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雑誌目次

雑誌文献

病院28巻3号

1969年03月発行

雑誌目次

特集 病院と労使関係

病院における労使関係のありかた

著者: 今井一男

ページ範囲:P.19 - P.23

病院という事業の特質
 病院の労使関係は,他の企業の場合とどうちがっているか.またどうちがうべきか.これを考えるには,まずその前提条件から取り上げなければならない.
 第1は病院という事業の特質である.病院は公益事業である.労調法においても公益事業として指定され,争議行為を行なうには法定の予告期間をおかなければならないことになっている.

病院労働組合の現況と問題点

著者: 山田進

ページ範囲:P.25 - P.30

病院における労働組合の組織化の現況
 病院においては労働組合の組織率は非常に低くて,これからまだまだ労働組合ができるのではないかと思われる.
 日本全体では,昭和43年6月末の調査で,5万6535組合,組合員数約1086万3000人,雇用労働者の中に占める組合員数の割合(推定組織率)は34.4%である(労働省,労働組合基本調査による).

病院の労働条件と賃金問題

著者: 楠田丘

ページ範囲:P.31 - P.35

これからの病院における賃金のありかた
1.賃金上昇は避けられない
 日本の賃金は昭和30年代の半ば以降,年率にして10%を越える速さで今日まで上がりつづけている.一昨年あたりからはさらにスピードを増して,12-13%にさえ達している.
 もちろん,このような賃金上昇は,生産性向上,生計費の増大,労働力不足といったことを要因としているわけである.重要なことは,労働力不足が進展するかぎり,労働力の価格たる賃金上昇は当然のことであり,別の見かたをすれば,日本の労働が低賃金体制から高賃金体制へ転換していく歴史的経過でもあるといえる.

病院における争議行為の経験

著者: 諫山文彦

ページ範囲:P.37 - P.43

はじめに
 昭和35年から38年ごろにかけては,病院争議のはなやかな年であった.多くの病院において,大なり小なりその洗礼を受けたことであろう.当時は,すべての病院においてといってよいくらい争議行為にはまったくの無経験で,争議はまさに青天の霹靂ともいえる一大騒動であり,これには手をこまねいたというのが実情であった.事実そのような実情を反映して,争議行為は長期にわたるものも多く,また中央から全国的に燎原の火のように波及していった.
 争議行為の経験にはいる前に当時の組合について述べると,厚生団傘下には7つの病院があり,東京・大阪・九州の3総合病院における労働組合は,それぞれ260名から290名の組合員を擁し,病院職員の過半数を越えるものであった.この3厚生年金病院の労働組合は,他の病院の組合とは別途に厚生年金病院労働組合協議会(三協)を構成し,日本医療協に一括加盟し,闘争至上主義の過激な性格をもった組合であった.

病院における労働法上の諸問題

著者: 賀来才二郎

ページ範囲:P.45 - P.49

病院の業務と労働法上の特殊性
 病院はその業務の本質から,従業員の雇用・就業・給与ならびに管理について,他の企業と異質のものがあることは当然である.したがって理論的には,病院の労使関係ないし労働問題に関する労働法には,病院の構成人員・勤務体制・給与体系および管理体制について,特殊な規程が明定されても不思議はないともいいえよう.
 もちろん,実際的には現行労働法にも病院の業務の本質を考慮して,その特殊性を尊重し規定されたと思われる条文は,多少存在している.

労使関係改善のための努力の経験 経験・1—武蔵野赤十字病院

対話の"場"を活用する

著者: 森直一

ページ範囲:P.51 - P.53

労務管理の認識
 戦後,ブームをよんだ新しい経営理念のなかで労務管理の重要性が認識されてから,かなりの年月を経ている.そして労務管理は,経営権の1つの作用として営まれる努力が続けられてきたが,まだ,満足の状態ではないようである.その理由は,労務管理が企業自体の構造的な面や,財政・経済的な面との競合による影響を受けるからであろう.
 そうしたなかで,病院における労務管理の問題は,その考えかたや,技法の面で,一般企業と比較した場合,著しくその後進性が目だっている.このことは,昭和35年に日赤病院をはじめとして,全国的に発生した病院ストライキにさいし,労務管理を中心とする経営技法の封建性が指摘されたところである.

経験・2—国立西多賀療養所

病院全体の運営に理解を求める

著者: 岩田寅松

ページ範囲:P.53 - P.56

はじめに
 労使関係をよくするには相互の信頼と理解が必要である.それには,管理的立場にある者は基本的に組合の存在意義を理解し,組合員はその限界を知るべきであろう.いたずらに対立的考えだけに走らずに,共通の広場を持たなければならない.
 それには,双方が広い視野に立って,相手の立場を認めるだけの度量が必要なのであって,そのためには教育,特に一般的教養が必要である.この方面における私の経験はきわめて限られているので,日ごろの考えをもつけ加えて,その欠を補わせていただき,あわせて諸賢のご叱正により,私自身の今後の仕事の糧にと念ずるものである.

経験・3—佐久総合病院

わが病院の労使関係とその歴史

著者: 飯島聖人

ページ範囲:P.56 - P.58

あらゆることが経営協議会で決定
 佐久総合病院は信越線小諸駅から小海線で南に約25kmの,南佐久郡臼田町にある.臼田町は人口1万5000余の小さないなか町で,病院は昭和19年1月,この町に開設された.発足時は20床だったが,現在736床となり,従業員も10数名から,本院と分院2か所(小諸市97床,山間部小海町12床)あわせて540名余となり,病院のほかに高等看護学院(学生103名)と農村医学研究所を併設している.
 信州の片いなかに845床の大病院ができたこと,農村医学・農村医療の研究と実践により,多少世間に知られるようになったことは,若月院長の卓越した指導力と,全従業員の固い団結と協力によるものと信じている.

グラフ

弥生ひなまつりGirls' festival in March,"Hinamatsuri"—日本赤十字社中央病院

ページ範囲:P.5 - P.5

 合理化の中にも人間性が生き生きとしていなければならないのが病院である.民俗の行事には心のふるさとが感じられる.病院管理も医療も知や理だけでなく,情が欠けてはいけない.

3病院を整理統合—東京都職員共済組合青山病院

ページ範囲:P.6 - P.9

 医学が進歩し,医療が高度になるにつれて,病院の機能の向上が要求される.過去に建てられた小さい病院を統合して,近代的機能をもつ大きい病院を作ることは,1つの方向を示すものである.
 病院の整理統合には,多くの困難と問題を含むものであるが,東京都職員共済組合はりっぱに実現させたのである.すなわち,従来の明石病院・飯田橋病院・青山病院をあわせて,青山病院跡に新しく300床の"青山病院"を建設した.

建設はすすむ—中央鉄道病院 日本大学板橋病院 国立医療センター(仮称)

ページ範囲:P.10 - P.11

全国的なビル・ラッシュである.十数階建ての団地ができる世の中である.病院も狭い土地の上に背を伸ばしてきた.医学が進歩し,医療↑
 ↑内容が向上するにつれて,病院建築も巨大となり,充実してくる.東京都内で目下建築中の3病院の姿をながめてみよう.

病院管理のパイオニア・3

守屋博—順天堂大学教授(病院管理)

著者:

ページ範囲:P.12 - P.12

 アイディアの良さとたとえ話のうまさ—これが守屋教授を特微づける.巨体であって,しかも人をしかったり,どなったりしない人がらと説得力から,なにか教祖的なにおいもする.
 国立東京第一病院の管理部長から順天堂大学教授となり,順天堂医院(大学付属病院)の改善に手腕を発揮したことは,広く知られているが,その影響力はただ1つの病院に限られず,全国に及んでいる.

病院の広場

過去・現在・未来

著者: 砂原茂一

ページ範囲:P.17 - P.17

 結核の治療研究については,今日ではいわゆるcontrolled trialが常識となっているが,その国際的な中心の1つは,インドのマドラス結核化学療法センターである.このセンターの研究の1つに,結核の入院治療と外来治療の比較がある.開放性の結核患者を無作為に2群に分け,一方は入院させ,一方は在宅のまま化学療法を行なって,その治療成績を比較している.外来治療の場合でも薬の与え方はきわめて厳重で,必ず医師や看護婦立ち合いのもとで飲ませているが,この比較実験の結果は両群まったく同じであった.そこでインドの結核学者やこれを援助したイギリスの研究者は,化学療法の発達した今日では,結核治療に安静も栄養もまったく不要で,入院の必要もまったくみとめられないと主張している.病院や療養所を建てるのは不経済,非能率な話だというのである.
 一般的にいえば,臨床医学が大型化し,診療手技が複雑となって,むしろ医療の中心は病院にうつってきたと考えられているが,もう一段進歩すると,今度はいろいろな病気について入院不要論が有力になるのかもしれない.

話題

森直一氏(武蔵野赤十字病院事務部長),見聞録を発行—"欧米の病院——みたまま,あれこれ"

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.30 - P.30

森さんに同行して(序文より)
 旅行中,森さんはいつもノートを手にして,絶えず何かを熱心に書き込んでおられた.そして,黒い大きなショルダーバックを肩にして,大またに歩いておられた.年は,もちろん私などより余ほど上なのだが,実にお元気だった.今でも,旅行の時のことを思い出すたびに,その2つの姿がありありと眼に浮んでくる.
 日本病院管理学会の主催になり,"第1回世界病院管理専門調査団"と銘打ったこの旅行に参加することになって,森さんは大いに心に期するところがあられたらしい,森さんは元来,中途半端なことの嫌いな,非常に几帳面なたちのかたであるが,まず,その本性をかけて準備に打ちこまれたようだ.それは,今度の旅行では,そこで得られるだけのものはすべて得て帰りたいという,貪欲なまでの決意のあらわれだったと言える.

病院管理研修の日程決まる

著者:

ページ範囲:P.58 - P.58

 病院管理研究所(吉田幸雄所長)では,本年度実施する研修会の日程を,次のとおり発表した.

病院図書館

「進展する世界の病院 世界病院管理専門調査報告」—日本病院管理学会第1回世界病院管理専門調査団編集

著者: 守屋博

ページ範囲:P.43 - P.43

管理学会シンポジウムというべき報告
 明治開国100年,あらゆる文化は世界と交流している.ことに医学に関しては,昨日の情報が今日ははいり,1週間前南アフリカの心臓手術がわが国で行なわれるようになっている.
 しかるに病院管理だけは,どうしてこうも五里霧中なのであろうか.いま問題となっている点をあげただけでも10を下らぬであろう.それは長い封建的な閉鎖的な日本の管理形態に,近代的組織を無理やりつぎ木したようなものであるからである.どだい近代性を理解する下地ができていないからである.情報と理解の差を示す1例ではあるまいか.

—編集 日野原重明・村地悌二—「老人患者の理解と看護」

著者: 大塚寛子

ページ範囲:P.90 - P.90

老年者に対する前向きの姿勢
 日常の社会生活においても,看護する立場にあっても,わたしたちが老人に接する機会はますます多くなっている.これは人口の老齢化による当然の現象であるが,それにもかかわらず老人に焦点をあわせた総合的な看護書はいままでになかった.今回,医学書院から本書が出版されたことは,老人の看護にあたるものにとってはまさに時宜を得たものであり,またその期待に沿う内容を示してくれるものである.
 理解のうえに立った看護を行なうためには,まず老人に対する基本的な知識が必要である.本書では,はじめに老人の特性について,身体的な問題だけではなく,社会的,心理な特性を示し,心ある看護の必要性を強調している.

病院を考える・8

病院薬剤師に一言

著者: 田口英雄

ページ範囲:P.61 - P.64

 およそ,直接その実務に従事していない者がいうことは,無責任な単なる批判に終わるか,理想に走りがちのものが多いといって,現業者は第三者のことばを,ただやかましい雑音として,‘聞き置く’で済ましてしまったり,また,ときには,縁なきことと耳をおおってしまうことがある.
 しかし,‘おかめ八目’ということばのとおり,局外者の観察のほうが,物事の是非得失がよくわかる.やはり第三者の声は尊重すべきものであろう.そこで,第三者の声を味わいながら,病院薬剤師に一言呈上したい.

管理者訪問・14

久永房雄先生—北九州市若松病院長

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.65 - P.65

 戸畑から若戸大橋を越えてゆくと橋のたもと左側に古代ローマの廃墟のように半ば壊された旧館の壁のうしろに,若松病院院の新館が建っている.大きな赤字をかかえたこの病院で,今こうして改築が進められているのは久永院長の努力と信念の賜物といわねばならない.前二代の院長が6年にわたって起債を申請しつづけていたのに許可されなかったのが,久永院長はやっと2億円の起債を得て,本年10月までには本館も完成する予定になっている.
 5市が合併してできた北九州市には,5つの総合病院と2つの結核療養所があるが,合併からきた複雑な条件や北九州のもつ政治的風土からここの病院経営は非常にむずかしいものになっていた.

イギリス病院管理うらおもて・3

病院の中の英連邦

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.66 - P.67

イングランド,ウェールズ,スコットランド
 帰国も間近くなったころ,スコットランド・バス旅行に加わった.時速100から120キロくらいで飛ばしてエジンバラには10時間かかった.2日めはさらに奥にはいり,ようやく山らしきものを見ることができたのであるが,そこの土産品店で買物をしたとき,奇妙なおつりを受け取った.3枚の1ポンド紙幣のうち,1枚はエリザベス女王の肖像のある普通のものであるが,他の2枚は違っていて,グラスゴーのクラウズデール銀行とブリティッシュ・リネン銀行発行のものであった.これらの紙幣はイングランドでは通用しないので,1枚につき6シリングの手数料を払って銀行で取り替えなければならなかった.
 イギリスの医療制度を聞くとき,また統計を見るとき,必ずイングランド,ウェールズ,スコットランドと列記されており,制度的にはスコットランドがかなり違うということは知っていたが,紙幣まで独自のものが通用しているとは思わなかった.

病院と統計

病床の利用状況

著者: 前田行雄

ページ範囲:P.68 - P.69

 医療施設の病床の利用状況をあらわすものとしては,病床利用率,平均在院日数などがある.今回は病院報告の結果から,病床の利用状況を観察しよう.

霞ガ関だより

病院経営管理指導要領の一部改正

ページ範囲:P.70 - P.71

 最近,病院財政のひっ迫から,病院関係団体によって医療費の是正が大きく取り上げられ,医療保険や医療制度の抜本改正とともに審議,検討が鋭意進められている.と同時に,病院の開設者や管理者が,みずから経営上のロスや管理の悪さを改善しようとする気運がとみに高まっていることは,きわめて喜ばしいことである.
 厚生省では昭和38年に,病院の経営改善の指導助言にあたる県・市職員を対象に指導要領を作成した.内容は15項目にわたり,病院経営のあるべき姿,管理の望ましい形を具体的に示した,かなり大部なものである.

昭和44年度における厚生省予算案の概要

著者:

ページ範囲:P.85 - P.87

 昭和44年度予算案は,去る1月7日の第1次内示にはじまって,1週間にわたる財政当局との復活折衝の結果,14日未明の臨時閣議に引き続き,午後3時から行なわれた定例閣議において,最終的に政府原案が決定された.
 43年度の予算編成に際しては,財政硬直化打開のあおりをうけて国家予算全体が緊縮ムードの中で編成されたこともあって,国民の福祉向上を願う社会保障政策の進展も一時的にもせよ,停滞を余儀なくされたことは残念なことであった.そこで44年度予算について考えてみるに,財政硬直化是正の第2年度めにあたることや,さらには咋年11月に財政制度審議会が,"財政硬直化の主因は社会保障費の国庫負担が過当なため"など,硬直化の背景となっている制度慣付を本格的に改善するよう大蔵大臣に報告したことなどもあって,社会保障費の増額とりわけ新規施策の実現についてははなはだ憂慮すべき状勢にあった.事実,1月7日の第1次内示においてはそのことを裏書きするがごとく大ナタが振るわれ,新規施策を盛り込んだ事項は軒並みに0査定をうけ,政策の推進に腐心する当局をひとかたならず歎かせたものであった.

見のがされやすい実務の知識

病院と公害

著者: 上林三郎

ページ範囲:P.72 - P.72

 最近,都市における公害,特に亜硫酸ガスによる大気汚染の対策がやかましくなりつつある.また,飛行場周辺の学校・民家に対する騒音も公害の1つとして取り上げられて,これからの都市環境の整備について,やっと政府・地方自治体が腰を上げたかたちで,議会でも一部の法案がまとまったところである.ただ,この公害対策は一般の民家・学校などを対象として進められているが,特に病院・保健所のような一般市民の健康を守るべき施設に対する方策がまったくないのには,いささかあきれるとともに,水道料金さえ公衆浴場のほうが優先される世間の病院に対する見識を,ただただ残念に思うのみである.
 病院の施設を保守管理する人びとにとって,都市公害は今後多くの問題を提供するであろう.すでに都心の病院で,われわれが毎日ぶつかる問題としてまず大気汚染の問題がある.病院の空調設備を考える時にどうしても必要な条件の1つに新鮮空気の取り入れがある.

病院建設の基本問題・11

—病院の建設工事費(1)—予算上の制約と建設工事

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.75 - P.78

 建設にあたっては常に予算の枠があり,その限度内で設計や工事が行なわれるのは当然である.しかしながら,現実には,この予算上のいろいろな制約がいい病院を建てるのに障害になっていることも少なくない.今後検討されなければならないと思われるいくつかの点について考察してみよう.

病院建築・5

東京都職員共済組合青山病院

著者: 大場則夫

ページ範囲:P.79 - P.84

 これまで,明石病院・飯田橋病院・青山病院と分かれていた東京都職員共済組合の病院を,統合して1つの近代的な総合病院にしようというのが,この病院建設の根本的な企画である.昭和40年10月から,設計に約1か年,工事監理に約2か年従事した立場から,設計の意図などをご報告して,大方のご批判を仰ぎたいと思う.

資料 国立病院統計資料より・1

病院の大きさと,収支率および人件費

著者: 佐谷誠

ページ範囲:P.88 - P.90

 厚生省が開設する国立病院は,昭和41年度には,がんセンターを除いて全国に89施設(分院3も含む),病床数合計3万3802床(医療法定床),1日平均入院患者2万6642,1日平均外来患者3万1005人で,1000床以上の医療法病床を持つ大病院から,一般病床50で結核病床50という小病院まであらゆる規模の病院がある.
 これらの病院の運営内容は毎年国立病院年報に発表されているが,これの報告を利用して少し考察を試み報告する.

研究と報告

聖路加国際病院の看護補助者について

著者: 湯本きみ ,   佐々木ノブ ,   松下和子 ,   松岡美久里 ,   常葉恵子 ,   沢井美智子 ,   桑田春子 ,   成瀬妙子 ,   竹内和泉 ,   内田卿子

ページ範囲:P.93 - P.96

はじめに
 聖路加国際病院の補助者は,昭和8年より,男子中学生は主としてメッセンジャーの仕事に,女子は主に病棟で看護婦の助けとして,空いた病室の整備をはじめ,配膳室の仕事に従事し看護業務の助けとして参加していた.戦後は中央材料室を主としてこの仕事をとおして,補助者の人たちの育成につとめた.以来,病院の発展に伴い,この人たちの数も次第に増加し,現在その業務内容も次第に変化し広がり,職種別に分けると,家事補佐,看護事務,看護助手,保母,オーダリーなどで,現在50名以上の補助者が看護業務に参加している.配置は次のようである.
 次に補助者の職種とその業務内容について少し詳しくのべてみる.

ホスピタルトピックス

勤務医のはたらきかた

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.98 - P.99

 職務分折とタイム・スタディーは病院機能の改善に不可欠なもので,諸外国でもわが国でも数多くなされているが,精神病院の例は少なく,医師に関するのはまれである.ここに紹介するのはその数少ない精神病院勤務医についてである.
 1894年の米国の州立精神病院の勤務医は1日10時間はたらき,廊下を光速でかけずりまわるほどの忙しさであったというが,患者1人あたりの接触時間は10分程度と推定される.1960年の英国ではそれが20分に延長されたが,医師は相変わらず多忙で,1時間あたりの歩行距離は3マイルであるといわれていた.

米国での国民1人あたり受診回数とその料金

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.99 - P.99

 アメリカ合衆国政府が行なっている国民健康調査(Healt InterviewSurvey)の結果によると,1966年7月より1967年6月までの1年間に,アメリカの国民は,1人平均して4.3回医師にかかったことになっている.これには入院中の医療は含まれていないが,電話での問い合わせが含まれている.1963-64年度は4.5回であったので,いくぶん減少したことになる,これはカゼなどの急性症例が少なかったためである.男女別では,男3.8回,女4.8回と女性が多く,年齢別にみると,表1に示すように5歳以下が多い以外は,年齢が進むにしたがってほぼ増加する傾向にある.わが国では1人16回くらいと推定されるから,アメリカははるかに少ない.
 国民の31.9%は年間に全然医師にかからない.20.5%は1回,26.9%は2-4回,15.4%は5-12回かか13回以上かかるものは4.3%にすぎない.

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編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.100 - P.100

 看護婦の深夜勤の2・8問題が組合の強い要求となって現われてき,この問題については,日本看護協会も旗色を鮮明にしている,たしかに看護婦の主張として妥当であって,院長もその実現が望ましく思っているに違いない.しかし,問題の処理は簡単ではない.もちろん,個々の病院企業体としては,病院財政に影響する間題でもあるが,全国的看護婦不足につながっている国家的問題でもある.したがって,全国的にこれを解決するためには,国家の看護婦の長期需要計画と医療費計画が裏づけされなければならない.
 このように,病院労働者の労働条件の改善には,国の施策につながる問題が多い.すなわち,個々の企業体だけでは解決できない問題が多く含まれている.したがって,これらの問題については,病院経営者団体と国との協議が,なされねばならない.しかるに,病院経済に最も決定力をもつ中央医療協議会では,なかなか病院労働者の労働条件改善まで議論がすすまないのが現状である.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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