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雑誌目次

雑誌文献

病院26巻12号

1967年11月発行

雑誌目次

特集 病院と事故

病院の事故とその対策

著者: 神崎三益

ページ範囲:P.15 - P.18

 世の中にいろいろの間違いもあるが,人の命にかかわる間違いとなると世間はこれを許さない。たとえ世間がこれを許し,あるいは見逃してくれたとしても,当事者の良心はこれを許さない。磨ぎすまされた良心の持ち主であればあるほど,その人は終生その悔恨に苦しめられるだろう。
 ことに,病院に起こる間違いは,一日もすみやかに病気の苦しみからのがれ,生き永らえようとしてやってきた人たちに対する過誤であり,その生命を脅すことであるから,法的には許されても医の良心はこれを許さない。

薬剤による事故

著者: 田口英雄

ページ範囲:P.19 - P.22

はじめに
 事故は起こしたくない。しかし,もしも事故が起きてしまったら,すみやかに適切な措置をとって,その拡大を防止するのはもちろん,さらにその原因を究明して再びそのようなことが起きないようにしなければならない。この事故の究明,それに基づいて事故を防止すること,これはたえず叫ばれているが,なお事故は絶えない。その理由には次の2つのことが考えられる。
 第1は,事故の原因の究明ということが口で唱えるように簡単なものではないこと,第2には,原因はわかっていても,その対策の実行が伴わない場合が多い点にある。事故が起こってから,ああすればよかった,こうすればよかったということが多いが,それらはすでに気付いてはいたが,実行が伴わなかったことが多い。しかしそのことだけを注意していたら事故は防げたろうか,他に原因がないとも断言はできない。

検査室の事故

著者: 林康之

ページ範囲:P.23 - P.25

はじめに
 病院中検は正確な成績を臨床医に提供することにより患者に間接的サービスを行なう部門である。したがって,正確な成績を迅速に誤りなく行なえるということが日常の検査室運営管理の上で最も大切な点であり,この管理面でのマイナスは広義に解釈してすべて事故ということになる。
 すなわち,成績が誤っていた,他人の成績が間違って報告された,検査は終了していたが報告は返却されなかったなど,すべて事故とみなしている。しかし,これらは成績管理に関する事故であり,一般にいう建物を含む設備の破壊,勤務者に危害を及ぼす事故とは内容的に異なる。また前者は内容の記述がなお専門的にすぎるのでここでは主として一般的な考え方に従った検査室の事故について述べる。

看護の事故

著者: 大野菊衛

ページ範囲:P.26 - P.28

 最近病院事故がつとに増加してきているようである。病院の事故といえば,そのほとんどが看護関係で関連分野がことに広いと思われる。そこでいままでにあった問題の主なものを拾ってみると次にあげるようなものが目立っているようである。
 誤薬注射,誤薬浣腸,新生児のいれかわり,火災,盗難,精神科患者の逃亡,自殺など,いずれも未然に防がなければならない,むしろ防げるものばかりで決して不可抗力なものではないと思う。災難は忘れた頃にやって来るというが本当にそのとおりで,過去何件か不幸な事件が起きているにもかかわらず,忘れた頃にまた同じような過ちがくりかえされている。なぜだろう。ここで私たちはその原因となるものは何か,あるいはどこにあるのかについて,堀り下げてみる必要があると思う。

X線室における事故

著者: 川崎幸槌

ページ範囲:P.29 - P.34

まえがき
 近代化された現在の医療において,X線の果たす役割は非常に大きく,今後ますます頻繁に使用されるものと考えられる。しかし一方,放射線はその効果とともに,その運用を誤れば恐るべき障害をひき起こす危険があり,その取扱いにあたっては,きわめて慎重でなければならない。
 他方,放射線の人体におよぼす影響が次第に明らかになってきて,その防護対策についてもいろいろと検討が加えられている。防護基準に基づいてX線室,X線装置が設計され,さらに防護具をあわせて使用することによって,X線診療時に問題となる医師,X線技師およびX線室周囲に勤務する人々に対しては,皆無とはいえないが以前から比較すると,身体的障害の危険性については減少しつつあることは明らかであろう。

給食の事故

著者: 宮川哲子

ページ範囲:P.35 - P.38

 給食業務は非常に複雑多岐にわたるので,従業員がそれぞれの立場で十分なる知識をもって事にあたらなければならない。事務に関して,調理作業に関して(蒸気,ガス,機械など),衛生管理面,栄養管理など多くのことに気を配り,1日3回欠かすことなく,また待ったなしの職場であるため従業員の健康管理,人間関係,労務の条件など十分考慮の上事故のない一日一日であるよう努力すべきである。給食部門における事故の最も恐ろしいのは伝染病,食中毒,作業事故,栄養管理面では治療食の事故があげられる。

手術室—とくに麻酔による事故

著者: 山下九三夫

ページ範囲:P.39 - P.43

はじめに
 患者が手術台上あるいは手術後早期(通常3日以内)に死亡した場合,その原因が麻酔にあるのか,手術そのものに起因するかを決定することは往々にしてきわめてむずかしいことが多い。また手術後の死亡も,回復室において死亡した場合は,麻酔科が関与することが多いが,病棟に帰室した後は何時まで麻酔の影響によるのかも定めがたい。最近大学においてはほとんど麻酔学講座が新設され(46大学中36大学),麻酔科標榜医(現在まで1578名許可),麻酔指導医(102名,日本麻酔学会により認定)の制度もようやく軌道にのり,病院においてもかなりの数に麻酔科が設置されている一方,医療過誤の問題も次第に問題視されているので,その責任の帰趨もようやく明確化されなければならない段階にある。

病院の設備事故

著者: 田村鋼三郎 ,   上林三郎

ページ範囲:P.44 - P.47

事故の起こりうる設備
 当病院でまず事故の起こりうる設備にいかなる種類のものがその対照になるかを初めに列記して見る。
 1.汽罐高圧5基と低圧5基別に寄宿寮旧館に一基ずつある。

中央滅菌資材室の事故とその予防

著者: 松本茂信

ページ範囲:P.48 - P.51

はじめに
 医療の場における中央滅菌資材室(Central Supply)の利用は,診断,治療,検査および手術など非常に広範囲にわたっている。
 セントラルサプライの業務の関連性から,最近の業務内容はさらに複雑化し,研究や教育にも応用されている。また円滑な運営が患者に対する医療を機能的に,しかも無菌的にかつ安全に処置することができるようになった。

座談会

病院の事故対策

著者: 津田豊和 ,   宮崎達 ,   渡辺茂夫 ,   落合勝一郎 ,   永井トシヱ

ページ範囲:P.52 - P.61

 いくら備えても万全を期しても,起こりうるのが事故である。多くの人命をあずかる病院では,たえず事故の発生を予測し,対策を考えておかなければならない。
 こんなところに事故のモトがある,それではその対策は……,といった点について。

グラビア

病院の改造に成功した温泉病院—岐阜県立下呂温泉病院

ページ範囲:P.5 - P.8

 軍病院は終戦により国立病院に転換されたが,下呂温泉病院も昭和12年に名古屋陸軍病院下呂温泉療養所として創設されたところから始まる。昭和20年に国立名古屋病院下呂分院となったが,さらに昭和28年岐阜県立となり,今回改築にあたって,温泉を最大限に利用したリハビリテーション・センターの性格をかねるようになった。30年にわたる病院の変化は,社会の変化を反映しているともいえるであろう。
本館3階建,病棟6階建,260床。(岐阜県益田郡下呂町大字湯之島.安田正憲院長)

悩みは多し駐車場—東京都内病院駐車場めぐり

ページ範囲:P.9 - P.12

 モーターショーが開かれると交通麻痺が生じるほど人が集まる。ラッシュアワーには自動車より歩くほうが早いことがある。東京都内は自動車でつまっている。
 病院の自転車置き場は,たちまち駐車場に衣がえした。しかし悲しいことに自転車と自動車ではスケールが違う。せまい敷地に駐車場をどうとったらよいだろうか。

病院の広場

医療制度改正に思う

著者: 井村繁樹

ページ範囲:P.13 - P.13

 ここ約半年間に医療制度にとってきわめて重要な改正が矢つぎ早に行なわれ,われわれ医療機関はその応接にとまどいを感じている。
 その第1は,健保財政の再建策として打ち出された健保特例法であり,続いて診療報酬の7.68%引上げの緊急是正が中医協から建議され,さらには薬価基準の大巾な引下げが断行された。

病院図書館

—山元昌之著—「病院経理の理論と実際」(第3版)

著者: 染谷恭次郎

ページ範囲:P.18 - P.18

名著の改訂版
 名大付属病院前事務部長山元昌之氏の「病院経理の理論と実際」第3版が出版された。本書は昭和24年に初版が出版されて以来,病院経理の定本として関係者間で広く読まれてきた名著である。35年に一度改訂され,今日まできたが,今回厚生省の病院会計準則などをおりこんで第3版とされた。
 他の諸科学とともに医学の進歩もきわめて著しい。しかも,こうした医学の進歩も,近代的な病院において,多数の人々を,また多額の資本をひとつの組織にまとめあげ,機能的に活動せしめ,経営管理によって,はじめて可能になったわけであり,病院経営管理の発達が果した役割を決して見逃がすことはできない。

—R.F.ブリッジマン著 谷村秀彦訳—「病院の地域化」

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.25 - P.25

病院を医療施設網として広地域的に把える
 この本の原題は"The Rural Hospital"であるからこれを忠実に邦訳すれば,農村病院,田舎の病院,あるいは非都市地帯である農山漁村等の第一線病院ということになる。そしてこの書の内容もまたそうしたrural hospitalをどのように考え,どのように建設してゆくべきかということが主題となっている。原著者R. F.ブリッジマン博士はフランス人で同国政府の医務局長を務めた後,現在世界保健機構(WHO)の医療組織課(Medical Care Section)の課長の職にある人である。彼の仕事は低開発国の医療組織網を作ることを援助することである。このような立場の人の著書であるので,アメリカ,イギリス,フランスのことはもちろんシシリー島のこと,赤道アフリカから西インド諸島と世界的規模で記述が進められていることは興味深いが,しかし低開発国のことが問題の主題になっている点はわれわれとしては幾分物足りない。また原著の出版が1955年という古いものであることも残念である。
 ところで,訳者があえて「病院の地域化」と訳名を付けたのは意味あることと思われる。それは原著者がrural hospitalを考える場合にも,常に全体的な病院システムの中で総合的に計画すべきだという立場をとっており,したがって病院の地域化のための記述がかなり大きな部分を占めているからである。

研究と報告【投稿】

地方病院の公衆衛生活動について—第1報病院予防部の活動状況

著者: 井手一郎

ページ範囲:P.63 - P.70

はじめに
 最近地域総合保健活動の一環として,病院・診療所などが新たに予防活動を開始して,これに協力するという事例がみられている。
 そこで病院の公衆衛生活動に関する文献を調べてみると,

病院事務員の組織と人的属性について—第1報病院事務部の研究

著者: 車田松三郎

ページ範囲:P.71 - P.78

はじめに
 病院の事務管理に関する研究が本格的に学界においてとりあげられたのは第7回日本病院学会の宿題報告においてであった。ここでは主として,「病院事務の合理化」というテーマのもとに,次の6項目にわけて各々分担者をきめて報告されている。すなわちその6項目は,1.経営管理2.庶務3.医事,4.会計5.用度営繕6.統計などであった。
 しかし,従来事務部の組織や人事についての研究はあまりなされていないので,われわれは病院の人事に関する調査研究の一環として事務部の組織や人事に関する調査をしたので,その結果の一部を報告する。

ホスピタルトピックス 特殊病院

Dijon精神病院

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.80 - P.80

 パリーとリオンとの間・Dijonという駅がある。この辺はブールゴーニュ公爵の旧封土であり,独特の文化をもっている。昔は郊外,いまではDijon市内になっているLaChar-treuse-de-Champmolに近代精神病院が今年1月に竣工した。Char-treuseは美術史上と建築史上で有名であるが,精神医学的にも意義の深い場所である。1838年フランスの"精神病収容法"が制定され,これに基づいて当時の県当局はChartreuseの僧院を接収して350名の精神病者を収容し,以後1900年600名,1950年850名,現在1,150名と拡張されている。今回竣工したのはこの由緒あるChartreuse病院の敷地の一部にさしあたり230床の新棟であって,引きつづき,管理棟,社会センター,旧病棟の改装が予定されている。注目すべきことは,1963年8月27日の通牒により,一般普通の精神病院機能以外に,精神薄弱児(教育不能で白痴程度)収容の60床,精神症状合併の中枢神経疾患病床25床,成人精神薄弱者120床,老年痴呆120床の総計325床の特殊精神病床が予定されていることである。今回の新築分のなかにもアルコール30床が含まれている。県立精神病院の果すべき役割についてわが国でも議論されているが,このフランスの例は今後の方向を示唆している。病床区分の外に,本病院の機能は前後に伸びる。

看護

精神病院における新しい看護の試み

著者: 吉武香代子

ページ範囲:P.81 - P.81

 アメリカの精神病院における正看の比率は極端に低く,90%以上の直接看護は無資格者によって行なわれている。正看がスタッフとして患者に接することはほとんど考えられないというのが現状である。
 バーモントにある350床の私立精神病院では,数少ない正看をもっと患者のために有効に利用しようと,全く新しい方法を考えだした。すなわち正看は専門の精神科看護婦として患者のそばでのみ働き,看護管理の一切は准看にまかせるという方法である。

霞ガ関だより

医療経済実態調査について

著者: 藤井良二

ページ範囲:P.82 - P.83

 さる9月10日,中央社会保険医療協議会(東畑精一会長)はかねてよりの懸案であった診療報酬改定と医療経済実態調査の実施を建議した。さらに9月20日には公益委員全員と診療担当側および支払側それぞれの代表各4名からなる調査実施小委員会が開かれ,建議内容にある医療経済実態調査の11月実施,調査客体の抽出率は病院,一般診療所および歯科診療所についてそれぞれおおむね5分の1,30分の1,10分の1とすること,調査は日本医師会および日本歯科医師会の協力のもとに中央社会保険医療協議会(中医協)が行なうこと,実態調査は今後3年ごとに実施することなどの基本的事項に基づく調査の具体的実施細目が決定され,10月7日から17日にかけて東京をはじめとする全国13ブロックにおいて中医協委員と中医協事務局員によって調査票の記入その他注意事項について,各都道府県に設置された調査相談員に対して説明会を行なうことになった。
 医療経済実熊調査は昭和27年以来実に14年ぶりに要,医療行為の頻度,従事者の結与,医師の活動状況,実族労働の状況を調査し,さらに一部の病院については部門別収支調査を行なう。

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日本病院学会評議員名簿—(昭和42年5月現在)

ページ範囲:P.84 - P.85

1.日本病院協会々員
〔関東〕
国立東京第一病院名誉院長栗山重信
聖路加国際病院長(日本病院協会長)橋本寛敏

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.86 - P.86

 いよいよ年末が近づいてきました。若いときはドット現われる付録づきの新年号を書店で見ることによってもう正月が近いのかと感じたものですが,この頃は年賀はがきの売出し開始が年末の近づいたことを身近に感じさせます。今年も11月11日の売出しの日には列を作っている状況が新聞に報道され,年始状を早く確保する手配をし,何かと多忙の中に年始状を書かねばならないかという焦躁感に追われます。何と日の立って行くことが早いのでしょう。とくに小生にとっては夏の大旅行のためにその前後を入れて数カ月間がそれにとられてしまい,この秋はまた東奔西走の連日に明け暮れ,ただ夢中の中に過ぎてゆきます。病院管理に関する仕事がこのように多くなったことは喜ばしいとは思えますが私個人としては反省の機会もなく,このまま年月に押流されて行く自分が何かさみしくもあります。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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