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雑誌目次

雑誌文献

病院26巻10号

1967年10月発行

雑誌目次

特集 看護婦と与薬

看護婦と与薬業務

著者: 永井トシヱ

ページ範囲:P.15 - P.17

 今は昔,陸海軍病院より国立病院となって新しい出発をした当初は患者の服用する薬は水薬と散剤が主で,散剤は薬包紙に包まれて薬袋のまま水薬の瓶とともに床頭台の上におかれている風景はどこの病棟でも見られた。
 新制度による看護婦学校の養成課程の中の基礎看護の時間に「与薬法」「薬札法の利用」を教えられた学生のために,学生実習病棟の床頭台から薬は消えていった。指示された薬を,指示された時間に,指示された方法で患者に服用させる。与薬のときは必ずその患者のものに相違ないか,レッテルを3回読むことをいとも厳重に実践させられた。服用後は薬効が期待どおりにあるか,副作用はないかと,患者の観察記録を看護日誌に記載する。

与薬における看護婦の責任と法律上の問題

著者: 山田里津

ページ範囲:P.18 - P.19

注射行為における過失が多い
 看護の責任として次の2点をあげたい,1)間違いなく正確にその患者に与えること。2)薬剤師の管理からはなれている薬物の保存,たとえば病棟,外来などで,日常多く使用される薬物は,看護婦は責任をもって管理すること。
 薬物を正しく取扱うには,薬物の主作用とその副作用をよく知悉し,副作用については早期に発見し適切な処置がとられなければならない。また薬物の効果判定など,患者の観察は看護の重要な役目であり責任である。看護行為には誤ちは許されないのであり,過失によって相手に傷害を与えた場合は,刑法第211条により業務上過失致死罪として刑事責任を問われ,そのほか民法第709条による不法行為として民法上の賠償責任を問われる場合があり,さらに,保健婦助産婦看護婦法によってさらに行政上の責任を問われることがある。行政上の責任というのは行政処分であって,情状により免許の取消しまたは一定の期間業務停止がなされることがある。しかし刑罪の重さと行政処分とは,必ずしも一致するとはいえない。看護婦として最も多い医療事故の判例をみると,ほとんどが注射行為による過失である。

与薬管理

著者: 内田卿子

ページ範囲:P.27 - P.29

 与薬,つまり患者に薬を飲ませ,また,その薬を病棟内において保管することは,看護婦の業務の中でも責任の重い仕事の一つである。与薬を正しく行なうことは看護婦にとって大事な行為である。それは,どんな名医が処方をしても,また,そのとおりまちがいなく薬剤師の手によって調剤されたとしても,最終段階で患者に飲ませる看護婦の手にわたったときに,正しく患者に与えられなければ,真の効果は発揮されないからである。
 管理とは物事を可能にする一つの方法であると定義されているが,与薬管理においても同じである。薬が正しくかつ安全に患者に与えられるためには,それぞれの施設にある与薬に関する基準をまず第一にはっきりと示すことである。

アメリカにおける与薬の方法

著者: 吉武香代子

ページ範囲:P.37 - P.40

 アメリカの病院における与薬の方法は,日本の病院における方法とかなり違った点が多い。方法の相違は,結局与薬に対する看護婦の責任の範囲の相違,薬剤師との業務分担のあり方の相違のあらわれと思われる。すべての病院が同じ方法を用いているとは思われないが,一応一般的と認められる方法について述べてみたい。

対談

与薬と記録

著者: 大森文子 ,   紀伊国献三

ページ範囲:P.20 - P.26

 与薬に伴う記録類はかなり多く,その合理化は,単に看護部門のみならず,病院全体として検討されるべき問題の一つであろう。ここでは,こうした与薬に関する記録類の現状とその合理化の工夫,さらには将来の問題として記録の自動化という点にもお話を進めていただいた。

与薬の合理化

与薬の合理化のために

著者: 田部ミツ子

ページ範囲:P.30 - P.31

与薬の方法についての考え方
 九州厚生年金病院においては,与薬の方法についても幾多の変遷を経てきた。現在では,看護の方式もPPCをとりいれている関係上,集中ケアー,中間ケアー,自己ケアーの三段階に分けているので,患者のニードにあった与薬法を行なうのが当然である。患者指導に重点をおき,自分で責任をもつことのできる患者には,薬の種類を考慮し,かつ,安全なものについてのみ,薬袋のまま渡して飲ませることにしている。
 従来のように,患者全員に画一的な与薬法を行なっていたときには,患者は,療養生活のすべてを医師や,看護護に依存し,患者自身の責任ということは考えていなかったであろうし,看護婦自身も,すべて自分の責任のように思いこんでいた向きもある。

保管の工夫

著者: 若菜キミ

ページ範囲:P.31 - P.32

 保管の工夫という題をいただいたが,とくに工夫などしていないので,大変困った。従来行なっていることは,薬が古くならないよう,あまり多く請求しないこと,文献をよく読んで保管上の注意点をきびしく守っていることなどだけであるが以下のべてみたいと思う。

与薬車の工夫—虎の門病院内科病棟

著者: 宇佐美千恵子

ページ範囲:P.33 - P.34

 新薬が日に日に増し,複雑化してきている現在,与薬に関する看護業務のしめるウエイトは大きい。看護婦は与薬に当り,各患者に与えられる薬の作用,今回使用されるその目的を知っていることはもちろん,医師から処方されたその薬を間違いなく,決められた時間に,確実に服用させることに専念しなければならない。看護体制を考えると,一人の看護婦が常にそれに当るわけにもいかないため,誰が行なっても間違いなく,わかりやすく,しかも能率的で,またよくある薬の変更も容易に徹底できる方法をと,私どもの病棟で考えた与薬車を紹介する。

分包の工夫

著者: 下川原シン

ページ範囲:P.34 - P.36

はじめに
 近時製薬業界のいちじるしい発展により新薬の登場もめざましく,その剤型もいちじるしく多様となってきた。なかでも保存性と投薬の便利さからくる錠剤,カプセル剤の激増と,これら薬剤を用いる処方箋の発行が漸増してきていることは,必然的に看護業務の中でも大きな影響を与えるようになってきている。薬剤部としても,その便利さからヒートシールされたものをそのままいわゆる計取投薬または組合せ調剤を行なってきているのが一般の病院の実状のようである。当院の投薬に対する看護体制は最近まで与薬の準備にばくだいな時間と労力と神経が費やされていた。この点を改善するため看護部では再三にわたり医局と薬剤部と交互に検討を重ねてきた。その結果,現在実施している分包方法に達した。いまだ十分とはいえないが,これをご紹介して皆様のご批判を得たいと思う次第である。

座談会

与薬をめぐって—責任と方法

著者: 尾村偉久 ,   岩淵勉 ,   上野高正 ,   足達さだ子 ,   吉武香代子

ページ範囲:P.42 - P.55

 看護業務の大きな分野となっている与薬は,それ自体,看護婦の責任のもとに行なわれるべきことであろう。
 しかし,医師が処方箋を書き,薬剤師が調剤し,それを看護婦が与えているかぎり,与薬に伴うさまざまな問題は,医療チーム全体の問題として考える必要があろう。

グラビア

近代化する結核療養所—国立療養所中野病院

ページ範囲:P.5 - P.8

かって国民病といわれた結核に対決した結核療養所の任務は重大であった。しかし近年結核に対する関心はうすらぎつつあり、結核療養所の建物も古びたままになっているものが少なくない。このときに国立中野療養所が10階建の新築を完成し、昭和42年4月より国立療養所中野病院と改称して新しい出発をしたことは、意義あることであろう。建物は地上10階、地下1階。延面積約21,000m2(約6,500坪)。工事費は約10億円、工事期間は2年。(東京都中野区江古田3-14-2)

伝染病院より総合病院へ—病院発展の足跡—東京都立豊島病院

ページ範囲:P.9 - P.12

 東京都立豊島病院は、遠く明治30年に町村組合の避病院として発足し、昭和7年に東京市の伝染病院となり、3階建の病院が建築された。昭和20年に普通科が設置され、昭和39年より伝染病院を廃止し、総合病院として運営されるようになった。しかし、古い建物は狭く、新しい病院管理を導入し、最新の医療を行なうのには不適当であるので、新館を増設することとなった。
新館は地下1階、地上5階。約11,000m2(約3,300坪)。工費7億7000万円。工期1年8ヵ月。病床数224床。外来1日約600人。(東京都板橋区栄町33)

病院の広場

結核療養所の変遷と将来

著者: 北錬平

ページ範囲:P.13 - P.13

 結核療養所というと,わが国では一種独特のニュアンスを感じる。それは,明治,大正以来の伝統であり,当時の結核治療が大気,安静,栄養という,いわゆる三原則を基本にしたものであったからである。しかし,わが国の療養所を特徴づけるものは,そればかりではなかった。入所者が10歳〜20歳台の若年層に多く,しかもきわめて重症のものが多かったという事実は,日本の療養所の特異な点であった。
 昭和のはじめの東京市療養所の統計をみると,入所患者の年齢構成は10歳台33.3%,20歳台39.7%,30歳台16.7%となっており,40歳以上はわずか9.4%にすぎない。しかし,昭和40年10月に日本結核療養所協会26施設について調査したところによると,10歳台4.0%,20歳台22.6%,30歳台23.6%で,40歳以上は実に50%を占めるのである。

第17回日本病院学会パネルディスカッション

病院給食のあり方(その2)—とくに基準給食を中心にして

著者: 小山三郎 ,   村浦公二 ,   美馬陽 ,   日西義之 ,   安永幸生 ,   東浦トヨ子

ページ範囲:P.57 - P.67

 前月(9月号)では,行政担当者,病院管理者の立場からの発言をお送りした。今月は,給食業務担当者,患者の側からの発言およびそれぞれの追加発言をお送りする.

研究と報告【投稿】

入院新患数平均値

著者: 井上士朗

ページ範囲:P.69 - P.74

はじめに
 病院報告に記入する数値は入院患者動態に関する最も基礎的なデータである。このうちで延患者数や病床数は種々の管理資料を得るため比較的ひんぱんに用いられている。それに対し入院新患数は用途が限定されているようである。そこで今回は入院新患数について,とくにその一日あたり平均値についての意味や用途,他の指標との関係について検討してみることとした。

各科共通診療録の管理と実態

著者: 榊田博

ページ範囲:P.75 - P.80

はじめに
 診療録には外来患者診療録と入院患者診療録とがある。一般に外来診療録は,各診療科ごとに管理され,一年ごとに更新し,古い記録は倉庫に保管する形式を採用している。また病院における診療録の管理は,入院患者診療録を中心として中央管理され,かなり充実しつつあるが,外来診療録は入院患者診療録に準じて取扱えばよいとされているにすぎない。
 かかる現状に対して,各科別診療録は,年度ごと更新のほか,患者が2科以上の併科診療または転科の場合,科ごとの記載が別々に記録され,1人の診療全経過を追跡することがむずかしくなるので,外来診療録は一患者一病歴として,外来部門のいっさいの記録を集めた総合診療録として中央管理することが望ましいという意見も述べられている1)

明日の看護を求めて 看護Travelling Seminar

結団式にあたって

著者: 小野田敏郎

ページ範囲:P.81 - P.81

 皆さまをアメリカに運ぶジェット機はすでに空港にあり,いまこの空港ロビー特別室に勢ぞろいされた皆さまの晴れがましいお姿を拝して誠に胸の高鳴りを覚えます。
 オリエンテーション・コースのとき以来,皆さまはすでに勉強の心構えのうえで結団をすまされております。皆さまの構えは大へんにすさまじいと承っておりますが,まことに研学の心の電圧をひしひしと感じます。私は,皆さん,しっかり勉強していらっしゃいと中すかわりに,あまり勉強しなくともけっこうだから,どうか悠々と,迷子にならぬように,おおらかにやっていらっしゃいと中しあげたいと思います。

院内教育

著者: 笠原トキ子

ページ範囲:P.82 - P.83

 先般アメリカ病院看護研究団に参加し病院見学をして歩いたが,諸所の病院での説明や話し合いの間にしばしばサービスという言葉を耳にし日本人がこの言葉を用いるときと,米国人が用いるときのニュアンスとには,かなりのちがいがあることに気づいた。
 以前ある会合の席で,某デパートを責任者から店員のサービス訓練についての苦心談を聞いたおり,看護サービスについて病院の管理者はどのような努力を払っているか,また看護婦やその他医療従事者たちの教育や訓練はどのようにしているかと質問され答えられなかったことがある。どうも私ども看護部門にいる者は患者へのサービスについて,いままであまりにも無関心であったように思う。

労働条件

著者: 蜂須賀つや子

ページ範囲:P.83 - P.84

 労働条件を決定する主要な点は,まず時間,報酬,生活条件,職業上の昇進の機会,地位の保障,社会保障などから設備,夜間の看護人員にいたるまで,その評価の基本となる問題であろう。アメリカでは現職教育をいかにしているかによって病院へ就職してくるという。日本の現状はどうだろうか,まず「給与,宿舎の設備,夜勤は1人ですか。進学コースへ,高校へ通学できますか」と聞く若い准看もいる。
 今回看護Travelling Seminarに参加して見たり聞いたりしたものを紹介して,日本の状態と比べて考えてみたいと思う。

補助者の利用

著者: 金子房代

ページ範囲:P.85 - P.86

 私は全然ちがった環境の中に入って自分自身を反省したいとしばしば考えた。
 たまたまこのTravelling Seminarに参加し自分の期待を何倍にも上まわる病院の数々を訪門した。この期間何も考えなかった。実に素直に収獲に無中ですごした。そしてまたもとの環境に帰った。自分にはしなければならないことがあるのに気がついた。そして自分のペースで1歩1歩進めようと,しみじみ良き旅を反省している。

人員配置

著者: 高須キサ

ページ範囲:P.86 - P.87

 看護婦不足は日本ばかりでなくアメリカもきびしいようである。しかしこの不足を補うために准看護婦,女性看護助手,男性看護助手,看護事務員を加えて看護チームを編成している。
 したがって看護婦でなければできない仕事に従事するように適材適所に配置して,それぞれの能力を最高度に発揮できるようにしている。

夜間の看護

著者: 園部梅

ページ範囲:P.87 - P.88

 夜間の看護について視察旅行中見聞したことを記憶をたどって書いてみる。何しろはじめての試みに参加させていただいた私どもはお互いに見たことを話合って不足を補いながら目的のセミナーをはたした喜びと安心にしばらく疲れも忘れていたが,時の流れに押流されないうちに学んできたことを実際にどう生かそうかといま私は一生けんめい計画している。
 さてアメリカ西海岸およびハワイで見学した病院8カ所はどこも看護人員が余っているところはない。ナースの不足は世界的のものであろうが,勤務体制に対する人員の割当ては日本で考えられないほど豊かなものであった。しかしこの割当てられたメンバーは非常に能率的であり,少しの病院を除いては日中も夜間も人員は仕事の分析から見て大差なく十分に取ってある。

研究旅行の印象

著者: 今村栄一

ページ範囲:P.89 - P.89

 看護Travelling Seminarは,わが国の看護事業において画期的な成功をおさめたものと思う。この企画の推進力であった荒井蝶子さんの努力を高く評価するとともに,吉武香代子さんの熱意と実行力に敬服する。全般の感想として,次の諸点を挙げてみたい。

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編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.90 - P.90

 秋冷となり,春夏のとりまとめにいそがしい季節となりました。小生でも大いに勉強をしなければならないときと思わざるをえません。今年は国内全般としては,米の収獲は史上最高といい,果実の出来ばえも見事で,村々の秋の祭もことのほかにぎわっているものと思いますが,北九州のみは旱魃の大被害で,実に同情にたえません。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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