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雑誌目次

雑誌文献

病院27巻4号

1968年04月発行

雑誌目次

特集 中央検査部

検査部門の組織と運営

著者: 小酒井望

ページ範囲:P.19 - P.24

 病院において「臨床検査の中央化」が叫ばれ,中央検査室の重要性が強調され始めてからすでに20年近くなった。この間わが国の病院における臨床検査の中央化は急速に進展し,今では「中央化」の原則に反対する人はほとんどなく,「中央化」は当然のこととして受け取られるようになった。近代医療における臨床検査の重要性もさることながら,病院収入において臨床検査の占める比率が少なくないことが,病院において臨床検査部門の充実を促進するという皮肉な現象も現われてきている。
 中央化の必要性が認識され始めた当時は,病院はきそって「中央検査室」をつくり,機械,器具を置き,技師を集め,やれ一段落と考えたところが多かった。しかしこれだけでは,検査室が病院の期待するだけの十分な働き(検査成績の信頼度についても,作業量に関しても)を果せないことが次第に明らかになってきて,検査部門の組織と運営の合理化が改めて強調される昨今である。そこで私は検査部門の組織と運営の問題点の2,3について解説することとする。

臨床検査部の機器設置の標準

著者: 土屋俊夫

ページ範囲:P.25 - P.31

はじめに
 病院であればその規模が大きかろうと小さかろうとその診療内容には格差があるべきものではない。したがって臨床検査機器設置も数量の差はあっても質と内容においてあまり大きな差があってはならない。しかし現実的にはそれぞれの病院の規模によって機器設備がなされているが,このうちで小病院の場合においては,自己の検査室ではできない検査あるいはその全部を他の検査施設へ依頼するシステムがとられているはずである。
 いわゆる簡易検査法を用いて検査を行なった場合,主として定性的であるが約42種目の検査が可能である。この場合機器類は全くといって良いほど必要でなく,これ以上の検査が必要の場合,検体あるいは患者を他の施設へ依頼しているであろう。これら最近開発のいちじるしい簡易検査法を駆使するとすれば,卓上遠心器1台,恒温浴槽1台,顕微鏡1台,小型フラン器1台,光電比色計1台,電気冷蔵庫1台,迅速高圧滅菌器1台が加われば病院として,病理学的,生理学的検査を除いては最低の1単位となると思われる。

検査部人員と作業量の問題

著者: 林康之

ページ範囲:P.37 - P.42

はじめに
 病院中央検査部(中検)の作業量は一般に月間検査総件数と総稼動金額で示されている。これに対する中検構成人員数の適否を考察するのが求められた表題であると考えられる。ところが,中検の組織構成そのものが病院の性格によって非常に異なる現状にあり,いまだ明らかな作業量の規準は示されていない。もともと中検業務は患者サービスとしての臨床検査を病院内でまとめ,組織化による能率向上を狙ったものであり,患者の質および量にある程度比例した作業量があるべきものである。
 しかし,現状は必らずしも病床数や患者数に比例した作業量をもつ中検ばかりではない。

臨床検査の精度管理

著者: 川井一男

ページ範囲:P.43 - P.49

はじめに
 戦前は臨床検査は大多数の病院では診療科,病棟あるいは研究室において医師の手により必要に応じて実施されたが,戦後アメリカから中央臨床検査機構が紹介されて以来,わが国でも多数の病院でこの制度が採択されるにいたった。
 中央臨床検査部は病院とくに総合病院においては中央放射線部とならんで臨床診療に欠くべからざる部門となった現今では,各診療科からより広く利用されるためには,できるだけ多くの検査種目をできるだけ迅速に実施できなければならない。しかし,いかに広範囲に検査を実施しても,また年々増える検査件数をいかに多く処理しても,いかに迅速に報告しても,検査成績が不確実であっては利用する側の不信を買うのみとなろう。優れた人員と充実した設備がいることはいうまでもないが,人員や機械をいかほどにそろえても適切な管理のもとに正しく運営されなければ,正確な成績を望むことは無理といえよう。近年になって臨床検査の精度管理(Quality Control)がことにやかましく取りあげられる理由はここにある。

生理機能検査,内視鏡検査の管理と運営

著者: 仁木偉瑳夫 ,   榎谷実男

ページ範囲:P.51 - P.56

はじめに
 病院の管理・運営の点から多くの部門が中央化されてきた。検査部門も大部分の病院で中央化され,専門の技術員によって多くの検査件数が能率よく処理され,最近では高度の技術を要する検査まで項目に組みこまれてきている。精度管理の面ではなお問題があり,専門の臨床病理医による精度管理がもっと進むことが望ましい。こうした検査の中央化によって病院の管理・運営面で成功をおさめているが,生理機能検査の中央化はすすんでいない。内視鏡も同様である。全国200床以上の病院約100施設についてアンケートをとった結果は約半数が中央化した生理検査室を持っていた。700床以上の病院でも13%は生理検査室は中央化されていなかった1)。生理検査,内視鏡検査は患者に対し医師が直接検査を行ない,検査結果から最終的な診断を下す場合が主である。この点この2つの検査部門は他と性質が違っているため,中央化が困難となっている。管理・運営の面からみてもなかなか問題の多いところである。
 まず生理検査から考え,ついで内視鏡にうつることにする。

中央検査部における機械化の動向

著者: 樫田良精

ページ範囲:P.57 - P.63

 わが国に中央検査室システムが導入されてからすでに10年以上になり,いまやこのシステムは全国に普及して常識化した。最近の臨床検査法の急速な進歩と,この新しい方法の有用性にもとずく日常診療への活発な導入は,中央検査室の飛躍的な発展を大きく支えている。
 中央検査室の発達の当初は,診療の片手間に医師が行なっていた臨床検査を一カ所に集中して,医師以外の技術者がこれを代行し,検査の仕事を多少能率化したにすぎなかったが,中央検査室システムが発達するにつれて,従来医師自らが行なっていた臨床検査とは質的にも量的にも違う専門的な業務にまで発展した。今日の大病院における中央検査部は,もはや単なる医師の仕事の肩がわり的な存在ではなく,診療する医師に科学的な客観的データを随時提供する病院内の重要な近代的施設となった。また,中央検査部が十分に活動している病院では,この部に働く技術者その他の職員数が,院内における専門職種として看護婦に次ぐ多数を占めるにいたった。総合病院における中央検査部の職員数は種々の根拠から,その病院の病床数の10〜15%の人数が必要であると算定されているが,現状ではなかなかこの人数まで充足されず,しかも臨床検査の需要は年々増加の一途をたどっている。

座談会

検査部門と他部門との関連

著者: 小野田敏郎 ,   石川幸雄 ,   橘敏也 ,   藤沢武吉 ,   月橋得郎 ,   伊佐マル

ページ範囲:P.66 - P.74

 中央検査部がその役割を十全に果すためには他部門,とりわけ医師,看護婦の理解と積極的な協力がなければならない。
 その最も効果的な協力関係をつくりだすために……。

資料

当医務局管内における国立病院診療各科の検査科利用状況

著者: 橋爪藤光 ,   佐藤乙一 ,   嶋崎祐三

ページ範囲:P.77 - P.83

はじめに
 医療機関における診療機能を評価するもののひとつに衛生検査の活用度がある。
 かつては内科領域を中心に,あとは術前と内科的疾患の潜在または合併症のために他科でわずかに利用された程度の衛生検査も,近時新しい検査用機械の開発と,キットやセット化による簡易試薬の入手が容易になり,検査種目とその範囲は日を追うごとに増加しつつある。

グラビア

外国の給食設備あれこれ

ページ範囲:P.5 - P.8

 欧米の病院を見て歩いて,給食設備も医療施設と同じように完備しているのを感じた.調理室は手術室と同様に清潔でなければならないという考えが徹底していた.床,天井,壁,フード,釜すべてが清潔であり,明るい感じの場所が多かった.
 調理や配膳の用具にも細かい配慮がされ,能率よく仕事を処理できるだけでなく,患者においしく食事を与える心づかいがうかがわれた.

検査自動化への道

著者: 樫田良精

ページ範囲:P.9 - P.12

 大量の検体を迅速に,高い精度で,しかも能率よく処理して,得られた臨床検査データを確実に,速かに受持医の手元に届けることは,中央検査室に課せられた最も大切な使命である.この要求にこたえるためには,現段階ではまず検査の自動化が必要であり,これについでコンピュータによるデータ処理,さらに病院全体にわたる電算機処理システム(EDPS),あるいはHospital Automa—tionが企画されなければならない.ここに欧米におけるこの方面の新しい動向のいくつかを示して,ご参考に供したい.

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滅菌の原理と実際(4)

著者: 牧野永城

ページ範囲:P.15 - P.15

ウィールスの熱抵抗
 前回の細菌の生殖型および芽胞のもつ熱抵抗の話しを補足して,ウィールスの熱抵抗性について述べておこう。ウィールスも種類によって熱の抵抗性は異なるが,一般に細菌の生殖型に準じて考えてよい。湿熱55〜60℃,30分でたいていのウィールスは死ぬが,乾燥状態では相当の乾熱に耐えるものもあり,たとえば種痘ワクチンのウィールスは乾燥していると,100℃の乾熱に10分は耐える。過去10年ばかりの間に感染性肝炎と血清肝炎のウィールスがとくに問題となっているが,このウィールスは飲料水の中の塩素でも死なないし,注射器や注射針も短時間の煮沸では完全滅菌は得られない。また消毒薬に短時間浸しただけでもだめである。このウィールスの熱滅菌については,いろいろの報告もあるが,アメリカのNational Institute of Healthでは血清肝炎ウィールスで汚染された器物は,最小限15ポンド(1.0kg/cm2)の圧で121℃,30分間オートクレーブしなければならないし,乾熱なら170℃,2時間を必要とし,煮沸では30分を必要とすると規定している。このウィールスは細菌の芽胞に匹敵する程でその滅菌には十分注意する必要がある。

質問と回答

著者: 車田松三郎

ページ範囲:P.31 - P.31

 "病院"26巻12号(1967年11月号)に掲載された論文"病院事務員の組織と人的属性について——第1報病院事務部の研究"にあった‘中位値’の算出のしかたをおしえてほしいとの問いが編集室にまいりましたので,回答を著者におねがいしました。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.94 - P.94

 本号は「中央検査部」を特集した。わが国のこの方面の進歩は実に目覚ましい。戦後の病院管理の合理化で最もいちじるしいものである。
 昨年久し振りに欧米を視察し,さらに今月上旬関西の数病院を視察して感じたことは,computor利用を除いてはいよいよ欧米に近づいたということである。急速な進歩といわざるをえない。そしてこの進歩こそ,病院全般の管理の合理化の推進力になったように思う。つまり行動の機能化が最も如実にその実益を示したからである。

欧米病院偏見旅行記・4

「聖域」英国に入る

著者:

ページ範囲:P.16 - P.16

 明日の空港と呼ばれるアムステルダムのスキポール空港から1時間たらずで,ロンドン郊外のヒースロー空港につく。入国検査に時間がかかり,税関のきびしかったのはに羽田,ロンドン,モントリオール(アメリカの出張検査)の順であった。いやそれは規律正しさと見るべきであって,他の国がいい加減だとの見方もあろうが,何か尊大さを感じさせないわけにはいかない。
 さて英国はわが国の病院管理を研究するものにとって,一種の「聖域」ともいえる国である。米国とならんで病院管理にかんする研究が最も行なわれていること,近代病院医療を支える看護の大本山ナイティンゲールの出身地であることなどが原因であろうが,新興国,成り上り者米国にケチをつけたがる心理に大英帝国のもつ歴史の重みがピッタリするのかもしれない。メイド・イン・イングランドは紳士のもちものの象徴であり,しかも日英同盟の盟邦だったではないか。神聖にして批判はタブー的ムードが少なからずある。

病院の広場

Nurse's Social Status—看護婦—その社会的地位ということ

著者: 永野貞

ページ範囲:P.17 - P.17

 "現在の看護婦さんたちは,後に続く者がどんな形の教育をうけたらよいと考えているだろうか。月謝も要らない舎費も食費も無料というものだろうか"--ときおりこんな質問が投げかけられる。
 "看護を1つのプロフェッションとして確立させたいと願っていますから,他のものに比べて明らかに見劣りするような方法や,心に重荷を負う方法で学びたいとは考えていないと思います。現に公立私立の看護婦学校や養成所でわずかづつですが,月謝や食費を払うところが増えています。もちろん一般教育において広く活用されている修学資金制度のようなものを看護教育においても現在よりもっとよくしてもらいたいとか,養成所の校舎宿舎など,建物を整備してほしいとか,図書を豊富に用意してもらいたいなど,強く望んでいます。しかも卒業後には看護という仕事を正当に評価した給与や待遇が与えられるならばということなのです"と私は答える。

病院図書館

—島内武文著—「病院管理学 医療概論編」(第2版)

著者: 守屋博

ページ範囲:P.24 - P.24

大局的な把握と判断を与える
 わが国には7,000の病院があり,7,000人の院長がいる。そのうち病院管理を学問的に勉強しようという人が何人いるであろうか。個人病院の場合は,直接自分の財布とつながるものだから,一生懸命にならざるをえないが,これはそのへんの八百屋や呉服屋と同じで,管理学というほどのものではないだろう。公的の大病院の院長の場合こそ管理が必要であり,従業員のためにも患者のためにもいい管理をやる義務があるわけだけれど,なかなか管理にとりくもうという気にならぬものである。それは管理などは一段下の学問であって,医師のとりくむほどのものではないと考えるか,自分がいい診療をやり,またいい診療ができるようにしておけば自然に管理もできるという考えからきている。剣道の達人や射撃の名人はただちに名司令宮になれるという考えである。今の複雑な病院管理はそんななまやさしいものでない。近代人事管理・経理管理・施設管理などのほかに,社会学・公衆衛生などの幅広い知識と,それを病院でいかす創造的な指導力をもたねばならぬ。
 従来の病院管理学が医師出身の院長に受け入れにくかったのは,あまりに管理の現象,実務に走りすぎたためであって,大局的な把握と判断をしようという大院長にあまりに繁雑であったからではなかろうか。

—田中高志・二本松徹夫著—「病院の原価管理実務」(病院管理新書8)

著者: 井上昌彦

ページ範囲:P.56 - P.56

充実した実務手引書
 病院の原価計算は,臨時にある期間を限って行なう特殊原価調査にしても,会計士の制度として経常的に行なう原価計算制度にしても,これを実施することはなかなか難しいことである。これは原価計算の方法そのものが難しいのではなくて,病院の置かれている環境および病院の管理そのものに問題があると考える。
 本書の著者は原価計算を導入する委嘱をうけて病院を訪れ,その経営面の管理の実態に接したとき,おそらく,これはどうしたらよいか,どこから手をつけたらばよいかと,当惑したことであろう。ちょうどそれは町工場にのりこんで近代工場管理を指導するときと同じような感があったであろう。いわゆる,いろはのいの字から教えなければならない,また伝票の一枚から実際の改善を始めねばならないことを痛感したと想像する。

病院建設の基本問題・1 鼎談

病院建設計画のすすめ方

著者: 守屋博 ,   吉武泰水 ,   津田豊和

ページ範囲:P.85 - P.90

 病院は地域社会を基盤とし,最善の医療を永続的に実践する場であるがゆえに,その建設にあたっては決定あるいは予測しておくべき基本的諸要素を数多くふくんでいる。

ホスピタルトピックス 特殊病院

英国の必要精神病床数

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.93 - P.94

 英国の精神病床の減少計画はわが国にはよく知られている。1960年の人口1000対精神病床3.4を1970年代には1000対1.8に減らし,この枠のなかで総合病院精神病床を増加させ,精神病院病床の一部を廃床し,しかも1.8の病床占床率を95%として計算している。この基礎は1954年から59年までの統計と地域医療の進展であった。
 これに対して,1961年から現在まで主として精神科医の側から反論がだされ,私の知るかぎりでも,10数篇におよんでいる。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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