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雑誌目次

雑誌文献

病院25巻2号

1966年02月発行

雑誌目次

特集 事務長

病院組織における事務長の位置

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.15 - P.23

まえがき
 現在,病院組織の問題を考える場合,事務長の位置ほど不明確なものはない。1つの病院をとってみても,これを見る人が誰であるかによって,その見方はみなちがう。開設者は開設者の目で,院長は院長の目で,医師は医師の目で,あるいは労務職員は労務職員の目で見て,事務長の位置や職務の性格についてそれぞれ異ったイメージを画く。そして,その各自のイメージに従った態度で事務長に接するのである。また,いくつかの病院をとってみても,特に,その病院の設立種類別や規模別によって,その位置やあり方は随分ちがうようにみえる。そのちがいは,事務長が完全にトップマネジメントの責任者と考えられる場合から単なる事務員にすぎない場合までの全般におよび,現実には,その中間で,それらの性格がそれぞれウエートを異にして重なり合った,非常にバラエティーにとんだ姿をとるのである。
 病院事務長の組織上の位置が不明確なのは上述のように,そのとり得る位置の範囲が場合により広くかつ多種多様であることと,その上,これに対する認識が人それぞれによって異ることによる。特に,組織の問題を取り扱う場合,この認識の明,不明ということは根本的な重要性をもつ。組織論的認識が明確でないところに明確な組織が設定されるはずはなく,また,そうしたところに組織の真の効用性やあるいはそうした組織に基づいた十分な働きが実現するはずはないからである。

病院事務長の資質と教育

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.25 - P.30

 「病院経営管理改善懇談会」1)の懇談要旨によれば,「事務長の職務には2つの面がある。1つは事務部門の長として事務業務(医事業務,一般事務業務および施設管理業務)を統括することであり,他は,病院の使命の万全を期するために,院長の補助者として病院経営の全般にわたり院長を補佐することである」。つまり,ラインとしての事務部門の長であることと,院長のスタッフとしての補佐業務である。
 一般に事務部門は,経営体活動の諸部門において発生する事務を専門的に集中化することによる業務と,経営管理者のための情報の提供やその他の管理の補助業務とがある。

アメリカの病院管理者

著者: 小林玄一

ページ範囲:P.31 - P.34

1.米国病院組織における病院管理者の位置
 私に与えられた題目は"アメリカの病院事務長"ということですが,日本病院の事務長に該当する地位を米国病院組織図の中で見つけ出すことは困難です。ビジネスセクションの,いわゆるビジネス・マネージャーでは病院組織図中の1デパートメントの長ということになり格が落ち過ぎますし,病院管理者ということになりますと病院の診療管理と事務管理をひっくるめての総責任者ということになり該当しなくなります。感じからしますと米国病院管理者には日本病院の事務長の色合が濃厚です。米国の病院には事務系統の経歴を持つ素人(非医者という意味)が病院管理の特殊教育を受けてその地位についているのが多くなって来ているからです。
 この稿では米国の病院管理者について書くことにしたいと思いますが,彼の米病院組織におけるあり方を明確にするために,まず,こちらの典型病院であるヴァランタリー,コミュニティ病院の成立状況を述べてみたいと思います。

事務長像—ある開設者の一員としての期待

著者: 橋本寿三男

ページ範囲:P.35 - P.38

はじめに
 「事務長」というコトバは何か固いものを感じさせる。役所における事務を連想させるせいか,英語のbusinessからうける印象とは大分ちがった感じがする。それにもかかわらず事務長という名称は病院ではすっかり熟しているように思われる。わが国の病院の先祖が主として官公立病院であったことによるのであろうか。
 しかし,その事務長の仕事の内容すなわち職務内容は病院によっていちじるしくちがっているといってよい。病院の経営主体すなわち開設者の種類によって,また地方によって,相違していることはもちろん,同一系統の同種の病院でも相当に内容を異にしているものである。

期待される事務長像

著者: 棟久一夫

ページ範囲:P.40 - P.41

 病院管理が従来までの診療,看護中心のあり方に加えて,これと並んで経営管理の面が重視され,経営管理が十分行なわれない所には,病院事業の発展が期せられないことは識者の一致した意見である。したがって事務長に純粋の診断業務以外の病院の管理業務全般について,直接院長を補佐するスタッフとしての役割を強化することが当然要請される。
 現今,医学医術の進歩,疾病構造の変化,国民生活の向上,地域開発の進展などに対応するためには,病院機能の整備と,その拡大が必要であることは論を待たないが,そのためには医療設備,機械などの充実,よき医療スタッフの確保,看護サービスの充実,給食,寝具サービスの向上,患者の生活環境の整備,病院構内の庭園化の問題,さらには包括医療,救急医療の実施など病院に課せられた責務ははなはだ大きい。しかもこれを達成するための社会的条件はいちじるしく整っていない。すなわち医療制度,社会保険医療制度,診療報酬体系などの抜本的改善が行なわれない限り,越えがたい壁が横たわっている。これら困難な条件に加えて,病院事業は内部的には多数の専門職種の職員を擁し,分業の協業化が行なわれる組織である。したがって人間関係は極めて複雑多岐である。職場環境はよくない。病院に高い公共性を要請されるが,経営的には合理化の困難な要素がはなはだ多いのが病院事業である。

座談会

事務長もまた楽し

著者: 落合勝一郎 ,   寺本亀義 ,   佐藤甲子郎 ,   伊藤正義 ,   小橋滝江 ,   高橋清

ページ範囲:P.46 - P.55

 病院職員の記念撮影で,どこに坐ろうかとウロウロした事務長。考えさせられる話である。そこで,事務長の"座"から日頃の喜びや悲しみ,さらには夢などをザックバランに語り合っていただいた。

グラビア

成人病の総合診療センター—大阪府立成人病センター

ページ範囲:P.5 - P.8

 成人病対策——それは現代医学の主要な目標である。しかしその医療体制や施設はまだ発足して日が浅い。その中にあって,大阪府立成人病センター(大阪市東成区森町南1丁目)は新鋭の威力を持つ本格的な成人病総合診療施設でである。
 本センターは,昭和34年9月に開所したが,昭和40年5月に第3期建設工事を完成し,地下1階,地上6階,延べ面積7,317m2の偉容をととのえ,がんの診断部門が増強され,その活動内容は一段と飛躍した。

し体不自由児施設—東京都立北療育園

ページ範囲:P.9 - P.12

 脳性小児麻痺,ポリオ後遺症,先天異常,骨関節結核,外傷などによる"し体不自由児"に対して,児童福祉法は"し体不自由児療育施設"を定めている。東京都立北療育園(東京都北区下十条町無番地)は医療機能を持つ同施設である。
 昭和37年7月1日に開設され,昭和40年4月1日より病床200,通園40の収容力を持つ施設に発展した。この種の施設がきわめて乏しい中にあって,鉄筋コンクリート3階建ての近代機能を備えた設備などは参考となる点が少なくない。

病院の広場

コップの中の嵐

著者: 棚橋三郎

ページ範囲:P.13 - P.13

 終戦後早くも20年は夢のごとくに流れ「戦後」はもう終わった……とは数年来よく聞かれるコトバであるが,本当に「戦後」はもう終わったと言い切れるのであろうか。日本中のあらゆる部面を詳らかに検討すればするほど,自信をもって「然り」と答え得る人はないであろう。たしかにいろいろの方面で戦前には予想だもしなかった発展,進歩,改善を見たものが多く,われわれの眼を見はらせるに十分である。だが反面,終戦当時のみじめな状態から脱却できずに底辺でうごめいているものも頗る多い事実も否定し得ないであろう。
 わが医療界を一べつして見ても「戦後」は一体いつ終わるのかと寒心に堪えないのが皆に共通した心理ではあるまいか。たとえば,病院の数は今6,000を越していると言われ,病床数も飛躍的に増加し,その中のごく少数の病院はたしかにデラックス化した。また管理運営の面においても,終戦直後からの占領軍の強力な指導監督とその後の厚生省による継続的な病院管理講習を受けたお蔭で,各病院とも意欲的に自からの病院を新しい軌道に載せ,もしくは載せたいとの熱意を持っているのは事実である。

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第16回日本病院学会プログラム

ページ範囲:P.24 - P.24

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.96 - P.96

 従来病院組織論は,医師である病院管理学者が論じていました。そして守屋,島内,原,今村,小生などの事務長論もありました。しかし本号の企画は事務長の現職にある落合幹事が担当し,事務長またはその系統の人びとのみで自由に企画し,自由に論じていただきました。
 しかし結果は,事務長独善論にはなっていないことは妙です。いやそれが当然かも知れません。病院経営管理を正しく認識すれば同一の結論がでることになるのでしょう。すなわち病院事務長という同一呼称であっても,単に(1)病院業務の執行面でラインの中間管理者としての事務長の役割のみが考えられる場合,(2)人事,会計企画,文書等の包括管理のスタッフ業務を担当する官房長的存在を合わせて考えられる場合,さらに(3)病院が単独の経営体としての実体を有するときには経営者の1人として責任を持たねばならぬ場合とがあることになりましょう。したがって単に病院事務長といっても,この3つの役割の内どれに相当するかによって,組織上の地位が違ってしかるべきです。それが明らかにされていないことが,混乱のもとになっているのではないでしょうか。あわせて事務長の資質と人事に間違いを生じやすいことにもなります。

事務長某月某日

頭の痛い病院経済

著者: 長野信正

ページ範囲:P.36 - P.36

 昨秋,日本経営者団体連盟総会の席上,前田専務理事は恒例の労働情勢報告の中で「国民の税金でまかなわれる給与にはペイ・ポーズ(賃金凍結)の思想でのぞむべきだ」と指摘し,相当の反響を呼んだ。実際,今のように賃金と物価がイタチごっこを続けていたのでは,いつまでたっても労働者の実質賃金は良くならない。年々ふえて来る病院の赤字のさまを見ていると,残念ながら前田理論を肯定せざるを得なくなる。
 ところで,病院の火の車の原因は何か。一応勤労者の給与規準のようになっている公務員の給与は,ここ15年の間に13回ベース・アップされ約4.6倍となった。一方物価の上昇は年々とどまるところを知らず,消費者物価指数はこれも15年間で2倍を超えている。この間に医療費は6回改訂されただけ,しかも毎回スズメの涙程のお情け改訂で,70%程度の上昇に過ぎぬ。これでは赤字にならないのが不思議で,少々の利用者増くらいでは穴埋めできない。政府も医療費の根本改訂の必要を認めながら,医療実態調査を前提条件とし,医師会は絶対反対を唱えている。国民を納得させるような代案も出さず,しゃにむに反対する医師会もだがいやがる医師会を押えつけてでも実調をやらねば改訂できぬと頑張る厚生省の態度もいただけない。医療の実態を知りたければ,他人の台所をのぞくまでもなく自分で経営する国立病院・療養所があるではないか。要請があれば他の公的病院も協力にやぶさかではあるまい。

有言実行の美

著者: 大野濶

ページ範囲:P.41 - P.41

 仕事の上で,私の日頃から念願していることは,如何にして,良きミドルとトップの二面性をもつマネージメントなるか,ということである。その条件として,幸いに私に恵まれていることが3つある。その1つは,私の病院歴が軍病院17年,赤十字10年の体験である。その2つは,院長とは軍病院の後半から旧知の間柄で,終戦後10年間の日赤支部時代を経て一層人間関係を深めて来た。その3つは,院長と年齢差がわずか6か月,私が弟である。したがって仕事の上でも,私情においても,気安く話し合える親近感が持てる。これに加えて副院長が人格者であることも,病院経営管理上大きくプラスしていると思う。
 もちろん院長,副院長,事務部長という職務上では厳然と一線を引くエチケットを忘れたことはない。近代病院の組織管理は院長の個性を病院経営に持ち込むことではなく,病院の性格,社会的使命を基盤として経営理念を確立し,将来計画を樹立して,良き院長補佐に精進することである。近時労務管理の良否は病院の死活問題であるだけに,当面する事務部長の職責は,重かつ大である。それには,それだけの腹ができていることが不可欠の条件である。

"立場がない"に徹する

著者: 鈴木伸

ページ範囲:P.43 - P.43

 医師を筆頭に,看護,検査,レントゲン,物療,栄養などの専門職が,患者中心のチーム(Healing Team)を組んで,それぞれの専門技量をフルに発揮できるように総合医療の場として病院を整えるためには,いわゆる事務管理部門(または補助部門)の果たすべき役割は大きく,これを預る事務長の職責は重大です。専門職を如何に専門職たらしめるかは,補助部門のできしだいと申しても決して過言ではないでしょう。しかし,もし,こう言い切れるとすれば,私は,私自身同業の末席をけがす者として,あえて不謹慎を省みず,われわれの弱点をあげぬわけにはまいりません。
 その1つは「わが国に,病院でたたき上がった(育った)事務長のいる病院がいくつあるか?」であります。米国のように専門課程を履修したadministratorの必要性のみを強調するのではありません。むしろ,わが国独自のものを期待するのでありますが,これからは病院も次の事務長養成を真剣に考えねばならない,と痛感します。

オープン病院の事務長

著者: 高橋元吉

ページ範囲:P.45 - P.45

 本市は,東京と大阪のほぼ中央に位置し,静岡県西部地域の産業文化の中心地として,人口40万を数え,全国地方都市の中でも近時の発展ぶりは顕著なところである。このような各分野における発展に比較し,医療態勢は必ずしも充実している地域とはいえない。かかる地域規模と現状の中での医師団は,過去10年来医学を中心に集談会,研究会などを続けつつその結論として,わが国国民医療体形のあり方と,医療の社会性施策を具現しその理想を求める手段として,医の理念の誠実な実行と,住民の健康管理者たる医師の責務を果たし得る制度とを,自主的に医師団の経済力と技能を結集して「オープン方式病院」を構想し,設立を見て3年余を迎えた。
 しかしこの形体は「閉鎖型病院」をもって発達した現医療形体の中で主に初歩揺籃期を辿っており,したがって諸種の問題点を各面にわたり容している。また従来は一病院の医師を中心に勇将を集め高度な施設機能をする築城をなし,疾病と予防戦略の研究をおこなって来たわけであるが,現時点における「オープン方式病院」は,その堅固な名城に比し,勇将を育成し住民とのつながりを擁しつつ,自からの必要性のため1つの砦を築いている感がある。

今月の話題

IHF理事会に橋本氏出席

著者: 落合

ページ範囲:P.39 - P.39

第14回国際病院連盟会議(The 14th Interna-tional Hospital Federation Congress)は1965年6月20日より25日まで,ストックフォルム市で開催されたが,この会議の総会で,理事の改選が行なわれ,橋本寛敏博士が常務理事に選出されたことは既報の通りであるが,この写真は新理事改選直後の常務理事会の実況である。(国際病院連盟機関紙=World Hospitals誌10月号より転載)

研究と報告【投稿】

診療記録の様式の研究

著者: 吉田幸雄 ,   津田豊和 ,   今村栄一 ,   室賀不二男 ,   栗田静枝 ,   高橋政祺

ページ範囲:P.61 - P.70

まえがき
 病院で使用されている帳票の中で一番大切なのは診療録である。それは病院の業務の主幹をなす医療行為の記録が記されているからである。病院機能の向上のうえで何が大事かといって医療の質の向上にしくものはない。われわれはできるだけ良い医療を行ないたいと努力しており,そして,この実施された行為はすべて診療録に記載されるのである。
 診療録にはどの程度の記載が必要かというと,法的には医師法施行規則第23条で次のように定めてある。

稼働額の調査と明細書の作製

著者: 小山田憲司

ページ範囲:P.71 - P.74

1.はじめに
 各科別医療行為別の各月ごとの医療収入(稼働額)の把握は,病院経営上もっとも必要なこととされてきたところであり,また,診療報酬請求事務の能率化についても積極的解決策を考えなければならない現状であることは,いまさら多言をようしないところである。当学においては,現行諸制度のなかにおけるこれらのことについて,去る昭和38年,約6か月間の準備期間をもって種々検討の結果,一昨年4月1日から稼動額の調査と明細書の作製が同時にできる,バックカーボン式点数カード日計表の採用にふみきった。
 これらについては,それぞれの分野において種々検討が加えられ,あるものは実施に移されているものもあるが,実施後1か年以上経過したので,その実績や今後の問題点などを付記して参考に供したい。

マイクロフィルミングによる病歴管理

著者: 高橋春雄 ,   岩塚徹

ページ範囲:P.75 - P.81

1.まえがき
 最近の医学の一方向としてlongitudinalの考えが重視され,臨床医学においても,公衆衛生学においても,現在の問題をとりあげる時,それに関する過去の記録が必須のものとなっており,それにきわめて重要な価値を認めている。したがって多くの病院,診療所では,病歴管理を重要視し,一部では病歴の中央管理化も進められている。一般に病院では法的な条件(医師法第24条2項)により病歴の保存は行なっているが,実際は倉庫のすみに積み重ねてあるような状態で,病歴の検索が不可能なことが多い。病歴管理の完全化を計れば当然,莫大な空間を必要とし,またカルテ,心電図,レ線写真など種類が多いので,その索引方法などにも検討すべき多くの問題を残している。
 愛知県中央健康相談所では,昭和36年よりマイクロフィルミング(MFと略す)により病歴を保管しているので,その概要を述べる。

私の一週間

魔術師をユメみる"病歴室のモグラ"

著者: 早川加代子

ページ範囲:P.86 - P.88

 カルテ1枚から医者の性格,病棟の状態,さらには"世相"までとらえることができる。苦手のソロバンを心もとなくあやつりながら,地下の病歴室で5万冊のカルテを魔術師のようにポンととり出せたら……と空想するモグラ女史。せめて病歴士が定員化されれば,柳眉を逆立てることもなくなるのだが。

病院図書館

—宮崎 亮著—「アオ・オママ」

著者: 長崎太郎

ページ範囲:P.89 - P.89

アフリカでの愛の奉仕記録
 「有名な都市に生まれることは人が幸福に至る第1条件である」といった悲劇作家ユーリピデスの言を,現代人でまともに信ずる者はほとんどいない。しかし,少なくともアフリカ,ナイジェリアの僻地アオ・オママに生を享けることは生涯,医療にほとんど恵まれぬ不幸な宿命を余儀なくされる。
 著者宮崎亮ドクターは北大医学部卒業後滞米8年間,臨床の習練を終え,アフリカの末開瘴癘の地の病者に医療奉仕をなすべく特に召命を感じ,単身新興独立国ナイジェリアに入国,その無医地区アオ・オママの約3万人の住民の唯一の待望のドクターとして赴任,風土病に倒れ帰国するまでの1か月半,その数奇にしてかつ野心的な体験的記録をこのたび出版された。

ホスピタルトピックス 診療

イギリスの地域保健サービス

著者: 佐分利輝彦

ページ範囲:P.90 - P.91

 イギリス保健省は,1962年1月,1975年を目標年次とする「病院整備15か年計画」を発表した。この計画によると,第1表にしめすように,1959年末に人口千対10.35床であったイングランドとウェールズの総病床数を,向こう15か年の間に8.38床まで減少させ,病院整備の主力を既存の病院の近代化に注ぐことにしている。

建築設備

宗教病院のあり方について

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.91 - P.92

 奈良県の天理市に建設中であった「天理教よろず相談所」がいよいよ竣工した。といっても,一般にはぴんとこないであろう。普通にいえば天理教教会本部の病院である。それも,近代病院が具備すべきあらゆる高度な施設をもち,しかも総ベッド数1,000というわが国屈指の大総合病院である。驚くべき規模や内容のいくつかを拾ってみると,診療科目12,総面積31,819m2(9625坪),地下1階・地上8階,全館エアコンディショニング,エスカレーター上下各1基,エレベーター8台を備え,配膳用のリフトだけでも6台ある。診療関係の施設をみると,放射線部門では撮影・透視のためのへやが約50mの長さにつらなり,照射治療施設もコバルト60のほかにベータートロンとリニアアクセレレーターをいれることになっている。10台の手術台をもつ手術室へは,中央材料室から滅菌された器材がベルトコンベアにのって流れてくる。研究部門には電子顕微鏡もあるし,水治療・電気治療室を含むリハビリテーション部門も無論完備している。
 病棟には,一般ベッドのほかに精神科の看護単位もあり,重症病室には最近話題のエロクトロナースも採用されている。一部の病室に備えられた床頭セット(一般照明・読書灯・診察灯・ナースコール・酸素・吸引・氷のうかけ等をひとつのセットに組みこんだもの)はアメリカ製の精巧なものでアメリカの病院でもそうざらには見うけられないといった高級な設備である。

特殊病院

英米総合病院でのPsychiatric Care

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.92 - P.93

 聖ロカ病院落合氏のご好意で,昨年6月ストックホルムで開かれた第14回国際病院学会での3大柱のひとつである。"一般総合病院でのPsy-chiatric Care"の討議資料を読むことができたので,イギリスのDown-hamとアメリカのEwaltの主張をまとめて紹介する。
 一般総合病院での精神科専門医療は別に目新しい問題ではない。実はアメリカ最初の精神障害者入院治療はフィラデルフィア一般総合病院であった。精神病床がその病院総病床数の50%を超過した時に始めて独立の精神病院が開設された。しばらくは独立大精神病院建立が続くが,最近では地域のニードを満足さすことが病院の使命として強調せられ,早期発見早期治療の普及と,精神医学の進歩などが相まって,一般総合病院に精神科専門医療が導入されることが目立ち,いまでは8,000の一般病院のうち,4,000にPsychiatric Careが行なわれ,1,700の病院には精神病床が付設されており,相当多数の精神病床をもつ一般病院数は500である。

霞ガ関だより

保健行政におけるADP—WHOの会議から

著者: E.N.

ページ範囲:P.94 - P.95

 医学ないし公衆衛生の領域における電子計算機の利用については,かなりの国ぐにで導入され,その面については本誌でも再々ふれられているが,WHOヨーロッパ地域事務局でもその重要性を認め,公衆衛生行政官に計算機による業務の今後の発展性を認識させるため「保健行政における自動化データ処理システム応用に関する会議(Conference on the Application of Automatic Data Pro—cessing Systems in Health Admini_stration)」を1964年11月17日から21日までの5日間コペンハーゲンにて開催した。その速報がWHO Chronicleに掲載されているので,その内容を紹介しよう。
 医学は科学であると同時に,ある点においては産業の1つということができる。病院の施設・設備に巨額の投費を必要とし,そこに働く人員もかなりの数に達し,それらを動かす管理組織も複雑多岐のものとなっている。科学的な面でいえば,医学は絶えざる研究努力を必要とし,一方では開業医などによって貴重なデータが年ねん生み出されている。したがって,他の通商産業面で大きな恩恵をうけたオートメーションを医学の面で応用しないという手はないのであるが,残念ながらこの面での応用はやや遅れているということができよう。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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