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雑誌目次

雑誌文献

病院25巻6号

1966年06月発行

雑誌目次

特集 病院職員の服装

病院職員の服装はどうあるべきか

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.15 - P.19

まえおき
 私はいろいろの病院を参観する機会が多いが,病院職員の服装について常に考えさせられていることがあるので,2,3感想を述べてご参考にしたい。
 まず病院を訪れて最も厭な感じを抱かせられるのは,医師がだらしない恰好をしているときと,事務職員が医師の診察衣を着用しているのに出合ったときである。また看護婦が予防衣をつけたまま平気で食堂にまで出入りしていることを見たときも,彼女らの知性を疑って情けない思いをする。何故このようなふうになるのだろうか。

医療用服装としての白衣の歴史

著者: 石原明

ページ範囲:P.20 - P.23

はじめに
 現今,医療関係者が白衣を身につけることは世界いずれのところでも常識となっているが,医療用服装としての白衣の歴史は比較的新しく,僅々70年を出ない。
 結論をさきに記すと,医療用服装としての白衣はあくまで仕事着であって,診療ないしは調査研究の場合にのみ着用すべきものなのである。

ユニフォームの管理

著者: 伊瀬寿子

ページ範囲:P.24 - P.29

まえがき
 病院におけるユニフォームとして,医師の診察衣,看護婦の白衣は病院勤務者の代名詞のようにいわれてきた。しかし,採択されて後は案外に発展がなく,ユニフォームは旧態依然としてお仕着せ的な感覚でとり扱われてきた。医師の着用する診察衣に対しては,病院に勤務する者は,これを権威の象徴として意識するようになり,医師以外の診察技術職員はもちろん,事務系においても同じ診察衣を着用したがる傾向が一般的に見られてきた。さらに,昔の軍隊式に「ユニフォームに身体を合わせる」式の感じの取り扱いさえ見受けられる実状であった。しかし,病院の機能の発展に伴い,病院における職種は非常に多くなり,かつ担当業務が専門化してきた結果,病院職員のユニフォームは,従来のように,医師の診察衣と看護婦の白衣だけではすまされなくなってきた。
 病院職員のユニフォームとしては,まず以下の諸点を考慮にいれる必要がある。

アメリカの事情

著者: 常葉恵子

ページ範囲:P.30 - P.33

 アメリカでの病院職員のユニフォームについて何か書いてほしいとの依頼をうけ,はたと困ってしまった。正直にいって看護婦のユニフォーム姿以外にはあまり興味がなかったので印象が薄いのです。看護婦のユニフォームについては,自分のことであり,また準備しなければならなかったので少しは研究いたしました。
 この原稿依頼をうけたとき,第一に思い出したことは,看護婦の場合,ユニフォームに対する考え方が,日本での場合と大部ちがっているということ。また,病院にはいろいろな職種があり,それぞれのちがったユニフォームを着ていましたがそれが大分色あせた古いもの,つぎが当たっているものであっても,毎日新しくクリーニングされたものを着ていること。アイロンのよくかかった清潔なにおいのするものであったことを思い出します。そしてユニフォームの型,色が,その職種の性格にあったものが選ばれていたと思います。ただ私のアメリカ生活は,ニューヨークに11か月とワシントンD.C.に4か月,その間に2つの病院の研修プログラムに参加したのと,その間にいくつかの有名病院を見学しただけの経験と知識で十分に"アメリカの事情"などと大きな見地には立てないと思います。

座談会

病院職員の服装をめぐって

著者: 落合勝一郎 ,   渡辺茂夫 ,   高橋洋子 ,   増永芳子 ,   平野栄次

ページ範囲:P.34 - P.45

 「環境は人をつくる」といわれるが,たしかに,パリッとした服装は気分を清新にしてくれる。人情というものであろう。そこで,病院の特殊な服装の問題や,"型"にはまった白衣と"おしゃれ"のはいる余地などを探っていただいた。

グラビア

仏教の篤志病院—佼成病院

ページ範囲:P.5 - P.8

 1,300年のむかし,崇仏の心の厚い皇室が悲田院,敬田院などの医療施設を作ったが,宗教による篤志病院は中世紀以後キリスト教団によってさかんに作られた.この佼成病院(東京都中野区本郷通3の25小野田敏郎院長)は,法華経を信仰の中心とする仏教教団によって作られた病院である.
 昭和27年に設立され,昭和38年に7階建ての近代設備を具える病院が建築された.全館が空気調和となっていて,気持ちよく療養生活を送ることができる.

陽光あふれるリハビリテーション・センター—長崎県立島原温泉病院

ページ範囲:P.9 - P.12

 長崎県は,豊富な温泉を休養と観光のためだけでなく,医学的にも利用することを目的として,成人病と肢体不自由児のリハビリテーションおよび人間ドックを中心とした温泉病院を建設した.
 澄んだ空気,緑の松林,すきとおった水--有明海を眼前に,国立公園雲仙を背景とした恵まれた自然環境の中に,昭和40年11月に長崎県立島原温泉病院(長崎県島原市元池)は出発した.医学的および教育的リハビリテーションを目的とし,成人病部門,肢体不自由児部門,検査部門(人間ドック)の3部門に分かれている.

病院の広場

わが師

著者: 小野田敏郎

ページ範囲:P.13 - P.13

 私の中学の校長は名校長と謳われた方である。その中学のまえには朝な夕な仰いだ比高800米の秀峰が聳えていた。校長は,仲秋の夜,全校生徒を率いてこの山へ夜行登山をしようと考えられてこれを職員会議に諮られた。会議では甲論乙駁,大勢は夜行軍は危険であるということに靡いた。そのとき,校長はやわら立って言われた。諸君は夜,かの山に登ってみられたか,私は登ってみた。けっして危険はない--。山頂の大磐石に,高張提灯ふたつをふたりの小使さんに掲げさせて,名月の光のなかに朗々と詩を吟じられたかの先生のお姿は,いまも瞼のなかにある。

院長訪問・10

—天理よろづ相談所憩の家病院長—山本俊平先生

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.49 - P.49

 古都奈良市から急行バスに乗れば20分たらずで天理教の中心天理市に着く。本瓦葦屋根入母屋造り千鳥破風付のおよそ病院らしからぬこの建物は「おやさとやかた」を中心に八丁四方を囲む大建築の西側の構成部分の一部に予定されているもので,屋根裏2階を含めて地上8階地下1階の堂々たる建物である。この病院建設には当研究所の吉田所長や前建築設備部長の小川氏らも参画したところであって,外枠の制約にもかかわらず機能的になかなかよくくふうされた点が多い。病室はいわゆるダブル・コリドール形式で中央のコーア部分に看護詰所はじめサービス部が置かれ,よい構造になっている。教団の中心人物「しんばしら」が造るからにはちゃちなものは造らないという方針を打ち出した結果,ベイタートロンにリニアックまでそろえるといったぐあいに思い切った機械設備をほどこしている。
 院長の山木先生は大正13年京大卒,同大の結核研究所長,付属病院長の前歴を持った名誉教授でその道の大家である。昭和36年停年退職後,大阪の北野病院長を経て,本年4月この病院開設と同時に初代院長に就任した。先生自身は天理数の信者ではないが,ここの前身の病院に付属していた結核研究所の顧問をしていた関係などあって院長を引き受けた。宗教病院であるが医師はあくまで純医学を実行すればよいという立場に立っている。よい医学を実現するためには医師は常に勉強と研究をつづけなければならない。

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病院図書室の運営管理

著者: 森日出男

ページ範囲:P.50 - P.63

はじめに
 最近,病院の新築・増改築が次々と行なわれ,その偉容とともに,診療内容の充実向上は昔日の比ではない。またこれと同時に,病院管理の観念が体系づけられた学問として発展し,1つ1つ具体性をもって形似化されて行くことは,心強くもまたうれしいことである。
 しかして,現時点ではやむを得ないことかも知れないが,理論的または理想的管理学(高嶺の花的管理学)に比して現場的ないしは現実的管理学が,また対患者的管理学に対して対スタッフ的管理学が,あるいは物的管理学にくらべて人的管理学がやや忘れられているきらいがありはしないであろうか。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.98 - P.98

 この春は雨が多く,梅雨は気象台の予報どおり空梅雨になるかと思っていましたら,けっこう梅雨らしい毎日を送らせられました。しかし例年より早めに明けて,おそらく勢の良い盛夏を迎えることになりそうです。

研究と報告【投稿】

レントゲン・フィルムの管理

著者: 早川勝巳 ,   小林和也 ,   藤岡伸司 ,   大石橙一

ページ範囲:P.67 - P.71

はじめに
 最近の医療においてX線の占める位置と範囲は日を追って拡大され,それとともに利用面の進歩改善によって撮影されるフィルムの枚数は増加の一路をたどっている。
 ところが,医学部の学生がはじめて外来診療にたずさわるとき,入院患者を受け持つとき,そのカルテの保全,記載について,あるいは手術室にはいるときの作法について種々の注意をうけるのに反して,患者診療に必要かくべからざるレントゲン・フィルムの管理,またはその方法について指示らしい指示はうけないのではなかろうか。

病院における医用写真室のあり方について

著者: 塩見二郎

ページ範囲:P.73 - P.76

序言
 ダゲール,タルボットらによって写真術が開明されてから数十年にも満たない昨今,その進歩発達は瞳目すべきものがある。また表現芸術としての写真もこの十年ほどの間にしっかりと根をおろした感じである。一般分野はいうに及ばずわれわれの関係する医学的部門においてもその有用性は今さら論をまたない。すなわち,医用写真における写真の最も大きな役割は,その忠実な記録性が第1にあげられる。より正確に,より純粋に,客観的に証明し得る手段としての写真こそ,医用写真における根本大義である。
 しかしながら,これらのことを医用写真に望むには,現在得られている写真技術を医用部門においても最高度に利用し,この技術の正確性を基調としなければ医用写真としての価値は半減してしまうことは誰しも感ずるところである。一般写真術に秀でていることがすなわち医用写真に忠実であるという証明にはならず,また,それぞれの医用部門の正確な知識と観察的理解能力のない者には,医用写真を取り扱う資格は生まれてはこない。

総合病院精神科病棟の実態とその問題点

著者: 吉田登

ページ範囲:P.77 - P.80

はじめに
 昭和35年10月,豊川市民病院に精神科病棟が併設されてから,満5年を経過した。
 最近,精神科を併設しようとする総合病院が増加しつつあり,総合病院精神科のあり方が問題になってきている。すでに2,3の報告もあるが,その多くは,精神病床数が総病床の10%内外の病院についてのものである。

従業員の立場からみた病院の労務対策

著者: 宮川昭平 ,   狩野恭子 ,   浜野博正 ,   島田雅弘 ,   湯本国利 ,   渡辺ナツ

ページ範囲:P.81 - P.85

I.はじめに
 医療の本質に理解の乏しい今日のような政治的社会経済的環境のもとにあって,高度の診療レベルを維持して社会公共に対する病院の使命を果たすために,病院従業員は一種の社会的不平等ともいえる物心両面にわたる犠牲的生活を強いられている。著者らは,昭和40年4月に施行した調査の結果をもとにして,従業員の不満は何処にあるのか,また勤労意欲を開発するにはどうしたらよいか,労務対策面における現実的な方向づけを試みた。

私の一週間

舞台うらの"なんでも屋"

著者: 寺本千枝

ページ範囲:P.88 - P.91

 アメリカシロヒトリと闘う人が病院にいる。害虫退治ばかりではない。ふだん,目にはつかない病院の環境整備のたあ,院内中をかけずりまわっている。そんな縁の下の力持ちであるだけに,その仕事も多彩であり,目がまわる。ハウスキーパー1週間の奮戦記。

ホスピタルトピックス 診療

薬の副作用対策

著者: T.S.

ページ範囲:P.92 - P.92

 最近数年間に,サリドマイド奇形児事件やアンプル入りカゼ薬によるショック死事件があいついでおこり,またアメリカでは抗ヒスタミン剤の製造中止指令,ビタミンD剤の過剰投与に対する警告,DMSO剤の実験中止指令などがあいついで発せられ,医薬品の副作用に対する関心がとみに高まってきた。
 このため,WHO (世界保健機構)は昨年の総会で,国際的な医薬品の副作用の監視組織の設置を検討しているし,ヨーロッパ地区ではすでに医薬品の安全計画を作成して実施にうつしている。ところで,主要各国のなかで現在もっとも徹底した医薬品の安全対策を推進しているのはアメリカであるが,同国は昨年「医薬品乱用規制法」を制定して,鎮静剤と興奮剤の乱用や,偽造医薬品の取締まりを強化している。この法律はバルビツール,アンフェタミン,その他の精神中毒をおこさせる薬など,中枢神径系に鎮静効果や刺激効果をあたえたり,幻覚作用をもっているために乱用の可能性がある薬の製造,分配,交付,所在について強力な取締まりをおこなうと同時に,アンフェタミンやバルビツールなどの有名な商品が偽造されているので,このような偽造薬をインスペクションを充実してきびしく取締まろうとするものである。

給食

病院における栄養指導の実情—わが国における病院の実情入院患者に対して

著者: 宮川哲子

ページ範囲:P.93 - P.94

 基準給食の承認をうけている病院では,医療のサービスと同じように,十分な給食サービスをする。なかでも食事療法によるサービスとして各疾患に対症の食事を考慮し,治療の一環として大いに力を出している。すなわち,多かれ少なかれ入院患者の喫食状況をよく把握し,残食の多い人の場合には,(イ)病気の状態によるか,(ロ)単に患者のわがままで嗜好に合わないためか,この2つについて判断して,主治医およびその病棟の婦長と連絡をして病室訪問をする。その方法は,よく患者から話を聞いてから病気について,それに対しての食事療法について説明し指導することである。そしてできるだけ多く話し合う機会を作ることである。また,気づかない患者でも要望があれば,医師あるいは婦長からの連絡で患者,または家族に,食事療法について,栄養について,また食事の大切さについて話す。特別に食事療法を必要としない患者の室も,折々に訪れ,病院の食事についての批評や希望などを聞くようにして献立作成の一助となしていることは,どの病院でも栄養士の業務としているのである。しかし,こうした心構えが日常の忙しい業務に迫われがちな時には,なおざりにされる。病院給食がよく行なわれているかどうかは,一にこの喫食率,残食をしらべることと栄食指導ならびに病室訪問がよく行なわれているかどうかに関連性があると考える。

特殊病院

精神病床拡充への提案

著者: 岩佐金次郎

ページ範囲:P.94 - P.94

 厚生省が昭和39年12月末日現在で実施した医師,歯科医師,薬剤師届出調査および医療施設調査の結果が,このほど発表された。これによると,精神科を標榜している医師493人,同じく施設480で,ともに38年の同様な調査に較べて,9.6%の増加となっている。わが国では神経科を標榜する医師,施設ともに,内容があいまいで,いわゆる精神科医が,神経科医をもとなえている例があり,また,神経科のみといっても,実際は精神科医としての診療を行なっている医師がいる。施設の場合も,同様である(診療所に特に多い)から,両科をあわせた教(神経科を標榜している医師149人,施設149,増加率43.3%)が精神障害者を診療している医師および施設数に近い実情と判断して,大差あるまい。精神病床総数は153,639床で,前年比17,252床増加している。これらの増加は,数年前に較べて,かなり多数であり,39年調査でみても,この増加率は他科に比して,格段に高い。それにもかかわらず,治療を要する精神障害者は,なお多く放置されている。大都会の精神病院は,超過率10〜30%というところがすくなくない。今後も増床を必要とする状況にある。
 ところで,最近の新設病院ないし病棟,あるいは新設診療所をみると,それらの構想に十分な検討が加えられたと判断される点がすくない。精神分裂者の社会復帰を図るために,作業場や遊戯場が設けられていても,形式的にすぎるようだ。

霞ガ関だより

オープン病院などのあり方をめぐって—オープン病院検討会の論議から

著者: 広永哲夫

ページ範囲:P.96 - P.97

はじめに
 「オープン病院(開放型病院)」とか「臨床検査センター」といったことばは,ようやく医療制度を論ずる際の常用語となった感がある。
 従来から,わが国では,アメリカなどの諸国とちがって,院内医師団によって診療が行なわれる医療施設が中心となって発展してきた関係で医療施設が開放型をとることにはいろいろ困難な点があるとされていた。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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