実によってその機能の重要性が認められるに至った。

夜勤専従制度のすすめ

著者: 吉武香代子

ページ範囲:P.44 - P.48

夜勤の受けとめ方
 看護婦と夜勤は切っても切れない関係にあるといわれている。一般に夜勤は,看護婦にとって「避けられないもの」,「止むを得ないもの」というように,きわめて消極的に受け取られ,看護婦は夜勤がある故に結婚生活と両立しない,育児は無理である,通学に不適であるなど,もっぱら歓迎すべからざる面だけが強調されて今日に至っている。夜勤をすることによって自由になる昼間の時間の利用にはほとんど目を向けられることなく,ただ「夜勤はいや」の声だけが完全に大勢をおしまくっているのが現状である。
 もとより人間は本来は日照時間に働き,日没とともに家路をいそぐのが太古から自然の姿とされている。夜働くということは,この意味ではたしかに不自然である。

夜間看護への援助

著者: 森直一

ページ範囲:P.49 - P.53

 夜間看護が問題になるのは,疲労の蓄積によって,生体リズムに狂いがでてくる。夜間は副交感神経緊張の周期なのに,その時間に働くため,反生理的現象が生じ,身体的な障害を起こしやすい。看護婦の夜間勤務は,肉体的にみると仕事の強度は軽いが,実働率が高いため,勤務時間全体で消費されるエネルギーは,中労作ないし強労作に近いといわれ,業務内容も立業が多く週間に蓄積される。いわゆる進行性疲労の様相を呈するわけである。
 現在,病院では大体8時間勤務を固定した3交代制をとっているが,ときに1人夜勤の場合もでてくる。夜勤の苦痛を軽減する対策としては,看護婦数の増加と夜勤回数を減らすことである。

夜間特殊看護の実際

ICUにおける夜間の看護

著者: 山本良子

ページ範囲:P.26 - P.28

はじめに
 当院におけるICUの設置された目的,設備等,すでに紹介されご存じのことと承略し念のため収容される患者の状態のみを簡単に述べたい。入室者は各科を問わず全科にわたり,全身管理を必要とし,濃厚な看護および治療,終始観察せねばならない重症者,特に人工呼吸を必要とする患者で,術後であれば排ガスがあり,食餌も径口的に患者自身摂取可能となれば前室に帰される。したがって最も手のかかる患者のみが収容されている。

未熟児室における夜間の看護

著者: 渡部幸子

ページ範囲:P.28 - P.31

はじめに
 未熟児は生命力が弱く,また身体的に未完成なために,医療,看護など,各方面の特殊な養護が必要であり,養護のいかんによっては,その生命を左右されることが,しばしばある。一般に看護には,昼夜の別がないことはいずれの科,いずれの部門においても変りはないが,未熟児室に勤務する者は,未熟児の特殊性をよく理解し,高度の看護技術を身につけ,弱い生命の保持が適切に行なえるよう常に努力しなければならない。

産科病棟における夜間の看護

著者: 伊藤文乃

ページ範囲:P.31 - P.34

はじめに
 最近,助産婦希望者の少ないことが問題にされているようです。看護学校を卒業して進学するものの3/4位は夜勤のない保健婦になることを望んで,保健婦学校へ入学してしまうとのことで,助産婦は若い人たちに嫌われているようです。
 「予定は予定にして決定にあらず」というコトバの通り,必ずしも予定日に出産しない妊婦を相手にする助産婦は,いつ産婦が入院してくるかもわからず,いつ分娩が始まるかもわからず,仕事の予定をたてることもできず,昼夜をわかたず出産という婦人の一生や,その家族にとって重大なできごとに対して,常に精神を緊張させていなければなりませんから,たしかに大変なことです。その上,近年助産婦の仕事の内容は単に分娩介助だけにとどまらず,広く母子保健の管理や,指導,教育なども行なうべきことが強調されています。ことに産科病棟の夜勤では,全分娩のおよそ60%位が夜間に起こることからもわかるように,他の病棟の夜勤とはまったくちがって,多忙な動務に終始されねばなりません。

夜間における看護婦配置の工夫

交代時刻の工夫

著者: 大野菊衛

ページ範囲:P.38 - P.40

はじめに
 看護婦の夜勤についてはいつも問題が多いようです。誰しも例外なく夜は寝て昼間は働く,この自然の状態を求めるのは当然であろうと思います。その当事者である私達は常にいかにして夜勤日数を最少限にとどめるかについて研究もし検討もしてきたが,他方面にわたり問題が山積しており,急速に解決することはとうてい望めないので,どこに問題があるか,どうしたら少しでも解決のメドがつくか,これからその1つ1つを掘り下げてみたいと思います。看護婦不足の折柄,どこの病院でも例外なく苦労の多いことです。人口が増加すれば病人も増えるでしょう。したがって病院の数も年々増加の一途をたどっているようです。

夜間フロートナースの利用

著者: 幡井ぎん

ページ範囲:P.40 - P.43

 多くの病院で頭を悩ますことの1つに夜間の医療体制がある。日中は相当充実した陣容を整えた体制を誇っている病院も,夜間に入ると就労している勤務人員はガッタリ少なくなり,時には医療不在を思わせる事態が生じ,社会的な問題にまで発展することがある。こうした医療体制の中での看護部の受け持つ役割は大きく,特に夜間の問題は,この数年間各方面で大きくとりあげられてきている。この現状のなかで夜間(準夜,深夜)業務についての看護面での問題点と,それについて講じた解決策の2〜3を報告する。

座談会

夜間看護の改善をさぐる

著者: 石本茂 ,   室賀不二男 ,   石原信吾 ,   西村昂三 ,   吉武香代子 ,   酒井シュツ

ページ範囲:P.54 - P.65

 ビルのオフィスの灯は消えてしまっても,夜の病院の中で戦争は行なわれている。患者がある限り,夜間医療,夜間看護は存在する。夜勤は辛い。だがその改善の方法,合理化の方向はないものだろうか。

グラビア

伝統を乗り越え新しい出発…—京都市医療センター

ページ範囲:P.5 - P.8

 京都市は,中央市民病院と市立京都病院の老朽化に伴い,これらを統合して「京都市医療センター」の建設という新構想をうちたてた。この医療センターは,新しく建設された京都市立病院,旧京都病院の伝染病舎,看護短期大学,防疫事務所の4施設から成り立っており,昭和40年11月より総合的な活動を始めた。
 この中核をなす京都市立病院(京都市中京区壬生東高田町1番地の2)は7億7千万円の工費と1年数か月の日数をかけて完成された地下1階,地上5階の総合病院で,成人病診療に重点がおかれている。

地域病院に生きている病院管理—公立刈田総合病院

ページ範囲:P.9 - P.12

 病院管理は理論に始まるが,実践されてはじめて価値を生じる。公立刈田総合病院(宮城県白石市桜小路30)は,毎年の日本病院学会総会において,院内各部門の活動を報告しており,その病院管理の活力が注目されている。
 病院は鉄筋3階建てで,病床は213床,結核60床,伝染病27床,計300床の総合病院であるが,一歩玄関に踏み入ると,大都市における300床の病院とは違った土と汗のにおいがしみこんだ,なまなましい病院活動が感受されたのである。

病院の広場

第15回日本農村医学会総会を顧みて

著者: 松尾忠良

ページ範囲:P.13 - P.13

 日本医学会の一分科会である日本農村医学会の会長をひきうけ,会員の要望で第15回総会を8月27,28日旭川市招銀ビルで開催,参加千数百名で盛会裡に終った。
 農村医学会は,はじめ全国の厚生連に勤務し,農村医療に従事している臨床医たちが中心となって発足したものである。したがって本学会は農民の健康,疾病,治療および予防など農民に密着した実践的なもので,医学の広汎な領域におよび,多種多様なテーマをとりあげている。したがって公衆衛生学的性格を帯びており,来年開催される医学会総会には衛連6学会の分類に入っている。農村医学は農村の現実のなかに医学的諸問題をとらえることにはじまり,健康と生活の諸条件とが相互に密接に作用しつつあるという見地から,科学的に研究し,その成果を個人および集団に対していかに適用していくかを考察し実践するものである。さいきんぞくぞく大学や研究機関が参加して,科学的研鑽がなされている。そこで今回の総会で反響を呼んだ2,3の問題につき述べたい。

病院図書館

—小林冨美栄 宇川和子 共訳—「患者ケアの問題点と新しい方向」

著者: 姉崎正平

ページ範囲:P.65 - P.65

看護の現場を社会心理学で料理
 Esther Lucile Brown女史のNewer Dimensions of Patient Care 3部作の第2部の日本語訳が出版された。著者Brown女史は,アメリカの社会学者で,特に医療や看護の領域について造詣が深く,研究,実践両面を通じてアメリカの看護界と緊密な協力関係にあると聞く。
 さて,本書を一読して感心することは,その内容および構成の見事さである。まず内容については,医療や看護の現場から得られた豊富な事例が,既存の研究とともに,きわめて適切な社会学あるいは社会心理学の理論で説明され,整理され,しかも解決法まで示されている。医療や看護の現場から得られた材料を,既存の研究成果で十分味つけし,社会学ないしは社会心理学の理論で料理し,さらにそれらを現場の人びとに提供しているのである。しかも,それらが消化しやすいように配列されている。すなわち,冒頭に最も切実な問題である"人手不足"について,業務が十分にできない正当化のいいわけ(合理化)にしていると警告し,十分読者の関心を理解していくうえで必要とされる社会心理学の公式をまとめて解説。

研究と報告【投稿】

食事指導と栄養回診

著者: 上月叡子

ページ範囲:P.71 - P.78

はじめに
 奉職以来,病院の栄養士としてあるべき姿を目標に努力を重ね,最近においてやっと活発に実施されるようになったかにみえる食事指導と栄養回診について報告し,あわせて関係者各位のご批判を仰ぎたい。
なにごとにつけてもわれわれ自身の自覚に待つより致し方のないことではあり,ファイトのない人たちばかりとは思えないが,従来,ともに過してきた先輩の人たちの動きをみていると,摩擦をさけ,萎縮し,広範な仕事内容のため,より浅く処理されてきたかに見えるのであって,最近,問合わせも多く,疾患別あるいは単一にとり上げて実施されている場合が多いように思えるので308床で2名の配置でも実施しうる内容をここに報告する。(第1表)

病院の造園管理費について

著者: 荒木菊次 ,   平川政元

ページ範囲:P.79 - P.81

 最近,国内においては学校造園,鉄道造園,工場造園,病院造園,墓園などそれぞれ各分野においての造園計画が,積極的に推進されているが,造園管理費の問題については,造園を企画,維持管理するうえに,まことに重要な問題であると思われるが,遺憾ながら現在のところ,これという資料も見当たらないので,われわれは今回,官,公,法人立の100床以上の病院を対象に調査を行ない,その結果を考察することにした。まず,病院の造園管理に要した経費を調査するために,第1表のような内容の調査表を作成し,これを対象施設に送り,回答をいただいたところ,次のような結果を得た。
 調査の内容は病院の敷地総面積,最近1か年間の経営費,同じく造園管理費支出額とその支出額が労務費造園費にどのように使途されているかを計数的に分析することにした。その他収容病床数,病院の種別などである。

霞ガ関だより

病院経営収支調査(月次調査)の結果について

著者: M.Y.

ページ範囲:P.88 - P.90

1.はじめに
 本紙1月号でその概要について紹介した厚生省の病院経営収支調査が実施されてから1年を経過した。
 本稿においてその結果などについて若干の解説を試みることとする。

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編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.92 - P.92

 透みとおる秋というに「黒い霧」が発生し,そのまま年末を迎えようとしている。中央医療協議会もようやく開かれたが,この政界の動掻のために鈴木厚生大臣の英慮も期待薄になりそうで残念である。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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