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雑誌目次

雑誌文献

病院25巻8号

1966年08月発行

雑誌目次

特集 病院外来のあり方

病院の外来患者数

著者: 仲村英一

ページ範囲:P.15 - P.23

 昭和36年に発表された病院経営管理改善懇談会懇談要旨の中に次のような指摘がある。「病院と診療所の機能が十分分化されてなく,病院は収容施設を備えた大診療所の形態をもつ反面,診療所も収容施設や高度の診療設備を備えているものもあって,病院と診療所の間で外来患者はもとより,入院患者についても競合を生じている」また昭和38年の医療制度調査会の答申の中でも,「病院は傷病者が主として収容・診療・看護をうける施設であり,診療所は主として外来患者が診療をうける施設である」との定義がなされているものの,現実は必ずしもその通りでなく,病院と診療所の機能分化,さらには病院の体系的整備の問題はつとに各面で指摘されてきているが,これらの問題は医学教育制度や医療保険制度などと密接に関連しているためもあって,現在まで抜本的な改革,改善に手がつけられていないのが現状であるといえよう。
 病院は外来をやめるべきだとか,紹介患者,救急患者のみに限るべきだとか,いろいろの議論もあるが,一般外来を廃止すると,医療施設の体系的整備の問題はもちろん,そのほかに病院のオープン化,専門医制度との関連が生じてくるし,医療費全体の再配分の問題にもつながり,言うべくして行なわれ難い面が多いといえる。

経営からみた病院外来

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.24 - P.28

はじめに
 病院の外来はもうからぬという人があるかと思うと,外来でもうけて入院で損しているのだというようないい方をしている人もある。わが国の病院医療では外来と入院とは密接不可分の関係にあるので,もうからぬからやめるというわけにはいかないけれども,毎日殺到する外来患者を前にしては,経営的にいったいどんな意義があるのであろうか誰しも疑念をもつのは当然であろう。
 ここで病院外来を経営経済的に分析するまえにことわっておかなければならないことは,外来が病院医療の本質上,あるいは現在の医療制度上,必要であるとかないとかいったことはふれないことにする。われわれが当面する現実では,とにかく外来をとり,これに相当の犠牲を払い,また収益的にも依存しているということが明白な事実であるので,この現実を直視して,それがどのような経営経済的な評価をうけるかを考えてみようと思う。

外来カルテの扱い方—対談

著者: 津田豊和 ,   紀伊国献三

ページ範囲:P.29 - P.37

 津田まず外来カルテの診療録の重要性といいますか,価値といいますか,その実態を論じてそれから最後にあるべき姿というものを結論づけましょうか。
 紀伊国そうですね。種々の能率化のくふうというようなことは当然入れるということにしまして,まず外来診療録の重要性ということですね。

病院外来予約制度

著者: 左奈田幸夫

ページ範囲:P.38 - P.47

緒言
 よくいわれる"待ち時間2時間,診察1分"などといわれるコトバは,いかに長く待たされているかの代表的コトバである。私の調査では,実際に医師が診察行為をしている時間は,初診で1人平均6.1分,再診で4.6分であった。しかし待ち時間があまりに長いために,これだけの実診察時間くらいでは,かえって1分くらいにしか感じないためにおきたコトバであろう。
 増加する病院外来患者をなんとか調整できないものか,うまくゆけばある程度制限の目的も達しうるかもしれぬと始めたのが,この予約制度であった。始めてみると診療は早く終わり,患者は喜び,病院運営上多くの利点があり,かつ費用は少なくてすみ,またどの病院でも容易に行ないうるし,しかもやりようによっては患者の増加策も減少策もとれる。

外来患者の診察所要時間

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.48 - P.51

サービス時間とサービスの質
 昔,子供のヘボ理屈に鉄道の急行に乗るのは損だというのがあった。サービスされる時間が短い上に余計な料金までとられるからだ。そのころ羽田に遊覧飛行機があって10分で5円ほどであったがむろん20分乗れば料金も2倍だった。このごろ街かどにある安床屋では散髪時間が15分か20分でごく早いのが普通だ。しかしインターン生のような床屋にあって刈りなおし,すりなおして何分かけてもうまくゆかなければ,時間の長いことは一層迷惑なことになる。
 最近,新幹線やジェット機の速度をありがたがらない人は少ない。それは速度の増加とともに全般のサービスも向上しているからで,忙しい人には特に喜ばれる。しかし,いろいろな理由でもっとゆっくりした乗物のほうを好む人もないわけではない。ことに乗物自体をエンジョイできる場合にはこの傾向を生ずる。

外来の建築

著者: 筧和夫

ページ範囲:P.52 - P.56

 はじめに,これから述べようとするのは"外来診療部の建築計画"であることをおことわりしておく。すなわち,外来診療部を建築する場合に,これを使用する人びとの要求に則った施設的プラニングは如何にすすめたらよいか,という指針を述べようとする。したがって,実際の設計に当たっての詳細なデータ,構造,材料,設備,意匠などの問題は,建築関係の専門書注−1に期待して,ここでは取り扱わない。
 次いで,病院はいうまでもなく患者へのサービス施設であり,その中でも外来診療部は病院の窓口的性格を有しており,現実にも,日々院内でもっとも多くの患者,付添い人の出入りを見て,地域と接触している部門であるから,その建築計画は,第1に患者の立場に立って考えられねばならない。すなわち診療事務などの病院勤務者の活動環境は,それが働きやすいものであることによって,患者により良いサービスを与えるものであるという観点から追求されるのであってこれが強調され過ぎて患者・付添い人の院内における生活環境を圧迫することがあってはならないと考える。

座談会

病院外来のあり方

著者: 小野田敏郎 ,   日野原重明 ,   小原辰三 ,   春日豊和 ,   吉田幸雄

ページ範囲:P.58 - P.68

 "待ち時間2時間,診察1分"というコトバは現在の病院外来の混雑ぶりをあらわしている。デパートに似た偉容さに向く患者心理のせいと片づけるほど,コトは単純ではない。そこで,病院の本来の姿から「外来」を考えてみると……。

グラビア

理想と現実の結合—天理よろづ相談所憩の家

ページ範囲:P.5 - P.8

 良い病院を建設しようという理念が経済的の制約なしに実現するとしたら,どのようになるであろうか。この夢を実現したようなものが天理ようづ相談所の病院(憩の家)(天理市三島町200)であろう。建築,設備にも医療設備にも最高が目標とされ,豪華な病院という実感を受ける。わが国の病院の中で注目されるものの一つとなるであろう。
 昭和12年に発足したこの病院は,昭和41年4月に組織を改め,新たに「憩の家」として建設されたものである。予定病床は1,000であるが,現在は約半分ほどが利用されている。外来は1日200くらいで,信者とは限られていない。

カトリックの精神のもと…—聖母病院

ページ範囲:P.9 - P.12

 聖母病院(東京都新宿区中落合2-5−1)はカトリックの精神を基礎として昭和6年に設立された。「愛徳」と「誠実」を医療の基本理念とした病院のふんい気は,日常見られる病院のあわただしさ,騒しさをひそませ,患者の心に安らぎと信頼感を持たせる。
 病院は鉄筋コンクリート4階建てで192床(新生児55床)。職貝250名。聖母女子短期大学,聖母助産婦学院も併置されている。

病院の広場

病院経営における3つの問題点

著者: 井手一郎

ページ範囲:P.13 - P.13

 本年の日本病院学会総会のパネルディスカッション"病院のトップマネジメント"をたいへん興味深く拝聴した。
 石原氏のいわれるごとく,病院のトップマネジメントの2大機能として,病院活動に対する全般管理と,病院経営の長期計画の策定および実施が考えられる。

研究と報告【投稿】

急性腹症と地域総合病院の役割

著者: 四方淳一

ページ範囲:P.73 - P.77

はじめに
 筆者が昭和37年5月に墨東病院外科医長として赴任した際に,筆者の前任者であった杉原礼彦院長が次のごとき信念を述べられた。すなわち,"大学病院は奇病を治すところであるが,都立病院は救急患者を取り扱うべきところである"と。筆者は腹部外科医であるのでその前任者からの申し継ぎ事項を守って"急性腹症"をハウプトテーマとして,研究に治療に励んできた。
 病院の役割には,ジックリと診断し治療する慢性的なものと,マッタなしの急性的のものとある。病院の地域性という時は後者のほうが関係深い。急性病のうち交通災害,頭部外傷など最近大きくクローズアップされたが急性腹症もこれにおとらず重要である。この意味において筆者の病院のデータより,この問題を追求したい。

国立療養所大府荘における給食管理—調理基準制定を中心として

著者: 清水みね ,   熊谷晴美 ,   杉田宏子

ページ範囲:P.79 - P.83

はじめに
 結核治療の一環としての給食,いわゆる食事療法の具体的使命は,正しい栄養のバランスのとれた治療食事をいかにして適正に摂取させるかということにある。私どもは給食業務全般にわたっての改善については多年努力してきたところであるが患者の摂食率に直接つながる調理技術に検討を加え,調理技術者のややもすれば陥りやすい"勘で作業する"調理者個々の嗜好形式の技術による個人差を廃し,統一した科学的調理方法の確立を計り,①見た目に美しく②本来の持味を生かす③匂香を保つ④適温⑤形を美しく保つ⑥消化吸収に意を用いるこれらの条件を満たすに必要な調理基準を制定し,その考察を試みたので状況報告をする。

ホスピタルトピックス 診療

救急医療実態調査の概要

著者: E.N.

ページ範囲:P.86 - P.87

 昭和40年7月に,厚生省と日本医師会とが共同で全国の病院・一般診療所について,救急医療の実態を調査したが,その調査結果について概要を以下に紹介する。

看護

あるオリエンテーションプログラム

著者: 吉武香代子

ページ範囲:P.87 - P.88

 アメリカ人看護婦がきわめて頻繁に職を変えることは,病院管理者および看護管理者にとって頭の痛い問題である。その離職率はスタッフの看護婦で1年間に67%というから,回転の早さが知られよう。看護部はやめていく看護婦の穴を埋めるため,1年中新規採用の看護婦を訓練しなければならない。新しい看護婦に,1日も早く一人前に働いてもらうために,どこの病院でもオリエンテーションプログラムには力を入れている。ここに紹介するのは,アメリカ西部のある病院のプログラムの1例である。
 この病院は300床ほどの総合病院で,修士号を持つ教育婦長の下に3人の院内教育係がいて,そのうちの1人は専従のオリエシテーション係である。

特殊病院

慢性病床の整備

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.88 - P.88

 近着のフランス病院関係雑誌には病床整備計画に関する記事が多い。とくに,慢性病床の算定や運用についての論述が頻繁である。フランスでは類似し近接しあった数県をひとつの医療行政単位とし,各単位ごとに独自の病床整備計画をうち出すことになっている。Techniques Hos-pitalières N0229にはパリ医療行政地区すなわちわが国の首都圏にあたる地域の病床整備計画が掲載されているので,それを簡単に紹介する。

霞ガ関だより

入院患者の日常生活能力調査の概要

著者: S.N.

ページ範囲:P.90 - P.92

 この調査は,一般病院に入院する一般患者の日常生活能力を中心に患者の病状,在院見込期間,療養の方法,メディカル・リハビリテーション必要の有無,受療状況,退院した場合の受け入れ体制などを観察するとともに,一般病院におけるメディカル・リハビリテーション施設・設備の整備状況について調査したものである。
 この調査は,厚生省が昭和40年3月1日に実施したものであるが,調査の客体となったのは,全国の国,公的および社会保険団体の開設する一般病院(精神,結核,らい,伝染を除く)のなかから,地域の人口階層別,一般病床規模別に層化し無作為抽出法により1/10の抽出率で抽出した195施設,およびその施設に入院していた一般患者17,865人であった。

病院図書館

—杉本照子著—「医療におけるケースワークの実際」

著者: 野村実

ページ範囲:P.92 - P.92

全医療従事者への好指導書
 内科医・結核医としての私は,患者の性格や経歴・社会的条件・家庭・職業などについて,いちいち深く知りたいと思うようになって,すでに久しい。それというのも,各自ちがったものをもっていて,それぞれの体験や情緒が,病気の診断,治療,経過,予後に関するところが大きいと,感じていたからである。
 終戦後私は医療ソーシャルワーカーという職種のあることを知って,いちはやくこれを私の病院にとり入れたのも,その専門職を活用したかったからである。したがってみずからもその道の勉強を多少心がけてみたが,多くの参考書は専門外の者にとって,帯に短く,たすきに長かった。

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編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.94 - P.94

 冷害かと心配された夏も,8月立秋の声を聞いてかえって酷暑が訪れてきた。稲も立直ってほしいものである。しかしこの酷暑の中で中央医療協議会の意見調整に奔走されている東畑会長のご苦労が察せられる。
 さて8月号は「病院外来」を特集した。近時病院外来縮小論が往行しており,病院の医師ばかりでなく病院の幹部の中にも病院外来に疑問を持っているものが現われてきた。しかし病院外来を単に量的に論ずることは論外であって,病院外来はその質を検討すべきものであるだろう。戦後病院の入院患者に対するサービスについては,これを一義的なものとして大いに認識を新たにしたが,この外来については二義的なものとして消極的なとり扱いをされていたことに問題がある。病院外来は現実に大きな社会的な役割をはたしているもので,かえってその本質を真剣に見きわめることによって十分改善ができるものであるだろう。そういう意味からこの特集をとり上げた。病院外来の再検討である。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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