文献詳細
文献概要
--------------------
名古屋大学医学部付属病院高気圧治療室
著者: 榊原欣作1 森澄1 榊原文作1 鷲津卓爾1 高橋英世1 川村光生1 小西信一郎2
所属機関: 1名古屋大学第一外科 2名大病院高気圧治療室
ページ範囲:P.71 - P.77
文献購入ページに移動大気圧よりもたかい気圧環境を医学,とくに医療に応用しようとした試みはすでに1600年代に認められる。しかし進歩した現代科学を基礎とした高気圧環境の臨床医学への導入は,まだ比較的新しく,1950年代になってからのことである。
今日,臨床医学の各領域で注目を集めている高気圧酸素治療(または高圧酸素療法) hyperbaric oxygen therapyはその一分野であって,わが国でも最近次第に普及の傾向をみせている。この高気圧酸素治療の基本的な概念は血液ガスの生理学の基礎の上に立っている。大気圧下に生体がおかれているとき,肺において空気から血液中に摂取された酸素は赤血球中のヘモグロビンと結合して,生体の全組織へ輸送され,この酸素を消費して生体はその生命を維持する。一般に正常人の動脈血には酸素が約20Vol%(血液100mlあたり20ml)含有され,他方静脈血には14Vol%内外の酸素が存在する。生体の酸素消費量はこの動・静脈血酸素較差すなわち6Vol%前後であるとされている。この場合には血液中の酸素はほとんどすべてヘモグロビンと結合したいわゆる結合酸素であって,血液水分中に溶解する溶存酸素は0.3Vol%という微量にすぎない。ところが呼吸気の酸素分圧を上昇させた場合にはこの溶存酸素が著明に増加する。
掲載誌情報