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雑誌目次

雑誌文献

病院27巻11号

1968年10月発行

雑誌目次

特集 病院医事業務のすすめ方

外来診療費の管理方式

著者: 加藤雄二

ページ範囲:P.19 - P.25

はじめに
 病院というものは,企業体であるか否かは別として,有機体であることは論をまたない。一般企業体に比べ,病院には多種多様の職種が存在しているが,それぞれの職種が有機体的結合をしてはじめて病院の機能を発揮しうると考える。
 一般企業においてのサービスは,通常収益を増大させるための一手段であるとの感が強いが,病院におけるサービスは,公共性により与えるのみでなければならないと考えられている。病院業務の中で対立する要素として患者サービスと採算管理があり,医事業務に従事する者に課せられたものとして,この両者を調和させつつ病院機能を最大限に発揮させるための潤滑油的存在でなければならないことがある。

入院一部負担金の管理

著者: 安永貞雄

ページ範囲:P.27 - P.35

はじめに
 病院が企業であるといえばおしかりをうけるかもしれないが,たしかに一般の商行為を行なうそれとは異なっていることは言うまでもないことである。しかし,医療という業務を行なって報酬を得,それによって病院の経営管理がなされている以上,企業といわざるをえない。
 わが国の病院では,収入の大部分を診療費によってまかなっており,さらに診療費の1/2以上が入院収入によって占められているのが病院の一般的なありかたである。

診療報酬請求方式の合理化

著者: 池田静夫

ページ範囲:P.37 - P.44

はじめに
 医事業務の中で請求事務の占める割合は実に大きい。いやむしろ病院業務の中でといったほうが適切かもしれない。社会保険制度というものが,わが国に生まれてこのかた,それほど,この仕事は病院と医事職員を悩ませつづけてきたのである。
 このやっかいなしろものは毎月,月末から月始めに,きまってやってきて,医事職員からは膨大な個人の時間と自由を奪い,病院からは多額の時間外手当や,その他の経費を奪い去っていくのである。この宿命的ともいうべき医事職員の背負っている業は,われわれがわれわれ自身で合理化・簡素化の方法を考え,それを追い払わないかぎりは,われわれの短い人生すらも奪い去っていくような重大な問題を含んでいるような気がするのである。最近,各地でこの合理化の機運が高まり,具体的な方法も研究され,その成果も多分に上がっていることは非常によろこばしいことである。私の属する福岡県病院協会においても,その中に医療事務研究会というものをもっており,その研究の中でこの合理化の問題と取り組んできたのであるが,以下,われわれ研究会傘下の各病院の実態を参考としながら合理化というものを追っていきたいと思う。

診療費未収金の管理

著者: 町支義明

ページ範囲:P.45 - P.51

はじめに
 現在わが国の医療保障制度は,40数年の歴史をもつ健康保険法を中心とした数種類の医療保険と,社会福祉および公衆衛生を基本理念とした数多くの公的扶助によってまかなわれている。
 これらの各種医療保障にはそれぞれの立法目的があって,その一つひとつが他法とは異なった特性をもっている。そして医療保険の給付にも現物給付あり,現金給付あり,診療報酬単価の異なるものあり,また給付内容や種類,給付期間,給付割合,諸手続き,診療報酬請求要領などの異なるものがあるなど,その内容はまことに複雑多岐なしくみから成り立っていることは周知のとおりである。

診療費計算記録の機械化

著者: 白鳥初

ページ範囲:P.53 - P.60

未来への挑戦—医療も例外ではない
 産業革命が推進されている。このことはすでに現代人の常識である。それは情報革命であり,その中心的役割を果たしているのは電子計算機システム(Electric Data Processing)である。動力革命に比べるとき,その実体が目にみえないだけに認識の度合いが薄いのはやむをえないが,そのスピードはまことに高速である。家庭で電子計算機を利用する日も近いとさえいわれている。

座談会

診療関係事務システムの確立のために

著者: 今村栄一 ,   古川正 ,   藤沢武吉 ,   黒田幸男 ,   麻生ナミエ ,   宇内桂 ,   紀伊国献三

ページ範囲:P.62 - P.71

診療関係事務の一貫処理
病院では,部署ごとにどのような情報と記録が必要とされるであろうか。それぞれの部署が別個に,これも入用,あれもほしいと言ってみたところで,ただ繁雑化をまねくだけである。"診療"という病院の中心業務から流れ出るたくさんの情報と記録の道筋をたどり,整理し,システムを確立して,はじめて"診療"が完全なものとなるのではあるまいか……

グラフ

医療事務と機械化

ページ範囲:P.5 - P.8

 医療事務の機械化は,病院の能率化に必要な条件である。最近,諸種の事務機械が導入されるようになったが,その先端をいくのは,電子計算機(コンピューター)であろう。わが国でもその導入のきざしが見えてきた。
 電子計算機によって,外来窓口における料金徴収は,早く,正確に行なわれ,1か月分の点数は自動的に計算されて,請求書が作製される。また,このデータにもとついて各種の統計資料が,短時間のうちに,正確に得られる。

グラフ

都市の膨張と病院の発展—市立豊中病院

ページ範囲:P.9 - P.12

 豊中市は大阪のベッドタウンでもある。人口は35万。北西部に大阪国際空港,東部には万国博の千里丘陵および千里ニュータウンをひかえている。
 市内豊中病院は,昭和19年に私立病院を買収して発足した。昭和29年には,当時としてはモダンな病院を竣工し,総合病院とはなったが,人口の増加ははげしく,病院の利用者もそれとともに年ごとにふえ,昭和41年には地下1階地上5階の新館を完成させた(539床)。

病院の広場

地域社会と病院の結びつき

著者: 奥田幸造

ページ範囲:P.17 - P.17

 日本にはいろいろの形態の病院が数多く存在し,おのおの開設の目的に沿って,そこに働く人は日夜多忙な診療業務に忙殺されているわけであるが,その中でいわゆる自治体病院では常に地域社会というものが結びついてくる。
 大都会の大病院ではあまりそういうことが意識されないかもしれないが,地方の病院では診療している患者がだれで,どの家と親類で,どのような家に住んで何をしているかもわかる場合が多い。

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金子敏輔君を悼む

著者: 萩原義雄

ページ範囲:P.73 - P.73

 金子敏輔君がなくなられた。本年7月27日のことである。尿毒症だったという。迂濶千万なことでもあり,また氏に対しては甚だ申し訳のないことであるが,筆不精な私は平素お便りを怠っていて,御病気のことを少しも存ぜず,おなくなりになったことも,医学書院から追悼文の依頼があって初めて知った様な次第で,何ともお詑びのしようもない気持でいる。金子君どうぞ許してくれ給え。
 1956年アメリカ病院協会理事長エドウィン・クロスビー氏が日本政府の招きで来日し,沢山の病院を視察されたことがあった。私の病院(当時はお話にならぬ汚いもので,旧陸軍病院時代と大差ないものだった)へも来られるという話で,当時病院を少しでもよいものにしようという気持で一杯だった私は,クロスビー氏から管理上いろんなことを教えてもらおうと思ったが,英語に弱い私には十分なことが出来ないと考え,金子君に通訳をお願いし,快諾を得,日本人離れのした英語でクロスビー氏と話し,随分沢山の知識を与えてもらったことを,今でもなまなましく記憶している。

滅菌の原理と実際(10)

著者: 牧野永城

ページ範囲:P.74 - P.74

VII.外科的包装材料(パック)の滅菌
 熱と湿気の滲透の度合および速度はパックの大きさ,パックの内容の密度,それから滅菌器の中への積み方で左右される。くり返し述べたように,滅菌器内の蒸気は上から下に向かって流れるが,パックはこの蒸気の貫通を容易にするよう,最も抵抗を少なくする工夫が肝要である。
 パックを相互に密接させると抵抗が大きくなる。同じパックの中に布類や金属,トレーなどを混合させると空気の除去が完全にできないことがある。小さなパックに大きなパックをのせるのも蒸気の滲透を悪くする。

臨床研修を行なう病院

ページ範囲:P.98 - P.98

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.100 - P.100

 本号は"医療事務"を特集しました。医療事務ということばから,とかく医師や看護婦などは事務部の手伝いをすることと誤解しがちです。しかし,いかなる仕事にも事務はつきものであって,医師といえども,まず診療録を記載する義務は当然自身がしなければならない事務であるわけです。事務とは情報処理と記録が主体です。したがって,事務員でどうしてもできない組織的・専門的事務については,事務部以下の人の仕事になるわけです。しかも,医療事務という医療に直接関係する事務は,病院のような機能組織では,各部との間の情報処理としても絶対に必要であります。
 したがって,本号はぜひ医局,看護部,薬局,検査部,給食部など各部で通覧していただきたい。特に「診療関係事務システムの確立のために」という座談会は,各部に複写して渡し,医療事務改善会議のよき資料として各部の勉強の糧にしていただくと好都合と思います。

欧米病院偏見旅行記・10

「アメリカ的」とは?—アメリカにて(その2)

ページ範囲:P.75 - P.75

 アメリカほど一律に「アメリカ的」ということばで形容するにふさわしくない国はないそうである。アメリカ全体を説明できる唯一の統一原理は,その多様性にあるとさえ聞かされる。ヨーロッパ諸国や日本を束にしても余るほどの広さや,世界各国からの移民を起源としている国民を考えれば,うなずけるところがある。
 このため,病院についても,これがアメリカ的といいきるのは実は非常に困難なことではないだろうか。たとえばアメリカの病院数一つをとりあげてみても,病院ということばの定義は各州でまちまちであり,アメリカ病院協会加入の病院数というただし書を入れなければ,全国の病院数という表現は正確でなくなる。

病院建設の基本問題・6

医療需要と施設計画(1)—人口増減と病院計画

著者: 浦良一

ページ範囲:P.77 - P.82

はじめに
 1.私は最近,病院の設計だとか,ニュータウンの医療施設設置計画,農村地域の医療施設設置と集落配置との関連についての検討というような仕事を行なう機会があるが,本稿ではそういう仕事を通じて問題と感じていることの2,3について触れたい。
 すなわち,①最近の人口移動と病院建築の地域的需要,②人口減少地帯である山形県下のある地域の実態③農村地域での計画例として八郎潟干拓地の計画の諸点について述べる。

病院を考える・3

これからの病院

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.83 - P.86

成長する病院と老衰する病院
 最近,アメリカのピッツバーグで開かれた病院管理と病院建築の会合で,将来の病院の4つの型が展示された(本誌8月号85ページ参照)。1つは,逆ピラミッド型で,人口過密な都市に造られる。地下5階,その上にL字型の支柱を4本建て,それを支えにして数十階の逆ピラミッドを積み上げるといった奇抜なものである。次が,樹木型増殖建築とよばれるもので,四角の高層建築を中心に造り,その周囲にこどもの玩具レゴのように,1単位400床までの組立病棟が自由にいくつでも取り付けられる建築である。第3が,エレベーターなどをいれた鋼鉄またはアルミの円筒型コーアを何本か建て,これにプラスティックのテントをかぶせた病院でコーアをつなぐ病棟を自由に造り,診療室はそれぞれ高気圧に調節できるようにしてある。そして,最後が海底病院で,外部からの騒音など悪影響を防止するのにたいへんよいとされている。いろいろな技術の進歩がこんな病院を造り出す日も,あまり遠くない将来にくるのかもしれない。
 しかし,私は建築家ではないので,病院の将来ビジョンとして,こうした種類の新しさをもとめようとは思わないが,一度できてしまうと動きのとれなかった建築自体がメタボリズムのできる増殖可能なもの,ないしは開かれた系を持つものに変わろうとしていることはたいへんに興味深い。このような構想が出てくるのは病院の内容が常に変化し,要求される機能水準が刻々と向上してゆくからであろう。

特別座談会

‘教育病院のあり方,をめぐって

著者: 日野原重明 ,   織畑秀夫 ,   大谷藤郎 ,   中西胖 ,   岩佐潔

ページ範囲:P.88 - P.97

"国民医療を担当する優秀な臨床医を養成する……"この意図のもとにスタートした臨床研修制度は,全国に183の教育病院を指定し,臨床の経験豊かな医師づくりにその一歩を踏みだしたが……

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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