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雑誌目次

雑誌文献

病院27巻3号

1968年03月発行

雑誌目次

特集 新生児室の管理

新生児室をよくするために—病院における新生児管理の問題点

著者: 久保博

ページ範囲:P.27 - P.33

はじめに
 新生児管理の問題点といっても医療業務,看護業務,新生児施設に関することなど問題は非常に多いが,ここでは新生児保育に関する医師,助産婦,看護婦の勤務配置の問題について検討することにする。
 最近世界的傾向として施設分娩が増加しており,わが国においても87%位となっておりことに大都市においてはその傾向がいちじるしい。欧米においては施設分娩の増加に伴って新生児死亡率が減少してきているが,わが国においてはいまだその傾向がいちじるしくないのはなぜであろうか。それにはいろいろな原因が考えられるが医師,助産婦,看護婦等新生児の保育に関与する看護者の問題が重要な原因となっていることはいなめないことであって,たんに施設分娩が増せば新生児の死亡率も減少するという簡単な問題ではない。事実わが国においては施設分娩の急増に伴って収容施設は漸次整備されたが人的整備の面,ことに助産婦,看護婦の質はもちろん量の問題についてもほとんど手がつけられていない。日本産科婦人科学会社会保険委員会においては新生児管理の改善を企図しわが国における新生児保育の実態調査を行なったのでその資料に基づき新生児管理の障害となっている点について検討してみたいと思う。

看護単位として独立している新生児室の看護

著者: 豊島豊子

ページ範囲:P.35 - P.39

はじめに
 1966〜67年にかけては,産院の火災,赤ちゃんとり違い事件などがマスコミをにぎわせ,病院における新生児管理の問題が一般社会にいろいろの形で提起された。
 一方専門分野では,厚生省から「医療施設における新生児看護について」の通牒が出され,また新生児管理改善促進連合が発足し,そして小児科学会新生児委員会から「新生児管理改善に関する勧告」が公表された。

看護単位として独立していない新生児室の看護

著者: 笠原トキ子

ページ範囲:P.41 - P.45

はじめに
 新生児室の看護単位を独立してほしいという私の願望は,昭和26年はじめて産婦人科婦長として愛育病院に就任したときからのものである。当時愛育病院では新生児室が作られてはいたもののそれは名ばかりで,他のすべての病院と同様に新生児を母親の付属物として考えていたためベッドの定数は認めていなかった。したがって新生児室に対する看護婦の定員はなく,産婦人科全体が1看護単位とされその中から新生児室に看護婦を配置しなければならなかった。新生児室では夜間勤務の場合にも仕事量は昼間とほぼ同じであるのにもかかわらず,さらに人員が減るので産婦人科勤務者の業務負担は他科の看護単位の数倍となるのは当然である。ところが昭和29年に関東逓信病院に赴任してみるとその当時の産科看護婦の仕事量は愛育病院以上であり,労働条件の最もよいといわれた電々公社の病院として期待してきただけにおどろいてしまった。
 しかもこの負担は分娩室と新生児室を持つ産科勤務者にのみ負わされたものであった。病院が建設途上にあって設備のととのわないうちに分娩数の増加したことがその主な原因ではあったが,20床の新生児ベッドは連日満床。しかも新生児室には混合病棟の中の個室2部屋があてられているだけで保育器すら満足なものは設置されていなかった。

新生児室の院内感染

著者: 吉岡和之

ページ範囲:P.47 - P.51

はじめに
 近年における抗生物質療法の進歩は,まことにめざましく,感染症の治療は以前とは比較にならぬほど,容易となり,このため一時は感染症は,あたかも征服されてしまったかのごとく考えられたのであるが,耐性菌の出現によって,再び感染症の治療は新しい観点から考えなおさなくてはならなくなった。ことに,これらの耐性菌は病院などの閉鎖環境で,しかも抗生物質を使用する機会の多い場所で出現するため,いわゆる院内感染の問題が大きくクローズアップされてきたのである。
 一方,新生児ことに未熟児は感染症に対する抵抗がいちじるしく弱く,最近の新生児死亡原因の調査でも15.2〜18.6%という高率を占め,死亡原因の第2位にある現状である。欧米の新生児死亡の剖検例の報告でも9741例中1384例は感染症によるもので,ことに成熟児死因の18.4%を示している。したがって,これらの新生児を収容する新生児室においては,院内感染は非常に重要な問題であり,これを防止することは病院管理上,最も大切なことの一つであると考えられる。

新生児室のリネン管理

著者: 片山寿

ページ範囲:P.53 - P.55

はじめに
 新生児室のリネン管理の一番の眼目はリネン類の清潔度の高いことと,新生児室の現場が支障をきたさないように円滑にリネン類を補給することの二つにあると思う。
 高度の清潔さが要求されるのは,私などが述べるまでもなく抵抗力の少ない新生児を種々の感染から守るためであり,補給の円滑が特に望まれるのは,待ったなしのお産といわれるように,満床でも予約の患者が産気づいて来院すれば仮ベットを作ってでも収容しなければならない。そのためオムツをはじめすべて必要のリネン類を満床以上の新生児に対してでも即座に間に合せられるようでないと,よいリネンサプライとはいわれないのである。以上二つの目的にそって業務を運営することについて述べてみたいと思う。

こどもの識別

著者: 竹内利恵

ページ範囲:P.57 - P.60

はじめに
 「おめでとうございます。お坊ちゃまですよ。お嬢ちゃまですよ。」と念をおすことがある。この疑問のなかには現在までの新生児管理のあり方,人員不足の点など,医療関係にもいろいろの問題が含まれている。しかし絶対にまちがってはならない。昨年,赤ちゃん取違え事件として世間で騒がれ,家族に不信感を抱くものもあった。新生児管理者として,「まちがえないように」この一言をいつも考えながら日夜の看護にたずさわらなくてはならない。
 そこで全国各病院で現在行なわれている識別方法を種類,その優劣,実際に行なう場合の注意,理想のテーマで論じることにした。赤ちゃんをまちがえないために,家族の信頼に自信を持って答えられるようにもう一度考えてみよう。

新生児室の災害避難対策

著者: 鈴木イチ ,   長谷川さき

ページ範囲:P.61 - P.63

はじめに
 佼成病院産科病棟は,地下2階地上7階鉄筋コンクリートの5階にあって,新生児室の位置は,建物中間の産科病棟の真中になっており,新生児室の上が屋上になっている。両側が7階建て,真中が5階建ての長い病院になっている。
 産科病棟の配置図は図1に示すごとく,分娩室3室,陣痛室2室5床,新生児室1室18床,未熟児室1室5床,産褥室2床室5室,6床室5室,真中廊下で南側北側に分れており全床40床,それに教育指導室,産科医当直室などである。

座談会

新生児室管理の問題点と対策

著者: 森山豊 ,   街風喜雄 ,   村田文也 ,   笠原トキ子 ,   泥谷京子

ページ範囲:P.66 - P.77

 新生児はヒトの生涯を通じて最も変化の多いときであり,その管理には万全の対策が講じられなければならない。病院の新生児室管理の現状と問題点およびその対策について…。

グラビア

新生児室多くの問題をかかえて

ページ範囲:P.5 - P.12

 最近、新生児の管理についてようやく注目されてきた。それは、取り換え・火事・盗難などと、全く予期されない事故が世論をわきたたせたのも、大きい原因となっている。不慮の事故が起こらなければ対策が講じられないというのは遺憾であるが、禍を転じて福となすという考えもあるだろう。
 一方、学会その他の12団体が結合して、新生児管理改善促進連合を作り、各方面に働きかけた効果も見のがすことはできない。

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滅菌の原理と実際(3)

著者: 牧野永城

ページ範囲:P.15 - P.15

II.微生物の熱破壊
 微生物が熱によって死滅する機構は厳密にいってわかっていない。しかし現在では一般に湿熱は菌体蛋白の変性と凝固によって,乾熱は酸化過程によって微生物を破壊すると説明されている。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.98 - P.98

 3月の声を聞くととたんに春めいてきました。本号の発刊も月末になってしまいましたので,このノートを書いている彼岸の今日この頃は,庭の椿や沈丁花が終りかけ,雪柳,小米桜,ゆすら桜などがいっせいに咲き始めました。ヴェトナム問題が片付かないばかりか,通貨不安など落着かぬ世界情勢の中に,自然だけは毎年同じように移り変っていくので心を安めてくれます。

欧米病院偏見旅行記・3

‘ダッチトリート’精神の病院管理(オランダにて)

著者:

ページ範囲:P.16 - P.16

 夏休みのパリはお上りさんばかりのせいか,パリ美人におめにかかることもできず,あわただしいうちに,次の目的地アムステルダムに向う。エアーフランスのカラベルジェットでわずか1時間,飛行場での手続きもきわめて簡単,国内飛行といった感じしかない。逆にこんなに狭いのに別々の国が必要なのかと思わせてしまう。
 ヨーロッパの空の玄関口といわれるアムステムダムの空港は完成したばかりの,明日の空港の名の高い,スキプホール空港で,設備,デザインとも,なかなかスマートである。羽田も少し真似をするとよい。

第18回日本病院学会ニュース

第18回日本病院学会プログラム

ページ範囲:P.18 - P.24

第18回日本病院学会開催にあたって

病院のレベルアップを目指す

著者: 河上利勝

ページ範囲:P.17 - P.17

 日本病院学会は,病院人の学会であり,病院に勤めているすべての職種の人たちのものである。病院人といえば医師,ナース,パラメディカルの技術員ならびに事務系統の人たちである。
 病院がレベルアップするためにはひとり医師だけではなくて,これらの全ての職種の人たちのレベルアップが望ましい。

病院の広場

地方公共病院のあり方

著者: 中野保二

ページ範囲:P.25 - P.25

 病院のあり方としてよく「親しまれる病院」とか,「信頼される病院」とか言われるが,こうした言葉は何を意味するものであるかを地方公共病院にあてはめて考えてみたい。
 地方公共病院はそれぞれの地域の基幹病院あるいはその出先きとして地域住民の医療,大きくは保健の保持・改善に働いている。したがって,いったん患者が出て,とくに入院するという事態にたちいたったならば,たとえそれがいかなる疾病であろうとも患者側としては病院側が全面的に責任ある処置をとってくれることを期待してやまないものであろう。

第17回日本病院学会シンポジウム

看護を中心とした病棟編成(その2)

著者: 金子光 ,   井上ユキエ ,   牧野永城 ,   山本良子 ,   伊藤誠

ページ範囲:P.80 - P.85

前号では,第1席:PPCを実施した体験から,第2席:アメリカのICUの実態とその考え方について,各講演をお送りした。今回はそれに引きつづいて……

研究と報告【投稿】

回復室,I.C.U.,急患室の総合的運営—10年間の経験を中心として

著者: 本松研一

ページ範囲:P.87 - P.93

はじめに
 手術直後の患者,重症患者および,急患患者はいずれも,容態の変化が急激で,死に直結することも多く正確な判断のもとに,機敏な処置をする必要がある。もちろん,医療に携わる人は誰でも,その処置に通じていなければならないが,訓練された人々が特殊な施設を使って,治療すれば成績はさらに向上するはずである。
 これらの患者は欧米では,それぞれ,Recovery Room (回復室),Intensive Care Unit (集中強化治療室=I. C. U.と略す),Emergency Room(急患室)に収容されているが,この三者は施設,運営の面では種々共通しているところが多い。患者は全科におよび,また,一人でいくつかの科に関係する者もあるが,治療は病気の本質に対する特異的な治療とともに,一般状態の改善に努める非特異的な治療が重要になる。輸液,輸血,酸素吸入,気道の確保,気管切開,気道内吸引,人工呼吸,心マッサージなどが頻繁に行なわれる。必要な施設や看護要員は一般病棟より密度高く必要となるが,逆にベッドの回転は計画的にいかず運営にはかなりむだが多い。したがって,これらの施設の必要性は強調されているが,欧米のものをそのままわが国に受入れることは困難で広く実施されるにいたっていない。

ホスピタルトピックス 特殊病院

デイ・ホスピタル

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.95 - P.95

 いままで数回この欄でデイ・ホスピタルを紹介してきたが,今回はフランスで最初のデイ・ホスピタルをInformation Psychiatrique誌のjuillet,'67にしたがって,紹介する。この種の施設が議論されていたのは1950年代からであり,1958年頃には設計図もできあがり,私も時のセーヌ県精神衛生課長から直接見せてもらった記憶がある。ところが,どういう理由であろうか,最初のデイ・ホスピタルの開院は昨年の1月10日であった。しかし,設立に骨折ったHenri-Duchene博士はこの世になく,これを記念して,デイ・ホスピタルは彼の名をとって呼ばれることになった。博士はフランス人には珍らしく,温厚寡言な紳士で,東洋にも深い学識をもっていたのに,実に残念なことである。
 さて,このHenri-Duchene Centreは独立組織体であるが,設立費・経常費ともに県から大幅な補助が与えられている。補助金のためか,このセンターは公的精神網の一拠点の役割をし,パリー第3と第4区を診療範囲とし,両区所在の精神衛生無料相談・診療所と密接な関連のもとで運営されている。

霞ガ関だより

昭和43年度の厚生省予算案

著者:

ページ範囲:P.96 - P.97

43年度予算案のあらまし
 去る1月13日の閣議で,政府は昭和43年度の一般会計予算を決定した。総額は5兆8185億9800万円を算するから,前年度補正後予算と比べると11.8%の伸びとなる。このうち社会保障関係費の大部分を占める厚生省関係の予算額は,7685億7500万円ということで対前年度比10.5%増となり,政府予算総額の伸び率を下回ったかにみえる。しかしこの厚生省分のなかには,国立療養所関係経費422億1100万円の国立病院特別会計移行分が含まれていないので,国療が42年度にすでに特会に移管していたものとして計算すると,対前年度比12.8%増となり,政府予算のアップ率をわずかながらも上回る結果となる。
 ところで,対前年度増加額731億円余の中身は,ほとんどが施設の整備・拡充,単価引上げ等による当然増的な経費によって占められているため,これはという新規政策費はきわめて少ない。特に補助金関係は財政硬直化の打開という大蔵省の大方針のあおりで,軒並みにゼロ査定を受ける結果となっている。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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