icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院26巻13号

1967年12月発行

雑誌目次

特集 総婦長

総看護婦長の歴史

著者: 金子光

ページ範囲:P.15 - P.18

「保助看法」と看護の独自性
 看護の概念の発展の歴史をみると,それは医師の行なう診療を補佐し,医師の指揮命令に従って医療処置を行なうものであったということが世界的であることがわかる。
 わが国においては,この概念が儒教の思想から発する男女の社会的格差によっていっそう拍車がかけられ,看護は診療に従属ないしは隷属するものと考えられてきた。

総婦長の機能

著者: 大嶽康子

ページ範囲:P.19 - P.23

 病院は,院長を頭に診療部門,看護部門,事務部門が鼎となって病院を支えているものと思う。この三本の柱が,一つの目的に向って同等の力で働いて,はじめて病院は立派に運営され,患者は安心して入院中の日々をおくれるのであって,そのうちのどの一本が貧弱であっても,また強力すぎても円満な発展はむずかしく,それはむしろ崩壊を意味するのではないだろうか。
 当院の「看護業務執務要領」には,看護部長は院長の命をうけて院務を分掌する,とある。すなわち,総婦長の院務は,看護部門の管理であろうと思う。

総婦長に求める資質

著者: 石本茂

ページ範囲:P.24 - P.26

はじめに
 浅い業務体験と,乏しい人生経験しか持ち合わさない私が,総婦長に要求される資質について,云々することは,まことに,おもはゆいことであり,不当きわまりないことを承知の上で,日頃から,そうありたいと考え,また考えさせられたことの一端を述べて,識者のご批判とご指導をいただきたいと思う。

総婦長と教務主任

著者: 細貝怜子

ページ範囲:P.27 - P.29

 弘前大学医学部付属病院で総婦長の立場を8年間経験し,3年前から同じ大学系統の東北大学医学部付属看護学校で教育の立場にいるので,このテーマが私に与えられたと思う。それぞれの立場で感じてきたこと,またこうありたいと希望していることなどを述べてみたい。

総婦長と臨床看護

著者: 杉谷藤子

ページ範囲:P.30 - P.33

まえがき
 総婦長と臨床看護というテーマを与えられたが,これは,臨床看護のより向上のために果たす総婦長の役割,すなわち「総婦長は何をなすべきか」ということだろうと思う。それを考えるときに,当然のこととして,まず総婦長自身,よきマネージメントとしての自覚と自信を持ちえているであろうかと思うわけである。
 よく病院のトップマネージメントである病院長の理解がなく,看護部の管理に支障をきたしているとなげき訴えているのであるが,しかしはたして総婦長のほうも院長を動かすだけの管理能力を身につけてそれを行なってきたのであろうか反省してみたいと思う。従来近代的なマネージメントを学ぶ機会は余りにもなく,近年になってようやく病院管理者研修のような場を与えられてきたが,それを受けたとてすぐマネージメントが身につくわけでもなく,私たち総婦長はあらゆる機会を通して,見聞を広め,自己訓練をして一日も早く,そして日々進歩した統卒能力を養う努力をしなければ,臨床看護の発展もありえないと思う。

外国の病院の総婦長—その一般的役割りと2,3の個人例の挿話から

著者: 荒井蝶子

ページ範囲:P.34 - P.39

 諸外国の病院での総婦長は,どういう組織上の位置にあるのであろうか,また,どういう役割りを果たすべき地位にあり,その機能としてもつものは何であろうか。そのようなことを中心に,ここに述べることになっている。しかし,米国を除き,英国を含む西欧の諸国においてすら,いわゆる「総婦長とは」といういい方で,その役割りを述べることは,個々の病院の形体や,その国の女性の社会的な地位や,それぞれ,総婦長個人の能力や性格やらによってはなはだしい差違があるようであり,断定的なことを,一般論的ないい方で,述べることは,まことに危険であると思う。
 一方,たとえ,外国においては,それぞれ個々の差が大ではあっても,戦後の日本の病院において,看護婦のグループを監督するべき看護総婦長制度が一応どうやら常識的なこととして認められるようになったいきさつから比較すれば,やはり,外国における総婦長制度とその機能は,確固とした,歴史の背景にたつ地位であり,基本的には,ある一定の原則に従って,確然とした,職務の分担が,すでに,確立された職位として認められているのである。であるから,この根本的な,西欧と,日本との,その差違から推して,外国における総婦長像を述べることをここで試みることは,あながち,無駄なことではないと思うにいたったのである。

誌上対談

院長より総婦長に望む

著者: 美馬陽

ページ範囲:P.43 - P.44

 病院医療は組織がきわあて複雑であると一般にいわれている。なるほど20種におよぶいろいろの職種が狭い地域に集まって社会を構成しているけれども,この組織が単に組織として動いているのではなくて集団としての一丸となって病院の機能を発揮しておらねばならない。組織作りに専念することは,われわれとしては大切な初歩的仕事ではあるが,この組織を集団として活動させることはわれわれ長たる者のさらに大切な任務である。院長がこの集団の代表者であるという強固な意志を持っていることが必要である。
 ある一定の限定された条件の下で集団活動をするためにはその長はいかなる意図を持つべきかを常に研究しておらねばいけない。院長である者の任務はこの病院という集団が一丸となって成果をあげるように計画を持たなければならない。院長はこの計画をしなければならぬという大切な任務があると同時にそれぞれの責任者に計画を実行させることが,さらに重要である。計画があってマネージメントする社会で働く者と,計画がなくてもマネージメントする社会で働く者との間にはその成果に大きな差がでてくることは申すまでもない。この計画をするということにおいて院長の次に最も大切な役目を果たさねばならぬのが総婦長である。院長の下でのマネージャーとも尊ばれるべき者が総婦長である。病院の職員の約半数を占め,その業務の大半を達成する看護職関係者が集団的に一丸となって成果をあげるように計画するのが総婦長である。

総婦長より病院長に望む

著者: 蜂須賀つや子

ページ範囲:P.45 - P.46

 病院の経営主体や規模の大小によって,また病院経営者であるか,単なる管理者であるかの病院長の立場によって,総婦長として病院長に望む問題も異なってくるだろうが,私の短い経験をとおして,また他の人たちとの話合いのなかから考えてみるに,現在の日本における病院長のあり方,医師である管理者としての病院長の立場にも問題はあるように思う。ここでは一般論として,病院長に望みたいことをまとめてみたい。

事務長より総婦長に望む

著者: 土居美水

ページ範囲:P.46 - P.47

 赤十字社では古くから院長,副院長,事務部長を病院の三役といってきたが,3年位前から看護部長(赤十字社では総婦長のことを看護部長と称する)を加えて四役というようになった。本社の意図は4本の柱によってがっちり病院を管理経営してもらうというところにあるようである。
 以下私の要望するところは,事務の総括者としての事務長ではなく,病院管理経営の1木の柱としてもう1本の柱たる看護部長に要望することに重点を置いているので,この点ご了承を願いたい。

総婦長より事務長に望む—看護部の自主性の尊重を

著者: 岩田ウタ

ページ範囲:P.48 - P.49

 まず与えられた命題に対して,私は若干の理解に苦しまざるをえない(迷いというのが適切かもしれない)。
 すなわち,「望む」という言葉の有するニュアンスについてである。「望む」ということは,「こうあってほしい,こんな点をこう改めてほしい」という現実の否定から発する願望的ないし期待的なニュアンスのものと,さらには全く白紙の状態から「こうあるべきである,こうあるであろう」というseinを前提としないsollenの状態についての意見,考え方,というものがあるかと思う。

医師より総婦長に望む

著者: 鳥居有人

ページ範囲:P.50 - P.51

 そもそも総婦長という職名があるのは相当大きな病院であり,そこに勤務する医師も多数で,各科の主任医師から卒業したばかりの若い医師まで雑多であると考えられる。
 また一般に医師は自分の病棟,外来での診療に追われて総婦長に対し直接に交渉を持つ機会も少ないのが常である。このような事情から「医師より総婦長に望む」との題名のもとに述べることはその医師のまわりで働く看護婦たちの教育,勤務状態を通じて,その元締である総婦長に対する希望ということになる。

総婦長より医師に望む

著者: 増田澄江

ページ範囲:P.51 - P.52

 医師とナースの関係は全く協力的関係である。協力的関係とは,たがいに相手を理解し助け合うことのように思っているが,どうもそうはいかないようである。なぜだろうか,相互に努力の足りない点は認めるが,理解の点で問題があるようにも思う。これはどちらが悪いという責任問題ではなく,おたがいに正しい自己の職場を守るため,あるいは目的を効果的に果たすためには,どんな努力が必要であるかということにすぎない。
 医師とナースの目的は,人類に対し健康を保護し生命を守るということで,この両者の協力なくして,人類は健康的に恵まれた生活は望めないといっても過言ではないと考えている。このことは私たちの使命感にも連なる問題であるだけに,自信をもって申しあげたい。そこでたがいに理解を深める意味において私は医師にお願いする次第である。第1に成長したナースを理解してほしいということ,第2は医師は医療チームのリーダーとしてリーダーシップをとっていただきたい,第3は患者の人間性を認めてもらいたい,この3点について申し述べたい。

座談会

総婦長

著者: 根元儀一 ,   河上利勝 ,   神前章雄 ,   小野肇 ,   牧野永城

ページ範囲:P.56 - P.65

 診療部門,事務部門と対等の立場に立って,看護部門をひきいていく総婦長の"イス"に,その職責の重要性からいって,人を得るか否かは病院の盛衰にも関係してくるという。--こういう人がほしい,こうあってほしい,といった点について……。

グラビア

第7回病院管理視察研究会

ページ範囲:P.5 - P.12

 日本病院協会主催の病院管理視察研究会は,東京を振り出しに,全国の病院研究旅行を行なってきているが,本年は北陸の福井県と石川県に足をむけた。
 北陸の秋たけなわの昭和42年10月17〜20日の3泊4日の旅行であったが,参加者は52名におよぶ賑やかさであった。

病院の広場

もっとよいサービスを

著者: 棚橋三郎

ページ範囲:P.13 - P.13

 10月1日から突如として薬価基準が10%も引き下げられ,診療報酬点数表は12月1日から改正された。両者の差し引き勘定が現実面でそれぞれの医療機関にはたしてどのような作用を及ぼすものかよくわからないまま,喜んでいいのか,悲しまなければならないのか混迷の中に右往左往しているというのが,今日の医療界全体のいつわらざる姿ではあるまいか。
 緊急是正であるからには,当然どこにもマイナスをきたすはずはなく,しかもいままでの物価高や人件費のベースアップをある程度カバーしてくれて,このわれわれを塗炭の苦しみの中から救いだしてくれる旱天の慈雨にも値するものと一日千秋の思いで待ち焦がれていた矢先であったのに……。

病院図書館

—高橋政祺著—「病院管理学入門」

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.23 - P.23

新しい病院をやさしく理解できる本
 病院管理学の全般を取り扱った図書としては,島内武文氏の「病院管理学」が昭和32年に出版され,つづいて昭和33年には今村栄一氏の「病院管理の実際」が刊行されている。しかしこれらは病院管理者または管理グループに属する人々を読者対象として書かれたものと思われる。島内氏の著書は初版が760頁を越える大きなものであったが,最近出され改訂版はさらに大部のものとなっている。
 それにひきかえこの高橋政祺著の「病院管理学入門」はA5判150頁のごく読みやすい病院管理学の概説書である点が大きな特徴である。そしてこの本が管理者むきの専門書ではなく,一般の病院勤務者に新しい病院を理解してもらうことを目的として書かれたものである点にこの本の使命がある。

—山元昌之著—「病院経理の理論と実際(第3版)」

著者: 井上昌彦

ページ範囲:P.26 - P.26

実務経験と学識による集大成の書
 このたび山元昌之先生が名著「病院経理の理論と実際」を改訂されて,改訂第3版として上梓された。まことに喜ばしいことである。
 山元先生は戦前戦後を通じて多年にわたってわが国有数の大病院において,実際の病院管理の職に任じておられる実務のエキスパートである。そしてまたその多忙な日常業務のかたわら,病院会計についての学問的な研究を意図されて研究に精進され,会計学経営学,および病院会計に関する多くの内外の文献を渉猟検討されて広い知識を身につけられ,今日もなお,たゆまず非常な努力と熱意をもって研讃を続けておられる学者である。

研究と報告【投稿】

病院における情報管理

著者: 臼田正堅

ページ範囲:P.67 - P.71

はじめに
 近年あらゆる面において「情報管理」という言葉を耳にし,活字が目にふれる機会が多くなってきている。またいろいろな事物においで情報管理が活用され,行なわれていることは,それだけ情報管理なるものが企業の施策面において重要視されていることになる。したがって情報管理の業務内容たる各情報活動の数値によって,その企業の盛衰を,また将来をも決定するという大きな役割を演じる重要な要因だからである。その情報活動を円滑に遂行し,より効果的な数値を反映させるため,組織的に管理する必要がある。
 したがって,病院においても種々の情報活動を行なうとともに組織的に管理し,より最善の運営管理上の施策を行なわなければならない。よって以下にその概要を記することにする。

大学病院における看護業務の特殊性

著者: 金子光 ,   林滋子 ,   木下安子 ,   兼松百合子 ,   矢野正子

ページ範囲:P.73 - P.78

 医学の教育研究機関としての任務と診療機関としての任務を併有する大学病院の看護業務の特殊性を見い出すための第一段階の研究として,特定の大学病院と一般病院においてワークサンプリング法により看護業務内容を調査した。その結果,各病院間にあらわれた差の多くは,各病院の特殊な条件によりより大きく影響を受けたものとみられたが,以下にあげる点は,大学病院の看護業務の特殊性ともみられ,今後の研究でさらに明確にすべき点であると考えられる。それらは,①大学病院では,患者の身の回りの世話に関する業務の割合が一般病院に比べて少ない(内科病棟の場合)。②大学病院では検査業務の占める割合の日別差がいちじるしい。そしてこれが他の看護業務に影響をおよぼしているとみられる。検査業務の少ない日に,管理,指導業務が多いという偏りがある(内科病棟の場合)。③大学病院では,検査処置を医師が単独で行なう場合には,看護婦の行なう業務の割合が低い(外科病棟の場合)。④大学病院では医師と協力して行なう業務の割合が一般病院に比べて多い(内科,外科病棟とも)。

アドレソ・グラフの応用

著者: 榊田博

ページ範囲:P.81 - P.84

はじめに
 近来,各病院とも病院管理の近代化への過程に伝票制による業務処理機構が導入され,医師,看護婦までが筆記,転写といった単純な繰り返し業務に貴重な時間を消費したり,事務処理の増加とともに患者の待ち時間が増大し,対患者サービスの点でも一考を要す状態となった。
 京都市立病院でも開院に際し医事業務の集中管理,臨床検査部の中央管理に随伴して診療業務に直接関係する伝票の種類だけでも,検査部門関係伝票68種,看護部門関係伝票9種,薬局関係伝票3種,医事部門関係伝票18種,給食部門関係伝票2種,計100種と少なからぬ数に達することが予想され,また外来患者初診時に検査依頼用紙,処方箋,診療予約票など少なくとも3〜14種の伝票を記入する必要が生じるなど,これら伝票の管理と合理化は,病院管理上の当面の課題であった。

--------------------

塩沢総一先生を悼む

著者: 大鈴弘文

ページ範囲:P.79 - P.79

 塩沢先生は大正9年に東大を卒業された。済生会大阪中津病院長の間島良二先生をはじめとして,同年生れの同級生の方で,まだ病院の管理,診療の第一線で闘志満々と活躍されている方の多いことを知るにつけても,先生が73歳でご逝去になったのはむしろ早死が惜しまれる。
 卒業後約10年,稲田内科教室で勉強され,その間静岡地方に流行する秋疫の病原体レプトスピラの発見者の一員になられたことは,学者として何ものにも代えられない大きな名誉である。坂口先生の序文がある稲田竜吉著「黄疸出血性レプトスピラ病,ワイル氏病」(昭和26年4月,日本医書出版)の巻末に秋季レプトスピラ病(七日熱,秋疫,秋熱,作州熱,波佐見熱,アッケ病,用水病)と題して塩沢先生の総説があるが,レプトスピラ病文献として,永久に残るものと思われる。先生は浜名湖畔における野外研究の楽しさをくり返して話されたものである。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.86 - P.86

 いよいよ1967年も静かに暮れて新しい年を迎えようとしています。国際問題としてはベトナムで明け.ベトナムで暮れる一年でした。しかしわが国は幸い今年もまずまず順調に経済発展をして,年末のボーナス景気,未曽有の米の増産などで,平和ムードで暮れたようです。
 しかし病院の問題としては,秋になって診療報酬の改定があったといっても,とくに病院財政が楽にはならず,また病院の数と病床の増加が例年同様で,医師と看護婦の不足がいよいよ目立ってきました。社会保障制度と医療制度の改革について,明年こそは根本的に改革されなければならない段階に立ちいたったことを感じないわけにはいかなくなったようです。明年こそ期待の年としたいものです。

「病院」 第26巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?