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精神病院の管理・2
精神障害者の人権擁護のために
著者: 元吉功1
所属機関: 1明治学院大学社会学部精神医学
ページ範囲:P.60 - P.64
文献購入ページに移動一昨年,明治100年を記念して,日本国家の成長発展をうたうさまざまな行事が行なわれたが,精神障害者にとっては明治はまさに陰惨な長い暗黒の歴史である.
明治33年(1900年)までは,精神障害者に関する一片の法律さえなく,障害者はただ放置されているか,警察の行政命令一本で,私宅監置(座敷牢)されていた,いわば無法律・放置・座敷牢の時代である.明治33年ようやく‘精神病者監護法’という法律ができたが,これがまたひどい悪法で,全文23か条のほとんどすべてが精神病者を監禁する場合の法的規制であり,医療の医の字もなく,精神病の医療については全然考慮が払われておらず,精神病者を治安警察の対象とのみ考えた警察法規であり,費用の負担についてはもちろん,医療施設についての,国や公共団体の義務責任については全く考慮されていない.いわば私宅監置の合法化である.問題は,こんなひどい法律が,昭和25年現行精神衛生法の制定されるまで,実に1/2世紀,生きて働いていたという事実である.
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