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雑誌目次

雑誌文献

病院29巻1号

1970年01月発行

雑誌目次

特集 変化の時代の病院

いかにして地域の生活に奉仕できるか—第16回国際病院会議に出席して

著者: 島内武文

ページ範囲:P.29 - P.33

 第16回の国際病院会議Sixteenth InternationalHospital Congressは西ドイツのジュッセルドルフで本年6月22-28日の間開催され,私は日本病院管理学会の第2回世界病院管理専門調査団の一員として出席することができた.学会報告についてはもっと適任のかたがあるかと思ったが,雑誌"病院"からの要請にて紹介することになった.
 6月22日午後2時半にジュッセルドルフ郊外の空港より,バスで会場のMessegeländeに立ち寄って学会文書を受け取り,Intercontinental Hotelに泊る.会場は日本の晴見のような展示場やホールの集合体で,Inter—hospitalとよばれる病院関係の機械・設備などの展示が7会場,3万m2のほか,Kongresshalle,Schuman-Saal,Kleiner Kongress-Saalの3つの会議場があり,駐車場も備わっている.午後6時から会場レストランでドイツ病院協会およびドイツ病院労働団体主催のレセプションがあり,聖路加国際病院の平賀先生の紹介で会長Dr.J.C.B.Burkensに会う.

対談

変貌する病院のあり方

著者: 吉田幸雄 ,   石原信吾

ページ範囲:P.20 - P.28

スピードを増す社会の変化
 石原 現在は変化の時代だといわれますが,病院もその中でどんどん変わっていると思います.それを意識的につかまえるか,ただ無意識にその変化に従っていくかはたいへんな違いですね.
 九大の井上教授がこの前新聞で‘学問というものは未来を先取りするものだ’と言っていましたが,それは同時に経営の本義でもあると思います.ただ,変化が激しければ,未来を先取りすることは非常にむずかしい.しかしそれだけ必要だと思うんですね.ですから,こんどこういうテーマを取り上げたことは大いに意義があると思います.

変化の時代に病院はどう対処すべきか

精神的治療の推進を

著者: 杉岡直登

ページ範囲:P.35 - P.36

 世は機械化の時代,労働力不足を機械力で補い,コンピューターが人に代わって,より速く,より正確に答えを出す時代になってきた.その速さには目を見張らせるものがある.医療の世界も例外ではありえない.病院事務関係の作業の大部分は,10年を待たずして機械化されるであろうし,医療の面においてもコンピューターにゆだねられる部分が相当多くなるであろう.ことに検査診断関係への進出が期待される.しかし医師の仕事,看護婦の仕事が,これによってある程度の手間が省けるとはいえ,‘病人’を治す医療の根本が人と人との関係であることは変わらないであろうし,この部分はコンピューターに代えられない部分であろう.

関連法律改正が急務

著者: 菊地真一郎

ページ範囲:P.36 - P.37

はじめに
 日本における医療関係の基本法ならびに関連法規の中で,特に主柱と見るべきものだけでも昭和38年調査で55本.その関係監督官庁としては,厚生省(50課),大蔵省(2課),労働省(4課),文部省(3課),運輸省郵政省,自治省,人事院,防衛庁,科学技術庁は各1課ずつ,合計11省庁で55課にわたっている.おそらくは世界一の複雑さであろう,昭和44年末現在の法規数は,さらにさらに上回ったものと想像するが,かくのごとく細目の網の中にしばられた医療の実情は,全く動きがとれない.病院もその網の中で各種の攻勢にあえいでいる.曰く設備・労務・看護診療・経理などの重圧が,日とともにその質量を増大し,今や国・公・私病院はその現状維持すら困難となっている.
 日本は自由国家群の中で第2位の経済力と政府は自慢するが,医療面,特に病院についてははたして第何位といえるだろうか.医学医術そのものは,少なくとも世界レベルに達したと見ても誤りではあるまい.しかし,その内容を深く吟味するときは,寒々しさにおののく者,ひとり私だけではないはず.強制国民皆保険制度を実施して既に10年め,その悪平等と低医療費政策の犠牲は,医師をも含めた国民全体の上にのしかかっている.

座談会

変化する病院の役割

著者: 若松栄一 ,   小原辰三 ,   三宅史郎 ,   永井トシエ ,   大場則夫 ,   中村省吾 ,   紀伊国献三

ページ範囲:P.38 - P.48

 世の中のめまぐるしい変化に呼応して,病院もようやくその堅い殻を脱ぎはじめた.進みゆく方向は,世界各国それぞれの特殊性にあわせて千差万別ではあるが,いずれはわが国をも見舞う波であるにはちがいあるまい,先進ヨーロッパ,アメリカ諸国の医療システムの変貌ぶりをつぶさにごらんになった方がたから,その印象を話しあっていただこう.

グラフ

第2回世界病院管理専門調査団アルバム

ページ範囲:P.9 - P.13

 第16回国際病院会議は西ドイツ・ジュッセルドルフで1969年6月23日から27日までの5日間盛大に催され,これに参加する便宜をはかって第2回世界病院管理専門調査団22名が組織された.学会開催地の関係もあって,一行の日程は欧州の27日15都市に対し,米国は11日8都市の忙しい旅行となった.その間,病院9,病院協会4,病院管理の学部3,その他WHO,病院センター,政府機関,超短期人間ドックなどを見学し,また国際病院会議主催の西ドイツ病院見学にも参加した.
 わずかの時間で通りすぎたので,各国の特徴などわかるわけもないが,それぞれその伝統に基づきながらも,医療の進歩におくれまいとしており,米国も病院管理について真剣な研究が進められていた.ふりかえってわが国の事情を見て,必ずしもおくれていないばかりか,一部には先端を行く面もあって,自信をもって努力すべきであると感じた.

看護を支える

著者: 吉武香代子

ページ範囲:P.74 - P.79

 秋は学会のシーズンである.看護関係でも2つの学会があいついで開催された.
 "看護は学であるか"ということは,看護の中に働くものの中でも常に論議の対象となる.単なる技能にすぎないとする考えも確かに存在する.しかし一方で,看護の研究は全国各地の病院で着々とすすめられ,看護関係の学会の出席者は年々ふくれ上がってさている.

病院管理のパイオニア・13

萩原義雄—国立京都病院名誉院長

著者:

ページ範囲:P.14 - P.14

 病院管理の学会で,静かにそして熱心に発表に聞き入っている先生の姿が,いつも目につく.そして国立京都病院からは医師・看護婦その他の職員が,病院管理に関する多くの発表をしている.病院管理の原動力となっている先生の影響であろう.
 "牢獄に近い"といわれた軍病院を近代的な機能をもつ国立病院にした20年あまりの努力は,Dr.Crosbyに"西日本で最も印象的な病院"と言わしめたのであった.

病院の広場

大病院での横の連絡と能率化の問題点

著者: 塚本憲甫

ページ範囲:P.17 - P.17

 私の病院生活も決して短いほうではないが,もともと私は癌の放射線治療というような狭い分野にとじこもっている時期が長かったので,病院管理の面には,正直なところあまり興味を持たなかった.しかし,歳をとるにつれて,そうばかりも言っていられない地位に立たされるようになってみると,もう少しこうした方面の勉強もしておけばよかったと今さらながら後悔している.
 国立がんセンターのように施設の規模が大きくなり,病院と研究所とその両方の運営にあたる運営部との3本建ての機構では,幸いにして運営面はその道の専門家にまかせることができて,その点は大いに助かるのであるが,癌の専門病院というと,限られたの診療の施設であるから,簡単であるかのように取られるが,今日のように癌の診断,治療両面の技術が高度に分化してくると,その横の連絡を密にすることがいかに重要であるかを痛感させられるのである.

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Editorial

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.48 - P.48

 あけましておめでとうございます,今年もどうぞよろしくお願いいたします. さて,本誌は創刊21年を迎えるにあたっていよいよ新装大判誌としてお目にかかることになりました.一応これからは,少なくとも外観は各国の病院誌と肩を並べることとなります.
 本年はいよいよ1970年です.今度で終戦後1/4世紀が経過したことになります.この間,わが国の経済成長は大成功だったというべきでしょうが,その反面,社会開発はとり残されぎみで,病院は長く苦難の道を歩かされました.本年こそ飛躍的にわれわれの時代にならなければならぬでしょう.過去の努力の蓄積を基盤にして,新たな勇気をもって対処しましょう.

ごあいさつ

著者: 長谷川泉

ページ範囲:P.53 - P.53

 雑誌「病院」は昭和45年を期して,従来のB5判からA4判に大型雑誌化することになった.これはグラフ類に充実した工夫をこらし,また病院建築設計図などを豊富に載せてゆくような視覚的要素を意欲的に盛るとともに,編集内容の増量をはかろうとする要請にこたえたものである.昭和24年7月に雑誌「病院」が「よい病院はどうあるべきかを研究する雑誌」の目的を掲げて創刊されてから,昭和45年で21年目を迎える,雑誌「病院」は病院管理の草創期に発足したので,当時は憐憫とも悪罵ともつかない批評を受けた.曰く「3号雑誌だろう」(3号でつぶれる意)「1年ぐらいで書くことがなくなるだろう」「書き手がなくなって同人雑誌になるだろう」云々.大型雑誌に飛躍する今日,往時を回想すると今昔の感にたえない.
 また海外の病院協会などを訪れた日本の院長,事務長など病院管理に関心を持つ方々の話をうかがうたびに「雑誌『病院』がHospitalmanagementなど外国の病院管理雑誌に伍して並んでいた.しかし小型だから目立たなかった」ということばが胸に響いた.

精神病院の管理・1

一般医療と精神医療

著者: 江副勉

ページ範囲:P.49 - P.53

はじめに
 昭和43年の夏ごろ,"精神医学"の編集部のきもいりで,"医療における精神科の役割"と題する座談会がもたれた1).この座談会には,内科・小児科・公衆衛生などの領域で,第一線で仕事をしておられるエキスパートが出席されて,各人の診療体験に根ざす重要な発言があった.
 その中で北さんは次のようなことを言った.

招待席

看護の本質

著者: 大森文子 ,   石原信吾

ページ範囲:P.54 - P.63

‘看護とは何か’ということを抜きにして,今日の看護問題をとらえることは,不可能にちかい.たとえば,日本の病院界をゆるがしたニッパチ問題ひとつにしても,根本では‘看護とは何か’という問いを抜きにしては考えられない.ある意味では,これこそ現代看護の最大のテーマではあるまいか.そこで現代看護界の大御所の1人である大森文子氏にストレートに問いかけてみることにする.

管理者訪問・22

兵庫県立尼崎病院長 沼 正三 先生

著者: 森日出男

ページ範囲:P.65 - P.65

 院長次室をノックして秘書に来意を告げかけたとたん‘森先生サァドウゾドウゾ’白髪豊かな先生の温顔が院長室よりお出迎え.‘理想的な病院運営の基盤は医療職員の和が最もたいせつである’という先生の態度が最初から十分にうかがわれ,子供のごとき私をまずはリラックスさせていただく.しかも和歌山県出身で同郷の人と聞くだけでも心強く,しばらくは郷里の話がはずむ.
 私の履歴書は至極簡単でねといわれるとおり,昭和5年京都大学をご卒業,大学院で第2内科教室に在籍,昭和11年9月に初代院長として赴任され,現在に至っておられる.病院の歴史は先生の歴史であり,先生の人生の半分(いや,これから先も考えるとその大半)は,現病院発展の歴史であったといえる.

英国国営医療研究メモ・1

I.国営医療前史—A.労働者の自衛的互助組織—友愛組合時代 産業革命(1760-1830年ごろ)から国民保険法成立(1911年)まで

ページ範囲:P.66 - P.67

 昭和42年夏,英国国営医療(the National HealthService,国民保健事業あるいは国営医療事業)を同国の資本主義や福祉政策の発展を背景に勉強するため英国へ旅立った.当時,健康保険,特にその赤字対策をめぐり議論が沸騰していた.やがて健保特例法が成立したことを知った.2年後の昨44年夏帰国し,新聞をひろげるとやはり健保のことが出ている.2年前の新聞を見ているのではないかと錯覚する.この領域では,この2年間に議論や混乱はあっても進展はなかったようである.政府は"医療保険抜本改正"という宿題ができ上がらず,"特例法"を延長するような"健保法改正案"を強行採決で通した.健保問題は,一時異常国会で引きつづき強行採決された"大学法案"の影になっていた.
 しかし,70年代のわが国の運命を決する沖繩,安保問題を中心に戦かわれた選挙戦が激しさを加えたころ,‘中医協’における医療費をめぐる政治的かけひきも活発化し,再び‘健保問題’の泥沼ぶりをわれわれに印象づけ,この問題の解決も70年代にもちこまれた.健保のみならず,わが国の医療全体が現在の混迷から抜け出す抜本的改正の途をどこに求めるべきか.

病院と統計

病院数と病床数

著者: 前田行雄

ページ範囲:P.68 - P.69

 "病院報告"は,毎月全国の病院から管轄保健所を経て厚生省に報告されるもので,その報告事項は,月末病床数,在院患者延数,月末在院患者数,新入院患者数,退院患者数,外来患者延数などとなっている.今回,昭和43年の結果がまとまったので,その一部を観察してみよう.

見のがされやすい実務の知識

病院の床材

著者: 倉持一雄

ページ範囲:P.70 - P.70

 われわれの建物の生活環境の中で,最も近い存在が床である.人は床を離れて生活することはできない.それだけに床の色彩,模様の美しさ,歩行感の良否,保全修理の容易さなどは見のがせない問題である.
 病院における床材の適応性は,患者に与える精神的不安感の緩和と衛生環境の保持などの要件もあって,床材を使用する場合に考えねばならないことは,使用条件,材質,色彩,そして現場の建築構造と気象条件に合った施工方法である.設計時に十分な検討がされて施工したものが,その後使用条件の変更などがあって,当初の意図がくずされ,損耗劣化を早め,補修を余儀なくされた例が多い.

病院の職員教育・1

サービスについて

著者: 田中栄一

ページ範囲:P.71 - P.71

病人を相手とする病院は,仕事の質や方法も,一般のそれとはずいぶん異なり,‘病院独自’のものが要求される.系統だった資料をそろえ,効果をあげる日大病院に,職員教育のポイントを1年にわたりアドバイスしていただこう.

病院経営戦前戦後・1

健康保険(1)

著者: 山元昌之

ページ範囲:P.72 - P.72

 戦後まもなく転任して病院の現場から離れ,10年たって,またもとの病院の現場へ帰ってきた.
 留守の間に起きた事務関係の大きな変化は,保険掛という大掛ができていたことだ.昭和2年に健康保険が給付を開始した当時は,被保険者が,工場法・鉱業法の適用を受ける工場や事業場の工場労働者に限定されていた.職員は,のちに昭和14年に制定された職員健康保険法の適用を受けるようになる.もっとも昭和17年には,この職員健康保険法は健康保険法に統合される.

第19回日本病院学会シンポジウム

Graduate education

著者: 平賀稔 ,   葛谷信貞 ,   織畑秀夫 ,   牧野永城

ページ範囲:P.81 - P.96

 司会(平賀)これからシンポジウムを始めます.講師は3名でございます.
 葛谷先生は多年虎の門病院で医学教育部長をしておられて,レジデントのトレーニングをやっておられた方です.

病院建築・13

病院における成長と変化—横浜市民病院を具体例として

著者: 守屋秀夫

ページ範囲:P.97 - P.100

 建築には,何年かの年月の経過とともに,大なり小なりの増築・改築はつきものである.われわれの設計事務所の作品をふり返ってみても,10年以上前に設計したおもな建物は,10のうち7つか8つまでがその後大規模な増築を行なっており,昔のままの姿でいるものはごく少ない.
 このように,内部機能の成長と変化,それに伴う建物の増改築の問題は,なにも病院に限ってあるものではない.しかし,病院は,他の種類の建物に比較して,成長と変化が特に激しく,増築・改築の機会が多いものの1つであるように思える.事実,病院の設計を依頼されたとしても,ほとんどの場合は増築や改築であって,まったく新しく建てる機会にめぐりあうことは意外に少ないのである.そのうえ病院の増改築には,いろいろとやっかいな要素がほかの種類の建物以上に含まれていると考えられる.

病院図書館

—日本病院協会編—「人間ドック」

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.101 - P.101

臨床予防医学活動の最たるものとして
 日本病院協会が日ごろの業務や勉強会の成果をまとめたりなどして,病院管理の実際に役だつ多くの著書を出版していることはすでに広く知られており,利用しておられる方も多いと思う.
 昭和44年8月に赤い表紙の"人間ドック"がこの仲間に加えられた.正確にいえば,日本病院協会臨床予防医学委員会の編集で,執筆者は橋本日病会長,小野田佼成病院長,笹森牧田病院医長,日野原・橘両聖路加病院医長など,そうそうたるメンバー18名に及んでおり,実は"人間ドック"の第2集である.

印象記

低カロリーの日本食が注目をひく—第5回国際栄養士ワシントン会議に出席して

著者: 上月叡子

ページ範囲:P.102 - P.103

 かねてよりの念願がかない,1969年9月8日から12日の5日間,米国ワシントン市で開催された第5回国際栄養士ワシントン会議に出席,学術講演"日本における食餌療法に関する研究"(日本からは4題採択)をし,欧米各国の施設を視察,このたび帰国したので報告する.

研究と報告【投稿】

職域病院の現状と今後のあり方

著者: 本橋義治 ,   大谷武司

ページ範囲:P.105 - P.108

職域医療の生成発展
 今日の職域病院は,長年にわたるわが国の職域医療保障(医療保険)制度と職域医療施設の起伏消長の過程で,諸外国には例をみない特殊な形態として形成され,発展を遂げてきた.その歴史は,いわば,わが国産業,経営史の一裏面でもあり,また,日本資本主義の発展過程の1つの側面を物語るものとして興味深いものがある.
 職域病院の今日的役割と今後のあり方を検討するに先立ち,われわれはまず,わが国における職域医療の変遷とその社会的背景について探究しておく必要がある.

ホスピタルトピックス

英国精神病院の現況

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.109 - P.109

 英国の精神衛生協会NAMHの総会が昨1969年2月に開かれ,特別講演が5つも設けられた.このなかでわれわれにとって特に興味深いのは英国厚生大臣による精神病院の展望である.The Hospital (April,p.129-132,1969)に大臣演説の要旨が載っているので紹介する.
 1963-64会計年度で,英国は精神疾患と精神薄弱のために1400万ポンドの金額を使ったが,1967-68年では2500万ポンドに達している.この恐るべき増加は今後も続くと考えられ,減少する気配がみられないどころか,かえって緊急に設置すべきホステルや職業訓練センターの新築費があり,さらに現存病院の改築改造費も考慮しなければならないので,精神医療費の上昇速度はますます高まるものと予想される.

霞ガ関だより

岐路に立つ清掃行政(1)—病院清掃との関連において

著者: 田中明 ,   片山徹

ページ範囲:P.110 - P.111

はじめに
 清掃事業は,もともとは,汚物を衛生的に処理することを目的としたものであるが(清掃法),最近,汚物量の増大と質の多様化のため汚物の概念が不明確となり,そのねらいも,生活環境を清潔に保持し,市民生活を円滑な営みにするための,したがって都市機能を正常に保たせるための基幹的事業という方向に転換しつつある.
 すなわち,わが国における経済社会の急速な高度化・高密度化に伴い,ごみという観点からのみとらえても,家庭ごみの増加とその多様化のほか,生産活動に起因する各種の産業廃棄物・汚泥・建設廃材など,家庭ごみをはるかに上回る各種廃棄物が増大し,いわゆる‘ごみ’という概念では把握しがたく,従来の焼却を中心としたごみ処理体制では対処しがたいものとなっているからである.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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