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雑誌目次

雑誌文献

病院27巻13号

1968年12月発行

雑誌目次

特集 手術室における看護

手術室における看護業務

著者: 高橋雪江 ,   甕忠子 ,   平島満寿美

ページ範囲:P.19 - P.22

はじめに
 日本で現在行なわれている手術室の看護業務は,患者を中心とした医療のなかで,他にみる看護業務と異なり,直接的なものはほとんど医師の介補的業務であり,一方,間接的な業務に大部分の時間が費やされている。
 こうしたなかでもう一度この分野に目をむけてみるとき,手術室としての性格をみきわめ,その目標を考えたとき,目的を完遂するための建築構造,設備,業務内容などから要員に至るまで,総合的見地から合理的に運営されている理想的な施設はいくつあるだろうか,勤務する者の立場も考慮にいれて,より経済的に,より能率的にとあらゆる面から努力がつづけられているのが姿ではないだろうか。

手術室における‘看護要員配置’について

著者: 山下九三夫 ,   大野菊衛 ,   野手貞子

ページ範囲:P.23 - P.29

看護要員の数の決めかた
 司会(山下)きょうのテーマは,手術室に看護要員がどれだけ必要か,どのような配置をしたらいいか,また配置する場合に外来とか中材とか病室の看護要員とどのように関連をもたせたらよいか,また救急の手術は定例の手術との関連においてどのようにしたらいいか,というようなことが論点になると思います。
 まず,定員ですが,医療法の第19条の4に"看護婦および准看護婦"という項があり,入院患者の数が4人またはその端数を増すごとに1,外来患者の数が30人またはその端数を増すごとに1,ただし産婦人科または産科においてはその職籍を助産婦とする……云々,と書いてあります。この医療法の定員が,実は看護婦定員のわくのかせになっている。公立の病院はもちろん,私立の病院においても,これが不適当な基準になっているので,看護婦の数がどの病院でも苦しい。そのうえ手術室における看護婦要員は,法的にははっきり定員が打ち出されないというのが現況です。

手術スケジュールの調整と合理化

著者: 佐藤正

ページ範囲:P.31 - P.36

はじめに
 病院建築設備について,運営管理の面から,検査室・手術室などの中央化による合理性が認められ,近年セントラル方式が多くの病院で採用されている。また最近の話題としては,心臓移植手術後の管理に関連してICU (集中〔強化〕治療部)の存在が市井に報道され,間接的にせよ,その一部が一般人の耳目に触れるに至った。
 手術室に関しては,もちろん早くから中央化されており,これをりっぱに運営し,本来の目的を十分に果たすためには,人員・設備とともに,手術のスケジュールについての配慮がたいせつであるが,種々の制約によって満足な効果があがらない実状にあると思われる。

救急手術のための看護勤務体制

著者: 松村はる

ページ範囲:P.37 - P.40

はじめに
 近年交通の発達とスピード化,建築の高層化,工場などにおける高度の機械化など,まことに目ざましい進展がみられている。これらの事故防止については,交通安全,あらゆる面での災害防止などと,それぞれの職域においてはもちろん,都市また国をあげての努力にもかかわらず,事故は増加の一途をたどっている。
 当然のことながら,これらの事故によって生じた患者については,多岐にわたる医療が行なわれているが,放置すれば急激に悪化すると推測されるもの,またただちに手術を行なわなければ生命に危険を及ぼすと診断されるものなどについては,昼夜を問わず中央手術室において緊急手術が行なわれているのである。

座談会

手術室の管理と看護

著者: 若林利重 ,   美濃部嶢 ,   戸畑ナツ子 ,   吉武香代子 ,   小原辰三

ページ範囲:P.42 - P.51

 高度にみがきぬかれた手術手技と麻酔の発達とが,手術室の仕事を,驚くほど複雑で専門的なものにかえてしまいました。
 これら手術の大きな変化を,受け入れ側としての手術室では,どう受けとめ,どう対処していかなければならないでしょうか。

グラフ

Welcome! Dr.A.W.Snoke

ページ範囲:P.5 - P.5

 エール・ニューヘブン病院長のAlbert W. Snoke博士が来朝された機会に,「アメリカにおける病院管理の最近の動向」という講演会が開かれた(10月31日)。病院管理研究所の吉田所長が18年前に,同博士のもとで病院管理の指導を受けた因縁があるが,18年の間に日本の日本の病院管理のめざましい発展を驚嘆された。そしてわかりやすい講演と質問に対する懇切な回答が,多数の参会者に感銘を与えたのであった。

熱傷センター—東京警察病院

ページ範囲:P.6 - P.9

東京警察病院の形成外科を訪れる熱傷後の瘢痕ケロイドまたは瘢痕拘縮をもつ患者は,同科外科外来患者の40%に相当しているという。熱傷患者に瘢痕ケロイドが現われると,何回も手術的矯正術が必要であるばかりでなく,とくに関節部では機能障害をおこし,また患者の精神状態にも影響するところが大きい。これらの障害を予防するためには,新鮮熱傷時に適切な治療が行なわれることが必要である。このように熱傷後の瘢痕ケロイドの出現を予防することを目的として,同病院はわが国ではじめての試みとして「熱傷センター」を開設した。この熱傷センターは,重症患者が1日も早く社会復帰できるように,高度の施設と機能を活用させているが,また一般医家に対して,治療上のコンサルタントとして役だつことも意図している。(東京都千代田区富士見2-10)

第16回日本病院管理学会総会

ページ範囲:P.10 - P.12

 病院管理に関する学会は,歴史の古い日本病院学会のほか,最近数を増してきた。その中で日本病院管理学会は,病院管理学の講座のある大学や病院管理研究所などを中心として,病院管理学の探究と発展を目標とした学究的な学会である。
 今回第6回総会が駿河台日本大学病院講堂で2日間にわたって開かれたが,終始熱心な発表と討議が続けられた。25の一般演題のほか,特別講演「病院倫理」,討論会「病院とコンピューター」があった。

病院の広場

私の一生

著者: 杉原禮彦

ページ範囲:P.17 - P.17

 医者になったからには大いに勉強しなければならないと思って,大学の医局にはかなり長い間とどまったが軍隊に引っ張り出されたりして横道にそれ,思うようにならなかった。
 終戦後,都の病院に勤務するようになったが,立地条件と設備が悪かったせいか,暇で仕事にならなかった。

病院図書館

—David H.Clark著 鈴木 淳訳—「精神科医の役割管理療法」

著者: 保崎秀夫

ページ範囲:P.36 - P.36

読みやすく,有益な本
 一読して感じたことは,管理療法(訳者も述べているごとく療法という言葉には問題があるかも知れぬ)という名は用いられていないが,これに近いものが広く日本でも行なわれているのではないかということである。したがって,まことにわが意を得たりと思う人もあれば,いまさらと思う人もあるであろう。旧態依然たる病院につとめている人にとっては,引用されている具体例をみて,どこの国でも悩みは同じであること,あまりにも似すぎているので苦笑するに違いない。
 著者はまず従来の精神病院(あまりにも動きの少ない,ただ保護的な)に対する社会科学者達の批判や,その改善のための僅かな試みの歴史(第1章)に触れ,これに対する精神科医の人道的見地からの病棟開放や作業療法が管理療法の端緒となったこと(第2章),環境づくりでの,患者の治療のための理想的雰囲気づくりの原則(諸条件)を種々論じている(患者の生命・人格尊重から職員の態度・人間関係などにいたる)(第3章)。

—編集 日野原重明・村地悌二—「老人患者の理解と看護」

著者: 相沢豊三

ページ範囲:P.76 - P.76

病む老人の幸福のために
 わが国の人口構造は40歳以上が1億のうちその約30%(3000万),そのうち60歳以上は1000万,人口の約10%と概算され,全国に70歳以上で寝たきりで身のまわりのことができない人は18万以上を占めているとのことである。
 このような人口の老年化は年を重ねるに従って急速に進みゆくであろうと懸念され,老人看護の問題は,数の面からいっても身に迫る切実なものとなりつつある折から,老人に焦点を合わせた看護学の参考書の出版がせつに望まれていた。

—田中高志・二本松徹夫共著—病院の原価管理実務(病院管理新書8)

著者: 森直一 ,   落合勝一郎

ページ範囲:P.91 - P.91

広い視野をもつ好著
 病院における原価計算の必要性を強調すると2つの反応がおこる。1つは"とてもむずかしくて人手がかかってやれない"という反応と"やりたいが,各部門の協力を得がたいので不可能だ"というのが,それである。
 たしかに原価計算は手間もかかるし,面倒な作業でもあるが,少なくとも病院の経営管理を担当する者は,原価管理とは何かを理解し,原価計算によって情報をえることの重要性を認識すると共に,病院管理の理想像を実現するため経済的経営の合理性を積みかさねていく努力を怠ってはなるまい。

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滅菌の原理と実際(12)

著者: 牧野永城

ページ範囲:P.53 - P.53

X.不完全滅菌の防止と検知法
1.不完全滅菌をきたす要因
 121℃,30分の条件を守って滅菌しているつもりでも,実際には滅菌が不完全な場合がある。その原因としては,(1)飽和蒸気を121-123℃という条件の維持に不注意なとき(2)滅菌材料の包装のつくりかた,大きさなどに欠陥があるとき(3)包装材料の滅菌器内の積みかたに欠陥があるとき(4)滅菌時間を正しく守らないとき(5)蒸気滅菌に不適当なものを蒸気滅菌するとき(ワゼリン,タルク粉など)(6)滅菌器の保守,清掃,検査が不完全で,その機能に欠陥が生じたときなどがある。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.92 - P.92

 いよいよ本年も12月となりました。今年は米国大統領選挙,自民党総裁選挙,琉球主席選挙などの,明年以後の政治に大きく関係ある選挙が続いてありました。
 特に病院問題に関係の大きな問題としては大学騒動で,またまた留年生ができそうです。しかし大学病院が,彼らの主張のように,改革へ前進するならば不幸中の幸いというべきでしょうが,必ずしも建設を前提とした改革論ではなさそうで,困ったものです。明年の推移を見守りましょう。

「病院」 第27巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

欧米病院偏見旅行記・12

エピローグ—病院のたましい

ページ範囲:P.55 - P.55

 ホノルルの真っ青な海を眼下に,日航機はすべるように東京を目ざす。何よりも日本語でアナウンスのあるのがありがたい。もう注意して聞き耳を立てる必要もない。なんと抵抗なく耳にはいってくることか。ボンヤリしていると駆け足で巡った39か所の印象がよみがえってくる。
 それぞれに忘れがたいが,なんといっても圧倒的な印象は,いったい近代病院はどれだけ金がかかるのか,というとまどいに似たものであった。1床あたり2000万の建設費というと,500床で100億円必要なのである。運営費も,スウェーデンで1日1万4000円とか,アメリカの2万5000円とか,物価の差,所得水準の差を考えても,口惜しさと,いらだたしさでアタマにきてしまう。ああ,もしこれだけ使わせてくれたらなと思い,これでは日本の病院はまたまた引き離されるのではないかとのいらだちである。しかもアメリカの病院運営費は毎年15%も上昇するというではないか。いったいこれからどうなるのか。近代病院サービスは,金持ち国でなければ無理なのか。金,金,やっぱり金の差なのか。

第6回日本病院管理学会総会印象記

現場への具体的な導入をはかろう

著者: 原田幸彦

ページ範囲:P.58 - P.60

 日本病院管理学会総会は今年で6回めを迎え,日大・大久保教授を会長とし,11月1日,2日の2日間駿河台日大病院で行なわれた。
 科学技術の発展に伴い,一般企業では生産および製造技術面で大きな進展をみせ,同時に経営管理面の技術の改善を必要としてきた。そして,その面においても大きな発展がされた。これは病院を中心とする医療産業にもあてはめられるのではないだろうか。すなわち,医学の学問上の新発見や手技の開発は新しい医術を生み出し,それを医療として社会に適応させ実践に移すには一般企業同様新しい管理技術が必要になり,医療を施す場である病院や他の医療機関においても,新しい経営管理技術が必要になろう。それを研究し,発表し,討論しあう場が本学会ではないだろうか。そのために講演および質疑の時間に十分時間をかけているのがこの学会の特色である。

病院を考える・5

医師・看護婦関係の寓話

著者: 今村栄一

ページ範囲:P.61 - P.65

ワンマンカーは進歩か退歩か
 もう10年以上も前のことです。アメリカから帰ってきた人が,ワンマンカーのことを話してくれました。そのときは遠い海の向こうの話と思っていましたが,このごろは東京のバスもワンマンカーがふえてきました。医師と看護婦のお話をするはずでしたが,ワンマンカーの話となって申しわけありません。
 外国からはいってきたものは,明治以来"舶来品"として尊び,ハイカラといって誇りとしたものです。ワンマンカーも舶来品のひとつかもしれません。ところでワンマンカーは進歩なのでしょうか,退歩なのでしょうか。

病院建設の基本問題・8

住宅団地の医療施設利用

著者: 浦良一

ページ範囲:P.67 - P.71

はじめに
 1.私は先に,現在は人口集中地帯でも人口減少地帯でも,医療施設の再編成の段階にきているということを述べた。今日は人口集中地帯の住宅団地の問題を考えてみたい。
 人口集中地帯の1つの特徴は,それに対処するための住宅団地の出現である。今後この団地はますます増加するだろうから,住宅団地にどのように対処するかは大きな問題である。戦後住宅団地ができた当初は診療所の建設に対して当局はきわめて消極的な態度をとっていた。これは団地住民は若いし,サラリーマンが多く,施設選択はうるさく,病気になっても職場近くとか,中心市街地の大規模施設を利用して団地施設は利用せず,団地診療所は経営困難で建設しても医師の応募はないだろうとの危惧からであった。

病院建築・2

タイの病院

著者: 吉武泰水

ページ範囲:P.73 - P.76

 昨年私は,WHOの病院建築に関する短期コンサルタントとして約2か月タイ国に滞在し,Mi-nistry of Public HealthのSanitary Engineer-ingの課に席をおいて,20余の病院・保健所を視察し,また病院設計の実情に接することができた。
 以下,タイの病院・保健所の現状について概要を述べる。

研究と報告【投稿】

電子計算機導入による診療報酬請求明細書の作成—インプットの構成とその具体例(その2)

著者: 片岡正 ,   安藤秀雄 ,   白鳥初

ページ範囲:P.77 - P.82

診療・入院カード
 このカードは,外来患者の再診や,入院患者の前回入院の状態,食事の内容など,点数計算上の基本診療料に関係する行為を入力するためのものである。このカードを作成する上で最も多く発生すると思われる再診に関しては,時間内の再診の場合には,マークしなくても電算機で自動的に処理するようにしてある。
 再診の欄は再診料計算のためにマークするもので,条件としては,来院しても点数を計上できる医療行為のないとき,1日に2度以上来院したとき,および来院が時間外,深夜の場合であり,それ以外は自動的に算出する。

英国の医療制度と教育

著者: 四方淳一

ページ範囲:P.83 - P.88

はじめに
 筆者は昭和43年初めに約1か月にわたりロンドンに滞在し,英国における医療制度と卒業後の外科の修練制度について見聞する機会を得た。筆者の訪問・視察した病院・施設は次のとおりである。
Charing Cross Hospital, London

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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