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雑誌目次

雑誌文献

病院29巻12号

1970年11月発行

雑誌目次

特集 企業会計の反省

病院会計制度の沿革—特に企業会計制度の導入について

著者: 山元昌之

ページ範囲:P.19 - P.25

はじめに
 この課題は,学問的に取り上げると,すこぶる興味のある,また有意義なものであるが,そのためには十分な資料を収集しなければならない.いまこの課題を,わが国だけのものに限定してみても,これから十分な資料を収集し,検討を加えることは,時間的に不可能である.それで今回は,筆者が病院会計の研究に着手した昭和15年ころから,今日までに集収した,わずかの資料と文献とに墓ついて,病院会計制度の変遷をふり返って,責を塞ぎたいと思う.

現在の病院会計制度の問題点—会計学的立場から

著者: 針谷達志

ページ範囲:P.27 - P.32

はじめに
 現在の企業会計制度の問題点というためには,最新のテーマを選ぶことが必要であろう.‘会計とは,経済諸力を財務尺度によって測定し,その測定の結果を利害関係者に伝達する行為である’--近代会計の完成期に,ペイトンがこう述べて以来,測定と伝達は会計職能の中心機能となった.測定と伝達をいかに行なうかは,まさに古くして新しい問題である.
 ひとくちに企業会計といっても,それは普通,財務会計と管理会計に区別される.財務会計とは,資本提供者としての開設打や債権者,その他病院の管理・運営に直接には参加しないが,病院の経済活動に関心をもつ人びとに対して,それぞれが必要とする会計情報を提供するための会計をいう.これに対し,経営者に,経営管理に必要な情報を提供するための会計を管理会計とよんでいる.企業会計制度という場合の会計は,このうち,もっぱら財務会計の分野をさすことが普通である.

地方公営企業法のもたらした功罪

著者: 尾口平吉

ページ範囲:P.33 - P.38

地方公営企業法の適用
 地方公共団体が経営する水道・交通・ガス事業などの経営を効果的に行なうために企業性を導入しようとして,昭和27年地方公営企業法が制定された.地方公営企業法は,企業の組織・財務およびこれに従事する職員の身分取り払いなどについて,地方自治法・地方財政法・地方公務員法の特例法として定められたものであった.
 当時,病院事業については,この法の適用は地方公共団体の任意とされ,条例で定める場合のみ,その全部または一部(財務規定)を適用してもよいものとされていたが,その後,常時府川される職員の数が100人以上のものについては,財務規定のうち第17条の2の独立採算規定(地方公営企業の特別会計においては,その経費は,当該地方公営企業の経営に伴う収入をもってあてなければならない)を除外して財務規定のみを適用することとなった(条例によって法全部適用の道も開かれていた).この趣旨は,病院事業葉は独立採算制になじまないものであるが,病院事業といえども1つの企業であり,企業経営の実態を明確にすることは,地方公共団体として住民に対する当然の責務であること,病院自体においても合理的な経営を行なうために必要であることによるもので,いわゆう官庁交計方式から脱却して企業会計方式を採用するための措置であった.この意味においては,わが国の病院界における企業会訓方式採用の先駆的役割を果たしたものといえるであろう.

病院(自治体)に企業会計を持ち込んださいの考え方—その効果と問題点

著者: 坂田期雄

ページ範囲:P.39 - P.43

企業会計導入のいきさつ
 自治体病院に企業会計制度が導入されるにあたっては,次の3つの段階を経て進められてきた.

病院経営改善のための企業会計制度の積極的利用について

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.45 - P.50

企業会計制度の導入のいきさつ
 昭和36年に出た"病院経営管理改善懇談会要旨"において,病院財務改善のために,企業会計方式の採用を勧めている.
 それには,病院財政は,従来消費会計として処理されており,生産経済体である病院の経理方式としては不合理であること,そして‘ただこれを形式的に取り入れるだけでなく,部門別に原価計算を行ない,予算統制制度を採用すべきである’さらに必要に応じては‘経営分析・内部監査なども適時行なうべきであり,このようにして得られた会計資料が新たな経営方針の樹立によく反映されるようにつとめるべきである’とその活用面にまで触れている.

資料

地方公営企業法(昭和27.8.1法292)—(編集部にて病院に関係する条項を抜すいした)

ページ範囲:P.20 - P.24

第1章総則
(この法律の目的)
 第1条 この法律は地方公共団体の経営する企業の組織,財務及びこれに従事する職員の身分取扱その他企業の経営の根本基準,企業の経営に関する事務を共同処理する地方自治法の規定による一部事務組合に関する特例並びに企業の財政の再建に関する措置を定め,地方自治の発達に資することを目的とする.

グラフ

病院建築と最新医療の結合—市街地の病院の原型成る 三井記念病院

ページ範囲:P.9 - P.13

 神田和泉町の東京大学医学部発祥の地に三井慈善病院が開院したのは,明治42年のことであった.それより61年の歴史は医学の進歩に貢献してきたが,建物は戦災で焼失し,改修された建物や設備も改善の必要に迫られていた.そこで三井グループ26社の協力によって,最高の医療水準を保つ近代的病院の建設が計画され,昭和45年9月に堂々たる偉容をもって開院したのである.
 この新病院は病院建築の権威である吉武泰水教授の意図が生かされ,高層のパビリオンタイプの病院建築としては最も新しく,またアイディアに富んだものであり,今後の市街地の病院の原型として意義が深いものと考えられる.また病院の機能も新しい器に従って而目を一新し,新しい病院管理が期待される.現在378床であるが,将来の増築を酎慮して設計されている,地上13階,地下1階で,病室は8-13階にあり,管理部門は5階にある.(木本誠二院長,東京都千代田区神川和泉町1)

第8回日本病院管理学会

ページ範囲:P.74 - P.75

第8回を数える日本病院管理学会は,はじめで東京を離れて名古屋市のホテルニューナゴヤ国際サロンにとり,10月2,3日の両日にわたり充実した内容を繰り広げた.‘病院管理と行動科学’と題するシンポジウムがもたれるなど,最新の考え方を遅れなく取り入れ,ここに病院管理学の進歩と発展の確実な一歩が進められた.学会長は山元昌之氏.(なお明年は東京,日大・永沢滋氏のもとで開催される)

病院管理学の5教授

著者: 守屋

ページ範囲:P.14 - P.14

 わが国で病院管理に携わっている人びとのうち,名院長・大院長といわれる人はたくさんいる.彼らを臨床家にたとえれば,管理.学教室で研究している人びとは基礎医学者ともいうべきだろう.現在わが国ではその教室は4つしかないが,たまたま本年の管理学会評議員会でその全貝が顔を合わせた.
 島内教授は,ご承知のように,理論管理学で,国立大学教室で重きをなしている.

病院の広場

医療サービスの本質

著者: 佐分利六郎

ページ範囲:P.17 - P.17

 新米の院長である.3年ほど前から副院長として病気の三沢前院長の代行をしていたので,とまどうことはないが,すべての責任が肩にかかってくるとなると,感じは別のものである.職種の多様さ,それにしたがって起こる人の使い方の不経済さ,物品管理のあいまいさ,職場別の忙しさの差など,皆の気持ちを一線に並べて引っぱって行くのに不都合な環境ばかり多いのに,いまさらながら驚いている.
 現在の保険制度下の総合病院の実態をみると,種々いわれているように矛盾に満ちているが,なにより経済的な立場が明確でない.病院管理学の本もだいたい出そろい,どうすればさらによいmedical serviceを提供できるかということに頭の中でだいたい整理していても,やりたいができないというのが実状ではなかろうか.

病院図書館

—山元 昌之 著—病院管理新書10「病院経営概論」

著者: 榊田博

ページ範囲:P.30 - P.31

一読して新しい視野が開かれる
 文字どおり寝耳に水,何の用意もなく昨年の11月にわかに病院長に任命されることとなった私は,著者の指摘する‘診療を通じて成長した院長’といわれる範ちゅうに属す‘新米院長’だっただけに,就任当初に当面した病院の諸問題を処理するにあたって‘全体管理者たる院長には経営管理についてのある程度の知識が必要’であった.本書を手にとって目次を一覧したあと,最初にページをくったのは巻末の"補遺—会計用語の解説"だった.確かに‘診療を通じて成長した院長’にとっては,予算実績比較報告書・貸借対照表・資金運用表・現金収支明細などの書類を検閲しながら,資金計画その他資金管理の全般について主体的に事務処理する素地ができていない。
 院長就任前に診療科の一部長でありながら栄養管理・給食管理の責務を兼ねていた関係で,労働組合との現場交渉の矢面に立たされ,労資関係の調節に苦闘したことがあったので,人事管理の章を通読して,今にして思いあたることが多く,たいへんによい勉強になった.目下,私は病院の就業規則の改正についてて検討をすすめているので,この作業段階でも,具体的な示唆を得ることが多かった.

—監修 橋本寛敏 古田幸雄/編集 岩佐潔 菅谷章 鈴木淳—病院管理大系 第5巻「公衆衛生,社会福祉,社会保障,特殊病院管理」

著者: 額田粲

ページ範囲:P.43 - P.43

病院関係者のSource Bookとして
 この本は病院管理大系(全6巻)のうちの第5巻として,病院関係者のための公衆衛生・社会福祉・社会保障のSource Bookとして刊行された700ページ余の労作である.執筆者はいずれも,雑誌"病院"や‘日本病院管理学会’などでおなじみの各界の権威者であるが,衛生学会・公衆衛生学会で,いつもお会いする先輩・同輩・後輩のお名まえも見受けられる.
 医科大学で衛生学・公衆衛生学を教えるわれわれの悩みの1つは,学生の教育にまじめになればなるほど,講義の焦点が従来の教科書の内容から離れていくことであった.学期のはじめに学生から,参考書として何がよいかと聞かれると‘いずれも帯に短し,たすきに長し’とことばに苦しんでいたが,本書の出現により,少なくともお医者さん用の参考書の問題はいちおう落ち着くところに落ち着いたようである.

—編集 第20回日本病院学会—「病院学」

著者: 島内武文

ページ範囲:P.51 - P.51

病院人のよき相談相手として
 "病院学"がこのたび日本病院協会から刊行された.いかにも第20回日本病院学会の年にふさわしい企画である.ことに"病院学"の名称は簡潔に内容を示している.
 日本病院学会の母体である日本病院協会長を長年つとめられた橋木聖路加国際病院長の刊行のことばにもあるように,本学会はわが国の病院学の発展の場であるとともに,日本の病院の啓蒙の場となってきた.その20年の内容を集録した本書は,まさにわが国の病院学の進歩の記録であり,年とともに発展してきた病院の歴史でもある.事実,学会は常に時代の先端を歩み,病院における改善や新しい試みはまずここに発表され,批判と評価を受けてきた.

—荻島秀男・下村克躬 著—「米国の医学教育と医療事情」

著者: 小川鼎三

ページ範囲:P.63 - P.63

よく調べられた内容,豊富な資料
 私が米国に留学したのは戦前の1937-38年であって,シカゴのノースウェスタン大学とニューヘイブンのエール大学で赤核の問題その他を研究した.戦後は2度米国に渡ったが,これは短期間で,訪れた場所も限られていて,広く米国の医学教育の実情と知りたいと念願しながら,その機会をもたなかった,米国では医学教育も医療事情も日本とは非常に違うことを漠然と感じていたにすぎない.
 本書を一読して,なるほどそんなわけかと,たびたび膝をたたいたしだいで,荻島・下村両氏の力作が今度出版されたことを,はなはだありがたく思っている.これだけ豊富な資料を収集して,まとめ上げるのはたいへんな大事業であり,おそらく多忙な他の仕事の問に成し遂げたことと思うので両氏の絶大な努力に大いに敬服している.

—監修=橋本寛敏・吉田幸雄 編集=今村栄一・高橋政祺・津田豊和・吉武香代子—病院管理大系 第2巻 業務I

著者: 諸橋芳夫

ページ範囲:P.94 - P.94

まさに待望の書出現
 このたび,わが国の病院管理のパイオニアである橋本寛敏氏・古田幸雄氏監修による病陽管理大系(全6巻)の手はじめとして,第2巻業務Iが発刊された.
 病院ほど多種多様の専門職の集まっている職場は他に類をみない.病院の管理運営ほど至難な課題はないという.

病院長時代の思い出・5

各種診療センター,診療管理上のくふうおよび第15回日本病院学会のこと

著者: 萩原義雄

ページ範囲:P.53 - P.57

 本院にはいろいろの診療センターが付設されている.以下少しく各種センターについて略述したい.

救急医療に関する研究・5

救急病院の宿直医と宿直体制について—救急機構調査(3)

著者: 岩本正信

ページ範囲:P.59 - P.63

 救急患者の診療を行なよううえにおいて,最も重要なことは医師・看護婦およびその他の職員の人員構成とその配置である.
 理想としては,救急部門に専属の各科の専門医を配置して24時間にわたり活動できるような体制であることが望ましく,Dr, V.A.Minyaev1)は専門医のチームによって手当てされた負傷者の死亡は,統計的にみて普通のチームによって手当てされた場合の半分に過ぎず,さらに医師の他に看護婦・補助看護婦・レントゲン技師らからなる包括的チームで対処することをすすめている.しかし,わが国の救急医療体制の現状では,そのような配置は不可能に近い.不可能な場合に宇山氏2)は,専門医の配置を理想としながらも京都第二赤十字病院救急分院の経験から,外科医を常勤せしめるのが最も応用範囲が広く適当であるとしている.しかし,その外科医を四六時中確保することも困難があり,特に夜間宿直医師の確保については多くの救急病院が当惑している問題である.

管理者訪問・32

財団法人太田綜合病院長 太田辰雄先生

著者: 車田松三郎

ページ範囲:P.65 - P.65

 今回は診療活動をかなり多方面にやられているということもあって,一般に県内のメディカルセンターとして知られている福島県郡山市に所在する財団法人太田綜合病院で院長をしておられる太田辰雄先生を訪問することにした.
 先生は初代院長太田三郎先生のあとを引き受け,当病院の院長に就任されたのは昭和24年12月のこと.したがって院長歴は長く,今年で21年めにあたる.この間の先生の病院管理者としてこの功績は大きく,それは,名実ともに今日の太田綜合病院の発展にみられるところである.

英国国営医療研究メモ・11

III.国営医療と法律問題

著者: 姉崎正平

ページ範囲:P.66 - P.67

 英国,特にイングランドの法体系の基礎1)は,ローマ法組織を継受したヨーロッパ大陸やわが国のように成文憲法でなく,中世以来の一般的社会慣習に根ざす不文法のCommon Law (普通法)である.社会の変化により,Common Lawを部分的に修正あるいは明確化するため議会で可決する法律,国王の勅令,中央・地方政府の規則という制定法がつくられる.これらの具体的解釈である判例が,のちの判決を拘束する度合いが強いのも特徴である.総じて,英国では,新しい社会事情や変化に応ずる法原則が定められやすいといわれる.
 病院を中心とした医療についての法律問題が関係する領域を羅列すると次のようになる.

病院と統計

医療施設と病床数

著者: 前田行雄

ページ範囲:P.68 - P.69

 医療施設の数やその従事者数については,すでに昭和43年の病院報告,医療施設調査および医師・歯科医師・薬剤師調査の結果を紹介してきたが,今回昭和44年の医療施設調査の結果が発表されたので,その概要を観察してみよう.

見のがされやすい実務の知識

病院の騒音

著者: 倉持一雄

ページ範囲:P.70 - P.70

 人間の生活環境の条件として,建物内の温度・湿度と照明ならびに騒音の問題があるが,今回は病院における騒音について述べてみる.
 騒音の性状によっては,会話や電話の応対あるいは心音聴診を妨害するばかりでなく,その音を聞く人に生理的・心理的影響を与え,特に患者の場合は,筋肉の緊張を増加して,エネルギーの消耗を亢進させ,また,血中・尿中のホルモン量ならびにビタミン消費量を変化させ,そのうえ脳波などにも健康人と異なる影響を示すそうである.

病院の職員教育 駿河台日本大学病院職員教育資料より・11

電話のエチケット—前号つづき

著者: 田中栄一

ページ範囲:P.71 - P.71

電話の受けかた
1.感じのよい受けかた
(1)ベルが鳴ったらすぐ出て名まえを:ベルが鳴ったらすぐ出て‘○○科(課)の○○でございます’と名まえを言いましょう.モシモシと出てはいけません.来客と面談中に電話のベルが鳴ったときは‘ちょっと失礼します’と言って電話を優先して受話器をとりましょう.

病院経営戦前戦後・11

病院組織の変化(4)

著者: 山元昌之

ページ範囲:P.72 - P.72

 今回は看護の態勢をふり返ってみよう.戦前と戦後の病院の性格の変化のうち,本質的なものは,診療と看護の専門分化であろう.これに伴って,看護業務の重要さが高く評価されるようになった.このことについては周知のところだから,ここに触れる必要はないが,問題は,この理念を具体化する看護要員の数と,その資格別構成内訳であろう.
 戦前の看護婦の仕事は診療介助が大部分で,患者の療養の世話は,特殊な場合のほかは,付添に任されていた.したがって戦前と戦後との看護要員の数とその資格別構成内訳を比べる場合には,この付添を計算に入れる必要がある.いま私のいた病院の資格別員数と病床数(昭和15年度)から観察してみよう.

病院建築・23

三井記念病院

著者: 尾崎一雄

ページ範囲:P.77 - P.82

はじめに
 この病院は約400床の総合病院で,昭和43年12月に着工し,本年4月にほぼ完成して新館に診療を移したあと,旧建物を取りこわし外構を整備完成して,去る9月28日に開院披露を行なった.

精神病院の管理・11

精神病棟建築—使用者の立場から

著者: 式場聰

ページ範囲:P.83 - P.87

はじめに
 日本の精神病院の創立とその発展の足あとをたどってみると,その起源が幕末の弘化3年(1846)といわれている.しかもそれは民間の篤志家によってつくられたものである.その後の発展をみても,官公立は実にわずかであり,その大部分は民間の私立病院であった.
 わが国の精神病院の普及が諸外国に比べてかなり遅れ,その設備と運営面における見劣りのしかたも,このような民間私立病院にまかせられてきたということもその理由の一半を占めしているとみてよいと思われる.

研究と報告【投稿】

PFP(palystrenc Foam Paper)食器採用3年間の歩み

著者: 渡辺利雄

ページ範囲:P.89 - P.93

 PFP食器は,回収—洗い—消毒—保管などを要しない,いわゆる使い捨て食器ということで近年給食界の話題となり,病院・自衛隊・給食センターなどで,すでに実用化されている.
 成田赤十字病院においては,この‘捨てる食器’という特色に着目し,試験使用し,全面的実用化にはいったのが昭和41年4月である.以下,その概要を報告し,各位のご批判を受けたいと思う.

空気集じん装置の補助フィルター設置例について

著者: 倉持一雄

ページ範囲:P.95 - P.99

はじめに
 都市部あるいは工業地帯の大気汚染の悪化に伴い,病院空調における新鮮空気の浄化は重要な問題となっている,しかるに,高能率で保守管理の容易な空気清浄装置は,設備経費の面から設備されていないことが多く,このため,現在の不十分な設備をいかに合理的に機能性を高めていくかが要件となっている.そうした限られた空調設備の運転・保守を担当している立場で,空気集じん装置の改善を行ない,所期の効果をあげているので,補助フィルターの設置例として参考までに報告する.

外来患者の待ち時間における患者心理(第1報)

著者: 佐々木澄夫 ,   江本恒志 ,   蓬郷嘉一

ページ範囲:P.101 - P.110

 病院の外来管理上,患者の待ち時間がいかに重要であるかは,いまさら述べることもないことである.病院における‘3時間待ち,3分間診療’とは,われわれ医療従事者には,身につまされる痛いことばであるが,巷間言いふらされていることも事実である.
 待ち時間とは,病院と外来患者との間にあって,病院のさばく能力が足りないために生ずる時間である.つきつめていえば,外来患者数と窓口業務にたずさわる職員,すなわち外来診療各科・薬局および医事課に配置されている職員が少ないために起こる物理的な現象であるといっても過言ではない.

資料

精神病院在院措置患者の実態(1)

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.111 - P.114

 精神病院在院患者の入院費用負担種目は,一般病院と同じように種々の健康保険・生活保護法などによるが,一般病院と異なるのに精神術生法の措置入院がある.措置入院とは自他傷のおそれのある精神障害者を県知事が国公立または指定の精神病院に入院させることであるが,自他傷のおそれの解釈には事実上かなりの幅がみらる.
 この措置在院患者の実態を知る目的で昭和41年3月に厚生省が全国規模で調査し,ぼう大な資料を集計した.この結果は措置患者の様態を明らかにするばかりでなく,精神病院在院患者の全貌を把握するのに役だち,ひいては精神衛生のあり方にも有用と思われるので,私見を加えながら,集計結果の大要を述べる.さらに,昨年度は措置患者の入・退院の実態調査が行なわれ,近々その分析結果が発表予定であるので,これと照らしあわせればより正確に動きがとらえられるであろう.

ホスピタルトピックス

これからの英国併設精神科

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.116 - P.117

 英国は,1960年以来,精神医療を一般身体医療に近づける政策をとり,同国厚生省ウィルキン博上によれば,この政策はsmaller and better作戦ともいわれうるという.それは精神病院を小規模にし,地域社会に障害者をよりよく近づけるために一般病院に精神病床を併設することだからである.
 60年代初期の併設精神科は主として第1級の総合病院に設けられ,診療対象にもかなり多くの制限がみられていたが,いままでの経験によると,ごくごく少数の特殊例を除き,ほとんどすべての種類のあらゆる疾患の治療が併設精神科でも可能となり,地域社会と患者との近接化,地域住民の理解度の向上,精神医学と身体医学との密着化,医師と患者との人間関係の持続などの諸面ですばらしい効果をあげ,精神病院在院期間の短縮がみられた.そこでこれらの成果を全国的に普及するために,地方の一般病院(俗称第2-3級病院)にも精神科を併設しようとしている.このために,すでに発刊していた併設精神科建築基準(Buil—ding Note No.5とNo.30)を廃止して,新しい要綱をつくりつつある.

霞ガ関だより

デイ・ホスピタルについて

著者:

ページ範囲:P.118 - P.119

デイ・ホスピタルの内容とその歴史
 ‘デイ・ホスピタル’ということばが近年精神科領域で使われるようになってきた.これを直訳すると‘昼間だけの病院’である.今までの入院治療は,1日24時間患者が病院に入院して治療を受けることであり,外来治療とは,患者が在宅のまま,ごく単時間病院に来て薬を処方してもらうなどの,診察や治療を受けることであった.デイ・ホスピタルは,この在来の入院治療と外来治療の中間の概念であり,患者は夜間には自宅にいるが,昼間は朝から夕方まで病院に来て治療を受けることである.今までの考え方からいうと,部分的な入院あるいは濃厚外来診療ということもできる.
 このデイ・ホスピタルは,精神医学の分野では画期的な概念であり,今までの精神科医療は入院治療中心であったが,医学の進歩とともに,必ずしも入院治療を行なわないでも,患者が在宅のまま治療を行なうことが可能となったために発達してきた.一般に治療が長期間にわたり,症状が慢性化する傾向のある精神障害者の治療では,ホスピタリズムを予防し,生活指導を行なって社会への適応力を残したままで治療を行なうことが必要である.したがって,入院する必要はないが,社会復帰がまだ十分にできない患者も対象にして,患者が夜間は在宅して家族や地域の人びとといっしょに生活し,昼間は毎日病院へ通って1日6時間近く治療を受けることができる新しい方法としてデイ・ホスピタルが発達してきた.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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