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雑誌目次

雑誌文献

病院25巻7号

1966年07月発行

雑誌目次

特集 病院職員の募集と採用

病院職員の労力源の開発

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.15 - P.20

1.問題の内容と方向
 与えられた条件の中で生の実質を実現して行くのがいのちあるものの定めである。この場合,生の側の必要条件と,それをみたすべき環境の側の与件とがどこでマッチするか。問題はその双方の側で考えられなければならない。
 病院はいったん創設された以上,いのちあるものとして,生存と活動の中にその創設の意味を貫徹していかなければならない。ただ,病院は非常にむずかしい生きものである。その存立目的にかかわる機能面の複雑微妙さは,その内部構造の面にも,ことさらに精密さを要請し,そこに運営上幾多の困難を発生させている。

職員採用と心理テスト

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.21 - P.25

1.はじめに
 同一労働条件の下で,優秀者は劣等者の3.5倍の生産量をあげる(アトキンスの報告)。どの職場でも2倍の差はめずらしくない。適任者は仕事を早く覚え,訓練が容易で,能率が上がり,楽しく働くのでモラールが向上し,生産性がまし,作業に興味をもつから監督は少なくてすみ,事故も少ないので損失は減り,これらの結果,生産コストは減少する。
 理想的な人物像を画いて,志願者を振るい分けし,"優秀者"だけをごぼうぬきにするのが旧来の入社試験であった。だが,入社後仕事のことで悩み,周囲との協調がうまくなく,上司,同僚,部下に迷惑を及ぼすケースは少なくない。入社試験で"優秀者"のみ選抜したはずの英国の某企業体では全従業員の10%が精神神経医療を必要とする結果がみられたという。

病院職員の前歴照会の仕方

著者: 落合勝一郎

ページ範囲:P.26 - P.32

Iまえがき
 一般に,病院職員の採否の決定にあたっては,慎重に,いくつかのテストの段階が行なわれる。第1は,戸籍謄本,最終卒業学校長の推せん書,最終学校の成績証明書などによる書類審査の段階である。そのほか,本人に直接記入させる身上調書を参考とする事例もみられる。第2の段階では学科テスト,知能テスト,および職業適性テストなどがある。聖ルカに例をとると,大学卒業者に対しては,論文,英文和訳,和文英訳の学科テストを行ない,必要に応じて英会話,英文タイプライターのテストを行なう場合もある。高校卒業者に対しては,作文,国語のほか,専門家に委嘱して職業適性検査を行ない,さらに実務的な職業適性テストとして珠算,簿記,和文タイプの科目を行なう。電話オペレーターを希望する者には,発声,アクセントなどのテストがある。以上の段階で,本人が直接書かねばならない身上調書,論文,作文,答案などは,本人のペン字のうまさまずさ,および本人の考え方,思想などを判別する資料となる。第3の段階として考えられるものに面接テストがある。この面接テストは,上に述べた第1,第2の段階では,捕捉できないものをスクリーニングし得る効果がある。すなわち,(1)容姿,(2)服装,(3)態度,(4)話し方,(5)就職希望の動機,(6)家庭事情,(7)純粋度,(8)考え方などを観察できる点である。

委託養成と奨学金制度

著者: 黒坂司

ページ範囲:P.33 - P.35

苦労する技術職員の充足確保
 医師と看護婦の充足が非常に困難であることが病院経営関係者の間で,早くから大きな問題として取り沙汰されているが,日赤病院の場合においてもこの悩みはまったく同様な事情にある。
 日赤病院における医師の充足率は,昭和39年度は78.3%となっており,昭和38年度のそれとほとんど同率である。また看護婦については自家養成をしているとはいいながらも,その内情はけっして余裕のあるものではなく,なかにはいちじるしい不足を来たしている病院もあり,法定充足率では昭和39年度は97.7%であった。

東京精神病院協会准看護学院について—その設立の経過と給費制

著者: 上田守長

ページ範囲:P.36 - P.37

 精神科専門病院は,近年,薬物療法,生活療法の発展によってその容相はいちじるしく変貌し,看護職員の診療上にはたす責任が拡大されたことは御承知の通りである。
 しかも看護職員絶対数の不足は精神科という特殊性の故と,施設の多くが都市周辺地区の交通不便の地に偏在する傾きのある故とによって,他の診療科目に比して一段と深刻である。

身元引受の法律的意味と効果

著者: 唄孝一

ページ範囲:P.38 - P.41

1.はじめに
 雇用契約にさいして保証人を立てることは,今日広く有なわれており,これを身元保証とか身元引受とか呼んでいる。一般にこれは,身元保証書とか身元引受証書とかの書面によってなされ,法律的にはこれによって,保証人と使用者の間に,被用者の身元を保証する契約が成立したことになる。

座談会

病院職員の募集と採用をめぐって

著者: 石原信吾 ,   東義晴 ,   関光 ,   井上昌彦 ,   坂本徳次

ページ範囲:P.42 - P.52

 人の働きが主体となって医療サービスを提供する病院が"人"の確保に頭を痛めている。コトは深刻である。いかにして職員を確保するか?その奥の手,秘策を語ってもらうと……。

グラビア

わが国最初の小児総合病院—国立小児病院

ページ範囲:P.5 - P.8

 欧米諸国に限らず,アジア諸国においても小児総合病院があるが,わが国には最近に至るまで実現をみなかった。しかしながら小児福祉を推進させ,小児に対して近代的医療を普及させるために,小児総合病院の設立は要望されていた。
 国立小児病院(東京都世田谷区太子堂3-35−31)は旧国立世田谷病院の敷地に建設され昭和40年11月1日に開院した。地下1階,地上5階建てで,建築延べ面積は14,821m2(4,483坪),建築費6億7千万円。入院400床をそなえ多くの専門科をそなえている。

子どもの健康を守る—大阪市立小児保健センター

ページ範囲:P.9 - P.12

 小児のための総合専門病院として,大阪市立小児保健センター(大阪市東成区西今里町2丁目21広島英夫院長)は昭和40年10月1日に開院した。入院病床は100床あるが,入院治療よりも精密検査や機能訓練に特徴がみられる。保健所や学校などと連携をとり,病気の早期発見や予防に努め,小児保健のセンターとしての機能を高度に発揮している。また小児疾患に関する調査研究も進められている。建物は地下1階,地上5階で建物面積は4,980m2工費は3億3千万円。

病院の広場

病院経営雑感

著者: 河上利勝

ページ範囲:P.13 - P.13

 ちかごろ,医師なかまの者がまことに肩身の狭い思いをしたことは,某大学病院副手にまつわるチフス菌事件である。
 また,その取り調べの途中,某大学病院内では危険な病源体類の保管が研究という美名にかくれて,まったく野放しにされていたのではないかという疑いさえ起こった。つまり,その大学には管理が存在しなかったということが明かるみに出た。

第4回全国自治体病院学会シンポジウムより

自治体病院に何をのぞむか

著者: 吉田幸雄 ,   棟久一夫 ,   大渡順二 ,   田村清 ,   林秀雄 ,   榎本栄蔵

ページ範囲:P.56 - P.67

 吉田(司会) ただいまから「自治体病院に何をのぞむか」という話し合いをさせていただきます。
 自治体病院は県,市町村の自治体が運営をする病院であることは,申すまでもないわですが,一般の病院とは何か違ったものが期待されてしかるべきものであるだろうと思うのです。したがって,その問題はいったいどういうような内容であり,また,それがなぜ具体的には解決できないのだろうか。ここらが各病院の方がたに少しでも理解されるばかりでなくて,一般国民に,あるいは自治体の住民その他関係者に理解をされて,少しでも自治体病院は自治体病院らしい病院になることが望まれるということになると思うのです。

論壇

地域医療の確保と公立病院—医師対策についての1つの提言

著者: 田中正好

ページ範囲:P.70 - P.74

1.現在の医療の混乱と公的医療機関の使命
 言い古されていることなので,現在の医療の混乱については深くはふれない。ともかく,18種類もの,それぞれの目的をもった経営主体の病院があって,勝手な発達をとげ,医療保障の面でも,国民皆保険といいながら,内容のちがった6種類の保険,それも本人と家族に分かれ,その上に生保やその他の種々雑多な公費負担がかみ合い,その支払い方法にも甲表・乙表があるのだからややこしい。
 また,病院でも診療所でも自由開業制だから,医療機関と医師の偏在は避けられない。

第4回全国自治体病院学会特別議演

経営管理の意味と重要性

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.78 - P.86

貧乏と大きな使命
 私は,ただいま全国に7,000近くあるといわれております病院の中の1つの病院におきまして,日夜苦闘を続けておられます皆さま方と同じ苦難をわかっている者でございます。私はよく,うちの課長や,婦長たちと話し合うのでありますが,今の時代に病院に身をおきまして,その仕事に従事しておりますことは,何かひとつの不運な宿命に身をまかせるようなもので,この不運をのがれるためには,病院から逃げ出すほかはないんじゃないか,そういうような話をしているわけでありますが,おそらく,われわれ病院人同士の間では,それはほんとうに実感としてわかっていただけるんじゃないかという気がするわけでございます。とにかく,病人がそこにおれば,その人の命はどうしても無条件に救わなければなりません。また,その人の失われた健康というものは,それがその人の幸福を実現するための基本的条件である以上,どうしても回復させなければならないのであります。そういうようなのっぴきならない要請をもったしかも非常に多数の病人を,病院は日夜抱えているわけでありますから,われわれ病院人の仕事というものが,非常にいやおうなしの,のっぴきならない性質のものになることは,正に当然といわなければなりません。

病院図書館

—大谷藤郎著—「地域精神衛生活動指針」

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.87 - P.87

一般病院管理者にも必読の書
 病院がひとつひとつ弧立し,みずから診療の高さを誇って,来院する患者を待っている時代はもう終った。病院が地域に密着し,住民の健康センターであるべきとWHOでも国際病院学会でもくりかえして説かれている。病院はいままでの診療のほかに,リハビリテーションも,疾病予防も,さらに健康増進のための機能をもつべきとされ,病院すなわち医療センターを意味する国もある。
 精神病院もこの例外ではない。いままで精神疾患は危険視せられ蔑視せられてきたので,精神病院は閑静の美名のもとに人口密集地区をはなれて辺鄙な土地につくられてきた。精神病院の位置と都心との物理的空間距離は入院患者家族と医療職員,地域社会と精神病院との2重の心理的疎隔感を意味する。

—加藤孝正訳—「精神医学的作業療法」

著者: 鈴木明子

ページ範囲:P.99 - P.99

斬新的で充実した内容
 本書はGail S.Fidler, O.T.R. Jay W.Fidler, M.D.夫妻による"Occupational Therapy——A Communication Process in Psy-chiatry.1963"の全訳である。G.S.Fidler夫妻はコロンビア大学医学部の作業療法担当のAssociateであり,ニューヨーク州立精神医学研究所作業療法部の職業教育部門のDirectorでもある。また,J.W.Fidler氏は精神科医であり,ニューヨーク医科大学の助教授としてともにエネルギッシュで研究心の高い,アメリカでの斯界の最先端を進む一夫妻といえる。
 筆者は学生として夫妻から直接講議を受け,好遇をいただいたわけであるが,その授業内容は深い経験と広い知識に裏付けられ非常に興味のあるもので,その集約がこのたび加藤先生による訳書として出版されたことをこの分野の方たちに1つの大きな指針と啓蒙を与えるものとして喜びたいと思う。リハビリテーションに関する日本語の文献は一般に少ないが,とくに精神科の分野で働く作業療法の実務家のためになるものは一層であるといえるからである。この訳書の末尾にある「本邦作業療法関係文献」はその意味で貴重なものといえるし,またこの著が,「邦訳文献」の1つに加えられた意義は深い。

ホスピタルトピックス 診療

電子計算機による傷病の診断

著者:

ページ範囲:P.92 - P.93

 数年前から傷病の診断や治療方針の決定に電子計算機を使用する研究がさかんに行なわれるようになったが,とくにこの方面の研究が宇宙医学の推進などの関係からもっとも進んでいるアメリカ合衆国をみると,ニューヨークのベルビュー・ホスピタルで血液病の鑑別診断のさいデータの相関を調べて診断をおこなっているし,デトロイトのラファエル・クリニックでは精神病患者の大量の臨床データを大形の電子計算機に記憶させて診断に利用している。またペンシルバニア大学の電子計算機センターでは,麻酔の方程式による麻酔の自動化に電子計算機を利用しているし,ニューヨークのロチェスタ大学では有名な学者ラステイド博士が,診断方法の教育に電子計算機を応用して注目をあつめている。このほか,生理学や基礎医学の研究に用いられている例はきわめて多く,アメリカ合衆国ではすでに医学研究専門用に製作された電子計算機だけでも600台を越えている。IBMでは数十人におよぶ医学専門のアナリストによって電子計算機の医学的応用を研究しているが,尤(ゆう)度による診断計算を大形電子計算機でおこなった例や,X線フィルムの解析,ガン診断における膨大な量におよぶ病症統計のほか,病院経営のための事務機械化システムの完成もいそいでいる。
 一般に病気の概念は,数学的に考えると,その病名に対して1つの症状群の関数として存在している。

給食

病院給食の食器

著者: 森田百合子

ページ範囲:P.93 - P.93

 今日お家に戻られたら,食器戸棚を開けて眺めてください。食べることにあまり興味をお持ちにならない家庭でも,色も形も用途も様々な食器が数多くあることにきっとびっくりなさることでしょう。
 そして,ひるがえって病院での患者用食器をおもいに浮かべてくだされば,筆者の意図するところをただちに御推察くださると思います。

特殊病院

アメリカ一般病院の精神科

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.94 - P.95

 1964年春にアメリカ精神衛生研究所と病院協会が協同して,一般病院の精神科サービスの現況と退院患者の実態について調査をし,その集計結果が今年1月のHospitals誌に発表されている。
 5,964の一般病院を調査対象にしたが,資料提出施設は89%で,非回答病院は673を数えた。非回答の多くは100床以下の私立の小病院で,名目的にも実質的にも精神疾患を取り扱わないので,推論には影響しない。

霞ガ関だより

「国民総医療費」につて

著者: E.N.

ページ範囲:P.96 - P.98

 厚生省では毎年,国民総医療費を推計して発表しているが,このたびその昭和39年度分が発表されたのでこれについて解説を加えてみたい。

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編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.100 - P.100

 本号は「病院職員の募集と採用」をとり上げて特集した。病院は機械生産ではなく,サービス生産であることはいうまでもないから,病院職員の質と量は病院経営にとって死活を決定する最大の問題である。しかも熟練と医療奉仕性を持った各種の職員が必要であるにかかわらず,その供給は病院の増大に伴なっていない。また低医療の下に限られた人件費の枠内で必要な職員の質と量を維持しなければならない。このような状況の下において,わが国の病院経営者には異常な努力が要請されている。この職員確保を中心に特集した所以である。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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