icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院26巻1号

1967年01月発行

雑誌目次

特集 東南アジア諸国の医療事情

韓国の病院

著者: 金永彦

ページ範囲:P.25 - P.29

はしがき
 私は韓国で十数年来,病院長勤めをしている。
 その間,アメリカの病院を見廻って,彼らのマネはとてもできるものでないことを知り,ぜひとも日本の病院を見たいと思っていた。幸いに,日本との国交が再開され,1965年11月に東京,大阪方面の病院を見ることができ,また昨年の5月には,日本病院協会の御好意で日本病院学会に参席することができた。日本の病院の急変ぶりは,戦前の日本病院をよく知っていた私にとって驚異そのものであった。日本の病院関係の皆さまがたに韓国の病院を紹介する前に,私は東南アジア病院協会(仮称)みたいなものの結成を提案したい。日本は自分の経験と知慧を他国のために活用すべき時期に到達したと私は考える。

台湾の医療現況と今後の展望

著者: 蔡恵然

ページ範囲:P.30 - P.34

 過去の台湾の衛生計画は,どちらかといえば急性伝染病およびその他の特殊疾病の防遏に重きを置き,医療計画のほうはおろそかにしてきたような感じがする。現在では主たる伝染病はすでになくなり,平均寿命も大分延びて来て1964年では男が65歳,女が69歳になっている。そして終戦20年後における公衆衛生の進歩は,東南アジアでは恐らく日本を除いては最も高い水準に達していると思われるが,しかし医療面においては日進月歩の社会各分野の発達と飛躍に比してはなはだはがゆいところがある。

沖繩の医療事情

著者: 大城喜久次

ページ範囲:P.35 - P.39

まえがき
 琉球列島はその北端を鹿児島に接し,南端は台湾に隣接して弓状に連る列島である。このうち琉球は北緯27度以南の大小60有余の島々から成る。その人口は933,850人(1965.10.1現在)で,総面積は23,800km2,南北の長さ約700kmで,最高気温40℃,最低10℃,年平均気温23℃で,四季の変化に乏しいが,ひんぱんに来襲する台風は沖縄の風物誌をつづる。
 かつての琉球は中国の支配下にあり,慶長の役では島津の属国となり,廃藩置県で沖縄県となったが皇威の遠い土地であった。

アジアの病院に学ぶ—フィリピンとネパール

著者: 佐藤智

ページ範囲:P.40 - P.45

はじめに
 ある機関紙にわたしは「日本に病院はない」という一文をよせ,幾つかの批判をうけたことがある。無論,日本に7,000近い病院のあることは知っているが,その経営は,いわば消防署にたとえれば,火を消しに行った家から代金をもらい,それらをかき集めて運営しているようなもので,根本的におかしい。少し極端な表現であるが「日本には,本当の意味でコミュニティーに支えられた非収益事業の病院はない」といえる。
 欧米では逆に,ほとんど大部分の病院は非収益事業としてやっている。ところが,驚いたことに後進国といわれる国の中でも大部分の病院は非収益である。

マニラにおける看護事情

著者: 井上幸子

ページ範囲:P.46 - P.49

 昭和40年夏,1か月間WHO主催の会議に出席するためにマニラにまいりました。
 これは「看護職員の配置に関する会議」で西太平洋地域7か国の看護関係者が集まりました。この会議の目的は看護職員の適正配置を考えるための手段として,看護活動調査の方法を学ぶことでしたが,その実習のためマニラ市内にある2つの公立病院外来に1週間まいりました。

東南アジア諸国との医療協力の現状

著者: 若松栄一

ページ範囲:P.50 - P.55

I.はじめに
 最近,東南アジア諸国に対する医療協力が注目をあびてきている。これは医学の国際交流が盛んになり,わが国の医学界が海外に目をむけるようになってきたという医学界の傾向と,本年4月に開催された東南アジア経済開発閣僚会議にみられるように,東南アジア諸国とわが国との政治的経済的連帯をつよめようという外交上の関心のたかまりなどの事情によるものである。
 ことに医療協力が期待をもたれているのは,他の借かんなどの経済援助,技術協力が,ともすればわが国の経済進出の一環として開発途上国から警戒の念をもって見られる可能性があるのに反して,医療協力はまったくそのような懸念の存在しないことである。したがって,医療協力は,政治上,社会上,経済上,宗教上,外交上の偏見があってはならないことはいうまでもない。

病院管理研修受講者1万人突破記念式典

ページ範囲:P.11 - P.12

わが国の病院管理の改善向上を図るため,昭和24年6月「病院管理に関し,調査研究および研修をつかさどる機関」として厚生省所管のもとに病院管理研修所が創設された。そして病院管理の理論と実際について調査研究を行なうとともに,病院幹部職員の養成ならびに研修に努力をつづけ,病院管理の改善に貢献してきた。昭和36年6月「病院管理研究所」と改称し,職員の充実と機構の整備が図られ,教育研修についても一段と内容を新たにした。昨年ついに日本全国の各種病院に及ぶ研修会受講者が1万人を突破し,その記念祝賀会が盛大に行なわれた(昭和41年10月20日於東京・健保会館)。--本文88頁参照--

病院の広場

みちたりぬこころ

著者: 山口寛人

ページ範囲:P.13 - P.13

 わが国民の平均寿命は年々延び,結核その他の感染性疾患もへり,国民の体位栄養も向上し,病院も立派になり,病人は行き届いた看護を受けられ,医療保険は全国民をカバーし,誰もが苦労なしに医療を受けられる。これらは国民の福祉が向上したことを如実に示している。それには日本の病院の果たしてきた努力が数多く含まれている。
 かく輝かしい成果をあげてはきたが,さて日本の病院の現状は満足すべきものであろうか。またその将来にむかってさらに大きな成果を期待しうるであろうか。病院の職員は満足して働いているであろうか。また将来の人材を十分養成し得ているであろうか。これらについては,私は誠に心もとないものを感じている。

新春放談会

医道と病院の倫理

著者: 橋本寛敏 ,   神崎三益 ,   木下正一 ,   守屋博 ,   尾村偉久 ,   原素行 ,   吉田幸雄

ページ範囲:P.14 - P.22

 病院のデラックス化,新増築ラッシュなど,病院界の発展ぶりはめざましい。しかし,その裏に何か失われていくものはないであろうか。"明治百年"の新春を迎え,病院界の長老にお集まりいただき,古くて新しい病院医療の問題などを話し合っていただいた。

--------------------

第4回日本病院管理学会の印象

著者: 仲村英一

ページ範囲:P.60 - P.63

 第4回の日本病院管理学会が,慶応義塾大学倉田教授を会長とし,10月21日,22日の2日間にわたり北里記念講堂で行なわれた。
 筆者がたまたま本誌の編集のお手伝いをしている関係から,本年の学会についての印象を書く羽目になったが,いささか責任が重すぎ,また場違いの感がしないでもない。しかし,筆者の属する医務局指導課は,歴史的にみると,昭和35年後半において日赤等を中心として全国的規模による医療機関の労働争議が続発し,その結果厚生省に設けられた「病院経営管理改善懇談会」の指摘によって,医療機関の経営管理の近代化を推し進めるために誕生した課であり,それを行政的にどう実行するかは別としても,そもそも病院管理とは密接な関係にあるところである。そんなところから,浅学の身を顧みずあえて文字通りの印象を書きつづる訳であるが,せっかくの学問的業績を誤り伝える惧れなしとしないが,くわしくは本学会の機関誌で参照されんことをあらかじめお願いする次第である。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.96 - P.96

 新年おめでとう存じます。良いお年をお迎えのことと存じます。本誌編集陣も,心を新たにして新年を迎えました。どうぞ今年もよろしくお願い致します。
 この新年号は,例年と趣きを変え,東南アジア病院特集号のように致しました。われわれの兄弟国に目を広げ相提携の気運を作るべく意図しました。

リハビリテーション施設のあり方(1)

東大病院リハビリテーション・センターの運営—医師の立場から

著者: 佐々木智也

ページ範囲:P.66 - P.69

はじめに
 物理療法は薬物療法,食餌療法と並んで非常に古い歴史をもっているが,前近代的段階においては主に痛み,炎症などを抑圧する手段として利用されていたに過ぎない。しかし,二次にわたる世界大戦を経て,多数の戦傷病者を社会に復帰させる要請が高まり,その最有力な方法として理学療法physical therapy (P.T.),作業療法occupa-tional therapy (O.T.),言語療法speech therapy(S.T.)など物理医学的方法が応用され,漸次他の領域にも及ぼされるようになった。すなわち,戦傷病者のみならず一般の外傷,中枢および末梢の神経疾患,リウマチ性疾患,精神疾患,言語・聴力・音声の障害などのリハビリテーション—rehabilitation—に主な対象が拡大され,物理医学リハビリテーション科—Department of Physi-cal Medicine and Rehabilitation—は現代の大病院に不可欠のものとされるに到った。しかし,わが国においては,未だにきわめて少数の病院に設置されているに過ぎないので,教育病院として特殊な条件下にはあるが,その例として東京大学医学部付属病院の施設運営を紹介することとした。

リハビリテーション施設のあり方(2)

東大病院リハビリテーション・センターの設計—東京大学建築学科吉武研究室

著者: 吉武泰水 ,   岡下達 ,   陳慧玉 ,   小滝一正

ページ範囲:P.70 - P.78

はじめに
 東大病院リハビリテーション・センターは,中央診療棟の一郭の改修工事によって造られた。その結果,種々の問題が生じ,なかにはリハビリテーション施設として基本的に不適格な点さえあった。しかし,現状では総合病院併設の例は少なく,ことに大学病院併設は全くないので,一つの実例紹介として,図面・写真などで施設の概略を示す。同時に設計過程の概略をも述べて,私たちがリハビリテーション施設について持っていた建築的なイメージについても若干触れておく。

リハビリテーション施設のあり方(3)

リハビリテーション・センターの建築計画—その基本的な考え方について

著者: 上田敏 ,   陳慧玉 ,   小滝一正

ページ範囲:P.79 - P.85

はじめに
 リハビリテーションに対する関心のたかまりを反映して,最近多くの病院でリハビリテーション部門の新設・増設,あるいは独立のリハビリテーション専門病院の設立などの動きが全国的にみられるに到っている。これは非常に好ましい動きであるが,建築計画・設計の面からみた場合,それらのすべてがリハビリテーション・サービスの特殊性を十分理解した上で作られたものということはできない。その原因の一つは適切な資料の不足であり,もう一つは設計にあたる建築家にも,時には建築主体である医師側にもリハビリテーションの本質とそれがどれほど深く建築計画の隅々まで影響を及ぼすかが具体的に理解されていないことにあると思われる。リハビリテーションの理念自体が従来の医療形態のうちのある面への批判を内臓し,それを超えようとするものであると同様に,理念の具体化である建築においても,多くの点で従来の病院建築の考え方の枠をはみ出るものがあるのは当然である。それをできる限り意識的,理論的に把握する努力なしにはリハビリテーション施設の建築の正しいあり方の探求は不可能であろう。
 現在この分野で何よりも必要なのは,国内外の資料の蒐集とその批判的分析,実際の建築設計とその使用状況調査等を通じてのこの問題の理論的および実際的な研究であり,それは医師をはじあとするリハビリテーション関係者と建築家との共同研究によってもっともよく行なわれうるものと思う。

グラビア参照

病院管理研修受講者1万人突破記念祝賀会

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.88 - P.89

 病院管理の調査研究と研修のための国立機関として,昭和24年6月1日,「病院管理研修所」が国立第一病院の一隅で呱々の声をあげ,現任院長の補修コースを始めてから今日まで17年の歳月を経てきた。この間研修事業は年々強化されたが,昭和36年には時勢の要請に応じて研修所が「病院管理研究所」と発展拡大し,研修課程も多彩となり,1月の長期研修会,開設者・院長・事務長・医長・総婦長それぞれの職群対象の旬日にわたる短期研修会,特定領域と特定課題を対象とする専門的な高度な討議を行なうゼミナールなどのコースが設けられ,開催回数も年とともに頻繁に開かれてきた。昭和39年には,人事管理や病院管理の特殊課程とともに,1年間の病院管理専攻科が常設され,東洋唯一の病院幹部養成コースと認められ,WHOからも2名派遣せられている。これらの各コースの研修受講者は今年9月8日開催の第182回院長・事務長研修会で10,037名に達し,1万名を突破した(第1図参照)。
 病院管理研究所ではこの機会に,いままでの研修事業を回顧し,今後の発展を冀うとともに,発足以来現在まで研修の育成に力のあった関係各位に感謝するために,10月20日港区赤坂青山の健保会館で,1万名突破記念の祝賀会を開いた。

霞ガ関だより

国立リハビリテーション学院とその卒業生たち

著者: K.T.

ページ範囲:P.92 - P.93

はじめに
 医療制度調査会は,昭和38年8月,厚生大臣あて「医療制度全般についての改善の基本方策に関する答申」を提出したが,その中でリハビリテーションの重要性を強調した後で,「リハビリテーションに従事する専門職種として,理学療法士,作業療法士,言語療法士,弱視訓練士等があるが,これらの者については,教育,業務内容の確立等その制度化を早急にはかる必要がある」と述べている。
 厚生省は,この問題のうち,とくに理学療法士(P. T.),作業療法士(O. T.)について具体化するため,38年6月に身分制度調査打合会,次いで審議会の検討を経て「理学療法士および作業療法士法」が第48回通常国会にて成立し,40年8月28日に施行されたのである。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?