icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院25巻5号

1966年05月発行

雑誌目次

特集 採算管理

病院経営における採算管理の意義と特質

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.15 - P.20

採算管理とは
 管理の目標は能率性の実現にある。したがって,採算管理の問題とは,要するに,採算能率の問題であると考えてよかろう。それでは,採算とは,一体何であるか。ここでは,「計算上収支がつぐなうかどうかに関する問題」というふうに,ごく素直に解しておくことにする。これを式であらわせば次のようになろう。
 結局,採算管理とは,収支の関係において,その能率性ないしは効率性を高めることを内容とする問題であると考えればよい。

採算管理の技術と方法

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.21 - P.28

 採算的経営とか独立採算というコトバは,ごくふつうに使われている常識語のひとつであるが,必ずしも意味は明瞭ではないので,いちおう,経営損益のバランスを保つという意味で用いることにしよう。
 また採算管理のための方法といえば,結局のところ経営管理のすべての面にわたる努力をさすのであるが,そうしたことをいちいち論述する余裕もないし,また目的でもなさそうに思われる。ここでは,経営成績を採算という面から分析評価する方法を中心とし,採算的経営のための管理の要点を指摘するに止めたい。

採算管理と原価計算

著者: 森直一

ページ範囲:P.29 - P.32

はじめに
 病院が,一つの企業体であり,産業分類はサービス業に属するのだということは,議論の余地はないようである。そしてその業務内容が公益性の高い業種であるということは,人の生命を守るという至高の使命があることから当然とされている。
 病院は,その収益の大半を社会保険診療報酬という一定の基準によって賄われており,診療報酬は全国平均経営原価によって定められているが,これにはいくつかの問題を含んでいる。高度の経験と技術を持つ医師も,経験の浅い医師の技術も同一視されているため不公平を生じていることに第1の問題がある。第2に経営主体が異なることによって,理由は別として,病院自体の格差と特徴があることが無視されている。このほかいうまでもないことながら,国立や,都道府県立,日赤や済生会その他医療法人などを比較した場合,国立や公立は大なり小なりに,運営費の一部を住民の税金で賄われている部分があるかと思えば,それ以外の大半の病院では,運営費の全部を患者の診療サービスの報酬の中から賄われている。第3の問題は,病院の配置が,無計画で放任されているがために,患者サービスに不均衡な部分が出て来ている。大都市周辺では,病院が比較的集中し,建物や設備の巨大化が競われ,小都市やその周辺では,旧態依然とした病院が見受けられ,格差がでて来ていることが指摘されている。

機械,設備の採算計算

著者: 神門昇三

ページ範囲:P.33 - P.38

はしがき
 採算計算とは"合理性の追及"を別のことばで表現したものである。いやしくも企業として存続してゆくためには機械,設備などへの投資は合理的でなければならないことは当然であり,しかもその投資は企業の経営に対して少なくとも数年から,長きは十数年にわたって固定費として影響を及ぼすものであるだけに,その決定には十分な考慮が払われるべきである。
 しかしながら,機械,設備への投資に十分な配慮が行なわれるという当然なことがらが実行され,経営活動に積極的に寄与しているならば問題はないが,多くの現実は必ずしもそのように行なわれているとは限らないのが実情のようである。

病院経営採算の実態

著者: 尾口平吉

ページ範囲:P.39 - P.45

病院経営における採算とは
 病院は医療サービスを継続して提供することを業とするものであるが,事業を行なうための費用はわが国においては,医療費として利用した患者から徴収する仕組みとなっている。すなわち,医療サービスを価格に換えて事業を継続しているのである。この価格は社会保険診療報酬という公定価格であって,市場価格は存在しないといってもよい。
 したがって,採算という問題については2つの面から考えてみなければならない。1つは,事業を行なうための費用の範囲であり,1つは,社会保険診療報酬,公費負担制度と採算との関係である。

座談会

採算管理のあり方とくふう

著者: 落合勝一郎 ,   河野稔 ,   土居美水 ,   佐藤甲子郎 ,   橋本寿三男

ページ範囲:P.46 - P.56

 病院に"利益"というコトバはタブーとされている。しかし,病院が福祉施設である時代は終わった。「健全なる精神は健全なる身体に宿る」という諺は病院活動にもあてはまるであろう。そこで"健全なる身体"づくりの方法を話し合っていただいた。

グラビア

沖繩の病院

ページ範囲:P.5 - P.12

 沖繩は近くて遠い。アメリカの施政権下の沖繩には,内地と違った事情がいろいろあることだろう。
 昭和41年2月下旬,たまたま沖繩へ行く機会があったので,ある日病院を訪れてみた。沖繩には政府立病院は5施設だけで,本島には那覇病院とコザ病院がある。政府立病院全体で,一般病床374,結核病床328である。これにひきかえ,私的の診療所や病院は多い。医師は人口1万に4人とのこと。

病院の広場

病院哲学

著者: 野村実

ページ範囲:P.13 - P.13

 たいへん,むずかしいことをいい出しそうに見える表題をかかげて,恐縮だが,私はここで,しちめんどうくさい論議をしたいとは思っていない。また「病院哲学」なんて語は,おそらく私のほかにいい出した人はあるまいし,わたしの新造語にちがいないが,べつに奇をてらっていうのでもない。私の本意は,本気で,こうしたものの必要をいいたいのである。
 わたしはいま,うっかりして「こうしたもの」と書いてしまったが,「もの」といって,なにか目に見える「モノ」があらわれたり,現に存在するわけではない。正しくは「こと」というべきであって,「病院を哲学する」といったほうが,まちがいないかも知れない。

--------------------

沖繩の医療事情

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.62 - P.80

 日本政府沖繩医療援助第1次および第4次派遣精神科専門医として,沖繩本島北部金武村所在の政府立琉球精神病院で,精神・神経系疾患の外来・入院診療に従事した。このかたわら,沖繩の一般医療事情について,経験し,さらに得られた資料をもとにして,沖繩の政府立一般病院の印象をまとめた。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.94 - P.94

 つつじと新緑につつまれ,日本病院学会の近づくのを楽しみながら,本号のあとがきの筆をとってみた。しかし一度筆を下ろそうとすると悪夢のような想念が浮かんできてしまう。千葉大チブス菌事件,産院集団結核感染事件,精神病院患者人権侵害事件等々社会を驚かした最近連続して突発した病院の事件が脳裡の奥底から叫びかけてくる。「お前らの病院管理はそれでよいのか……」「お前らは何をしているのだ……」。ちょうど数年前の病院争議時代と同じである。新聞,ラジオ,テレビや雑誌で……。ちまたでも国会でも……。「病院不信」「医師不信」の声が澎湃として起っている。悪夢ではない現実である。何とかしなければならない。たしかに特発事件ではあるが,病院や医師全体に反省しなければならない問題があることも事実である。そして社会に対し信用を恢復しなければならない。
 このようなもどかしさの中で,たまたま本号は「病院採算管理」の特集号である。国民の生命をあずかる重大使命を完遂するために,貧困な財政を見つめながらそろばんもはじかねばならない。日本の病院の苦難の道は絶えない。おたがいに手をにぎり励まし合って着実に前進すべきであるだろう。

私の一週間

病院の台所を守って

著者: 武田ふさ

ページ範囲:P.84 - P.86

 きめられた単価でいかに美味しく,栄養価が高く,季節の香りを盛り込んだ献立を作るか。病院栄養士の悩みも家庭の台所を守る主婦のそれと変わりはない。"食べ物のウラミは恐い"というが,お手並は………。

病院図書館

—日本病院協会編—「診療管理」

著者: 今村栄一

ページ範囲:P.87 - P.87

診療上の課題を網羅した入門書
 病院管理の問題は,まず組織,機構から手がつけられ,ついで看護,給食などのいわゆるサービス部門が取りあげられた。こうして病院という容器と固定の機能がきめられてきたのであるが,どうしても手をつけなければならない医師の活動の面が,そのうちにということで放置されていた感がある。容器の中で流動する扱いにくい部分であるためであろう。
 この診療を中心とした問題を,足元からじみに積みあげたのが,日本病院協会診療管理部会の記録「診療管理」である。

ホスピタルトピックス 特殊病院

指定育成医療機関

著者: 柳瀬正之

ページ範囲:P.90 - P.91

 児童福祉法第21条の12は母子保健法の成立によって第20条となったが,都道府県知事が身体に障害のある児童に対し,生活の能力を与えるために必要な育成医療の給付を行ない,厚生大臣が身体障害者福祉法第19条の2第1項の規定により指定する「指定育成医療機関」にこの給付を委託するという内容は変わっていない。
 育成医療は,昭和29年児童福祉法の一部改正によって,身体障害者福祉法第4条の規定による別表に該当する身体障害児であるか,または現存する疾患を放置したとき,将来この別表に該当する程度の不自由をのこすと認められる児童を対象に,積極的に早期医療,リハビリテーションを促進するために適用せられたもので,社会保険各法との関連は,その被保険者,被扶養者である場合,社会保険各法による給付が優先するので,育成医療の給付は本人負担に属する部分について現物給付されることを原則としており,身体障害児の属する世帯の前年分の1か月平均所得税額などに応じて,医療機関に支払う「徴収基準月額」が決定される。これは未熟児に対する養育医療や結核の療育給付に要する費用の徴収と同様である。

スエーデンの小児精神病床

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.91 - P.91

 聖路加国際病院落合氏のご好意の資料によると,第14回国際病院学会ではスエーデンが誇る小児精神病棟について,ウプサラ大学小児精神科Annell教授と建築家Bjurstromが報告しているので,2篇を合わせて紹介する。
 Annell教授はまず自ら小児精神医学に5つの疑問を提出している。①小児に限定した治療機構,②成人精神医学との関連,③思春期患者の取り扱い,④小児精神医学対象疾患,⑤専門医とパラメディカルの関係。これらの問題に小児精神医学の発展の歴史をのべながら解答している。

霞ガ関だより

地方公営企業法の一部改正と自治体病院

著者: S.M.

ページ範囲:P.92 - P.93

1.地方公営企業法一部改正の要点
 昭和41年3月4日の閣議で,地方公営企業法の一部を改正する法律案が国会に提出されることとなった。
 この法律は,現在は病院事業に関しては,地方公共団体が開設する病院で,常時雇用される職員の数が100人以上のものに対して,財務規定等の一部(財政規定等のうち,独立採算を規定した第17条の2を除く)を適用し,企業会計方式によって病院の経理を明らかにすることを趣旨としている。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?