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雑誌目次

雑誌文献

病院28巻13号

1969年12月発行

雑誌目次

特集 院長

欧米の病院長

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.31 - P.34

スノーク博士の指摘
 昭和43年の秋,わが国を訪れた元エール大学病院長であり,同時にエール大学病院管理学教授でもあったアルバート・スノーク博士(医師)が,一夕"アメリカの病院管理の最近の動向"と題する講演会を開かれた.それは多年の経験と,アメリカ病院協会から最高功労賞を受けたほどの学識を十分にうかがわせる,興味深いものであった.
 その中で特に博士の強調したことの1つに,病院におけるフルタイムの専門管理者の重要性があった.近代病院はますます複雑な組織体となり,その総合調整をなす組織の長は,完全に専門的な仕事であるはずだが,日本において多くの病院長が,その大部分の時間と労力を診療という管理以外の業務に費しているのは不思議とも指摘された.

管理者テスト 解答と解説

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.62 - P.63

①× 管理者はできるだけ職員の声に耳を傾けなければならない.しかしこの場合,まず医事課長と話すべきだと指示するのが管理的職務であり,場合によっては苦情処理委員会にまかすことが普通であり,このような職能は作業的と呼ばれるべきであろう.
②○ 筋を通せば医長を通すべきである.しかし自分から建設的意見をもつ若い医師と話すことは,単なる作業的職務より,計画,検討機能に属する管理的職務であろう.

てい談

院長,その機能と権限

著者: 吉田幸雄 ,   守屋博 ,   島内武文

ページ範囲:P.19 - P.29

医学的権威と管理能力
 吉田 だいぶ昔になりますが,昭和30年に"病院と院長"という単行本が医学書院から出たことがあります.そのときは橋本寛敏先生と守屋先生の対談という形で今後の院長のあり方が論ぜられました.それから約15年,日本の病院はいろいろの変化をしてきましたが,病院長もいろいろな環境の変化の中に立たされて,病院長自身いろいろ考えざるをえない時代に立ち至ってきたと思うのです.そういう時期に当たって,現状の日本の病院長のあり方を論じ,また将来へのビジョンを引き出しうれば,ひとつの指針になるかと思います.
 さて,日本の戦後の病院の急速な変化は,日本の医療史上特筆すべき時代であると思います.戦前の単純な組織,および機能の病院の時代から,現在のような国際的な流れを含めて,病院自体の構造,あるいは機能が複雑になっていくばかりでなく,その病院が置かれている社会的・経済的あるいは政治的環境も非常に複雑化してきています.したがって病院長の機能は急速に重大になってきているわけです.

院長某月某日

ほんとうの患者となり病室で暮らす

著者: 河北恵文

ページ範囲:P.24 - P.25

 起床7時30分.ほぼ梅雨も明けかかった感じで,きょうも暑くなりそうだ.8時20分,オーナードライバーで出発.きょうも大いに走ってもらわねば,途中内科の先生を同乗して8時40分に出勤.
 総婦長が看護婦の補充状況を報告に来る.9時,内科外来開始.机の上にはもう10枚近くのカルテが並んでいる.11時まで一息に診たがまだ絶えない.以後新患お断わりで30分診るも,まだ終わりそうもない.12時からの会に遅れるとの電話を依頼する.

いろいろな制約の中で

著者: 中村善紀

ページ範囲:P.43 - P.43

 9月も末になったが,秋の日ざしはまだきびしい.しかし肌にふれる空気はさわやかである.8時40分,総婦長が看護日誌をもって報告にくる.各科入院患者の状況を聞く.つづいて事務長が病院新築工事の第2期工事入札の打ち合わせにくる.最近の入札はなかなか円滑にいかないという.
 今日は外来診療日.内科外来の待合室はもういっぱいで,患者は廊下まであふれている.患者は北は大町,麻績(おみ)から,南は塩尻・木曽方面から列車や車でやってくる.病院構内も駐車する車でいっぱいで困っている,‘てきなくて(疲れて)しようがないので,よく診てくだせい’‘咳をしたら血がでたのでおどけた(驚いた).いちゃついて飛んできた(いそいできた)’などの方言もだいぶわかるようになったのも松本へきて3年になるからだ.患者の待ち時間が長いのが悩みの種だが,このへんでは予約制もむずかしい.遠くから来る患者のためにはまた来院させるのも気の毒だし,汽車賃も安くないので,できるだけその日にX線写真を現像したりして診断をつけるように便宜を計っている.外来が終わったのが1時半.食事をとってひと休み.午後3時から若いドクターのために気管支造影をしてみせる.女の患者で長いこと療養所にいたとか,結核菌は一度もでていない.透視下にカテーテルから造影剤を入れると左下葉気管支に広汎な拡張症が現われた.

万事誠に蒸し暑い

著者: 棟久一夫

ページ範囲:P.59 - P.59

 このごろの病院長の1日は,診療報酬の緊急是正が頭から離れない.
 8時半から重症患者数人を見舞う.9月から癌征圧月間について県対癌協会から子宮癌の集団検診を,県予防課長から眼底のフィルムの読影を頼まれる.それぞれの部長がきげんよく引き受けてくれたので助かる.

理想の院長像・1 開設者の一員として

院長に求める3つの条件

著者: 橋本寿三男

ページ範囲:P.35 - P.37

はじめに
 これは私の体験を印象的に整理したものであって,論理的なものでないことは許されたい.また,その記述には,夢をえがくつもりで,多少誇張した傾きがないでもないので,その体験を問いつめられれば,事実を正確に伝えたものではない部分もあるかもしれない.しかし,私の病院とのおつきあいは長く,20年にもなるので,このような印象記も少しはお役にたつものと思って筆をとったしだいである.
 院長たる資格については,いろいろな場でいろいろな人が論じている,いまそれらを整理して,その‘あるべき姿’を論ずるのは,私に与えられた課題ではない.現に開設者の一員となっている私に,どんな院長が理想かときかれて,どう答えるか,それだけわかっていただければよいと考えている.

理想の院長像・2 事務長の立場から

わが身をつねって

著者: 関谷友一郎

ページ範囲:P.37 - P.40

はじめに
 与えられた課題は,‘事務長からみた理想の院長像’ということであるが,一口に事務長といっても,その病院がおかれる内外環境,病院の規模ならびに病院の歴史などにより,事務長の位置づけも異なるし,たとえこれらの条件が同じであったとしても,事務長には能力・力量からみてピンからキリまであり,千差万別である.かつて私はそのキリの末席をけがしていただけに,‘事務長からみた……’など,とてもおこがましくて述べられる筋あいではない.
 以下に記すことはあくまで病院の一職員として日ごろ考えていたことの1,2を述べるにすぎないことを,まずお断わりしておきたい.

理想の院長像・3 総婦長の立場から

公平に,おおらかに君臨する

著者: 大森文子

ページ範囲:P.41 - P.45

はじめに
 この課題を与えられて,あらためてもう一度,病院の目的・機能,その最高管理者としての院長に何を期待するかと考えなおしてみた.また何人かの総婦長の意見もきいた.
 その望むところはだいたい同方向であることがわかったが,さて多くの総婦長が期待するような院長がはたして幾人あろうか.しかし理想像ということなので,ここに述べてなるべく多くの院長に総婦長の希望を知っていただこう.

理想の院長像・4 医長の立場から

院長は病院の飾り物ではない

著者: 榊田博

ページ範囲:P.45 - P.48

 理想の院長像という主題であるが,病院は院長ひとりで成り立つものではない.病院のすべての部門の総力が結集されて,医療の本来の姿が具現されるときに,すなわち病院の理想的な組織の中に組織体の統卒者として位置する院長が理想の院長である.したがって院長像を描きだす前提として,病院組織の理想的基本構成について触れておきたい.

座談会

院長もまた楽し

著者: 宮崎達 ,   服部達太郎 ,   伊藤国彦 ,   三宅史郎 ,   木村元 ,   岩佐潔

ページ範囲:P.50 - P.63

患者と職員,それに政治.このしがらみの中にあって右往左往を続ける病院.舵をあずかる院長のたいへんさは,しょせん‘院長職’のもつ宿命とはしても…この中から,喜びや楽しさを感じるとしたら,それはまさに値千金の重みをもつものではあるまいか……

グラフ

病院管理をいかした病院の成長—京都桂病院

ページ範囲:P.9 - P.13

 昭和12年に34床の結核療養所松尾病院を生んだ個人の夢が,32年後に6棟,616床の総合病院にまで発展した.治療医学から予防医学へという医療の発展を把握し,戦後わが国に芽ばえた病院管理を吸収し,昭和44年には近代的設備をそなえた6階建ての病棟を完成して,近代病院の機能を確保した.
 昭和18年に創設された京都厚生園が,昭和23年に松尾病院と合併し,昭和39年に京都桂病院となり,今日洛西の地の医療のセンターとなったのである.

第8回全国自治体病院学会—1969.9.24—26神戸

ページ範囲:P.14 - P.15

第8回全国自治体病院学会は,神戸市立中央市民病院長・大屋拳吾会長のもとに,神戸国際会館で3日間にわたって開かれた.専門部会,特別講演,パネルディスカッション,シンポジウム,一般演題など,さまざまな発表形式の中に"自治体病院共通の悩み"が熱心に検討された.

病院管理のパイオニア・11

山元昌之—元名古屋大学病院事務部長

著者:

ページ範囲:P.16 - P.16

病院管理の地盤がまだ固まっていなかった創成期に,早くも病院経理に関する著書を出し,病院の事務方面の先達として,今日まで地味な歩みを続けてきている.大学の事務部長の経歴は礼儀正しい温厚な性質をそのままあらわしている.
低い声で話をされる態度は真実性にあふれ,真剣な討論へとひきずりこむ.激しさはないが,むずかしい大学の事務をきりまわした実行力が,細いからだに秘められている.

病院の広場

第8回全国自治体病院学会を主催して

著者: 大屋拳吾

ページ範囲:P.17 - P.17

このたびの全国自治体病院学会をお引き受けして,神戸で開くことに決めたのは昨年の11月であるが,偶然にも全日本病院協会の病院管理学会も神戸で開かれることを聞き,なんとか共同主催したいと全日病の藤田学会長とともに努力したが,諸般の事情で不可能になった.そのために準備が非常におくれ,その点ではその方面をお引き受けいただいた方がたにたいへんご迷惑をおかけしてしまった.結果的には最初の予定どおり全日本病院管理学会も当神戸で11月に行なわれることになったので,この学会となるべく中心テーマが重複しないようにとの配慮から,"自治体病院のあり方を考える"といった方向を中心としてすすめることに決定した.
 この企画により各方面の先生方にご講演などをお願いしたが,自治体病院が大小さまざまであり,その地域による差もあり,また開設者の意思、による違いと,いろいろな条件の差のあるために,もちろんこれにより結論をだせるテーマではないが,この学会により自治体病院のある程度の将来に対する示唆が得られたと思われる.

病院図書館

—Thora Kron 著 都留 伸子 訳—「ナーシングチームリーダーシップ」(第2版)

著者: 藤森きよ

ページ範囲:P.48 - P.48

看護計画がいかに重要なものであるかを示す
 社会のニードに対応した医療チームとしての看護の役割は何か,看護婦は何を考え,何をなすべきか,いま苦悩し前進の道をみずから求めるもののために,都留伸子訳「ナーシングチームリーダーシップ」第2版が出版されましたことを心から喜ぶものの1人でございます.
 かつて38年冬,国立中野療養所でチームナーシング研修生として訳者都留伸子氏に直接ご指導いただいた折,人間としての患者の看護を思考する基本的なものとして,リーダーシップによるチームの看護活動をどのように展開し効果をもたらしめるか,具体的には,患者のニードの把握をカンファレンスによって追跡し,しかも専門職として科学的裏づけを探究し,それらの考えに基づいて実行可能な方法・手段を導入するという基本的な姿勢についてきびしいご指導を得ましたが,この第2版の中には,初版よりもさらにそれらリーダーシップの要諦があますところなく指摘され,実践活動に活かせるよう具体性をもって記されています.

病院建築・12

七沢病院

著者: 横山巌

ページ範囲:P.65 - P.69

病院の位置
 東名高速道路の厚木インターチェンジ,あるいは小田急線本厚木駅から西方に約15分車を走らせると,大山を背にしたなだらかな丘陵の上に,地上5階建ての白亜の病院がそびえている.この地は室町時代末期の七沢城の遺跡であり,また23℃の鉱泉が湧出し,従来保養地として用いられていた所である.

印象記

第14回ICN大会に出席して(International Council of Nurses)

著者: 蜂須賀つや子

ページ範囲:P.70 - P.71

 6月22日,飛行機は予定どおりカナダ,モントリオールに着陸.空港の長い長い廊下は,だれひとりとして見かけることなく,出口のところで,はじめて2人の日本人に会う.私どもを出迎える高野・伊藤両氏であった.
 さっそく会議登録に向かう予定であったが,お2人がすべてホテルに準備しておられて,大会進行のオリエンテーションをしてくださる.

管理者訪問・21

京都第二赤十字病院救急分院長 宇山 理雄 先生

著者: 森日出男

ページ範囲:P.73 - P.73

 昭和31年,以前より京都第二赤十字病院内にあった救急病棟が,救急患者の増加ならびに諸般の事情により,現在地に58床の救急病院として分離した.昭和34年,外科副部長であった先生が分院長として診療管理にあたられ,現在89床の救急病院として,常勤医師7名,非常勤医師9名とともに多忙な毎日を送っておられる.
 先生は兵庫県は豊岡のご出身で,昭和16年京都府立医大をご卒業,その後中支の戦線にあり,帰還後母校の外科教室にはいられた.

イギリス病院管理うらおもて・12

統計

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.74 - P.75

統計の国イギリス
 イギリスは統計の国である.統計学の父といわれるサー・ウィリアム・ペティはあまりにも有名である.また今日の人口動態統計のはしりをなしたのは,ジョーン・グラントである.
 イギリスは統計学の創始に偉大な足跡があったばかりでなく,たえず統計界をリードしてきた.現在大いにもてはやされているオペレーションズ・リサーチ(OR)もイギリスで始められたものである.

病院と統計

傷病別患者数の季節変動

著者: 前田行雄

ページ範囲:P.76 - P.77

 病院・診療所を訪れる患者についての統計は,患者調査および病院報告によるものがあることはすでに述べたが,その他に社会医療調査によるものがある.社会医療調査は,保険医療機関から社会保険診療報酬支払基金に提出された診療報酬請求明細書を調査対象とし,社会保険のうち被用者保険によって給付された医療と,医療の対象となった傷病の実態を明らかにすることを目的とした標本調査である.この調査は,昭和30年から実施され,診療行為別調査と傷病別調査に大別されるが,今回は昭和42年度に行なわれた傷病別毎月調査を中心に,傷病別患者数の季節変動を観察してみよう.
 昭和42年度傷病別毎月調査では,全国の保険医療機関から層化無作為抽出法によって抽出(抽出率は病院1/10,一般診療所および歯科診療所1/100)された標本医療機関から提出され,昭和42年5月から43年4月までの各月に,支払基金において審査決定された政府管掌健康保険分の明細書を,さらに1/10の抽出率で無作為抽出したものを調査客体とした.

霞ガ関だより

WHO放射線防護セミナーに出席して

著者: 仲村英一

ページ範囲:P.78 - P.79

 本年8月4日から4週間にわたって,WHOの放射線防護に関するセミナーがデンマークで行なわれ,筆者が参加したので若干の感想を加えながら,その概要についてご報告する.

見のがされやすい実務の知識

病院の衛生器具

著者: 倉持一雄

ページ範囲:P.80 - P.80

 病院で使用される衛生器具には,一般建物と違った機能と特性が要求されている.しかし,その業務内容に合った適切な器具を使用している例は少なく,病院関係者からも適切な器具の出現が要望されている.
 ご承知のように,設備器具は一度設置されたものは,よほどの問題がないかぎり改善されることがなく,また設備の財務管理と会計法上の規程で,その使用状況に関係なく,一定の耐用年数までの機能維持が強いられている.

研究と報告【投稿】

病院における盗難問題

著者: 内藤均

ページ範囲:P.83 - P.86

はじめに
 病院の出入口管理は全く放置されており,いつでも,だれでもが自由に出入りできるのが一般のようである.病院内のどこを歩いていても,職員から声をかけられることは全くまれであるという病院が大部分ではないだろうか.
 このような状況の中に収容されている患者や,外来診療にきている患者の金品が盗まれるということが,ときどきある.たとえば‘病院あらし’といわれる,病院だけを対象にしている専門の犯罪者もいるくらいである.この盗難事件は,その特殊性からか,被害者の大部分が患者であり,病院自体の被害はきわめてわずかであり,またこれらの問題は病院の恥とでも感じられるためか,あまり公表されていないように思われる.

病院情報処理システムの基本的パターンとその導入策

著者: 斉藤誠

ページ範囲:P.89 - P.92

 今日ほど,病院にとって,病院業務のEDP化の必要性の認識が高まっている時はないが,確かにEDP化は病院業務の標準化を徹底的におしすすめることを通じて,各分野における情報処理の正確性・即時性・迅速性あるいは情報伝達の直接性などを実現し,その経営管理のよりいっそうの合理化ならびに高度化をはかるうえでの最も強力な手段をわれわれに提供するものといえる.
 社会一般におけるEDPS利用の状況を,導入段階別に大別すると,次の3段階に分けることができる.

麻酔診療の新形式

著者: 浅山健

ページ範囲:P.93 - P.96

はじめに
 日本の病院が,いま当面する問題の1つに,麻酔をどうするか1)があろう.すなわち,大都市の大病院はいうまでもなく,地域の中央病院は,一方で正規の有資格麻酔科医長を熱望しているにかかわらず,この望みがかなえられないままに,一方で,見よう見まねの無資格麻酔医に,院内の麻酔需要をまかせねばならぬ深刻な事態となっている.
 たとえば,関係大学から麻酔科医長が赴任しても,1年たたぬうちに,医長の処理能力以上に,院内の麻酔需要はふえてしまう.麻酔需要の各科調整をくり返し,かつ,できるだけ,昔のように麻酔医に頼まず,術者のみで処理する申しあわせをしても,麻酔医長の負担は軽くならず,麻酔の医員が来ぬままに,需要に対処しているうちに,ついに医長は過労で倒れてしまう.

話題

日医に病院調査専門委員会が発足

ページ範囲:P.92 - P.92

 日本医師会では,日本における病院の将来の発展方向を日本経済の発展の中でとらえてゆこうという構想のもとに,病院調査専門委員会を設置し,8月7日,第1回会議を開催した.
 この専門委員会は,病院の発展を日本経済の発展に合わせることにより地域社会と結びついたものとし,病院の健全な発展を期するため,特に経済学者・病院長・病院薬局長・事務長・給食担当者などの参加を得ている.

ホスピタルトピックス

精神科看護婦の教育

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.100 - P.100

 戦後のフランスの精神医療対策は地域中心主義であり,公立無料精神科診療所を人口に応じて新設してきたが,最近は精神病院内の医療構造が表面化し,ここ1年来精神科勤務看護婦のあり方が問題となり,看護教育制度が反省せられている.In-formation Psychiatrique誌はVol.45,No.6でこの問題を総括的に取扱っているので紹介することにする.
 表のように,フランス精神病院勤務看護者数は病院ごとにまちまちであり,看護者1人あたりの患者数をみると,県立精神病院グループで1.9人から5.4人まで幅があり,公的な病院群でも2.1人から4.4人と最低と最高との差が大きく,指定病院では2.9人からその5倍の13.4人までに及んでいる.

進む英国の病院再編成

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.101 - P.101

 既に広く知られているように,イギリスでは,各地区ごとに病院の統合再編成が行なわれようとしている.ここに紹介するのは,その計画の一環としてLeeds Regional Ho-spital Boardによって新しく建設されたHull市の病院である.第2次大戦後イギリスの病院建設といえば大半が増築か改築であったが,最近ようやく全体に新しい病院が姿をあらわしはじめた.このHull Royal Infirmaryもそれらのうちの代表的なひとつである.
 敷地はHull市(Yorkshire)のほぼ中央で,最近までここに568床の古い総合病院が建っていた.これを取り壊したうえ,ごく近くにあった149床の救急病院と110床の小児病院とを併合して計827床の代りに542床の総合病院ができた.地区によって違うが,統合計画ではこのように病院数や病床数が減ることも珍らしくない.ただし,この場合,当分の間は同敷地内にある2棟の旧病棟(計260床)をもそのまま使うことになるので,新病院の竣工によって急にベッドが減るわけではない.診療圏はHull市およびその周辺で,その人口は約60万である.

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編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.102 - P.102

 いよいよ師走が近づいてきたにもかかわらず,医療費が決定しません.このように長びいたことははじめてでしょう.今年も病院苦難の年でした.本年は総医療費が2兆円を突破したことが予想されています確かに大きな金額であります.しかし近代社会ではますます多額な医療費が使われることは世界的な推移であります.ただ問題は,その医療費が有効かつ能率的に使われているかということが問題です.その点については医療界自身にも反省しなければならぬ多くの問題があります.医療費の値上げのときこそ一歩でもその不合理を改善していくべきです.
 病院には同情も集まっていますが,有効にして能率的な病院運営については常に反省されねばならぬでしょう.たとえば,年々4万5000床の増床がはたして有効適切であるのか,大いに問題がありそうです.

「病院」 第28巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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