icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院26巻2号

1967年02月発行

雑誌目次

特集 放射線部のあり方と問題

管理者からみた放射線科の諸問題

著者: 守屋博

ページ範囲:P.15 - P.19

病院における放射線科の位置
 放射線が医学にとり入れられたのはそんなに古い話ではない。キューリー夫人がラジュームを発見し,レントゲン教授がレントゲン管による放射線を発見したのは,わずか50〜60年前のことである。
 このような新しい技術が導入される時は,いつでもそれに関係のある臨床家によって開発導入されるものである。放射線についても同じことがいわれるので,ラジュームは婦人科で,深部治療は外科で,骨の写真は整形,胸は内科という具合に,それぞれ独立して発達したものである。わが国ではその上,大学の機構が各科別に分立していたので,それぞれの講座に別々の放射線の専門家があらわれて,独自の設備を有してそれぞれ診療を行なったものである。各科の医師は修練の課程で一通りはレントゲンの器械をあつかえるように訓練されたものである。しかし大学のような大きな医局では自然に専門化がはじまって,医局のなかで放射線を専門にあつかう医師が発生した。そうなると,それ以外の医師は放射線から遠のくことになる。つまり放射線についての組織的な教育をうけられぬことになる。

病院の放射線科はどうあるべきか—第16回日本病院学会パネルディスカッション

著者: 加納寛一 ,   宮川正 ,   野辺地篤郎 ,   堀内光 ,   浅井一太郎 ,   島内武文 ,   守屋博

ページ範囲:P.20 - P.33

 司会 ただいまから「病院の放射線科はどうあるべきか」のパネルディスカッションをいたしたいと存じます。最初に総括的な問題を東京大学教授の宮川先生にお願いし,続いて病院放射線科の中央化について,わが国で最も代表的な聖路加国際病院の放射線科の野辺地先生にお話をいただきます。その次に東京済生会中央病院の内科医長をしておられる堀内先生に,わが国の総合病院における放射線科の現況についてお話をいただく予定でございます。その次は虎の門病院の診療部長をしておられる浅井先生に,その中間の立場と申しますか,わが国の多くの病院が目標としている聖路加の方式というものに対する中間的な立場を代表して,いろいろお話を賜りたいと思います。その後で病院管理学の立場から島内先生,また皆さまのお話によっては守屋先生からお話をいただく予定でございます。では最初に宮川先生お願いいたします。

放射線技師からみた放射線部の諸問題

著者: 石田勝哉

ページ範囲:P.34 - P.37

はじめに
 主題には放射線技師とあるが,現在私どもは診療エックス線技師法で規制されている。昭和26年にこの法律が制定されて以後,医学に利用される放射線は飛躍的に進歩したので,私どもの技師会では時代の趨勢にそい,医学の要求にこたえられるように放射線技師法に改正する運動を起こし,10年来の念願がかない昨年の第51回国会に上提されたが,国会において種々の問題点の話し合いがつかないまま52,53回と3度も継続審査となり,昨年末に第54国会が解散されるとともに廃案となってしまった。私は本誌の読者の方がたに諸外国におくれをとらない日本の放射線医学の向上のために,放射線技師法の改正成立に深いご関心をお願いしたい。
 つぎに,主題の放射線部とは,検査部門としての放射線部を意味するものと考えるが,診療科としての放射線科と区別のつけにくい病院が多く,一律には論じられない点がある。

国立がんセンターにおける放射線部の現状

著者: 梅垣洋一郎

ページ範囲:P.38 - P.42

はじめに
 病院の近代化が急速な勢いで進行している現在,その中心となる診療部門の一つは放射線部である。国立がんセンターの場合はその対象が主として悪性腫瘍であるので,特に診断治療において放射線部の重要性が高い。日本では中央放射線診療部の歴史が浅くて理想的に運営せられている病院が少ない。国立がんセンターの構成や運営もけっして理想的なものではないが,約4年半の経験を経た現在ではそれなりの形をなしていて,読者諸賢の御参考になる点もあろうと思われる。

放医研病院部の放射線設備とその運営

著者: 岡崎正太郎

ページ範囲:P.43 - P.46

1.放医研の概要
 放射線医学総合研究所(放医研)は,科学技術庁の附属機関として昭和32年7月に発足し,今年ちょうど満10周年を迎える。場所は都塵を離れた千葉市郊外,稲毛に近い閑静な高台。建物は25棟の近代的な各種施設にわかれて11万7千平方メートルの広大な敷地の中に散在し,その延面積は2万5千平方メートルに達する。このほか職員,研修員,看護婦の宿舎が幾棟かあり,さらに目下,第二研究棟建設の槌音がこだましている。別に茨城県東海村に支所が置かれていて,研究所の構成は15部1支所47課室からなり,昭和41年度定員は401人,同予算は6.6億円である。ちなみに病院予算も研究所予算に含まれ,一般会計である。
 放医研の最大の特長は,物理,化学,生物,遺伝,生理病理,薬学などの基礎研究部門と臨床応用関係の各部門が併立し,相互の緊密な連絡協力のもとに立体的,総合的な共同研究がなされることにある。

J-chartによる診療エックス線技師の業務分析について

著者: 大越健一 ,   橋爪藤光

ページ範囲:P.47 - P.51

1.はじめに
 病院,特に外来診療業務は,時間帯によるかたよりがありこれをならすことはけっして容易なことでなく,そのなかでも医師のオーダーによって仕事を行なう「パラメディカル」にあっては,わずかのかたよりも是正することができない為いわゆる"いそがしい"との意識はきわめて高い。
 一方,近時診断の確立には「パラメディカル」によるところが多く,更にその傾向は日を追って増大し,歪みは自然とその部門にシワ寄せされ最終的に患者がそれを受けているのが現況である。

グラビア

力強いがん治療の装備—国立がんセンター放射線科

ページ範囲:P.5 - P.8

 国立がんセンター(東京都中央区築地5の1)は,がんの総合的治療ならびに研究を目的として,昭和37年2月に設立された。入院は470床であり,外来は予約を原則としているが,全国からおとずれる患者をさばききれない盛況である。
専門化された放射線医療の中心となっている放射線科の装備をみることにしよう。--本文参照--

放射線医学の研究と治療—放射線医学総合研究所病院部

ページ範囲:P.9 - P.12

放射線医学総合研究所(放医研)(千葉市穴川4丁目9の1)は,科学技術庁により昭和32年に設立され,病院は昭和36年5月に開院した。病院は,①放射線障害者の診断と治療,②放射線同位元素による診断,臓器の機能検査および治療,③放射線(高エネルギー)による治療などを目的としている。病床数は少ないが,最新の器械や設備で万全を期している.--本文参照--

病院の広場

良い病院・良い医者—昼食コンファレンス

著者: 片山弘

ページ範囲:P.13 - P.13

 病院の良い悪いは近所の人たちの評価によることで,良ければ病人が出た時に来てくださるだろうし,悪ければ外の病院へ行かれるだろう。近所の人たちの要望に応える外に病院の持って行きようはあるまい。その要望とは,「医者が上手で,看護婦が親切で,皆で良くしてくれる病院」と心得て良かろう。もちろん,建物が良くて医療機械が整っていなければならないが,これは金で買えるものである。
 どうしても病院は医者が中心である。良い医者を集めることができたら,良い病院が半ばできたと見てよかろう。さらに,良い医者が安心して診療できる環境にし,十分勉強ができるように図書室を充実し,剖検で反省し,常に医学の進歩に遅れぬようにできれば,病院の目的は八分通り達せられたと見てよかろう。

研究と報告【投稿】

精神病院の経済的側面からの考察—精神病院はもうかっているか

著者: 村越恒夫

ページ範囲:P.53 - P.62

精神病床不足と精神病院ブーム
 ひと頃の「静かな精神病院ブーム」も心なしか下火となってきたようである。現在は,地域社会において過度に乱立してきた精神病院自体が,意識的無意識的に競争場裡にたたされ,自活の道を選ばざるを得ない状況となってきた。
 「精神病院ブーム」という表現が適切であるかどうかはとにかくとして,結核療養所の斜陽化に対比し,精神病院の過去数年間における増設傾向にはまったく目を見張らせるものがあった。厚生省の資料によると,昭和36年末から41年1月末までの約4年間に,全国で186病院48,802床の新設をみ,一般病院に併設されている精神病床を加えると67,347床(月間1374床),実に病院数で34.2%,病床数で63.2%の増という驚くべき実績を示している。

関東信越管内国立病院のJ-chartによる研究検査科業務量の分析について

著者: 橋爪藤光 ,   佐藤乙一 ,   坂元正徳

ページ範囲:P.63 - P.67

まえがき
 J-chartはわが国では1963年に城,渥美,藪下らがスーパーマーケットの経営状況を分析するために応用したものであるが,本研究者の一人である佐藤らは1965年に津田の指導を得て「臨床検査業務の相対評価」を行なうためいちはやく導入し,官公私立病院のうち,中規模と見られる病院6施設を対象として考察を行ない,病院管理学会および臨床病理学会において発表した。
 最近,衛生検査業務は医療のなかできわめて重要な位置をしめ,診療機能の高低を反映する大きな要素の1つになっている。したがって,研究検査科は忙しい職場として扱われているが,この評価はたんに衛生検査技師1人当たりの稼動点数および稼動点数のみによってその多少を基準に検討され,作図によって評価する方法はなかった。そこで私どもは関東信越地方医務局管内25国立病院の業務内容と活躍度の評価要素を新たに考案のうえ,多くの因子からJ-chartによる分析を試みたのでその概要を報告する。

--------------------

病院のトップマネージメント(その1)—第16回日本病院学会パネルディスカッション

著者: 守屋博 ,   橋本寿三男 ,   石原信吾 ,   河野稔 ,   阿久津慎

ページ範囲:P.70 - P.79

司会(順天堂大学教授守屋博)
 それではただいまから「病院のトップマネージメント」について,先生がたのお話を伺いたいと思います。元来,人それぞれに性格のあるごとく,団体もやはり一つの性格を持っております。その性格は一体どこで決まるかというと,その組織体の各メンバー1人1人の性格が反映することはもちろんでありますが,そのうちの50%以上はトップマネージメントである。病院の場合は院長,会社の場合は社長,軍隊でいえば司令官,こういうような人の性格が影響するのであります。また影響するようでなければ,これはトップマネージメントといえないわけであります。ある場合は,その人の性格がそのまま裸の形でその団体の性格になる場合もあるし,個人病院なんかの場合には,これが非常に多いのでありますが,ある場合は水のごとく,ほとんどその性格が現われないということもあります。場合によると,系統病院などにおいては,その性格を決定するのは,むしろ院長のところを通り過ぎて,もっと上であるということになりますと一体トップマネージメントの定義はどこであろうかと,結局,最高政策決定機関であるということになりますが私はトップマネージメントの仕事は大きく分けて,日常の整備と申しますか,病院でもし事故があれば,誰が責任をとるかという守備的方面と,それからその事業体を一体どっちへ持っていくかという権威的な,攻撃方面のマネージメント,この2つに分けることができると思います。

日本病院協会主催看護Travelling Seminarのお知らせ

著者: 編集部

ページ範囲:P.83 - P.83

 日本病院協会主催の第1回アメリカ病院看護研究団参加者の募集が行なわれている。これは現在病院の第一線で働いている看護婦の方がたを対象とし,アメリカの病院看護の実情を見学し,研究することにより,わが国の病院看護の向上をはかることを目的としている。研究対象病院はもっとも進歩的といわれる大平洋地域の8病院が予定されている。日定および募集要領は下記の通りである。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.88 - P.88

 今年の冬は,1月中に特別な寒波が襲来して豪雪を降らした以外は,概して暖かい日が多かったように思う。しかし小生は昨年11月以来3か月にわたる気管枝炎に苦しみ続けた。血圧は上るし,喀疸,咳嗽に日夜せめられ,スッカリ心まで弱ってしまった。しかし一陽来福の春をようやく迎えました。慢性気管枝炎の世界的で学会でも問題になっているようだが,都会の空気汚染に関係があるのだろう。
 本号は「放射線部のあり方と問題」を特集してみました。昨年の日本病院学会のパネルの報告と合せて,さらにそれを追求して見ました。巻頭には守屋教授の見解を発表していただきましたが,期せずしてパネルで論議され主たる問題点について論述されています。従って学会のバネルの速記録を読まれると,各演者がそれらの問題をめぐって具体的にかつ実例的に説明されているように見えます。合わせて「放射線部のあり方と問題」の理論と実際とでも申せましょう。

霞ガ関だより

病院経営管理事例集について

著者: E.N.

ページ範囲:P.86 - P.87

 厚生省が病院管理の実際について,今後の改善に役立つと思われる各種の事例を集録し,経営管理の向上に資することを目的とした「病院経営管理事例集」がこのはど発刊されたが,この小冊子も昭和39年以来回を重ねて第3巻となった。
 従来,事例の選定にあたっては公募を建て前として病院の経営主体,性格および規模などにかかわりなく過去において実践した事例で,今後の経営管理上広く参考となるものを集録することをその編集方針としてきたのであるが,病院にはそれぞれの伝統,慣習があり,他の病院の事例がただちに自分の病院にとり入れることが困難な場合もあろうし,規模が異なりすぎて,いくら良い事例であっても導入が不可能なケースもあり得ることは想像に難くない。しかし一方,従来のやり方が最善の方法であると固く信じて何ら改善の方策を考慮だにしない病院があったり,何か新しい方式なり仕組みなりを,せっかく知識として知っていても,現実の仕事の場に応用することをちゅうちょする保守的な雰囲気にかこまれて,因循姑息のまま推移してしまう病院もままみられるところである。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?