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雑誌目次

雑誌文献

病院27巻2号

1968年02月発行

雑誌目次

特集 病院給食管理

患者給食における栄養部門と看護部門の連携

著者: 宮川哲子

ページ範囲:P.19 - P.24

はじめに
 患者が入院する,ただちに医師団は診療に全力を傾け検査,放射線,手術,麻酔,薬剤,看護,栄養,事務部それぞれが全面的に協力してこそよき診療ができ,よき医療サービスがなされて社会復帰が早くできるようになって優良な病院ということがいえるのである。
 患者は一人一人異なった年齢,性別,傷病,症状をもっていて,それに応じた生活,医療サービスを行なわなければならず,またそのためには人的に多種類の職種,とくに専門職種を必要としているのである。病院内のどの業務も全く独立ではやっていけないことのみである。各部門が横の連絡をとって,院内のルールに従って運んでこそ,完全な入院患者サービスができるといえよう。病人に対する食事の提供は医療の一環として非常に大切なことは論をまたないことである。患者個々の傷病の種類や症状,個人的条件に応じて処方され,それぞれの嗜好をとり入れた献立を作成し,調理,盛付などよりよいサービスが望まれる。そのためには患者個人をよく観察し,生活を医療を見守る立場の看護部門との連携はもっとも大切なことであり,またよりよい看護業務ができるような態勢にするよう協力をすべきであると考える。

約束食事箋制について

著者: 森田百合子

ページ範囲:P.25 - P.30

食事は処方である
 病院における患者の食事は「疾病の治療を食餌を通して促進する。入院した患者に対し食生活面のサービスである」という二つの指令を課せられている。
 この二つの指令のうち前者である「疾病の治療を促進する……」,つまり治療の一環としての食事--という考え方からすれば,入院患者の食事はすべて医師の処方に基づくものであることが原則である。

栄養指導の実際と問題点—1.虎の門病院の場合

著者: 宮川哲子

ページ範囲:P.31 - P.34

 病院における栄養指導には入院患者に対しての指導,外来患者を対象として,また特に教室を設けての指導,の三つの形に分かれていると思う。

栄養指導の実際と問題点—2.東京衛生病院の場合

著者: 山本麻喜子

ページ範囲:P.35 - P.37

 伝導を推進するための一つの機関として建てられている衛生病院は当初から医師,看護婦による患者の治療のみでなく,一般の方たちに健康を保つために最もよい食物,また病気で苦しんでいる人々に治療の一部として飲食の正しい習慣を教えるよう指示されてきた。そのため栄養指導はかなり前から実施していたし,栄養士に与えられた責任も期待も,非常に大きかったわけである。では私たちが現在どのような栄養指導を行なっているかというと,1)妊産婦に対する栄養指導(母親学級)2)入院患者,外来患者に対する食事指導3)一般に対する栄養指導の三つに大別することができる。今その一つ一つについ説明を加えてみる。

栄養指導の実際と問題点—3.川崎病院(岡山)の場合

著者: 道下美智子 ,   梅島元子 ,   草地泰子

ページ範囲:P.38 - P.43

はじめに
 近年病気の治療に用いられる薬の進歩は大変めざましいものがあるが,一方患者の食事指導についての研究は,まだまだ多くの課題を残している。
 食事療法とは,単に指導書どおりの食事を与えるというのではなく,同じ病気でも患者の年齢性,体格,病気の軽重によって栄養所要量が異なるので,各患者に適切な食事の決定をし,具体的な指示をすることが必要である。総合病院といえども,外来や病室においては,医師の患者に接する時間は短かく,患者の栄養に対する知識も非常に低いため,十分な理解を得ることはなかなかむずかしいことが多い。

病院給食の労務管理—1.総論

著者: 菅谷章

ページ範囲:P.44 - P.49

1.序論--病院給食の意義
 いうまでもなく病院は,入院患者にとっては生活の場であり,療養の場でもある。
 患者は,入院によって一定期間,生活の場を病院に移して療養に専心することになる。入院することによって彼の生活の場は,病院内に,ときとして病室内に限定されるばかりではなく,また時間的にも,入院期間中はすべての時間を病院で過ごさざるをえなくなる。したがって患者にとっては,すでに病院は治療の場としてだけではなく,生活の場としても重要な位置を占めるようになる。だが病院が患者にとっては生活の場としていかに重要な位置を占めているとはいっても,患者が病院で生活するのは,すべては病気の治癒のためであることを忘れてはならない。

病院給食の労務管理—2.国立病院の場合

著者: 飛田兵三

ページ範囲:P.50 - P.54

 理論的なことは諸先生方が述べられているので,私は病院管理の一員として,また病院給食を直接所管する事務長の立場として,その体験した過去の実施例をご参考までに紹介する。その前に病院管理者および給食関係職員の方々にも,もう一度病院経営の中で占める病院給食の役割について見直してもらいたいと思う。昔は病院給食といってもほとんどが大衆料理か,軍隊式炊事が多く,中でもひどい病院になると,病院から出した患者食事を附添婦が食べ,患者の食事は附添婦が調理した時代もあった。国立病院,療養所では,昭和28年頃から附添制度を廃止し,このような状態は全然なくなり,栄養改善法によって,集団給食施設に栄養士が配置されるようになってから完全給食制度が始められ,現在は生活を維持するだけの給食に止まらず,食餌療法にまで向上したのが実態である。このように病院給食が治療の一環をなす療法的なものであるならば,医師が良薬を選んで投薬をするように,給食職員もまた医学の進歩に平行して治療効果を増すような給食にまで改善することが必要である。
 国立といえどもこの目的にはほど遠い職場もまだまだ見受けられる。要するに「栄養改善以前の未解決問題」がまだまだ山積しているというのが現状であろう。しかし反面治療食の改善から,患者が楽しめる病院給食にまで高度成長をしている施設も数多くあることも事実である。

材料管理

著者: 宇井美代子

ページ範囲:P.55 - P.58

 われわれが日常使用している給食材料を理想的な管理に近づけるためには,細かい配慮が必要である。
 まず大きく分類してみると,次のように考えられる。

外国の病院給食管理のあり方

著者: 河北恵文

ページ範囲:P.59 - P.65

 昨年夏,病院管理調査団の一行に加わり,約1カ月半の間欧米の病院などを30カ所見学してきたが,団体行動で病院管理,病棟管理,医師の勤務から各国の医療制度にわたる広い見学団で,とくに給食部門を深く見たわけではないので見学した病院個々につき気のついたことを記してみる。

座談会

病院における給食管理の望ましい姿

著者: 小野田敏郎 ,   榊田博 ,   落合勝一郎 ,   伊藤誠 ,   原沢美智

ページ範囲:P.66 - P.76

 病院給食が治療の一環を担うからには,最も効果的に患者のもとに届けられねばならないし,その管理は全病院的観点から考えられねばならない。その望ましい姿とは……。

グラビア

病院給食施設めぐり

ページ範囲:P.5 - P.12

 病院給食は治療の一環として重要な役割をもっている.病院給食は入院生活の良否をきめる重要な因子でもある.病院における給食施設も,年ごとに改善を加えてきた.そこで東京(東京労災病院),横浜(国立横浜病院),名古屋(愛知県がんセンター),天理(天理よろづ相談所憩の家),姫路(聖マリア病院)と,思いつくままに給食施設を拝見することにした.

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滅菌の原理と実際(2)

著者: 牧野永城

ページ範囲:P.14 - P.14

 前回にひきつづいて,滅菌の歴史をお送りする。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.90 - P.90

 2月号は「給食管理」を特集しました。病院給食は病院の重大な機能であり,かつ仕事量も大きく,経済的にも比重の大きいものである。それにもかかわらず,この病院給食について熱心な病院管理者が少ないことははなはだ残念である。本号の企画は宮川幹事にお願いしたが,執筆者の大部分は栄養士さんで,院長,事務長,あるいは病院管理の研究者で特別な筆者が選べなかったことは残念である。栄養士さん方が一生懸命努力をしているにかかわらず,それが必ずしも十分に管理者に理解され支持されていないことは,実に申しわけないことである。本号はぜひ病院長,事務長さん方に必読をお奨めしたい。
 最近,病院給食外注問題がまたまたいわれている向きがみえる。実に情ないことである。これはどうも日本の病院の体質の中に存在する異常さがさせるものだろう。それは病院に理想がないからである。そのような考えではよい病院にはなりえない。外注問題はここらで終止符を打たねばならぬ。院長,事務長は病院の本質的使命をもう一度反省する必要がある。給食の外注は責任回避といわねばならぬ。もちろん小病院が共同して病院給食の中央施設を運用することは,合理的な方法として認めるべきである。また欧米で最近現われた外部で製造される冷凍食利用も新しい方法である。しかしこれらは単に病院給食の責任を回避することではない。

欧米病院偏見旅行記・2

わが国なら人権問題=看護婦の勤務時間(モスクワにて)/バカンスに明けくれる病院管理者(パリにて)

ページ範囲:P.16 - P.16

 厚生省を訪問し,臨床予防医務局次長と討議した後,モスクワ82伝染病院を研究する。82病院というからには少なくともモスクワ(人口は約500万)には80以上病院があるということであろう。
 名前を数字にするのは軍隊式か組織的であるといえよう。700床の病院なら,わが国では第1とか第2とかをつけたくなる気もするが,外見はまず病院という言葉からもつイメージ(これも偏見)とほど遠い。田舎の小学校的建物である。説明どおりそれぞれ数年前の建物であるとすると,この国の病院建築は設備器械も含め,ソ連厚生省推せんの病院ならば第1級の病院であろうが,とくに優れたものはない。建物は伝染病院のせいもあってか,完全なパビリヨン形式であり,給食など雨や雪の日の運搬は,たとえ車を使っても大変であろうと感じさせる。もう少し考えられてもよい。

病院の広場

再発予防の給付を望む

著者: 杉岡直登

ページ範囲:P.17 - P.17

 厚生年金病院は厚生年金受給者の福祉施設の一環として昭和27年東京,大阪についで30年,九州に総合病院として創設された。当時厚生年金受給者といえば身体障害者にかぎられていた。したがってその人たちの社会復帰を主目的とした医療を提供する意味から,整形外科を中核とされたことは,理にかなったことであった。
 ところが年とともに目標が変貌せざるをえなくなった。その原因は,1つは社会保険の守備範囲が拡大されて,医療の給付が無期限となり国民保険などの発展で国民皆保険となり,上記の厚生年金保険による医療の給付が一般的には存在の価値がほとんどなくなったこと。2つには整形外科が近年急激に発展し,今日では整形外科の専門医がいたるところで医療に従事するにいたり,整形外科を中核とする厚生年金病院の特殊的な存在価値が減少してきたことである。

第17回日本病院学会シンポジウム

看護を中心とした病棟編成(その1)

著者: 金子光 ,   井上ユキエ ,   牧野永城 ,   山本良子 ,   伊藤誠

ページ範囲:P.78 - P.83

患者のための看護のケアが第一義
 司会それではただいまからシンポジウムを開催いたします。
 シンポジウムの課題は「看護を中心とした病棟編成」ということですが,これは看護をする看護婦が働きやすいという意味ではございませんで,患者のための看護のケアというものを第一義と考えて,それが実践を可能とすることを目的とした病棟の整え方と,こういうふうに考えたいと思っております。

霞ガ関だより

昭和41年度病院経営収支調査年報について

ページ範囲:P.86 - P.90

 厚生省においては,病院の経営成績および財政状態を継続的に把握して医療行政の基礎資料を得るとともに,経営管理の指標を作成して病院の健全な運営に資することを目的として,昭和40年度より病院経営収支調査を実施しているが,41年度の収支年額ができたのでその概略について紹介したい。
 この調査は,企業会計方式を採用して経理を行なっている公的病院のうち,地方公共団体,日赤,済生会,厚生連および国家公務員共済組合連合会(41年度より)の経営する病院を対象として,そのうちから約250病院を有意に抽出して,各病院からその経営成績や財政状態についての報告を受けて実施しているものである。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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