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雑誌目次

雑誌文献

病院25巻13号

1966年12月発行

雑誌目次

特集 処方と調剤

病院管理からみた処方と調剤

著者: 津田豊和

ページ範囲:P.15 - P.19

まえおき
 処方というコトバの原義は処置の方法という意味であるが,処方といえば今日では,診察した患者に対して医師が与えるべき薬の種類とその用量,用法を考えだす意味に限局されてつかわれている。
 通常,病院では医師によっておこされた処方箋は医事係において料金算定(外来の場合はこの直後に医事係あるいは会計係によって料金徴集が行なわれる)され,薬局に回付されて薬剤師によって調剤され,そして薬は入院患者の場合は病棟に運ばれて看護職員によって患者に配られ,外来患者の場合は薬局の窓口から直接患者にわたされる流れをたどる。この流れ作業は日常の業務としてごく普通に行なわれているのであるが,実はこの処方箋をめぐる医師,医事係,薬剤師,看護職員の4部門にまたがる関連業務の間に,いろいろな苦情,注文,あるいは合理化すべき複雑な諸問題が数多くひそんでいるのである。

医師と処方—小児科を例として

著者: 今村栄一

ページ範囲:P.20 - P.24

治療上の問題
1.薬用量
 小児の処方でまず問題となることは薬用量である。それは成人より少ないというだけでなく,同じ小児でも年齢や発育状態によって違うということである。これは処方する側も苦労するが,調剤の場合にもまちがえないように,ことさら気を配ることであろう。
 薬用量はふつう年齢による換算式が用いられるが,抗生物質などはプロキロ(体重1kgあたり)が用いられる。厳密には体表面積あたりのほうがよいといわれるが,内服薬ではそこまできびしくすることはない。しかし,年齢だけでなく,発育の良否を考慮することはある。燐酸コデインとかロートエキスのように小数点以下に0が1桁,2桁とつくようなものは,とくに気をつけなければならない。

処方と調剤

著者: 岩崎由雄

ページ範囲:P.25 - P.29

はじめに
 日進月歩する医薬品は次から次へと新薬を生み出し,一方,調剤も調剤学から薬剤学・製剤学と学問的にもその業績はいちじるしいものがあるが,この理論的体系化のもとに新しい剤型・改良された剤型が現われてきた。また医学の進歩も基礎・臨床ともに目をみはるものがある。この医薬学の発展の具体的現われの一つに"処方"の内容的変化がある。処方に現われる医薬品の数は繁用薬品だけで1,500〜2,000品目が数えられる。その他の薬品をふくめると病院で使用される薬品品目数は実に5,000余品目に達する(東大病院・昭和41年現在)。このような多数の品目を取扱っている薬剤部(薬局)では,どこの病院でも医療費のうち薬剤料の増加という現象を問題としてかかえ,調剤にも大きな影響を与えている。
 このように医療における薬物療法の役割は最近とみにそのウエートを増し,病院経営における医薬品のしめるパーセンテージの増加は重大な問題となっている。その1例を第1表に示そう(「国民健康保険給付実態調査報告」:厚生省保険局)。これは病院・診療所の規模の大小にかかわらず,全国的傾向のように見受けられる。この薬物療法の過半数は調剤薬(投薬)によってしめられている。

処方と調剤

著者: 久保文苗

ページ範囲:P.30 - P.33

はじめに
 病院における処方と調剤の問題について,純薬学的あるいは専門技術にわたる事項をなるべく避けて,病院管理の立場から述べてみることにする。もちろん,病院管理というような問題は,その病院の規模,設立目的,開設経営体の種別などによって当然異なるものであるから,すべての病院に共通するような表現や記述は困難であり,以下に述べる内容も主として筆者の所属する病院における経験とデーターを基礎としたものであることをおことわりしておく。
 なお,本稿中に使用する用語の一部について,あらかじめ定義を明らかにしておきたい。これらの用語は薬剤師の間ではすでに統一されているが,他の職種の読者の参考のために簡単な解説を加えることにする。

与薬と看護婦

著者: 松村はる

ページ範囲:P.34 - P.38

はじめに
 与薬の傾向は近年新薬のいちじるしい開発によって,まことに複雑になったといえよう。特に錠剤が多量に使用されるようになり,その類似,多様であることには驚く。また散薬の分包の合理化は,錠剤の与薬とともに看護婦の業務手順に大きい変化をもたらしており,薬剤部門の合理化は,看護業務へのしわよせとなってあらわれたかの感さえある。なお水薬については旧来と同様に扱われているが,扱う数としては年々減少の傾向にあり,このことは診療各科を通じて同じであるといえよう。
 なお与薬については経口的に行なうもののほか,頻度は少ないが口腔内の与薬,吸入,直腸内与薬(点滴,注入)塗布,塗擦,注射など看護処置として行なわれるものも含まれるのであるが,ここでは主として経口的与薬について取りあげてみたいとおもう。

保険と処方

著者: 黒田幸男

ページ範囲:P.39 - P.44

はじめに
 「処方」の問題に医事課の立場からふれる面はあまり多くはない。
 多くの病院における医事課の分担は,患者と保険に関する事務がその大部分を占めているが,なかんずく保険に関する事務の比率の多いことが医療事務を専門化に導く原因の一つになっている。

座談会

処方と調剤をめぐって

著者: 小野田敏郎 ,   渡辺康 ,   渡辺良孝 ,   坂秋朗 ,   香川シズヱ

ページ範囲:P.46 - P.56

 薬の氾濫はすさまじい。日本人は薬を信用しすぎるといわれるが,国民の保健と薬は切っても切り離せなくなってきている。このような背景の中で,病院薬品のスムーズな流れやこれからの問題点をさぐってみた。

グラビア

機能を完備している小病院—日本バプテスト病院

ページ範囲:P.5 - P.8

 入院124床,外来1日180人という小病院。これだけなら珍しくないが,小さい建物の中に大きい病院の機能を,潜水艦のようにつめこんでいる病院は多くない。
 日本バプテスト病院(京都市左京区北白川山ノ元町47院長=大林静男先生)は,昭和30年7月に78床をもって京都に発足したが,当初より病院管理に対する理解と努力が強く,病院管理の研修にもたえず職員を参加させて,成果をあげてきた。

生活協同組合より出発した病院—中野組合病院

ページ範囲:P.9 - P.12

 昭和の初期には,健康保険は一部の労働者に限られ,貧困者には施療病院があったが,一般の国民は医療に多額の費用を要した。「今日完全に医療を受け得る者は,少数の金持かしからざれば極貧者と銘打たれたわずかの人々に限られるといった奇怪な社会現象を呈している」(東京医療利用組合設立趣旨書より)という状況であった。そして「医は仁術なりとの本来の精神に,新しき経済組織を与え,組合員の協同の福祉のために」(同上),新渡戸稲造,賀川豊彦,その他有志により昭和7年に中野組合病院(東京都中野区宮園通4-11院長=三方一沢先生)は設立された。
 それより30年余,健康保険制度は全国に普及し,同病院は昭和40年には330床の鉄筋コンクリート5階建の病院に成長したのである。

病院の広場

病院建設の一面

著者: 千葉保之

ページ範囲:P.13 - P.13

 病院というものを,ホテルと医療とに割り切ってみるとすれば,このごろ,日本のホテルの近代化は目ざましい。ぞくぞくと立派な高層建築が各地にそびえてきた。デラックスさを競うように,つぎつぎと,新しい趣向をこらして現われている。ホテルは,もはや日本でも,建築学的にはもとより,経営学的にも軌道に乗ってきているようである。ことに,利用者の考え方がホテルの近代性を消化しつつあることが目につく。
 医術そのものは普遍的であり,世界どこへ行っても通用できるが,いざ,その実施となると,その国の医療制度によって,時に大きくちがってくる。日本の病院が,それぞれ独立した外来診療と入院治療とを同時に果たさねばならぬことなど,病院づくりには,まず当面する課題となってくる。新しい病院は,こうあるべきだなどと気負ってみても,利用者のほうがその気になってくれなかったら,唯我独尊になってしまう。

研究と報告【投稿】

病院の医師不足に対する一考察

著者: 今村栄一

ページ範囲:P.61 - P.67

 病院の医師不足は,以前より地方の病院において指摘され,医師が都市に集中するとされていた。しかしながら,最近は東京のような大都市の病院においても医師不足に当面する事態となった。この点について考察を加えてみたいと思う。

寝台用エレベーターについて

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.69 - P.76

はじめに
 事のよしあしは別として,病院の規模は年々大きくなり,またその建物はしだいに高層化されていく傾向にある。この場合,数多くの歩行困難な患者をかかえている病院にとって,エレベーターが絶対不可欠のものとなってくることはいうまでもない。というより,実際問題として,階を重ねた以上,どうあってもエレベーターなしではすむまい。いいかえれば,今日の病院に働くものすべてにとって,エレベーターはもっとも身近かなもののひとつとなり,かつ仕事の能率にも大きな影響力をもつものとなっている。
 ところが,現実には,エレベーターに関する一般の知識は意外に貧弱で,そのため高層化がかえって病院の機能低下をきたしているのではないかと思われる例さえ少なくない。むろん,建築設計にたずさわる側にも責めがある。不当な予算的制約があるとはいえ,エレベーター計画が必ずしも適切ではないような場合も多いのである。エレベーターに関する限り,少々の金惜しみが将来に残す禍恨はきわめて大きいといわなければならない。ここにエレベーターについての概説をこころみ,問題解決への提唱をするゆえんである。

病院経営体の健康診断的指標

著者: 大泉宗次

ページ範囲:P.77 - P.81

1.はじめに
 病院経営体の体質改善のため,自己診断や経営士などによる外部診断が活用されるようになったことは,病院経営管理の近代化と発展のため,まことに好ましい傾向である。病院経営管理は,「医療」と「経済性」との両立,均衡をはからなければならない。病院活動そのものである「医療」については問題ないとしても,病院活動維持発展の体力である「経済性」については,必ずしも健全とはいえず,経営管理上の諸々の病菌におかされ,採算失調の赤字経営におちているところが少なくない。39年度において全国自治体病院1,021病院のうち33.1%にあたる338病院が,採算失調の赤字病院であった。

ホスピタルトピックス 特殊病院

ベルギーの精神病院建築規準

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.87 - P.88

 1964年10月の立法によりベルギーの病院建築規準の大綱が改定せられたが,開放精神医療施設とナイトホスピタルに関する建築と職員規準は遅れて,昨年11月19日付で国王の名で公布せられた。それを簡単に紹介する。

霞ガ関だより

医療審議会と病院計画

著者: E.N.

ページ範囲:P.90 - P.92

 厚生大臣の諮問機関の医療審議会で,通称公的病院の病床規制についての審議がなされた。正式にいうと医療法第七条の二第四項の規定に基づく,同条第一項に規定する地域の必要病床の算定において使用する数値について,昭和41年12月31日までときめられていた適用期間を,なお2年間延長することについての大臣からの諮問に応ずる審議会である。
 御承知のように,わが国の病床計画は現在は厚生大臣の定める地域区分に応じて,人口に応じて定められた比率と人口との相乗から病床種別の必要数が定められており,この必要数をオーバーする場合,公的病床の場合,都道府県知事はその増床を許可しないことができることになっており,私的病床の場合も医療金融公庫の融資はうけられないことになっている。

病院図書館

—日野原重明編集—「慢性疾患の新しい理解とリハビリテーション看護」

著者: 大塚寛子

ページ範囲:P.92 - P.92

具体的で実際的な治療と看護
 リハビリテーションという言葉は近年いろいろの分野で使われ,医療者間でも関心を示されてきたが,実際にはその実施は個人の関心と工夫にまかされてきたのが現状であった。慢性疾患が社会的な問題としても関心をもたれている今日,当然リハビリテーションという広い概念に基づいた医療が行なわれるべきであるにもかかわらず,組織的にも,学問的にも系統だった指針が示されていなかった。このような時に,本書のように慢性疾患の問題を実際的にとりあげ,医療に携わるもの特に患者と最も接することの多い看護婦,保健婦のために役立つ本が書かれたことは,このうえなく有意義なことである。
 本書は基本的なリハビリテーションの概念について,また慢性疾患に必ず伴う心理的な問題も含め紹介されている。つづいて一番リハビリテーションの切実な要求をもつ,運動神経系の疾患および呼吸・循環器系の疾患について,病因,病態生理が理解しやすく書かれ,ついで具体的にリハビリテーションの見地からの治療と看護について書かれている。内容はきわめて実際的で図解もはいっているところから,ナースのみでなく,リハビリテーションの見地から医師に役立つことも非常に多いと考える。

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編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.94 - P.94

 1966年もあと数日で終りを告げる。本誌は今年特に飛躍もしなかったが一応充実した年でもあったと思う。今夏から「病院管理大系」の企画にはいり,一応骨すじだけはでき上った。来春早々細部の企画と執筆者を決定し,秋にはいよいよ発刊したい。戦後20年の研究の成果を集大成して皆さまのお手元に届けられることを楽しみにしている。

「病院」 第25巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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