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雑誌目次

雑誌文献

病院28巻7号

1969年07月発行

雑誌目次

特集 うるおいのある病院

うるおいのある病院のために

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.19 - P.21

まえがき
 病院にいったいなぜ‘うるおい’というようなものが必要なのであろうか.しかし,現にいま,こうして‘うるおいのある病院’というような題が出されているところをみると,そこにはそれが病院に必要であるということが前提となっていることはまちがいあるまい.そして,必要であるという以上,それが病院の本来目的を達成するうえで役だつものであるという認識がそこにあることも確かと言える.では,‘うるおい’というようなものが,はたしてどういう点で病院の本来機能を果たすうえで役にたつのであろうか.まず,そういう点から考察にはいることにしよう.
 それには,はじめに,‘うるおい'とはいったいどういうものかを明らかにしておかなくてはならない.

医用環境造園について

著者: 左奈田幸夫

ページ範囲:P.23 - P.27

はじめに
 校庭に3.3m2くらいの割り当てで各自花壇を思い思い作り,チューリップ・カンナ・キクなど若葉より開花までの自然の驚異に興味をもった少年のころの思い出は今も忘れない.
 生物の自然環境に接する機会の少ない都会で,自然の土や生物に接することは,育ちゆく子どもたちの将来のためにも必要である.

うるおいのある病院建築

著者: 柳沢忠

ページ範囲:P.29 - P.34

 病院建築はその複雑な機能のゆえに,その設計はまことに困難な仕事である.そのためか魅力ある建築が少ない.建築家は機能を満たすのに大半の精力を使いはたして,ゆとりがなくなってしまうようである.その反省もあって,このごろ‘人間味のある病院建築を設計しなければ’という議論が行なわれるようになってきた.うるおいのある病院建築は,まさに建築家にとっての課題である.
 うるおいのある病院建築というのは,病院を利用する患者とそこに働く職員の1人ひとりが人間らしくすごせる場になっていることだと,私は考えている.

うるおいのメカニズム

著者: 松村康平

ページ範囲:P.35 - P.39

うるおいは,変化のなかに生まれる
 うるおいが生まれているところでは,状況が変化している.
 たとえば,かわききった大地に雨が降り始めるとしよう.はじめの,ひとつぶは,すぐに消えて,地面は様相を変えない.ひとつぶ,またひとつぶが,場所を変えて落ちては消えると,ひび割れた地はだは,かえって目だってくる.そのうち,近くに落ちる雨つぶが,にじみながら,つながりをもってきて,地面にしめりがでてくる.うるおいが生まれる.

うるおいのある病院のために・1

病人のための旅行案内人

著者: 鈴木幹二

ページ範囲:P.41 - P.42

 この雑誌の本年2月号に,"実習生のみた病院の人間関係"という興味ぶかいレポートがある.新しく仕事につくケースワーカーが,病院内の各職場を一通り実習して回った新鮮な印象が語られていて,その眼の確かさに感銘をうけた.なかでも,入院受付の実習をしたとき,‘入院手続きに来る患者や家族は,事務員に何か言いたそうなのだが,事務員はかなり手際がよいので,気遅れがしているようだった’という観察には,思わずうなずかされた.

うるおいのある病院のために・2

精神面のかわきをいやす

著者: 井原泰男

ページ範囲:P.42 - P.43

いったい真の‘うるおい’とは何なのか
 急激な速度で近代化・機械化・都市化されてゆく現代社会の特質は,遠慮なしに病院の中へもはいり込んで来ずにはいない.こうした中で,‘うるおい’といったことがらは,幸福の青い鳥のように,どこかよそに求めらるべきものではなく,そのおかれた現実の中に見出してゆかねばならないもののようである.
 ところで‘うるおい’とは,いったい何なのであろうか.

うるおいのある病院のために・3

病院をデザインする

著者: 竹田信子

ページ範囲:P.44 - P.45

 最近あちこちにりっぱな病院が建てられ,その外観は従来の病院のデザインとはまったく異なり,私たちは一流のホテルにでも泊るような気分で一度入院したいと思うことさえある.
 インテリアデザインということが最近重要視され始めて以来,病院の設計においても当然その問題が生じ研究されている.

座談会

病院にうるおいを!

著者: 紀伊国献三 ,   荒井蝶子 ,   岡田新一 ,   北原哲夫 ,   日野原重明 ,   小野田敏郎

ページ範囲:P.46 - P.55

病人の気持ちは,病気になったことのある人でなければわかってくれない,医師やナースは忙しく,よそよそしく,ここで患者はますます心を閉ざし,弧独で不安な病院生活を送るはめになる.この患者心理をカバーし,ここちよく闘病に専心させるために,病院はなにを備えておくべきか……

グラフ

開発精神のみなぎる病院—北品川病院

ページ範囲:P.5 - P.7

 個人病院の発展のしかたには,いろいろの型がある.北品川病院はあまり多くはない型であろう.北品川病院は現在,第1,2,3,5と4病院があり,財団法人河野臨床医学研究所(昭和26年設立)の付属病院となっている.
 わずかの問にめざましい発展をとげたのは河野院長の熱意と人生観によるものである.その熱気に巻き込まれて,職員の勤労意欲も高い.病院学会には,つねに数題出している.また,病院管理の新しい知識の吸収やくふうも盛んである.

ソ連の病院

ページ範囲:P.8 - P.11

 ソ連では医療機関の分布が計画的に行なわれている.そしてモスクワのような大都市と地方の都市とで,医療機関の格差は激しくない.
 どこへ行っても,広いゆったりした敷地にがんじょうなコンクリート造りの病院が建てられていた.白樺の自然林の中に,あるいは美しい植えこみの中に,病院はあった.

病院管理のパイオニア・6

島内武文—東北大学教授(病院管理学)

著者:

ページ範囲:P.12 - P.12

 わが国で最初の医学部の病院管理学講座の教授である.ドイツ風の理論構成とアメリカ風の合理主義の中から,がっちりした病院管理の骨組みが組み立てられる.○○化,○○性などという川語を対照的にたくみに用いる‘確実性’整理性’‘構成性’は名著"病院管理学"の中に浸透している.
 細かい知識はメモ用紙に記入し,それを整理してある,初期の病院学会のとき,学会の運営について相談したら,さっそくメモを取り出された.それには学会の受付の位置,準備する用具など,過去の例をもとにして細かく書かれてあった.

病院の広場

公立病院が地域医療に果たす役割

著者: 林秀雄

ページ範囲:P.17 - P.17

 八尾市といえば,大阪市と境を接した,人口20万の典型的な衛星都市である.この八尾市に,総合病院は市立病院1つ,他に5つの2ないし3科の病院と500床の精神病院があるだけだから,私たちの八尾市立病院は住民の保健を守るために重要な意味をもっている.
 まず第1に医療の面の充実だが,医療器械の整備は当然のこととして,まず熟練した医師を多く集めることが必要だ.しかし,これだけ専門分化した医学の現状では,限られた人数では,すべての分野に高度医療を提供することは困難になってきた.たとえば,われわれの病院の外科は内臓外科を主としているが,私にしても,外科部長にしても,大学では開胸術や閉鎖麻酔など行なわれていない時代に病院勤務に移った.今では若い外科医師は麻酔に関しての知識は豊富だから心配ないが,開胸術に関しては,当病院の元外科医長で現在某大学の教授をしている○○博士は胸部外科はいわずもがな,心臓外科にもそうとうな経験を重ねてきているので,非常勤嘱託として当院の食道・肺などの外科を担当してもらっている.

管理者訪問・6

京都第一赤十字病院看護部長 鈴木こを氏

著者: 森日出男

ページ範囲:P.57 - P.57

 今回は趣をかえて,紅一点の登場を願うことにし,京都第一赤十字病院看護部長の鈴木こを氏を訪れた.
 この病院は昭和9年の創立で,名刹東福寺の近くにあり,まもなく増改築もすんで797床になる大病院である.昭和20年10月より30年7月まで米国の病院として接収され,その間,東山七条角の元賀陽宮邸で病院業務を行なうという逆境と苦難を余儀なくされた.

イギリス病院管理うらおもて・6

職業倫理と階層観念

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.58 - P.59

‘パブ’のこと
 イギリスで有名なもののひとつに‘パブ’がある.街角のいたるところといってよいほど多い.ビール,ウイスキー,シェリーなどの立ち飲み屋である.簡単な食べ物が出ないではないが,ほとんど飲むだけで,午前11時から午後2時までと,午後5時から11時まで時間決めで開かれる.
 イギリスはスコッチで有名であるが,高いせいかもっともよく飲まれるのはイギリスビールである.ロンドンに着いた晩からパブに通うことになったのであるが,そのうちへんなことに気がついた.

病院と統計

医師・歯科医師数の現況

著者: 前田行雄

ページ範囲:P.60 - P.61

 全国の医師・歯科医師などについての統計には,"医療施設調査"によるものと,"医師・歯科医師・薬剤師調査"によるものとがある.いずれも,毎年12月31日現在で調査が行なわれているが,前者によるものは,病院・一般診療所・歯科診療所に勤務する者に限られている.これに対し後者は,すべての医師・歯科医師・薬剤師からの申告により,業務の種類,従事場所,免許取得資格の種別,登録年,性,年齢などがとらえられている.今回は,後者による統計によって,全国の医師・歯科医師の状況を観察しよう.

霞ガ関だより

建築基準法施行令および消防法施行令の一部改正

ページ範囲:P.62 - P.63

 ここ数年来,旅館などの火災が各地で発生し,そのつど犠牲者が多数出るなど,なげかわしい事故がまことに多い.もともと耐火建築としてその耐火性を信頼されているにかかわらず,このような結果を招くのはなぜか,これらの実態を逐次調査されたところによると,焼死者よりも,煙により窒息死をした者が多い例が少なくないことが明確になってきた.すなわち,火災の発生を知って避難の行動が始まろうとすると,すでにそのころには煙が充満し,視野をさまたげ,ひいては呼吸を困難にし,行動の自由を失って窒息死するという,まことになげかわしい事故となって記録される.
 昭和34年に建築基準法が一部改正され,内装材料の制限が付加されたが,当時はまだ煙による窒息死問題は爼上にのぼらなかった.

見のがされやすい実務の知識

病棟での合理化

著者: 上林三郎

ページ範囲:P.64 - P.64

 病院の近代化が進み,そろそろ電算機の導入も考えられる段階までになった反面,病棟内を見まわすと,まだまだ前近代的な不合理な面が数多いのに気がつく.病棟内で使用される器具なども,もっと標準化されてもよいと思われるし,また,しなくては保守管理にもたいへん不経済である.
 私の病院でも,患者運搬車・食事運搬車・ボンベ運搬車などを除き,病棟内で使用される回診車類の種類だけでも34種類の多きに達し,その総数たるや130台という数にのぼっている.しかも,いまだに新規の注文が月に1台くらいはある状態である.修理をするにもキャスターの大きさがまちまちなので,何種類かのキャスターのストックが必要となるし,特別なサイズのものは他の病棟へ融通がきかず,全く困ったものである.これは,各科・各病棟が自分のところの事情にあわせてその場その場で決めて注文し,主任が変わればその人の意見でまた違った物を,というようになって,結局このように多種類になったものと思われる.特にこのような回診車の中で不思議なのは,下段が金アミの取り外しのきく棚になっているが,いったい何のために金アミになっているのか,かいもく理由がわからず,ただなんとなく金アミにしているらしく,大多数の人に質問してもその理由がはっきりしない.おそらく,ほこりのたまるのを防ぐくらいの意味ではないかと思われる.

病院を考える・10

院長と各分野の人びととの出会い

著者: 原素行

ページ範囲:P.67 - P.71

病院活動の高度成長をすすめるための足固めとして,専門分野の主体性,職員の社会心理構造などについて,見たり,聞いたり,験したり,いろいろの話

病院建設の基本問題・13

病院の建設と経済

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.73 - P.77

立地条件と病院の機能
 病院が医療を行なう場所であるということは,場所の選びかたが経営条件を決定的に支配するものであることを意味している.つまり,いかなる場所を選んで建てられたかによって,その病院の性格も,将来の運命も決まってしまうということである.
 病院は,国立であれ,市立であれ,現実に建っている地域社会のニードを対象とするものである.国立であるから対象患者が全国的であり,市立であるから当該市民に限るというわけのものではない.現実に利川するであろう住民のニードに即して性格づけがなされるべきである,このとき既設の医療機関の性格・機能が関係するのは当然である.地域の医療機関が供給する医療サービスの質量と,地域社会のニードが一致するのが望まれているのである.

病院建築・7

スイスの病院(2)

著者: 栗原嘉一郎 ,   松本啓俊

ページ範囲:P.79 - P.84

 前稿ではスイスの病院事情のあらましを述べたが,本稿では筆者らが実際に見学した病院の中から,特色のある5つを選んでご紹介したい.

英国キング財団報告・1

英国の新しい病院環境造園

著者: 左奈田幸夫

ページ範囲:P.86 - P.92

本文発表にいたるまで
 国立病院・療養所にはそれぞれ前から柄院環境造園共同研究班が医師をも含めた職員で構成されており,私もその1人である,昭和42年,第1回世界病院管理専門調査団に参加する機会を得て,欧米の病院環境造園の現況を視察することができた.
 本書は,ロンドン病院研究所で求めえた.少なくとも世界で唯一の病院環境造園の図書であると考えるので,共同研究班のかたとも相談のうえ,キング財団の了解も得て.本誌に全文を発表する.広く同好の方がたの参考とならば幸いである.

病院図書館

—編集 日本病院協会事務管理部会医事研究会—「医事業務」

著者: 森直一

ページ範囲:P.92 - P.92

医事業務の本質を指摘
 日本病院協会の医事研究会が,その研究成果をまとめて,"医事業務"の改訂第2集が刊行された.医事研究会は,昭和38年に都内10病院の医事課長が,保険請求事務の合理化はいかにあるべきかという問題について,病院相互の情報を交換するために,隔月ごとに同志的な会合をもって,活発な研究活動を始めたことに端を発し,昭和39年第7回から,日本病院協会の翼下にはいったのである.
 今回の研究成果には,これまでの研究を基調として,さらに医事業務の能率化・合理化のため,よりよい人間関係はいかにすべきかなど,医事課という組織をふんまえて,医事課が病院の中にあるべき方向に,かなりウエイトをおいているようにうかがえる。そのため,①医事課職員の教育訓練,②窓口業務とこれに関連する入院・外来のシステムのありかた,③医事課業務と医師および看護婦との連携,④医事課職員のモラール向上のための具体的対策,⑤保険請求事務の再検討,といった5本の大きな柱にまとめられている.

—今村 栄一 著—「病院管理の理論と実際」

著者: 尾村偉久

ページ範囲:P.100 - P.100

かねて夢見ていた"病院管理"の成書の出現
 明治初年に西欧医学がわが国に導入されてからすでに100年,その間医学の発達はめざましく,世界一流の水準に達した部門も多いが,さてその進歩の成果を国民のために十分適用することになると,医学の進歩に比して,医療の実地面では著しく遅れているというのが定説であった.ことに医療実施面の中核となる病院医療については,いっそうその感が深く,医学あって医療なしともいうべき状態が数年間続いていた.
 敗戦を契機として,荒廃のどん底からわが国の病院が復興し,整備されるに際して,ようやく病院管理の機運もぼっ興し,医療の効率的な実施のためには,病院を有機的に活動させるための知識が強く要求されるようになった.すなわち,病院管理学・病院管理技術に対する強い需要である.

研究と報告【投稿】

臨床検査部門における危険薬品とその取り扱い

著者: 寺畑喜朔

ページ範囲:P.95 - P.100

はじめに
 最近の医療面における設備と内容の改善については,著しい発展がある.と同時に,病院施設では,その管理について合理的かつ流動的方式を採用する傾向にあるが,こと防災の立場から点検してみると,病院管理上、各部門にわたり多くの盲点が発見される.
 たとえば,地震・出水・火災などの発生に際して,平素どれほど訓練されているか.消火栓などの使用法がどの程度まで徹底しているか.危険物の存在の確認とその保全が完全であるか.このように検討していくと,いずれの病院施設をみても,まず十分な体制下にあるとはいいきれない.

ホスピタルトピックス

患者の私物管理

著者: 小松順七

ページ範囲:P.101 - P.101

 精神医学の治療と精神科看護の発展につれて,患者の個性の尊重が重んじられ,そのために病棟内諸の設備にも,新しい要求が生まれてきた.この要求は開放病棟ばかりでなく,閉鎖病室にもおよぶものである,患者の生活指導が活発になるにつれて,どの程度の私物が適当であるか,それをどこに保管すべきかの問題が,クローズアップされてきた.
 入院期間が特に長い場合は,私物がたまり,そのための保管が看護者にとって重荷となる.保管場所の設置には,図1ように2つの方法がある.

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編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.102 - P.102

 今から20年前に,この雑誌が創刊されたことは前号で申し述べたが,厚生省の病院管理研究所も同じくその年の6月1日に発足し,去る6月28日に創立20年記念式典が同所で盛大に行なわれた.
 東龍太郎日赤社長は,当時厚生省医務局長として生みの親であられたが,当日"20年前を回顧して"という課題つきの祝辞を述べられた.当時を知るものにとっては感慨無量の印象を与えた.特に病院管理研修所発足当時は‘あたかも末熟児’のようだったといわれた.この20年こそ,わが国病院の近代化に,病院管理研究所と本誌"病院"とが果たした役割というものは大きかったといわねばならぬだろう.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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