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雑誌目次

雑誌文献

病院29巻5号

1970年05月発行

雑誌目次

特集 病院とコンピュータ

病院管理とコンピュータ

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.19 - P.22

コンピュータは現代の象徴であるといわれる
 われわれの生活の周囲にも,急速にコンピュータの利用が見られている.世界的にもコンピュータ設置台数では,アメリカについで第2位がわが国であるとの報告がされたほどである.待たされる病院,不親切な病院との社会からの批判と,内部からのコスト上昇,人員不足の解決の切札として,当然のことながら,このコンピュータを病院の業務遂行面で適用せんとの試みが,ここ最近,急速に検討されつつある.
 このコンピュータの出現は,しかし,たとえれば医療の世界における顕微鏡の出現時に近似している.顕微鏡の出現は,疾病のすべての原因を解明することができ,その結果,疾病を消滅することができるのではないかとの期待さえあった.しかし,結果はどうであったか.

情報システムとしての病院

著者: 石井威望

ページ範囲:P.23 - P.25

 病院は遠からず情報システムの典型的な応用分野の1つになるであろう.病院に関連した情報の需要は当初予想されたよりも,はるかに大きく,かつ今や急速に顕在化しつつある.この現状認識は,予測されている1970年代前半におけるわが国の経済成長のテンポに照らしてほとんどまちがいないと考えられる.
 本稿においては,限られた紙面と現時点の限られた技術情報に基づいてではあるが,できるかぎり今後の病院における情報システムのあり方について論じてみたい.

事務管理とコンピュータ

著者: 斎藤誠

ページ範囲:P.26 - P.30

はじめに
 病院における事務というものを,どの範囲のものと考えるかは,考えようによって,いろいろ違ってくるわけで,たとえば,医師のカルテ書きや検査指示伝票の発行,検診依頼票などの作成や看護婦の看護記録の記載,他部門への連絡,あるいは検査士の検査成績表の作成・整理・保管など,医療行為に伴う伝票の発行から医療記録の整理までをも,すべて事務と考えれば,それは,ほとんど病院の全業務活動と重なりあうほどに拡大されてしまうことになる.
 しかし,ここでは,事務の定義をうんぬんすることは一応おき,事務部門が取り扱う事務を対象に,それへのコンピュータの適用について,われわれの病院が検討してきたことを中心に考えてみたい.

医療評価とコンピュータ

著者: 津田豊和

ページ範囲:P.31 - P.36

 私は昭和39年以来,退院患者の診療録の内容から得られる資料には,医療の質の向上に役だつものがたくさん含まれていることを知り,医療評価の方法論や医療機関のネットワークのあり方への応用などを調査研究している.昨年の春,WHOのフェローシップで,アメリカとカナダを訪れる機会を与えられたときに,ミシガン州のAnn ArborにあるCPHA(Commis-sion on Professional and Hospital Activities)の見学と,この分野のすぐれた専門家であるdirectorのDr.Vergil N.Sleeにお会いしたいと思った.幸い,これが許されて,日程に組み入れられたので,5月初旬に,このCPHAの第105回TutorialSessionに出席して講義をうけ,特別のはからいでDr.Sleeにも個人的に面会することができた.
 最近,わが国でも医療評価やmedical auditということばを見聞するようになってきたが,このなかには,PASはProfes-sional Activity Studyの略語なのに,Professional ActivityServiceと書いていたり,medical auditとPASとを混同しているむきもあるようなので,PASとMAP (Medical AuditProgram)に重点をおいて,アメリカの実情を述べることにする.

臨床検査とコンピュータ

著者: 野村裕

ページ範囲:P.37 - P.43

臨床検査自動化の必要性と目的
 緒言にかえて,筆者はhospital automationの必要性をまず強調しておきたい.ここでいう病院自動化ということばの中には,カルテ管理を含めた病院管理,薬局業務,臨床検査,治療部門,狭義の事務部門,看護業務,などにおける情報処理の合理化と,検査や治療などの医療分野や事務分野における機械化がすべて包含されている.
 一般社会の情報化,医療水準の向上,患者数の増大,病院機構の複雑化,さらに医療技術者数の不足に伴って,医師・看護婦・技術員・事務員など病院のスタッフが,日常処理していかなければならない業務量は,しだいに増大してきており,病院内の各部門で人手不足が深刻になりつつある.しかも,ぐあいの悪いことに,これらのスタッフは,彼らの本来の業務以外の,いわば雑用に忙殺されているのが現状ではなかろうか.この状況は,日本だけにかぎらず,世界的な傾向のようである.そのようなわけで,省力化手段として,前述のような広義のhospital automationを推進しなければ,遠からず医療自体が危機に陥ることを筆者は痛感している.

診療報酬請求とコンピュータ

著者: 中森寛二

ページ範囲:P.45 - P.49

請求事務を取り巻く環境の変化
 医療保険制度の普及と拡充に伴い,すべての国民が,もれなく,いずれかの制度に加入することになった結果,国民の保険医療に対する需要は質・量ともに急激に増大した.もっともこれには,国民の健康に対する関心が高まってきたことも1つの重要な要因として指摘できよう.いずれにせよ,このことは医療行為に対する診療費の請求速度の低下,診療報酬請求事務の大型化・複雑化を招いたが,結果的にみてそれは医療機関に過大な労力を強制し,ために正常な医事課業務遂行の障害となってきていることは事実である.
 問題の一端は,患者数の伸びが事務職員数の増加に比べて格段に大きいこと,病院に投入できる事務職員数は,現存するいろいろな制約のため,将来においても大幅増加が期待できないことである.請求事務は医事課業務の50%を占め,最大の労力を必要とする.もちろん多くの改善努力の跡はいたるところに見られ,それはそれなりに効果をあげているようであるが,やはり限度があり,超勤やパートタイマーで切り抜けている病院も多い.しかし,解決策が人海戦術の延長線上にないことは,だれの目にも明らかであろう.人海戦術を援用することは将来の事務コストの高騰を招くだけであり,労働力不足がもたらす雇用難とあいまって,問題を慢性化させ,悪化させるだけである.

病院情報システムの開発—昭和45年4月8日.病院管理研究所における日本病院管理学会月例研究会より

著者: リクリアーサー ,   紀伊国献三

ページ範囲:P.71 - P.75

 皆さま方にお目にかかれ病院におけるインフォメーション・システムについてお話しする機会を与えられたことを,たいへん光栄に存じております.私が話すことよりも,あとのディスカッションで,皆さんから得ることの多いことを期待しています.

東京女子医大付属心研にみるコンピュータ外来診療予約システム—Hospital Information Systemの一環として

著者: 東京女子医科大学付属日本心臓血圧研究所EDPS企画室

ページ範囲:P.92 - P.95

 東京女子医大付属日本心臓血圧研究所(心研)では,大病院の通例ともなっている‘待ち3時間,診療5分’を解消し,いっそう行き届いた診療の計画化をねらいとして,1969年9月から,コンピュータによる外来診療予約システムを開始している.

コンピュータ導入の実例・1

宮城県立成人病センター

著者: 高野昭

ページ範囲:P.51 - P.53

 宮城県立成人病センターは地方がんセンターの1つとして,昭和42年4月に開設された専門病院である.開設当初は病床50の小さな施設であったが,昭和44年夏から100床となり,さらに今年の秋より200床とするべく,現在工事中である.診療科目は内科・外科・放射線科・婦人科の4科で,常勤医師数は11名である.ほかに入院患者のための耳鼻科と眼科の診療が,非常勤医師によって行なわれている.外来患者数は1日約100(うち新患15)である.
 この施設には,医学情報管理部門として運営調査部がある.この部門は病歴および医学書籍管理・疾病統計・追跡調査・医療社会事業などの業務を担当しており,このほか,技術部門と事務部門の連絡調整,院内研修および疫学研究に関することも課されている.筆者はこの部の担当者で,内科字専攻後,公衆衛生学教室で主として疫学研究に従事していた医師である.筆者のほかに,諸事務にもたんのうなケースワーカーと女子の事務職員が配属されている.

コンピュータ導入の実例・2

東洋工業株式会社付属病院

著者: 森田専一 ,   大場康寛 ,   栗生進 ,   安田信正 ,   寺田清

ページ範囲:P.54 - P.58

はじめに
 東洋工業付属病院は東洋工業株式会社(マツダ,自動車メーカー)の付属病院として設置され,現在約2万8000名の従業員とその家族の診療と健康管理,および付近地域住民の診療を行なっている.
 昭和13年,医務室として発足し,以後しだいに拡張され,付属医院,付属病院となり,昭和36年に総工費約12億円,敷地面積5316m2(約1608坪),建物延面積1万2078m2(約3653坪)を占める中央7階,両翼5階のT字型の現在の新付属病院が建てられた(写真1).当院は12科の診療部門と健康管理部門として衛生管理課をもつ総合病院であって,入院ベッド数240床であるが,年間約45万名(1日平均1500名)の外来患者が訪れる.一方,全従業員を対象とする各種検診が年間通じて行なわれている.病院職員は386名で,内訳は医師35名,薬剤師16名,看護婦139名,X線技師6名,衛生検査技師31名,事務職員47名,その他で構成されている.

コンピュータ導入の実例・3

関東逓信病院

著者: 谷村外志男

ページ範囲:P.59 - P.62

はじめに
 わが関東逓信病院は,日本電信電話公社の医療機関における中枢的機能をもつ中央病院であり,その規模は表1のとおりである.そして,目下行なわれている拡張整備工事が完成すれば,その建物・施設・運営のあらゆる面において,格段の躍進が期待できるものである.
 電電公社としては,医療機関の総合的整備と医療の近代化計画を推進してきているが,そのいくつかの革新的な施策のなかの1つとして,わが関東逓信病院にコンピュータを手段としたメディカル・エレクトロニクスセンターを設置し,これと公社内の全医療機関との間に通信網で結合した公社医療情報処理ネットワークシステムを併置して運用することとしている.

コンピュータ導入の実例・4

京都市立病院

著者: 高畠実

ページ範囲:P.63 - P.67

はじめに
 医療事業におけるコンピュータの利用は,一般企業に比較すると著しく遅れているが,健康診断とかME関係とかの個々の部門では漸次その活用が進められてきている.京都市立病院での利用は医療事務という部門での試みである.
 当院がコンピュータを導入して,実際に適用したのは昨年の7月1日であり,日も浅いため十分な効果を生み出すまでには至っていないが,とりあえず,その利用内容を発表して大方の参考に資したい.

コンピュータ導入の実例・5

佼成病院

著者: 三浦秀夫

ページ範囲:P.68 - P.70

コンピュータを導入するまで
 佼成病院でコンピュータを導入し,病院の各種の分野に活用してみたらどうかという発案がでたのは,小野田院長が就任して,病院としての陣容も整いつつある昭和42年の春ごろであったかと記憶している.
 しかし,当初は病院自体も実1際にコンピュータを導入しようなどと本気で考えていたか疑わしきむきもあった.われわれとて高嶺の花としか考えていなかったのが本音であった.

グラフ

清瀬は変わる—結核を乗り越えて

ページ範囲:P.9 - P.13

 清瀬といえば,雑木林の中に点点と結核療養施設がある"結核村"が頭に浮かぶ.化学療法のなかったころの国民病の結核に対して,清瀬は救いの里であった.しかし医学と医療の進歩は結核制圧に偉力を示し,そしてその戦士たちは,いま自分たちの新しい仕事場を作り出そうとしている.
雑木林は消えてゆき,古い建物はこわされていく——その清瀬を尋ねてみよう.(東京都北多摩郡清瀬町)

全国自治体病院協議会の役員きまる

著者: 室賀不二男 ,   諸橋芳夫 ,   大屋拳吾

ページ範囲:P.14 - P.14

 全国自治体病院協議会も,今年で第9回の学会を開くことになった.そこで今月は会長の諸橋芳夫先生,副会長の室賀不二男・大屋拳吾の両先生に登場をお願いした,そして紹介も"3人3評"をお願いしたが,よく人がらが浮かびあがっている点をお読みいただきたい.〈諸橋先生の評言〉
 室賀先生:たいへん博学の人である.いつ,何をお聞きしても即答を与えてくださる.毛並みがよろしいとともに愛妻家でもある.絶対に外泊をしない人である.やかましい先輩であるとともに,頼みになる医人である.

病院の広場

これからの外来診療棟

著者: 千葉保之

ページ範囲:P.17 - P.17

 病院は外来をやめ入院を主とすべきだという論議をよそに,現に日本の病院はどこでも外来が繁盛している,入院患者もほとんどその外来から得られるし,紹介患者だけ待ってたんでは病床はガラ空きとなる.一方,患者には病院にさえ行けばなんでもやってもらえる.例は適当でないかもしれないが,デパートみたいなもの.そこへ行けば買いたいものはなんでもあるから.
 そういう外来を前にしてみれば,そのサービスもいっそう切実なものとならざるをえぬ.幸か不幸か今は,いらっしゃいませのデパートと違って病院は診療してやる式の風習.べつに権威ぶるわけではないが,まだ頭を下げてまで診療させてもらうという事情にはいってない.一時も早く苦痛をやわらげてもらいたいばかりに患者さんががまんしてくれているからいいものの,時節がら,そう長くは続かないのではなかろうか.

情報

コンピュータをベースとした医療情報システム

著者:

ページ範囲:P.22 - P.22

 現在,あらめる分野の多くの人びとによって,医療情報管理システムの研究がなされているが,三菱電機でもコンピュータシステムの実際の病院へのアプライと同時に,医療情報システム自体の研究が進められている.三菱電機医療情報システム開発グループの研究によれば,昭和45年の病院におけるコンピュータ導入に際しては,病院の性格や規模にもよるが,最低100床あたり月10-20万程度は可能とみている.
 また,医療そのものの概念の変化および福祉立地論的考え方からの要請に応じて,今後5年から10年後には,現在の病院のあり方が内外から検討されざるをえないことは,大方の見方である.

Editorial

病院に電算機を導入することの困難性

著者: 守屋博

ページ範囲:P.76 - P.76

 戦後25年のわが国病院の成長は,ほんとうに日をみはらすものがある.赤ん坊から悪童,さらに少年・青年と順調に仕事盛りの壮年に達した感じをうける.この成長は,同じ期間に同じ速度で脱皮した社会のあらゆる方面の成長を,貧欲なまでに吸収した結果である.原子科学が開発されれば,これをアイソトープとして取り入れ,微量分折化学は臨床病理に応用され,手術のメスはからだじゅう届かぬ場所がないくらいになり,生体生理的にもあらゆる電子器具が応用されるに至った.
 このように医学分野の進歩に追従して,病院自身もその建物といわず環境といわず,格段の改善がみられている.こんな新技術の取り入れについては,病院人は勇敢であり進歩的である.

職場の経験

松井病院における受付クリニック

著者: 大山タイ

ページ範囲:P.77 - P.79

はじめに
 最近,病院のあり方について検討がすすめられ,そのひとつとして受付クリニックの設置が話題に上ってきている.なぜだろうか.その必要性を私なりにまとめてみると,だいたい2つの理由があると思う.
 第1は医療の概念の変化である.医療はもともと人間社会と密接なかかわり合いをもっているので,経済・文化などの発展とともに大きく変化してきている,これを受付クリニックに関連する面からみると, a) WHOの健康の定義が示すように,健康の定義が示すように,健康とかそれを保障すべき医療は,それぞれ外延的機能まで含めて解釈されるようになってきた.医療とは予防・衛生・治療・後保護・リハビリテーション・健康増進までを含むComprehensive Medi-cine (包括的医療)として考えられるようになってきた.病院は地域住民のこのような医療需要にこたえなければならない.

管理者訪問・26

山形県立中央病院長 棚橋 三郎 先生

著者: 車田松三郎

ページ範囲:P.81 - P.81

 山形駅を下車して歩いて約15分の所に,近代的な鉄筋コンクリート地上4階および地下1階の大きな病院がある.ここの敷地は戦国時代には最上氏の築城した所で,明治維新当時は水野氏の5万石の旧山形城(霞ケ城)のあった所である.確かにそれらしい場所で,今ではこの周辺に美術館や銀行などもあり,山形市の文化センターともいうべき所在地ともなっている.
 この病院は由緒ある所で,昭和20年8月,一時連合軍進駐軍に接収された病院(旧陸軍病院)であり,のちに国立山形病院と名称をかえ,一般病院として発足した.当時は内科・外科を有するモデル病院として賞讃されたこともあった.昭和28年4月‘国立病院特別会計所属資産の譲渡等に関する特別措置法’により,この病院は,県に移管され,山形県立病院となった.昭和38年4月には,山形県立中央病院と名称を新たに現在の近代的な鉄筋コンクリートの病院と化したのである.このような由緒ある病院の今日あるのは,全くこの間24年間,終始院長であられた棚橋先生の功績である.

英国国営医療研究メモ・5

II.国営医療の問題点—A.組織についての再検討(三体分立組織から三位一体組織を求めて)

著者: 姉崎正平

ページ範囲:P.82 - P.83

 医療関係団体と政府の間に激しい議論を呼び,終戦直後の労働党政府による一連の国有化政策のなかでも,最も波乱をよんだといわれる国営医療は,1948年7月5日実施された.
 財政面では,その支出のほとんどを国庫負担でまかない,英国内においては,英国人にかぎらず,だれでも,拠出や経済能力に関係なく,必要に応じ,無料で一般家庭医,病院専門医そして地方衛生部の予防医学など,それぞれのサービスを受けられることになった.組織面でも,ほとんどすべての医療関係者・医療機関を組み入れた保健・医療サービス網が,保健大臣の管轄下に置かれることとなり,それ以前に比し,包括的となった.しかし,前号の拙稿で記したごとく,関係団体と政府との政治的取り引きの結果として,病院,一般家庭医そして地方衛生部が別々の組織,いわゆる3本立て組織(tripar-tite structure)となり,さらに病院が教育病院と非教育病院と別々に組織され,これらの分裂的組織の欠陥が指摘され,再検討を迫られている.

病院と統計

医療施設の患者の実態

著者: 前田行雄

ページ範囲:P.84 - P.85

 国民の傷病の実態を把握する統計には,病院・診療所など医療施設の面から観察するものと,傷病者の属する世帯の面から観察するものとがある.患者調査は,昭和28年以来毎年行なわれている施設面からの傷病調査で,層化無作為抽出法によって選ばれた全国の1/10の病院,1/100の一般診療所および歯科診療所に対して実施されている.調査期日は7月中旬の1日(退院患者については,6月1日より30日までに退院したもの)となっており,この日に医療施設を訪れた外来患者,この日に在院または新たに入院した患者が調査客体となる.
 病院報告では,入院・外来別の患者総数しか知ることができなかったが,この調査では,患者の性・年齢・傷病名・治療費の支払い方法,在院期間なども知ることができる.

見のがされやすい実務の知識

病院の排水

著者: 倉持一雄

ページ範囲:P.86 - P.86

 病院の排水には,一般の洗面器・流し・浴槽・便器などの衛生器具で用いた水や,洗濯厨房・中央材料室・検査などで使用する洗浄水ならびに医療処置の汚水と雨水などが考えられる.

病院の職員教育 駿河台日本大学病院職員教育資料より・5

ことばづかいの基本

著者: 田中栄一

ページ範囲:P.87 - P.87

 1.ことばづかいの基本
 私たちがおたがいにことばを使って話をする目的はどこにあるか考えると,第1に,自分の考えなり用件を相手に伝え,それを理解してもらうことにあります.第2には,話を通じて相手に好意をもってもらい,よい人間関係をつくることにあるといえます.そのためには,次のようなことばづかいの基本について,基本的なことがらを心得なければなりません.

病院経営戦前戦後・5

非常時の対策(2)

著者: 山元昌之

ページ範囲:P.88 - P.88

 病院は24時間だれかが起きているから,火災はめったに発生しない,という意見を聞くことが再々ある.めったに発生しないということは,絶対に発生しないということではない.われわれは万に一つの場合にも,患者にまちがいのないよう,ふだんの準備を怠ってはならない.火災になってしまうと,低層の木造より高層の鉄筋のほうが始末が悪い.
 前回にも触れたように,階段が煙突になって使えない.続いて廊下が煙道になる.エレベーターは止まる.こういう最悪の場合の患者避難をどうするか.インキュベーターをどうするか.この問題は新築する場合に,設計の段階で十分考慮することが,まず第1に望ましい.私は,かねがね,階段のほかに避難用の斜路を,建物の外壁に設けるのがよいと思っている.これがあると,担送・護送も楽にできるし,また独歩患者なら暗闇の中を,手すりを伝って楽に避難できる.病院の新築や増築の相談を受けるとき,このことを提唱するのだが,これは普通の避難階段よりも面積が多く取られるので,予算的に困難であったり,また設計者もデザイン的に好まないらしく,いつも抹殺されて残念に思っていた.

病院建築・17

小都市に建つ地域病院—千葉立東金病院

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.96 - P.101

はじめに
 千葉県にはさほど大きくない県立病院が3つある.そのうちのひとつが九十九型浜の中央やや内陸寄りの東金(とうがね)市に建つ東金病院である.この病院は,昭和28年,病床数50(一般22,結核28)で出発した.当時のこととて,いうまでもなく,木造の粗末な建物であった.その後,おいおい医療需要が増大し,反面,建物も老朽化してきたので,あらたな敷地を求めてこれを建て直し,病床数も100床に増すことになった.規模の小さな病院ではそれなりにいろいろと問題も多い.
 建築の概要を紹介しつつ,それらのいくつかに触れてみたい.

精神病院の管理・5

精神医療チーム

著者: 若生年久

ページ範囲:P.103 - P.107

はじめに
 わが国の精神医療は今日重大な転換期にある.この時期に精神医療チームのあり方について検討することは誠に意義深いことである.チームワークをもって精神医療を行なうことは,今日では常識的なことであるにかかわらず,まだまだ未発達な状態にあるといわざるをえない.従来の臨床医学では,生命を疾病から救うこと,および疾病の診断・治療,および病理の研究に主たる目標がおかれてきた,したがって医療は,医師を中心とするヒエラルキー構造を持つのが常で,チームという構造は発達しえなかった.チーム医療について考える前に,今日およびこれからの精神医療の目標は,従来の臨床医学の目標をはるかに凌駕するものであることを,はっきりと認識しておく必要がある.
 精神疾患の病理を研究し,各種の治療法,たとえば精神療法・薬物療法・作業療法などを進歩せしめることは,もちろんその目標に含まれるが,さらに進んで,病者に社会人として,より健康,かつ,より豊かな人生を可能ならしめることを目標とする点が強調されねばならない.古い医療観では,大多数の‘治癒’困難な患者は,‘医療’から見離されて,精神病院に沈殿せざるをえないのである.

研究と報告【投稿】

保温配膳車による新しい給食方式の試み

著者: 井祐弘

ページ範囲:P.109 - P.113

はじめに
 中央鉄道病院の改築工事が現在行なわれている.外来患者1300人/日,病床数800床(将来1000床可能)という構想で,地下3階・地上17階の病棟,地下1階・地上5階の中央診療棟,地上6階の外来診療棟,延べ約5万m2の総合病院として,現在中診棟・外来棟は既に地下部分のコンクリート打ちが行なわれている.
 国鉄の医療センターとして,最新にして高度な医療活動が十分行なえるよう,医療機器をはじめ,各種電気機械設備が配慮され,また防災上の考慮,空調システム等々いずれも新時代に即応せる計画を取り入れ,将来のエクステンションも十分検討されて,今回一部工事が着工されたわけである.

病院麻酔科の考え方

著者: 浅山健

ページ範囲:P.115 - P.117

はじめに
 いま,日本の病院が当面する大きい問題のひとつに,麻酔科をどうするかの点をあげてみよう.薬価基準の引き下げと,技術料・入院料などの引き上げは,世間で大きく騒がれているが,諸外国に比べて,著しく低く評価されている麻酔料のことは,あまり騒がれていない.
 しかし,病院規模の大小をとわず,膨大な麻酔の需要と,これに対するひどく足りない麻酔医の現状は,関係者がどうにもならぬと考えていることのひとつであり,したがって,麻酔科を設けたくても,設けることができないと思われる.

病院図書院

—宮本 忍 著—「医療の原点」

著者: 守屋博

ページ範囲:P.114 - P.114

あらゆる矛盾を原点に立ちもどって考える
 学者のうちに2通りの形がある.1つは,世間におかまいなく,狭い専門をこつこつとつつくタイプであり,他は社会の矛盾について,見のがすことができないで,自分の専門からなんとかそれにぶつかろうというタイプである.宮本君は,後者に属する学者である.
 しかし,同じ後者のうちにも,自ら渦中にとびこんで悪戦苦闘する型と,一定の距離をおいて,論評・啓蒙する側にまわるタイプとある.宮本君は,どちらかといえば,その後者に属するものではあるまいか.

霞ガ関だより

MEの現況

著者:

ページ範囲:P.118 - P.119

MEの領域に関する最近の考え方
 昨年7月,日本ME学会から‘日本ME学会長期研究計画’が発表され,その中において,ME研究領域の設定と題目の分類が試みられている.これによれば,MEの研究領域は次の8つの題目に分類され,それぞれの題目がさらにこまかい数個の題目に分類されている.
 1)生体の計測技術,2)生体の計測システム,3)生体材料技術,4)生体への作用,5)生体情報処理と病院・健康管理システム,6)生体と機械系,7)生体工学・バイオニクス,8)雑

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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