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雑誌目次

雑誌文献

病院26巻5号

1967年05月発行

雑誌目次

特集 病院職員とレクリエーション

「レクリエーション」の意味するもの

著者: 三隅達郎

ページ範囲:P.15 - P.18

レクリエーションという特定の活動はない
 社会教育関係の講習会や研修会には過去において往々にして「レクリエーションの時間」というものが組み込まれていたものである。そして何をするかと思うと,フォーク・ダンスを踊ったりゲームをやらせたり,歌を歌わせたりするに過ぎなかった。たしかにフォーク・ダンスやゲームや歌はレクリエーション活動としての種目であることに間違いはないが,そんなことで「レクリエーションの時間」を埋めるということはあまりにもお茶をにごしたやり方に過ぎないし,レクリエーションとは何かの行事のときにやるものだとの誤った解釈を与える原因となっていたように思われてならない。
 はなはだしいものとしては夏のキャンプの時間割の中に「レクリエーションの時間」を組み入れて疑わない人が居る。その時間に何をしようとするのか理解に苦しむものである。キャンプ全体がレクリエーション活動であることを否定したうえでなら話はわからないでもないのだが。

労働力保全とレクリエーション

著者: 斉藤一

ページ範囲:P.19 - P.22

人間の生活時間の構成
 働らいて,生活の資を得,それによって自分の余暇を楽しみ,また栄養と睡眠をとって,消費された労働力を再生産するという,人間の一日の構造は,今も昔も,形としては少しも変っていない。
 いいかえれば,人間の一日が,通勤や職場での労働という,収入のための生活時間と,栄養・休暇・睡眠という,生理的な生活時間と,家事的な生活時間と,さらに教養・娯楽・運動・交際などの社会的文化的な生活時間とから成り立っているというかぎりでは,まったく同じである。

人間関係とレクリエーション

著者: 杉政孝

ページ範囲:P.23 - P.26

問題意識の方向
 病院職員のレクリエーションと人間関係の関係を考えるのが本題の主旨であるが,実は,このような問題についてはあらかじめいくつかの前提のもとに問題意識の方向を確認しておかないと論理が混乱するおそれがある。肉体的に病んでいるだけではなく,心理的にも不安定な状態にある患者を対象として仕事を進める病院の職員にとって,気分転換のための健全なレクリエーションが必要であることは,製造業などの一般企業体の従業員の場合にも増して,明らかなことであろう。また病院組織が多数の人間の協力によって運営されている以上,その職員間の人間関係を改善する必要性についても,異存のあろうはずはない。したがって,本稿においても,病院職員の健全なレクリエーション活動の充実が,人間関係の改善につながり,さらにそれが患者へのサービス行動にも,また病院の管理運営にも良い影響をもたらすであろうことが,暗黙のうちに前提されているのであろう。基本的な問題意識としてはそれでなにも疑問はないように思えるが,少し立ち入って考えてみると,レクリエーションの充実が人間関係の改善につながり,それがそのまま患者および病院の経営者さらに職員自身にとって望ましい最終的な結果を生みだすというこの楽観的な三段論法は,必ずしも一定の意味内容を含んでいるものではないことに気がつく。

病院管理とレクリエーション

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.27 - P.30

雨が降ってもレクリエーションに参加
 雨がはげしく降っている。5回にわけたレクリエーションの第何回目かの一隊が今日も出かけることになっている。しかし,こんな雨じゃせっかくのレクリエーションもだいなしだ。可愛そうだがしかたがない。今度のメンバーの中には精進のよくない連中がよほどたくさんいるにちがいない。このぶんではきっと参加者も少ないことだろう。そう思いながら,しかし,とにかく病院の玄関まで見送りにでた。
 ところがどうだろう。3台連ねた貸切りバスの座席はほとんど埋まっている。「こんな日で残念だね。でも,これじゃむこうに着いても遊べないから,ただバスに乗って行ってくるだけじゃないの」と1人の職員に声をかけてみる。「でも,その間病院の仕事から離れられるだけでもいいんです」と相手の返事はしごく明快だ。まわりの人達もニヤニヤしているところをみると皆同感らしい。天気でなくて少しはがっかりしているのだろうが,それでもやはり,そこには行楽にむかう前のうきうきした気分がいっぱいただよっている。私の心配は杞憂だったようだ。そして,私自身もいつのまにか皆と一緒の楽しい気分にひたっていた。

各病院におけるレクリエーションの実際

著者: 河野稔 ,   赤星一郎 ,   石田一夫 ,   斎藤誠 ,   木部清一

ページ範囲:P.43 - P.48

人間革命をめざす外遊制度
 当院でのレクリエーションの実際をのべる前に私のレクリエーションについての考えを述べるとレクリエーションはrecreateであり,企業目的に合うため,日常の仕事よりrelaxをしてtensionをとり翌日の仕事にrefreshになって働くために存在するのであり,レジャーやバカンスなどの有するいわゆる楽しみのための楽しみに終始するのには賛成しない。したがって当院のレクリエーションはすべてかかる観点より本人または家族があくまでも仕事に生きがいを感じ,死に面したつもりで働く心がまえを助長するのを目的として,レクリエーション活動をしている。すなわち企業あっての個人であり(裏をかえせば個人あっての企業ともいえるが),これをさらに止揚して全体と個人が一体感になるごとく,また自他一体になるごとく,仕事やレクリエーションを通じて指導しているわけである。一般の会社,病院などでやっているレクリエーションはあとで簡単に述べることにして,まず特筆すべき外遊制度から述べよう。

座談会

病院職員とレクリエーション

著者: 落合勝一郎 ,   河上利勝 ,   紀伊国献三 ,   辰沢九市 ,   東義晴 ,   庄司春江

ページ範囲:P.32 - P.42

 さまざまな職種によって構成される病院の人間関係は複雑である。さらに患者という特殊な感情をもった人間への,自己の感情をおしころした,奉仕が要求される。こうした緊張のうずにたえずもまれつづける病院職員にとって必要なのは,それを"ときほぐす"ことなのだが……。

グラビア

病院の門

ページ範囲:P.9 - P.12

 病院の門は病院の顔である。とっつきのよい顔もあれば,いかめしい顔もある。
 病院の門は病院の姿を物語っている。だれが,どういう心で,この門をきめたのであろうか。

私的病院シリーズ・1

完備した設備に家庭医の心—佐藤病院

ページ範囲:P.5 - P.8

 佐藤病院は,父子二代にわたる胃腸科と呼吸器科の個人病院である。昭和40年に,地上5階・地下1階(延面積1408.35m2)の新しい病院を建築した。病床数は90であるが,設備に工夫をこらし,運営の合理化を図り,個人病院に新しい道を求めている。
 病院の構えが大きくなると,患者との接触に固苦しさを生じやすいが,"家庭医"としての配慮がにじみ出ている。小さいところにも心が配ってある。これが個人病院の一つの特徴であろう。

病院の広場

地方小都市の病院

著者: 佐野忠正

ページ範囲:P.13 - P.13

 従来日本の医療は,医科大学および大学病院が中心となって発展してきたようである。したがって,この付近は医療に恵まれ,反対に医科大学から遠く離れた地域は,その距離に比例して医療に立ち遅れが見られた傾向にあったことは否定できない。
 現在私が勤務している病院の所在県は,人口約150万人を擁しているが,医科大学はなく高等看護学院も最近まで国立病院1カ所にとどまり,医療関係者の多くを他都県に依存していたため,医療面においての後進性がうかがわれた。

病院図書館

—森福省一著—「病院の就業規則—解説とつくり方」

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.18 - P.18

有益な人事管理上の参考書
 「常時10人以上の労働者を使用する使用者」は就業規則を作成し,労働基準監督署長に届出なければならないという労働基準法の規程がある。つまり病院診療所に従事する医師,歯科医師,看護婦,医療技術員,事務員などすべての職員が就業上守らなければならない事項とか,労働時間,休日,賃金などの労働条件について.具体的に細目について規程しておくことが法規的にも必要なのである。
 これが法的義務である以上,10人以上の従業員をもつ診療所病院は必ず就業規則をもっているはずであるが,形式的にはともかくとして,その制定の実情は満足できるものではない。とくに大病院は多く国公立であった関係もあり,病院独自の研究努力は十分でなかったように思う。

—ポール・ウィリアムソン著 浦田 卓・他訳—「診療所診断学」

著者: 佐々廉平

ページ範囲:P.22 - P.22

初期診断のコツを究める
 本書は北米合衆国フィラデルフィア市の一診療所長Paul Williamson博士の著書を東京都の4人の診療所長により翻訳されたもので,原著は米国語,訳書は東京周辺の会話言葉で記されている。
 著者の序文および"訳者のことば"の中に述べてあるとおり,人間の病気の99%が簡単直截的のもので,残りの1%が複雑難解の病気である。しかるに北米における現代の医学教育は,この複雑難解の病症の釈明にのみ力を入れる傾向がつよく,このことはわたしたちの学生時代に,本邦大学の臨床講義でも同じように,稀有の難解の病人のみみせられていたが,現今も同じだとおもう。

第5回全国自治体病院学会特別講演

病院における業務能率改善の対策について—科学的な考え方に近代的な管理手法の導入を

著者: 小林末男

ページ範囲:P.51 - P.57

 ご紹介いただきました小林でございますが,約1時間ほど時間をいただきまして,業務管理について一つの基本的な考えかたを述べさせていただきます。私は,必ずしも病院管理などにつきましては深い経験,研究をしておりません。したがって,皆さんがたの期待に十分こたえるようなお話ができるかどうか,いささか怪しい点がございます。しかし一般企業体,行政体についてはある程度の知識をもっていますのでこれらと病院とを結びつけて,病院管理の一つのありかたを述べてみることにします。

研究と報告【投稿】

名鉄病院におけるEDPS化の現況

著者: 小川保彦

ページ範囲:P.59 - P.66

はじめに
 最近の電子計算機(Electronic Data Process-ing System,以下EDPSという)は,その技術研究の恩恵により,性能の向上はめざましく,使用者側により使いやすくなりつつある。したがって,その活用は大企業にとどまらず,中小企業にまで普及されるようになってきた。しかし,この中小企業の範疇に属すると思われる病院が,EDPSを採用している例はごく一部にすぎない。一般にEDPSの導入を考慮する場合は,「入力費用<出力効果」であることを,たえず念頭にいれて作業にかからなければならない。そこで,病院内のEDPS適用範囲のルーチンな業務をながめてみると,患者会計,入院予約と室のわりふり,薬品および医療器具の購入と管理,ドラッグインフォメーション,労務管理,文書管理,経理,看護婦の作業管理,医学の研究,問診,診療録管理,図書管理などでその幅はまことに広い。しかし,この業務へEDPS導入の段になると,それをはばむいくつかの要素が考えられる。例えば,①作業の種類が多いのにその量は少ない,②低医療費の現状では費用の捻出が困難,③病院人の企業的感覚の欠如と保守性,④機能部門作業のシステムプラニングの困難性などである。

病歴管理に関する業務改善—特に外来病歴引出作業の改善について

著者: 木村臻策 ,   筧芳信

ページ範囲:P.67 - P.72

病歴管理その後の業務改善
 病歴管理は近代病院として不可欠の要素であることは先進欧米諸国の常識である。わが国でもこのことに関心が高まってきてはいるが,今日なおいまだしの感を深くするのに,いまより数年前の昭和36年にガンセンター病院に衣がえした当院は,翌37年から入院だけについてであるが病歴管理の中央化を断行して今年で6年目を迎えた。当時全国でも数少ない病歴管理を地方病院で当院が取りあげたのであるから,その不安と苦労は非常に大きかった。病歴管理実施前後の経緯ならびに軌道にのるまでの苦心についてはすでに何回も発表したので1)2)3)4)今回はその後これまでの間に試みた工夫や改善策の概略を述べることにする。
 病歴管理作業のうち常に最も苦心を要するのは病歴の提出促進および紛失防止であり,記録確認(記入もれ防止)と統計である。

職員の労働時間管理について

著者: 岸弘

ページ範囲:P.73 - P.77

 労働時間の短縮は,最近全国的な傾向として次第におしすすめられ,特に週休の増加の形で,これを採用する業種が少なくない。
 当初,主として製造業において試みられていたが,昭和41年の後半においては,サービス業にもおよび,すでに金融業を始めとし,デパートなどにおいても隔週2日休日制,もしくは週休2日制を実施している。

事務長その生活と意見

真実という一本の筋を通して

著者: 森直一

ページ範囲:P.78 - P.80

 家計の心配と家事のやりくり,そして家族(病院職員)の慰安と,事務長の仕事はかわることなく忙しい。こうしたなかで,最も劇的な出来事は病院ストであった。この争議から得た教訓は,何事にも"真実"という一本の筋を通して,ということだった。

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病院の門

著者: 竹内一夫

ページ範囲:P.81 - P.81

 筆者は一昨年の夏から秋にかけて欧州の7カ国の代表的な脳神経外科の施設を見学する機会に恵まれた。もちろんその折にはたくさんの写真をとってきたが,帰国してから整理してみると,いろいろなところで病院の門を写してきていることにきづいた。これは欧州では病院の門がわが国のそれとは大分異なっていて,多くは遮断機をもったたいへんいかめしい関所になっているところが多いため,しらずしらずのうちにシャッターをきってしまったためであろう。
 そもそも欧州の病院はむしろ大部分がいまだ旧式で,近代的の病院はあまりみられなかったが,多くは静かな環境に恵まれた地域に建てられていた。外来患者は極めて少なく,わずかに救急患者が運び込まれたり,紹介患者や過去に入院したり手術を受けたことのある患者たちが訪ずれてくる程度である。したがって病院の構内はひっそりしていて,面会者もまばらである。重症患者の枕頭にさえ家人がつきそっている光景は,ほとんどみられなかったほどである。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.86 - P.86

 本号も発刊が大変遅れて申訳ありません。医学書院の社内事情によるもので,いたしかたない事情もありましたが,編集関係者として残念に思っています。

ホスピタルトピックス 看護

ユニットマネージャー

著者: 吉武香代子

ページ範囲:P.82 - P.83

 看護婦は看護婦本来の業務に専念すべきであるといことは,どこに行っても聞かれる言葉である。アメリカの一部の病院では,最近看護婦からいっさいの非看護業務(Non-Nu-rsing Tasks)を除き,看護婦が安心して患者の看護に専念できる環境を整えることを目的として,医学や看護の教育を受けない素人のユニットマネージャーの制度をとり入れている。
 伝統的にいままでの看護単位では,主任看護婦が患者看護に関するいっさいの責任を負うとともに,病棟の非看護業務の管理も併せて行なってきた。看護に関して最も深い知識と経験を有し,最も熟練した技術を持ち,本来なら最高の看護を患者に与えられるはずの主任看護婦は,物の管理や他部門との連絡に多くの時間を費し,ほとんど患者に接する機会がなかった。非看護業務は,主任看護婦だけでなく,一般看護婦にも及び,患者看護に使われる時間はそれだけ割引きされていたわけである。

特殊病院

Administrative Therapy (その二)

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.83 - P.83

 社会科学が精神病院にスポットをあてている間に,精神科医たちは独自の立場から施設改善の歩みをすすめていた。それは経験にもとづいてなされたものであるが,人間的確信に満ち,人類愛に満ちていた。
 その嚆矢はドイツのシモンの作業療法である。それはオランダに移植されて見事に開花した。耕作,軍用品製作,電気製品組立,衣服修繕などの作業は慢性分裂病者の特有症状を変化させ,失禁患者は消失し,半裸俳徊はなくなった。

霞ガ関だより

WHO病歴および病院統計のセミナーに出席して

著者: 松浦十四郎

ページ範囲:P.84 - P.85

 1966年11月28日から12月5日まで8日間マニラにおいて,「病歴および病院統計」についてのセミナーが開かれた。このセミナーは「人口動態および衛生統計のセミナー」の一部として行なわれたものである。
 セミナーには西太平洋地域の15の国または領士から22人が参加し,WHOからは本部の衛生統計部長のローガン博士を始めとして,衛生統計,病院統計および病歴管理の専門家が助言者として参加し,提案された議題について討論を行ない,それをまとめあげて行くという形がとられた。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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