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雑誌目次

雑誌文献

病院27巻5号

1968年05月発行

雑誌目次

特集 病院の窓口

病院の窓口考

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.19 - P.22

まえがき
 いかなる生体も事業体も,外部と全く接触交流なしに,完全に自己完結的な姿で存立することはありえない。そこには必ず,内部から外部へ流出するものと,外部から内部へ流入するものとの2方向の流れがある。その流れを形成するものは,人でも物でも金でも働きでもエネルギーでも情報でも何でもよい。そうした外部との接触交流のうちに,生体や事業体の生成や活動が行なわれていることは確かである。
 そうなると,その2方向の流れと生体や事業体との間には必ず接点が生ずる。窓口とはその接点に名づけたものといってよいのではなかろうか。そういう窓口はもちろん事業体にもある。そして,病院にもある。しかも,それは必ずしも1つとはかぎらない。むしろ,いくつもあるのがふつうだろう。また,それは必ずしも外に向って開いていると決められるものでもない。内に向って開いているというものも当然ありうる。そのように,窓口の生態はさまざまである。

玄関案内係の業務と人員配置

著者: 落合勝一郎

ページ範囲:P.23 - P.27

はじめに
 聖路加病院本館(建坪約6000坪)の出入口は通常5カ所に分散している。その1つは,外来診療部で主として外来患者専用でその受付事務が行なわれる。2つめは正面玄関受付である。ここでは主として入院患者の出入や,見舞客,そのほか病院に用事のある一般訪問客を受付ける。3番めの出入口は,別棟の看護宿舎・インターン・レジデントおよび一般職員の宿舎に近い位置にあるので,病院職員の出入が主である。また管理棟と付4の看護大学の入口でもあるから,大学職員・学生および管理層への面会者もここを利用する。第4の出入口は商人専用で,外部から商用で病院を訪れる業者はここでチェックされて院内に出入する。5番めの出入口は,救急患者専用である。前記した建坪の広さと,毎日の出入者が2,000—3,000人に及ぶスケールでは,大体5つの出入口を常時開いて,ほどほどである。
 第1の外来診療所の受付を担当するのは,外来患者事務課(医事部門)の人々である。第3と第4の病院職員受付と一般商人受付は,守衛がその守備にあたる。第5の救急患者出入口は平常は施錠して,必要のたびに係員が開錠する。第2の出入口が正面玄関で,ここには専任の受付係が常駐する。

窓口職員の服装と応待

著者: 井上昌彦 ,   平野栄次

ページ範囲:P.29 - P.34

はじめに
 病院に対する一般の人々の従来のイメージは,薄暗く,不潔で,しかも異様な臭気のただよう,いかにも陰気な環境であり,またそこに勤務する職員の応対が,冷たく,つっけんどんであるということであろう。つまりサービスが悪いということが,病院に対する一般的な評価であると考えられる。
 しかし病院は病者を扱かう場であるから,むしろ一般の施設以上に明るい清潔な環境と,暖かく心のこもった職員の応対が,そこになければならない。

病院における窓口の設計

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.35 - P.44

まえがき
 病院は,入院患者にせよ外来患者にせよ,"病める人々"を受けいれる施設である。しかもその患者は,病院にとってある意味での"客"でもある。したがって,受けいれの接触点である窓口のあり方が,病院管理の立場からわざわざとりあげられるのも至極当然といえよう。事実,患者が窓口で受けた感じは,そのままその病院に対する印象の大きな部分を構成する。
 ところで,窓口における印象は応対する職員の態度もしくは客扱いのシステムによってほとんど決定的に左右されるといっていい。窓口の設計の優劣が占める比重などほとんど問題にならない。

電話の窓口

著者: 本橋義治

ページ範囲:P.45 - P.49

 病院における電話の窓口の好ましいあり方——それを求めるには,次のように検討が段階的に行なわれることが必要である。
 まず第1に,病院を中心とする通話需要がその量・質・時間といった面でどのような特質をもっているのか,とくにそれを一般企業を中心とする通話需要と対比して特質をとらえること。

座談会

病院の窓口苦労話

著者: 守屋博 ,   小川豊司 ,   佐藤太司 ,   三浦秀夫 ,   阿部重子

ページ範囲:P.50 - P.60

 どこの会社や銀行に行っても,まず通らなければならないのが"受付窓口"つまり,第1のインフォーメーションを得る場所である。したがって,この場所での応対の良し悪しは,決定的である。相手が患者であれば,なおさらそうである。第一線の人々の苦労話とその対策を聞いてみると……。

グラビア

病院の窓口

ページ範囲:P.5 - P.12

 病院に診察を受けに行くと,あちらの窓口,こちらの窓口と渡り歩かなければならない。勝手がわからない病院では,それだけでも気疲れしてしまう。ホテルならばフロントに申し込めば,あとはボーイが案内してくれるが,病院では患者が窓口をさがして歩いていかなければならない。
 窓口は病院と外部の人との接触点である。いろいろの苦情も窓口に集まる。窓口にいる人は,ただその仕事をしているだけでなく,病院の代弁者にもなるのである。窓口は病院の第一印象を作るところでもある。

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滅菌の原理と実際(5)

著者: 牧野永城

ページ範囲:P.15 - P.15

3.滅菌器内の空気とその除去
 前回にも述べたように,空気がまじっている不飽和蒸気では,同じ圧力をかけても飽和蒸気の際のように温度が上がらない。空気は蒸気の滲透を妨げ温度の伝達を妨げる。滅菌器内に残っている空気が多いければ多いほど,滅菌は不完全になる。滅菌器の中に残る空気が多ければ,滅菌材料の包装の中に含まれる空気も外にぬけきれず,包みの中まで温度が伝達しにくく,包みの周囲の温度が上がってからもその中心部まで温度が達するには飽和蒸気の場合よりずっと時間がかかってしまう。
 蒸気滅菌の効果を上げるためには,滅菌器内の空気をできるだけ除去しなければならない。そのため現代の滅菌器は通常いわゆるサーモスタットと言われる弁を使っている。この弁は金属体の中に揮発性の液体を封入したもので,その熱膨脹を利用して温度が低いときは弁が開き,熱せられてある温度に達すると弁が閉じるようにできている(図3)。

編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.92 - P.92

 5月の好季節になりました。新緑が目に浸みるよう。花も赤,紫などのあざやかさ。日本の四季が改めて美しく眺められるのは,社会が一応物心ともに豊かになったせいなのでしょうか。
 小生は学生時代通算1年間山に入っていた山狂いでしたが,学生時代は責任のない自由さから自然が楽しめたのは,今と共通しているのかもしれない。しかし学生時代は登山という積極的な自然の楽しみ方であったが,年のせいか庭や街路樹などの美しさに特に気をひかれます。10年前あえて「病院緑化」運動の口火を切ったが,華々しい発展はなかった。しかし今では一部に同好者の団体ができたばかりでなく,各病院の院内,外の緑化はおのずから整備されつつあります。ただいま小生男の更年期に入っていますが,老人や病院人は,この景物を静かに眺め,「生」に希望を持ちたくなるようです。改めて「病院緑化」「病院庭園」のコンクールでも企画したいものです。新緑に当っての感想。

欧米病院偏見旅行記・5

木の床とハイヒール—聖域英国にて・その2

著者:

ページ範囲:P.16 - P.16

 英国は歴史の国である。ポンド危機がとりざたされているが,大英帝国の盟主としての雰囲気がいたるところに残っている。
 病院についても歴史の重みは大きい。なかでもセントバーンロミュ病院は,1123年の創立以来実に800年以上のあいだ,16世紀にわずか3年間の空白を除いて,ロンドン市内スミスフィールドの同一敷地内に,連綿とした歴史を誇っている。名前の示すように宗教(キリスト教)をバックボーンとして,非営利・慈善・奉仕の伝統を持ちつづけている病院である。

病院の広場

国立病院の使命—国立松山病院の現況から

著者: 三木直二

ページ範囲:P.17 - P.17

 最近,国立病院の使命についての論議が,しばしば聞かれるようになった。終戦後しばらくの間は,海外からの引揚者・復員者の収容,荒廃した一般病院の収容不足のため,軍病院の一般への解放は,国民医療に対して無視できない存在であった。
 しかし,世の中が落ち着いてくるに従って,地方公共団体が設立する病院が急速に復興し,近代化のおくれた国立病院はその存在意義さえ疑われる状態となってしまった。このような時点に至って,おくればせながら国立病院の近代化が行なわれはじめたのである。しかし,一般総合病院としての整備では,他の公立病院に近接している場所では,いたずらにこれと競合するのみで,国立たる存在理由に欠ける病院が多数生じてきたことは否定できない。もちろん,その地方に一般総合病院の存在しない地域では,国立であることに対する議論は別として,その必要性は認められるが,同一地方に同性質の病院が乱立することが国の施策として許されるかという問題は,国の予算の有効適切な使用という観点にたたなくても頭をかしげざるをえない。

第17回日本病院学会パネルディスカッション

複廊下病棟

著者: 吉田幸雄 ,   石丸健雄 ,   幡井ぎん ,   浦良一 ,   明石恵美子

ページ範囲:P.63 - P.69

第1回
複廊下だからよいといえるか
 司会(吉田)ただいまからDouble corridor複廊下式病棟のテーマについてパネルディスカッションを行ないます。このDouble corridorが初めて病院に活用されたのが1941年で,Neergaardというアメリカ人がこれを設計して発表したものですが,その後しだいにアメリカに普及して,戦後は欧州ならびに日本へも流行しつつあります。日本ではご承知のように虎の門病院が初めてこの方式を採用しているのでございます。
 この病棟の構造の特徴は申しあげるまでもなく,従来病棟には片廊下,あるいは中廊下と,1本の廊下であったのが,1つの病棟の中に2本の平行した廊下が存在する形であります。したがってDouble corridorと名付けられたのですが,そのねらいとするところは病室以外のサービスをするいろいろの部屋を病棟の中心部にまとめて,その回りを病室で囲むという方式で,たまたまその形が中に2本の廊下を含むという形から名づけられているのであります。したがって機能からいうならば複廊下というよりも別の名前のコア・システム,芯のある方式といっていいものだと思います。

話題

—金子敏輔著「オープンシステム病院の運営」の台湾訳—輸出された日本の病院管理

ページ範囲:P.69 - P.69

 外国の本が日本で訳されることには慣れているが,日本の本が外国で出版されるという例は,今のところごく珍しい。それも,日本の"病院管理の本"となると,まるで前例がない。
 このまれな前例となったのが,金子敏輔著「オープンシステム病院の運営」(医学書院,1963年)である。発行されたのは台湾。訳名は「開放性医院之運営」となっているから,字面をながめただけで,なんとなく理解できそうな題名である。

病院建設の基本問題・2

診療圏と医療需要予測—1.都市の場合

著者: 柳沢忠

ページ範囲:P.71 - P.77

 都市は激しく変化している。毎年100万にのぼる人口が都市へ流入を続け,20年後には総人口の8割を占めるといわれている。大都市地域の外延的拡大,厖大な昼間人口の流動,交通条件の変化,都市公害の増大等々により,都市の構造は変りつつある。
 医療需要もこれにつれて変化するし,動きの激しくなった市民生活は医療施設を利用する態度にも現われてくるであろう。

研究と報告【投稿】

病院におけるパラメディカル部門の所属科長に関する諸問題—パラメディカルの研究(5)

著者: 車田松三郎

ページ範囲:P.79 - P.84

はじめに
 パラメディカル部門はその大部分が組織上新しいものが多く,その部門の長(以下科長と呼ぶ)は医師であるもの,同種の技術員であるもの,事務員であるものなどがある。またその科長が専任のもののほかにしばしば兼任のものがある。第3に彼らは組織上どこに属するか,たとえば院長直属か,各科所属か,あるいは事務部に属するかなどのちがいがあり,さらに第4には,実際に業務上での指示関係はだれに(通常医師であるが)よってなされるのかなどの問題があげられる。
 次に,運営上科長の役割と機能の問題があげられる。すなわち,科長が上司として,専門業務上の他,人間的にパラメディカルを十分に理解できるものであるのかどうかという問題,さらにこれと関連して,それでは上司としての役割はどんなことで,どうあればよいのかなどがあげられる。

病院図書館

—橋本 正己著—「地域保健活動公衆衛生と行政学の立場から」

著者: 園田恭一

ページ範囲:P.85 - P.85

幅広い観点をとりいれた好著
 この本は,戦後の新制保健所の発足以来,国立病院,市役所,保健所,厚生省,公衆衛生院等々の職場を通して,一貫して地域の公衆衛生活動に,実践,行政,研究,教育などさまざまな立場から取り組んでこられた著者が,今日歴史的な転換期にある日本の地域保健活動の前進のために,過去20年余の考え方を集大成された貴重な成果である。
 本書の内容は,I.序説,II.各国における地域保健活動の発展過程とその現状,III.日本における地域保健活動の発展,IV.日本における地域保健活動の現状とその評価,V.地域保健活動の問題点と対策の諸段階,VI.地域保健活動を前進させるために,という構成からもうかがわれるように,イギリス,アメリカ,ソ連など他国との比較において,また戦前の日本との対比において,今日の,そして今後の地域保健活動のあり方を浮びあがらせるという手法がとられており,このように歴史的,社会的条件との関連で,保健や医療の問題をとらえていこうというところに,本書の大きな特徴があるといえる。

資料

島田総合病院における過去1年間の初診者の実態—とくに胃腸病および高血圧患者について

著者: 島田信義

ページ範囲:P.86 - P.87

1.調査目的
 最近とみに胃腸病や高血圧患者が激増しつつある。その原因は医学的に究明され検討されてきてはいるが,その中に,心理的要因のあることも見のがせない事実である。そして,従来の年齢的傾向,職業別発生頻数の統計的パターンに対して今日のそれはどのように変貌されてきたか,その実態を把握するとともに,精神身体医学(SPM)の立場からアプローチし,分析考察するところにある。

霞ガ関だより

医師法改正—国会を通過

ページ範囲:P.88 - P.89

 数年前から動きがめだってきたインターン騒動は,昭和42年から本年にかけて各地の学園ストにまで発展し,医学教育という技術的な側面をとびこえて,すでに社会問題化してきている。
 このような紛争は,数年前からのインターン騒動を解決しようとして政府が提出した医師法改正案によってさらに火に油を注ぐような形になって燃えており,消火剤が逆に火事を激しくしているようなもので,関係者からすれば意外であり,学生側からすれば当然ということなのであろうか。

ホスピタルトピックス 特殊病院

陳旧精神病院の改造

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.90 - P.91

 フランスのブレスト地方フィニステール県立精神病院は現在1200人の在院患者と600人の職員をかぞえるが,その創立は1826年であり,病院の歴史は5つの時代にわかれる。第1期は断続して建築がなされた時期で,1892年までの66年間である。第2期は1936年までの43年間,新しい建物はなにもつくられず,機能も停滞した。第3期は建物の老朽化に,超過入院が加わって,衰退化がめだった12年間である。第4期は1950年から55年にいたる極悪期で,醜聞がつぎつぎと起こり,ついに聴問委員会が派遣されるにいたり,Ⓐ居住条件のみじめさ,Ⓑ治療状況の不良,Ⓒ職員能力を顧慮すると,900床が最高限度,Ⓓ建造物の改造と再配置の必要性が,議会と政府に報告せられた。この答申により,1956年から再建計画が立案せられ,翌年から工事が始まり,その名もグルムルン病院と改称され,付近の同種施設と組織的に体系化され,対象患者は男子のみに限定された。この時期が第5の時代で,再建期ともいいうる。
 改造目標は,刑罰的監視の廃絶,自由入院の拡大,医療水準の向上,看護力の確保,予防的社会活動の拡充であった。このための機能的再編成と病棟改造にあたって,大きな支障となったのは,1838年制定で,しかも現在なお効力をもつ精神障害者法と,病院業務継続のままの工事進行であった。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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