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雑誌目次

雑誌文献

病院28巻8号

1969年08月発行

雑誌目次

特集 病院経営と薬剤

病院経営と薬剤

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.19 - P.23

はじめに
 社会医療調査によれば,保険が支払った医療費のうち,最も多いのが薬剤治療費であり,次いで注射である.41年6月分では,前者が34.3%,後者が16.6%を占めている.すなわち,直接に薬剤に関する行為に対する支払いが半分以上であるということである.
 これに比べると入院料は14.7%,診察料は7.8%,手術料は1.9%にすぎない.

医療費と薬剤

著者: 林部弘

ページ範囲:P.25 - P.28

はじめに
 皆保険下の日本の医療は,現在そのほとんど全部が保険医療によって占められているといっても過言ではないと思う.
 国民は医学の進歩に即応した水準の高い医療を,いつでも,どこででも受けられる状態を望むものであるし,保険医療は保険料収入を財源として医療を一括購入して,現物給付の形式で保険本人やその家族へ還元することを意味するので,保険医療全体の効率的な活用を前提として運営が行なわれないかぎり,保険財政は常に不安定にならざるをえない宿命を担わされているといえよう.

薬価基準制度の問題点

著者: 武田公一

ページ範囲:P.29 - P.33

薬価基準制度について
 薬価基準とは,一言でいえば社会保険などで使用できる医薬品の品目リストであると同時に,その医薬品を病院・診療所・保険薬局で施用した場合の価格表であるということができる.
 医薬品の品目リストであるという意味は,薬価基準に収載されていない医薬品は社会保険では使用できない(厳密にいえば請求できない)という意味であり,価格表という意味は,個々の医療機関が現実に購入した価格とは無関係に基金に請求できる価格であるという意味である.したがって,医薬品製造業者にとって薬価基準に収載されないということは,その医薬品が健保にはまったく使用されないということになる.現在,薬価基準の新医薬品への収載は必ずしもスムーズではない.その時の政治情勢に応じて,著しく長期間放置されている.かくては,せっかく大きな研究費を支払って長年にわたって研究開発したクスリの市場性が長期間無視されることになり,製薬業者にとっても経営上大きな問題になっているのである.

薬剤管理の実態と問題点

著者: 根元儀一

ページ範囲:P.35 - P.42

はじめに
 病院事業費の中で薬品費の占める率が年々増加していることから,薬剤管理については,各方面から研究されているが,私は全国自治体病院について昭和43年8月1日現在の実態を調査したので,これについて報告するとともに,2-3の問題点を取りあげて検討したいと思う.

院外処方

著者: 阿久津慎

ページ範囲:P.43 - P.48

院内処方と院外処方
 昔は医師が院外処方箋を書く場合は,患者を対象とせず,処方箋を交付された患者が投薬調剤を求めて訪れるであろう市中の病院または診療所を意識して書いたものである.ところが,昭和31年4月1日から,新医薬制度が誕生したので,院外処方箋を書く場合は,市中の調剤所に働く薬剤師を意識するようになった.すなわち,形式的には,医薬分業が意識にのぼってきたということである.
 したがって,私の話も,この昭和31年4月1日に医師法,歯科医師法および薬事法の一部が改正された時点における,順法上の注意事項から始めなければならない.

病院経営と薬剤管理のありかた

著者: 田口英雄

ページ範囲:P.49 - P.52

 太古の人類が,自然物質,ことに草根木皮が使いかたによって,医療に役だつことを知って以来,医療と薬剤の関係は不可分のものとなり,長い間,薬物療法は医療の主流をなしていた.701年の大宝律令では,中務省に内薬司があり,正1人,侍医4人,薬生10人が決められていたが,御薬の調合は内薬司正の任務とされており,また典薬寮で薬物をつかさどったのは,典薬頭であった,以来,薬学は医師の修学の中心となった1)
 このように,古来薬剤の管理は医療上重要なこととされてきたが,この点は今日も変わらない.ことに,医学・薬学の進歩に伴い,毎年新たに開発される薬剤の数はおびただしく,薬剤による事故防止の見地からも薬剤管理の重要性は増大する一方である.また,薬剤の使用量は,日ごとに増加の一途をたどり2),病院の経営にも大きな影響を与えている.

座談会

薬は使われすぎていないか

著者: 石原信吾 ,   久保文苗 ,   名尾良憲 ,   水野肇 ,   守屋博

ページ範囲:P.54 - P.63

医師が病気を治すのではなく,薬が効いたから病気が治る……
 患者の薬への信頼はかくも高まり,たくさん薬を与える医師が評判をかちえる.一方,病院収入のうち薬剤費の占める比率もますます上昇し,作為的な様相すら帯びてくる.‘病気と病人’という原点から,今一度,薬がどう使われているのか,厳密な検討を加えてみる必要はないだろうか.

グラフ

病院管理研究所創立20年記念式典

ページ範囲:P.5 - P.7

 病院管理研究所は,昭和24年6月1日に病院管理研修所として発足し,36年6月1日に改称され組織が拡充され,本年20年を迎えるにいたった.その間研修を受けたものは,2300病院から1万2000名に及び,沖縄・中国・韓国その他からの参加もあり,国際的にもその存在が高く評価されている.
 記念式典および祝賀会は,6月28日に,100名を越える関係者によって盛大に挙行され,病院管理の重要性があらためて認識された.

ある共済病院の歩み—横須賀共済病院

ページ範囲:P.8 - P.11

 国立病院が旧軍病院から転換したように,変転の歴史をもつ病院も少なくない.横須賀共済病院の60年余の歴史も,そのひとつの例であろう.
 明治39年(1906)に横須賀職工共済会の診療を委託されて仮病院が作られ,3年後に横須賀職工共済会病院となった.同時に,早くも日赤救護看護婦生徒の養成が開始された。爾来院長には海軍軍医が就任している.

病院管理のパイオニア・7

栗山重信—前病院管理研修所長

著者:

ページ範囲:P.12 - P.12

 第2代の病院管理研修所長(当時は国立東京第一病院長が兼任)になられた.温厚・誠実で包容力があり,ものごとをいい加減にすますことがない.そして接する人にあたたかい感じをいだかせる人がらで,変動期の病院管理をまとめていかれたのであった.
 東京大学の名誉教授である先生が,"掃除のしかた"というような講義をしたということから,わが国の病院管理は出発したのであった.

病院の広場

本邦医学教育および医療制度の望ましい姿

著者: 桂重次

ページ範囲:P.17 - P.17

 "病院の広場"に何か書けと編集子からの依頼だったが,私は長いこと東北大外科教室で教鞭をとり,ここの病院長になってから4年にしかならず,病院経営や院長職はまったく初心者で,雑誌"病院"に投稿することは場ちがいと考えたので,編集子の依頼も放置しておいたのだが,東京から電話で催促をうけ,やむをえず最近感じていることを書いて責任を果たすことにした.
 今,私は,病院長として一番考えるべきことは,病院に勤務する医師たちに希望をもって意欲的に仕事をしてもらうことであると思っている.それには医局にそのような雰囲気をつくることがたいせつであろうが,一方,臨床医学が漸次細分化し,診断にしても治療にしても高度の専門的な知識や新しい機械が必要になってくると,かかる施設もぜひ病院に備えなければならない.当院ではさいわい岩手県立成人病センターが付設され、数億で器械や図書を備えることができたことはたいへんよかったと思っている.

管理者訪問・17

静岡済生会病院長 岡本一男先生

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.65 - P.65

 静岡市には,国立静岡,県立中央,静岡日赤,静岡厚生,市立静岡,それに静岡済生会と各種経営主体の病院が集まっている.このなかで,済生会病院は結核100床,精神50床を除いた一般病床だけでも604床あって,最大の規模になっている.しかも本年4月には6階建ての中央検査棟ができ上がり,放射線部,手術部,検査部,リハビリ部が各階に置かれ,じゅうぶんなスペースをとって配置され,さらに医師の研究室や空調づきの動物室なども用意されて,大病院の様相を備えてきた.ほとんど無からこれを作り上げてきたのが岡本一男先生なのである.
 今でこそ国鉄静岡駅の南も人口が増加し,すっかり都市化したが,戦前は農地のなかにわずかな工場があった.この病院は,もとは三菱の会社の病院であった.それも戦災に遇って,一時は診療所同様になっていた.そのころから岡本先生は院長で,ぼろの自転車に乗って西に東に走り回っている姿をよく見かけたということである.

イギリス病院管理うらおもて・7

セクレタリーという名のゼネラルマネージャー

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.66 - P.67

Umbrella Responsibility
 われわれに‘ホスピタル・セクレタリー’を講義してくれた西ミドルセックス病院のセクレタリー,エバンス氏は,‘私は最近,あなたはタイピストの監督をしているのですか,と聞かれた’と嘆いていた.彼が言うには,‘セクレタリーという名は,いかにもその本当の役割を示してはいない.このようなことばを選んだことはまったく不幸であった’と述懐していた.
 アドミニストレーターとかマネージャーということばはあるけれども,アメリカのように全般管理者つまり院長的役割には用いていない.セクレタリーは‘ゼネラル・マネージャー’であるという点では,マネージャーとかアドミニストレーターと言ってもよさそうなものであるが,正式名称はセクレタリーなのである.

病院と統計

有病率と罹患率

著者: 前田行雄

ページ範囲:P.68 - P.69

 統計には,静態統計と動態統計とがあり,静態統計ではある一時点で観察される件数が把握され,動態統計ではある期間内に発生した件数が取り扱われる.病院報告による月末在院患者数,患者調査による調査日現在の入院患者数などは静態統計,病院報告による外来患者延数,患者調査による1日間の外来患者数などは動態統計となる.また,一般に傷病統計では,ある一時点での傷病件数の対象人口に対する割合を有病率(prevalen-ce),ある期間中に発生した傷病件数の対象人口に対する割合を罹患率または発病率(incidence)という.
 病院や診療所を訪れないものまでを含んだ国民の有病率や罹患率を知るには,世帯や個人をとおしての調査によらなければならない.

霞ガ関だより

昭和43年結核実態調査の結果について

ページ範囲:P.70 - P.71

 わが国における結核の様相は,結核対策の推進,医療技術の進歩,さらに経済の高度成長に伴う経済社会変動などにより,著しく変化してきた.結核死亡率の急激な減少は,昭和42年,はじめて人口10万対20の大台を割り,若年層の結核患者の激減に対して,結核が老人層に片寄り,さらに結核患者の地域的格差や低所得階層への偏在がいっそう強まる傾向を示している.
 厚生省はこの結核蔓延状況の変化に対応して,科学的データに基づいた適切な結核対策を推進するため,昭和28年以降都道府県,政令市の協力を得て,5年ごとに結核実態調査を実施してきた.この調査は世界的にも類例のない大規模で精密な調査といわれており,その結果得られた資料は,その後の結核予防行政ならびに医療行政の企画運営に多大な影響を与え,かつ大きな推進力となってきた.

見のがされやすい実務の知識

病院の空調(冷房)

著者: 倉持一雄

ページ範囲:P.72 - P.72

 建築物の高層化とともに,空調設備の完備は,今や必需の条件となって,都会に建設されるビルは,中小ビルでさえ,空調設備を完備している.最近の求人難から,従来冷房設備のなかった事務ビルも,あわててこれを設備し,冷房完備を作業環境の条件に加えたため,応募者がふえ,やっと定員を確保したという笑えぬ事実さえある.
 しかるに病院の現況はどうであろうか.冷房を必要とする診療上の要件は,数多く含んでいるのに,全館空調を実施している病院はきわめて少ない.一般的には,外来・手術室・分娩室・新生児室・薬局などの部分空調にとどまっている.しかし,これは不必要だからでないことも明白である.設備投資に多額の経費を要するうえに,運転費もばかにならないからである.

病院を考える・11

大学病院について

著者: 守屋博

ページ範囲:P.73 - P.77

 わが国の病院の歴史をみると,大学病院はそれぞれの時代において,非常に特殊の地位を占め,他の病院にいろいろの影響を与えている.
 第1の時代,すなわち明治初期から戦争までの間,他の病院が個人経営であり,非常におそまつで診療所と大差のないのに比べて,多数の無給医局員の力を借りて,近代的な検査や機械力を用いた治療,すなわち近代医療を独占的に行なうことができた.

病院建設の基本問題(最終回)

連載を終わるにあたって

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.79 - P.79

 ‘病院建設の基本問題’と題して,1年以上にわたって続けてきた講座を今回で終わる.病院建設にあたっては,個々の設計の問題以前に検討されていなければならない課題がたくさんあるはずで,またそれらの条件が,場合によっては,病院自体にとり,建物のできよりははるかに重要な意義をもつことも少なくない.しかるに,従来は,そのへんの問題が見過ごされ,または経く扱われがちであった.これは問題としても大きなものであるから,数号にわたるシリーズで考えてみては,という案が編集会議で出されたのがそもそものはじまりである.全体の企画は津田先生が担当された.
 その後,若干の曲折を経て,結果としてまとまった連載記事の項目は下記のとおりであるが,内容的には,診療圏と医療需要予測の問題,医療施設体系の再編に関する問題,地域の医療需要とそこに建つ施設との対応についての問題,建設工事費を中心とした経済的な問題などを包含している.

病院建築・8

ベトナムの病院

著者: 山田兵輔

ページ範囲:P.81 - P.87

はじめに
 佐藤武夫設計事務所は1966年以降,東南アジア,特にカンボジア・南ベトナムならびにインドネシアの諸病院の増改築に対するコンサルタントを海外技術協力事業団より依嘱され,今日に及んでいる.そのうち,企画にとどまったものもあるが,カンボジア国モンコールボレイの医療センターならびに南ベトナムのサイゴン市ショロン地区の国立チョウライ病院内の脳外科病棟,その他の施設の設計監理の依嘱を受け,チョウライ病院内の一連の設計労作はいまなお進行している.
 本稿は,チョウライ病院の建築設計に際して,現地の調査より始まる一環の設計活動と,あわせて現地サイゴンの建築事情の報告である.

英国キング財団報告・2

英国の新しい病院環境造園—国立病院療養所病院環境造園共同研究班

ページ範囲:P.89 - P.94

病院造園設計の基礎
(Basis of Hospital Landscape Design)
 35.おのおのの見出しについて先に述べたことは,調査と敷地評価の実際面であって,これによりいろいろな敷地や景色利用案が明らかにされ,建築B段階において,建築家や造園家が行なう仕事の重要部分を示している.次に,生態と自然のバランス,治療上の考慮,敷地と建物の制約,利用者の要求などの諸原則を論ずる.

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編集主幹ノート

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.96 - P.96

 7月21日——ついに月の表面に人類の足跡を残すことに成功しました.このアポロ11号の成功は,単にアメリカの国威を示すものではなく,全人類のすばらしい能力を示したものとして全世界の人びとに感銘を与えました.
 しかもそれは,コロンブスやリンドバークのような個人の意志と能力による冒険とは違ってぼう大な人間の組織の意志と知識と技術が計画的に結集され,実行された成果であります.もう個人の力の時代ではなく,組織の時代であることを如実に物語っているものでしょう.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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