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雑誌目次

雑誌文献

病院27巻1号

1968年01月発行

雑誌目次

特集 世界の病院

世界病院管理専門調査団の視察旅行について

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.35 - P.40

発起
 第2次大戦後,わが国においては,急速に先進諸国の医療制度や病院管理に関する関心が高まった。もちろん明治以来かつてない諸制度の改新が行なわれたのであるから当然ともいうべきであろう。戦前においても多くの医師が先進国に留学し,欧米の諸制度をとり入れたことは事実であるが,しかしこの人々は,主として医学医術そのものの研究や修練のためであって,病院管理や医療制度を視察することが目的ではなかったから,こと医療制度や病院管理については群盲象をなでるのきらいがあり,これらの問題に対する正しい認識を持ち帰ったものは皆無であったといっても過言ではなかろう。
 しかしながら終戦後の状況は全く趣きを異にしたものであって,戦前と違って社会的要請が強く,制度そのものについて関心を持たざるをえない状態になった。終戦初期の時代はWHOなどの後援による厚生省関係者のみが調査に赴いたが,次第に病院長ら病院関係者が自発的に渡航するようになり,海外渡航が自由になるや集団で視察旅行に出るものが急速に増加してきた。このように多くの病院長が海外を視察することは,わが国の病院管理の進歩に大きく貢献するものであるが,残念なことに病院長のみの旅行団では,なお病院全体のあり方を眺めうるとはかぎらない。しかもわが国の病院を改善するためには,単に院長の認識ばかりでなく,病院幹部の各分野のものが実際に目で見,直接耳に聞くことがより効果的であるはずである。

見て来た病院のよいところ

著者: 中佐希一

ページ範囲:P.41 - P.49

調査団に参加して
 今回の調査団は事前に3回にわたり欧米各国の医療制度環境などについて研究会を開き,また各国で親切な案内紹介があったので,欧米各国の医療制度などが不明確のため病院設計図面を見ただけでは理解が困難であった点などが良く解り,非常に幸いであった。
 各国の病院は,各国の立場で研究して建築した病院であるだけに,いろいろと特徴があるが,今回は建築専門分野のことは別の機会にゆずって,断片的紹介になるとは思うが,皆様が病院を建築なさる場合,直接お役にたつと思われること,また考えておいていただくだけでもためになると思われることなどを中心に,写真とともに,ご紹介したいと思う。

シカゴの7日間—第15回国際病院大会印象記

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.72 - P.75

病院医療のメッカ,シカゴ
 アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ市。この地名は聞く人によりさまざまな意味をもって受けとられる。ある人はアル・カポネを連想し,ギャングの街,悪名高き街を思いうかべよう。また世界一の規模をほこった屠殺場のイメージもあろう。風の街(ウインディシディ)と呼ばれるように気候の急変の多い何かガサガサした大都会の感じもあろう。しかしこの街がアメリカの医療面で,特に病院医療にかんする面でメッカともいえる中心であることは意外に知られていないのではないか。
 ここにはアメリカ病院協会の本部がモダンな12層の威容をミシガン湖畔にほこり,そこから歩いてすぐの範囲内に,世界一の圧力団体(?)アメリカ医師会本部,病院標準化運動の本拠地アメリカ外科学会本部,病院管理者学会本部,アメリカの医療保険中最大の規模のブルークロス本部が並んでおり,5つの病院,リハビリテーションセンターなどからなるノースウェスタンメディカルセンターも目と鼻の先にある。その他シカゴ大学,イリノイ大学を中心に超一級の病院群により構成されるメディカルセンターもある街である。加えて病院管理に関係するものにとって忘れることのできないことは,あの病院管理のバイブルといわれる大著「病院の組織と管理」の著者であり,専門病院管理者養成の推進者であった,病院管理の父マルコム・マッケクレン博士が日本訪問の直前急逝されるまで長く居住され,大きな足跡をのこした街なのである。

座談会

各国の病院制度をめぐって

著者: 吉田幸雄 ,   山口寛人 ,   小林正 ,   左奈田幸夫 ,   大谷育夫 ,   紀伊国献三

ページ範囲:P.50 - P.59

 やはり欧米の病院制度はわが国のそれよりも多方面にわたって,数段の進歩をとげていた。これを支えてきた最も大きな柱は,地域社会と病院の相互の信頼と密接な協力関係であった……。

各国の病院管理のトピックス

著者: 吉田幸雄 ,   安冨徹 ,   大久保正一 ,   石原信吾 ,   甕忠子 ,   森直一 ,   紀伊国献三

ページ範囲:P.62 - P.71

 「病院制度をめぐって」の後をうけて,ここでは病院管理のトピックスが中心。管理とは金のかかるものである,アマチュア仕事の段階は終ってこれからはプロでなければならぬ,など,欧米の病院管理から得たものは大きいようだ。

グラビア

世界病院管理専門調査団旅行アルバム

ページ範囲:P.5 - P.12

 わが国の病院管理も発足してから19年の歳月を重ねた。この際,新しく世界の病院の見聞を広めようと世界病院管理専門調査団が組織され,44日間にわたって欧米11ヵ国の主要病院および関係施設33ヵ所の見学を実施した。期間は昭和42年7月27日から9月8日までであり,参加者は26名であった。参加者はそれぞれ病院管理のベテランぞろいであったので,見学の焦点もきびしく,また討論のつきるところがなかった。
 くわしい報告は別にゆずるとして,旅行アルバムを軽い気持で開いていただくことにしう。

欧米病院偏見旅行記・1

プロローグ

著者:

ページ範囲:P.14 - P.14

とかく海外事情というものは,ややもするとよい面のみが紹介されがちで,これも一つの偏見といえよう。であるならば,その逆の意地の悪い偏見もあってよいはず。題して「欧米病院偏見旅行記」

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滅菌の原理と実際(1)

著者: 牧野永城

ページ範囲:P.15 - P.15

 滅菌法および無菌法は病院の日常業務においてきわめて重要な領域であることはいうまでもない。患者を感染の危険から守るために,手術場や中央材料室の責任者にとってはもちろん,専門領域にあるとないとにかかわらず,病院の従業員の仕事の上に直接間接に常に関連してくる問題である。しかしこの問題に関して,種々の学術的な文献は多いが,手頃で組織的な記述が案外少なく,看護婦,看護学生さらには手術場の関係者や外科学を修練しているレジデントなどからさえも,ときおり不満の声をきくことがある。この欄に,ここしばらく連載を試みる著者の意図は,滅菌および無菌の問題をその原理と実際を関連させて,なるべく簡明に解説してみたいということである。

ナイチンゲール賞を受賞して

著者: 仁木イワノ

ページ範囲:P.78 - P.79

看護婦として歩んできた道を回顧して
 明治30年6月23日徳島県の片田舎に生まれ,幼少にして父に死別,母の実父,私のためには祖父に当る医家に育ち,成長してから赤十字の看護婦になってお国のためにつくしたいという一念から日本赤十字社の看護婦になることを決意し,受験することになった。
 大正6年3月入学試験にパスし,同年4月1日,日赤徳島県支部よりの委託生として香川県日赤支部病院救護看護婦養成所に入学が許可された。修業年限3カ年で厳格な規律,はげしい訓練に耐えることができ,3カ年間,1日の病欠もなく,大正9年3月31日卒業のよろこびを迎えることができ,家に帰ったが,自から選んだこの道一筋を歩むべく決意を新たにし,臨床看護修業のため日本赤十字社京都支部外勤部に入所し,修業を続けること2カ年にして日赤徳島支部の斡旋により,当時徳島県下,唯一の外科病院に看護婦長として就任し病院の管理に看護婦の指導監督にまた看護婦生徒の教育に微力をつくした。

第5回日本病院管理学会総会印象記

著者: 高橋政祺

ページ範囲:P.80 - P.83

 昭和23年新しい医療法の制定によって,わが国の病院の歴史に新紀元を画してから20年,新しい病院はその内容を充実させてきつつある。昭和24年病院管理研修所の設立によって,病院管理が導入され,次いで東北大,日大,順大,慶大に病院管理学講座が開講し,多数の研究者が生まれるに及んで,これらを結集して斯学の発展を図るべく,本学会が誕生したのであった。昭和38年その第1回総会を開催してから,早いもので,本年は第5回総会を10月27,28日の両日,国立公衆衛生院で盛大に挙行する運びとなった。
 学会長は斯学の泰斗,吉田幸雄病院管理研究所長である。本年は会長の発意によって,会の第2日は統一論題とし,病院組織の問題と取りくむことになった。このような試みは本学会でなければできないことで,時間をかけてひとつの問題をじっくりと研究するこの方法は今後も踏襲したいものである。

看護Travelling Semniar—第2回アメリカ病院看護研究会

ページ範囲:P.84 - P.85

1.名称第2回アメリカ病院看護研究団
2.期間昭和43年5月8日(水)〜5月21日(火)14日間

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.90 - P.90

 明けましておめでとうございます.本号の発刊が遅れ,大寒に入っての新年のご挨拶とはいささかとまどいがちですが,新年発刊の第1号であることには間違いありません.

病院の広場

第15回国際病院大会

著者: 橋本寛敏

ページ範囲:P.17 - P.19

 国際病院連盟の第15回大会が,米国シカゴで去る8月24日から29日の6日間,開催されることになったので,12人の連盟管理評議会の一員である日本病院協会代表者として,私も出席した。
(1)私の泊ったパーマー・ハウスに大会の本部があるので,第1日目24日の早朝登録するに便利だった。それに引き続き初顔合わせの懇親会があり,大会長のEdwin L. Crosby夫妻もロンドンから来た連盟の総事務長のHarrington Hamesも出席した。その他の女の方々も多数集まって,にぎやかな歓迎だった。それから国際病院連盟の管理評議員が皆そろって米国病院協会の代議員会に招かれてStock Yard Innに行き,きわめて盛大な歓迎の宴があった。

新春にあたって 明日の医療に期待するもの

福祉国家の実現を

著者: 井手一郎

ページ範囲:P.20 - P.22

 最近わが国においても,未来学的な長期展望が数多く発表せられており,その2,3をとってみても日本経済研究センターの"1985年の日本経済"や,米国のハドソン研究所長のハーマン・カーンの"紀元2000年"などがあり,各々種々の論議をまき起こしている。
 このように世界的に未来研究や長期展望が行なわれるようになった理由は何であろうか。

先進国なみの社会保障

著者: 亀卦川正喜

ページ範囲:P.22 - P.23

 「病院」という本が発刊されてから毎月私は見ているが,種々のことを勉強させられて感謝している。
 私は病院の事務長を17年間もやらされ,おそらく停年までこのまま続いていくことだろうと思っている。したがって今後の医療のあり方についての希望も,一病院の事務長の夢物語になる気もするが,与えられた題であるのでご容赦いただきたい。

産業心理学による医療組織の精神的再編成を

著者: 堤昭憲

ページ範囲:P.23 - P.25

 自動分析装置や電子計算機が,医療の中で活躍する時代は,いまさら誰の予言もまたず必ず近い将来に必然的に訪ずれるであろう。文化の速度は幾何級数的に加速されるからである。ところが医療は,自然科学的分野における進歩の他の面で,いちじるしい後進性を有している。この点の改善が急務であるという点において,私は身近い明日の医療に期待したい。それは,医療の中の人間関係を中心とした,マネージメントの改善についてである。
 機械化や自動化が進むといっても,医療は他産業に比較すれば,生産手段(?)の中枢において人の代りに精密機械で用を足してしまうことは,はるかに困難である。ここに医療集団成員のモラール(士気)が重要である根拠があるが,人為的要素が大きい医療が,あらゆる点で機械化が先行した他産業に比較して,はるかに産業心理学的な訓練が不足している点は残念である。

病院業務への電子計算機の活用

著者: 小川保彦

ページ範囲:P.25 - P.26

 日頃から実務に追い回されているため,ここ数年来,年が新たまるといっても,ものを考えるというか,瞑想にふけるということがなかったが,たまたま新春にあたっての稿を求められてみると,やはり新春のもつ,おおらかな雰囲気になって特別の気分と希望が湧いてくる。したがってここでは,毎日診療録管理にたずさわる一方,EDPS(電子計算機)を扱っている担当者からみた範囲内において,思いつくままに稿を進めてみたい。

医療の進歩に遅れない栄養管理

著者: 米沢亀代子

ページ範囲:P.26 - P.28

 1968年おめでとうございます。
 医学の成果が病院という機関を通じて具体性を発揮し人々に幸福をもたらすために今年もまた多くの医療関係者の活躍が期待されます。

もっと良い環境にしたい

著者: 瀬川篤宏

ページ範囲:P.28 - P.30

 従来病院は殺風景で汚れたところと考えられていた。ところが社会経済の発達に伴い,病院建築は木造平家建から鉄筋コンクリート造りと,建物が高層化され,また病院設備も複雑化し,病院近代化の光で世を照らしている中で,医療ということを考えた場合,医療とは何かと考え,次のように簡単に答えることであろう。
 医療とは医師と看護婦がいて患者の病気を医学的に化学的に治療することであると考えるに違いない。しかしそればかりでは患者の病気を1日でも早く直すことはできないであろう。なぜならばいくら医学が進歩しても患者自身の生活環境を良くしなければ患者の入院目的を達成することはできない。

看護技術の正当な評価を

著者: 達子房

ページ範囲:P.30 - P.32

 昭和42年12月1日より健康保険法の規定による診療報酬点数表の一部が再度改正になったのは周知のとおりである。配布された点数表に目をとおしてみると,従来よりかなり大巾に改正されており,特に手術料や処置料の一部は80%の増加がみられたようだ。その中の大体の項目は,1)初診時の基本診料39点が43点に増加され,従来の特定疾患に対する加算は廃止された。2)再診基本診料は7点より10点に引き上げられ,また新たに内科加算2点がつけ加えられた。3)入院時基本診療は1日につき㋑1カ月を経過しないものは51点より57点に,㋺1カ月以上3カ月未満までは45点より51点に,㋩3カ月以上の入院では41点より46点に加算されている。基準寝具は4点より5点に,基準給食は28点より32点になり特別食はさらに8点より9点となった。看護料金としてのいわゆる基準看護料は一類看護では1日18点より21点に,2類看護では11点が14点に,3類看護では7点が10点となった。その他4)検査,5)レントゲン診断,6)理学療法,7)手術料,といままでの18倍もの増加がみられ,従来の医療技術料があまりにも低かった点を一応の線まで引き上げていることが,注目されている。

ホスピタルトピックス 特殊病院

私的精神診療施設

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.87 - P.87

 フランス精神医学白書(Livre Blanc de la Psychiatrie Française,Tome 1; Edouard Privat社)の第1巻がさきほど公刊された。そのなかで,J. C. SEMPÉは上記の題で1章を書いている。公・私立精神病院の役割についてはわが国でも最近論争の的となっており,彼我の社会保障や医療体系の相異があるけれどもその一文はなかなかの示唆に富んでいる。
 フランスの私的精神医療施設をわが国の通念で理解すると,一般開業と同じ無床診療所,医師数人で構成される有床診療所ないし小規模病院,さらに篤志立の大規模病院と3種に区別されるが,後者はすべて公的に代用病院と指定され,事実上公立精神病院の機能をもつので,ここでは私的施設を前二者にかぎることにする。

霞ガ関だより

第8回国際疾病分類修正

著者: T.K

ページ範囲:P.88 - P.89

国際疾病分類(ICD)
 WHO憲章にもとづいて規定された疾病の分類で,世界諸国における国民の死亡原因,罹病状況を把握し,その疾病の防止を目的とするものである(ICDはlnter-national Classification of Dieseaseの略語である)。
 わが国も国民の死因,疾病統計を公表する場合は,この分類によることを規定している。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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