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雑誌目次

雑誌文献

病院29巻7号

1970年07月発行

雑誌目次

特集 一般病院におけるリハビリテーション部門

中央機能部門としてのリハビリテーション

著者: 上田敏

ページ範囲:P.19 - P.22

はじめに——地域医療としてのリハビリテーション
 あらためて言うまでもないが,リハビリテーションとは‘再び適したものとする(To make fit again)’ことを意味しており,もともと‘(不当に剥奪された)資格・権利を回復すること’の意味で広く川いられてきたことばである.医学の世界で用いられるようになったのは比較的近年であるが,そこでも単に手足の運動機能障害の治療・回復ということだけではなく(もちろんそれも重要だが),より広く,障害者をその人間全体としてとらえ,そのもてる心身両面の能力をできるかぎり十分に発揮させることが目標である.いいかえれば,それは障害者の‘全人間的復権’を目ざすものなのである.
 このような意味でのリハビリテーションをそのプロセスで考えてみると,自明のことながら,それはまず医療の場で始まるが,多くの場合,医療だけでは問題は解決されず,その後にひきつづいて,教育・職業(訓練や就職斡旋・保護雇用など),その他種々の社会的な面でのサービスを必要とするであろうことがわかる(図1).このような複雑さが,これまでかえって,リハビリテーションを社会福祉と同一視して,通常の医療の世界からはみ出したもののように考える見方を強めたり,一転して逆に医学的リハビリテーションの重要性を説く人びとの中には社会的な面への留意が足りないことがまれでないということの原因にもなってきたように思われる.

九州労災病院でのリハビリテーションの運営—九州労災病院

著者: 原武郎

ページ範囲:P.23 - P.27

はじめに
 九州労災病院は,創設以来,病院におけるリハビリテーション(以下リハと略記)部門の確立を目ざして,長い間の試行錯誤と医療制度,病院自体との内外の現実という壁の厚みのなかでの,はてしない模索の道程を営々と歩み続けてきたともいえる.
 その運営の変遷は,病院全体のリハ概念の受けとめ方の流れをよく示し,あらゆるタイプの病院の運営面でみられるであろう共通の問題点をさらけ出してきた.

診療科としての大学病院リハ科の運営—横浜市立大学医学部病院リハビリテーション科

著者: 大川嗣雄 ,   安藤徳彦

ページ範囲:P.28 - P.30

 横浜市大病院においては,昭和43年5月に特殊診療科としてリハビリテーション科が設立された.まだ2年しか経ておらず,その運営などに多くの問題はあるが,現状を紹介して皆さんのご参考に供しうれば幸いである.

結核療養所からの変貌—星ケ丘厚生年金病院

著者: 鏡山松樹

ページ範囲:P.31 - P.35

はじめに
 当院は,結核療養所からメディカルリハビリテーション(以下,リハと略記す)に重点をおく病院に変貌している過程にあり,結核,一般疾患,脊髄損傷および脳卒中後遺症の各種病棟を運用しながら,他方では旧病棟を次つぎ取りこわして全面的近代化の建設工事を進めている関係上,病院の運営そのものに流動的要素がきわめて多い.また,リハ部門の歴史も浅く,整備も不十分であり,運営についてまとまった成績を述べる段階ではないと思われるが,せっかくの機会であるので,病院の性格転換の経過,現況および将来の構想について概略を述べてみたい.

一般病院におけるリハビリテーションの1つの試み—東京逓信病院脳卒中外来

著者: 林弘 ,   平出聰

ページ範囲:P.36 - P.38

はじめに
 私どもが総合病院の内科医として脳卒中のリハビリテーション(以下リハと略記)を志してから,まだ3年たらずで,本来なら公刊誌上にまとまった意見を申し述べる段階ではない.しかし,私どものわずかな見聞や体験からも,日本におけるリハの現状はまことに多くの問題をかかえており,なかでも重大なのは医療従事者,特に指導的立場にある総合病院の医師たちについてさえ,リハ活動の正しい方向づけへの熱意が疑われることである.それはカタログどおりの施設や人員の整備の問題ではなく,‘リハ’を志すもののオリエンテーションのあり方にかかわるものである.
 複雑かつ非情きわまる現代工業化社会の中で,ある意味では巻き返しの作業を進めるためには,志の強さもさることながら,現状を見きわめる眼の確かさと応用のきく具体化能力がなによりも要求される.その道の険しさは,わが国における既存のケースに照らしても思い半ばにすぎるものがあろう.

リハビリテーション部門の採算

著者: 伊藤邦彦

ページ範囲:P.39 - P.41

はじめに
 現在,日本のリハビリテーション(以下リハと略記)に対する認識は,欧米に比べて技術の面においても,また体系化の面においても,残念ながらかなり遅れているといわざるをえない.しかしリハの医療行為は,不可欠のものとされていながら,現実では,OTのように健康保険の未点数化の分野や,PT,STその他の点で全く正しく評価されていない部分がそうとうあり,かつ体系づけられていないという大きな欠陥をもっている.したがって,純粋なリハ病院の運営は,その採算のうえからも,かなりキビしいものになっている.
 近年の疾病構造の変化に伴って,リハ医療の需要がますます増大し,かつ医療そのものの考え方に本質的な変化がきており,チームアプローチによって患者を治療するというcomprehensive medical careへと大きく前進しているのが現状である.本来,医療の本質は,かくあるべきものでありながら,それをやっていない.この点については,医師側にも責任はあるにしても,当局の責任は最も大きい.今こそ当局は,リハ医療保険を改善して,診療報酬体系の適正化をはからなければ,欧米からさらに引き離され,日本のリハ医療は大きく前進できないことは,あまりにも明らかすぎる.

グラフ

総合病院におけるリハビリテーション活動—竹田綜合病院

ページ範囲:P.9 - P.13

最近リハビリテーションが注目されてきたが,総合病院におけるリハビリテーションのあり方については,なお問題が残されている.竹田綜合病院は昭和43年にリハビリテーションセンターを新設し,総合病院の医療組織を活用して,すでに1000名をこえる患者に優秀な成果をあげてきた.竹田綜合病院は,私的病院の輝かしい発展という点でも知られている.昭和3年に竹田秀一氏が開業してより40年を経た今日,1152床という大学病院に匹敵する規模の病院にまで発展した.その間,脳外科や心臓外科など新しい医療をいち早く取り入れ,また入院学童のためのベッドスクールを行なうなど意欲的な精神が,リハビリテーションセンターを必然的に作らせたものであろう.(川上平太郎院長 福島県会津若松市山鹿町3-27)

座談会

一般病院におけるリハビリテーション

著者: 小野田敏郎 ,   五味重春 ,   室賀不二男 ,   浅井一太郎 ,   東陽一

ページ範囲:P.42 - P.51

 戦後‘第3の医学’というキャッチフレーズとともに登場したリハビリテーションも,そろそろ一般病院で扱う範疇にまでその枝葉を広げてきた.
 ところで,一般病院では,どれだけの設備と陣容を備えて,どこまでを受け持つのが適切なのであろうか.

東 陽一—九州厚生年金病院名誉院長

著者: 橋本寿三男

ページ範囲:P.14 - P.14

 いまだに,せんばのボンボン的である.どこかおっとりとして,容姿端麗,貴公子とはかくやとばかり見られるのに,単なるお人よしではないのだから不思議である.
 有名な東3兄弟のまん中,やはり一番有名なのは前東京都知事であろう.おそらく東京厚生年金病院長時代に受けられた勲章も"兄上"には及ばなかったのではないかと思う.しかし,人間の価植は勲章の階級で決まらないことを,この人ほどよく知っている人はないかもしれない.人が放っておかないことがわかっていながら,僻村のお医者さんを夢みたり,自由な生活を楽しもうとする意欲には恐れ入るほかはない.

病院の広場

私的医療機関の公益性と国の助成について

著者: 安田寛之

ページ範囲:P.17 - P.17

 近年,めざましい文化の向上に伴い,社会生活を営むうえに,公益性の香り高い分野は増大する一方であり,その高揚こそは,人類の平和に直結するもので,なかでも人間形成と生命保持に必要欠くべからざるものに,学校教育と医療の2つがあることは周知のとおりである.
 特に前者のなかでも,私立学校は官公立学校に比べて,その数きわめて多く,わが国の学校教育にはなはだ重要な地位を占め,それぞれ特有の伝統と学風をもって,そのみちの進展に貢献しているが,これに対しては,すでに私立学校振興会法が制定され,経営に関して必要な資金の貸付その他数々の助成がなされ,心おきなく教育に専念できることに反し,私的医療機関は,日夜,国民の健康保持に,防疫・診療に,公衆衛生などに不断の活動を続け,人類の平和と福祉に貢献しているにもかかわらず,なんら国家の補助はおろか,府県からの助成金すら交付されていない現状である.

第21回日本病院学会ニュース

開催期日決まる

著者:

ページ範囲:P.35 - P.35

 明年(昭和46年)の第21回日本病院学会は,名鉄病院阿久津慎院長の主催のもとに,下記のとおり開催されます.

Editorial

リハビリテーション医療への理解と配慮

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.52 - P.52

 本号の特集テーマを‘一般病院におけるリハビリテーション部門’と名づけることについては,編集会議でいくぶんの異論があった.その第1の理由は,リハビリテーション医学は‘第3の医学’あるいは‘第4の医学’といわれるように,治療の全過程で必要となる一概念であって,病院の1部門のみで担当すべきものではないということであった.アメリカの例をみても,リハビリテーション施設というのはあるが,総合病院では理学療法部門・作業療法部門といった部門がみられるだけで,リハビリテーション部門という名称はあまり聞かないという話もあった.確かにリハビリテーションの概念にたちもどって考えてみると,この説には一理あるように思われる.しかし,ひるがえって病院の中央診療部門のあり方を考えてみると,こうした概念上の論議にとらわれる必要は必ずしもないのであって,もっと実際上の利便で部門分けをし,その名称づけをすることが許される.
 戦後,アメリカ的な新しい病院の理念がわが国に輸入されて最初に行なわれた病院の変革運動は,看護部門の独立と検査部門の中央化であった.そして今日では,大部分の病院で中央検査部門の碓立がほぼ成就されたといえるのであるが,しかしよく考えてみれば,診療のあらゆる局面に検査の行為は付随しているのであって,中央検査部門以外での検査の概念が否定しさられているということでは決してない.

病院長時代の思い出・1

荒廃をきわめた終戦当時の病院

著者: 萩原義雄

ページ範囲:P.53 - P.59

"病院"編集室から標題のようなことを何か書けというご注文である.わたしどもが大学を卒業してから,咋年でちょうど満50年になった.そのうち終わりの21年あまりを国立京都病院で過ごしたわけだから‘病院長時代の思い出を語れ’といわれれば,材料はいくらでもある,しかし秩序だてて書くということはいささか苦手だ.しかし‘どうせあくびをしながら暮らしてるからだだから,何か書きましょう’と返事した以上,書くには書くが,支離滅裂な点があってもお許しを願いたい.

精神病院の管理・7

リハビリテーション・アフタケア・中間施設・家族会

著者: 大原重雄

ページ範囲:P.61 - P.64

はじめに
 慢性の身体疾患をもつ患者は,自身の身体的苦痛と観察的判断により社会生活を制限するが,精神障害者は法律や社会規範により社会的自由が拘束される.ここに精神障害者のリハビリテーションの特異性と困難性が発生する起点がある.
 古くから精神障害者のリハビリテーションは身体障害者のそれと類似していることが指摘され,医療チームが障害者の入院と同時に,その患者の社会復帰計画を作り,P.P.C.(漸進的患者治療)を実施すべきことが強調されている.しかし,身体障害は運動機能の異常であるのに反して,精神障害は社会的行動の異常であり,外観からだけで判断できないこと,そして患者自身の主観的体験から確実に,その疾患の程度を認識できないことがある.たとえば,神経症でも過度な病感を訴えて,しばしば臨床医を困らせるケースも少なくない.入院する神経症患者に心理過程を解明して指導することすら,きわめて困難なことであり,医療チームの意見が一致しないとき,その不安や強迫症状がすぐに再現したり,さらには入院すること自体が復帰への不安を生ずるために,入院中に完全な治癒を望むことが不可能にちかい.

管理者訪問・28

日本バプテスト病院長 榊田 博 先生

著者: 森日出男

ページ範囲:P.65 - P.65

 本誌28巻13号において,当時京都市立病院医長であった氏が,院長の理想像について,直言的にかつ辛辣な論文を発表している.標題にいわく"院長は病院の飾り物ではない"と.もともと思ったことをなににとらわれることなく,ズバリズバリ言ってのける人ではある.その氏が,昨年11月病院長になった.天につばしたようなものですなとはご本人.いえいえ,落ちつくべき所へ落ちついた,当然の所を得たというものですよ.
 日本バプテスト病院は,京都は北白川,比叡山のふもとにあり,日本バプテスト連盟医療団経営の140床の病院である.職員はみなさんキリスト教徒で,院長は昭和34年に洗礼を受けられた由である.

英国国営医療研究メモ・7

II.国営医療の問題点—C.医師の報酬

著者: 姉崎正平

ページ範囲:P.66 - P.67

 報酬の形態と額は,おそらく誰にとっても現実的に最も切実な問題であろう,その財源がどこから調達されるかは別として,世界において行なわれている医師に対する報酬支払い方式は,次の4ないし5種類に大別される.すなわち,(1)俸給制,(2)人頭報酬制(payment by copita-tion fee),(3)件数払い制(the syst-em of case payment),(4)出来高払い制(payment by fee-for-serviceまたはitem-of-service),その他特定の取り決めがなく,患者側の判断や慣例で,医師に金品の謝礼を贈るという慣習もある.
 現在,英国の国営医療制度下では,病院勤務医は(1)の俸給制,一般医は(2)の人頭報酬支払い制が基本として採用されている.

病院と統計

おもな傷病と受療率

著者: 前田行雄

ページ範囲:P.68 - P.69

 5月号で紹介したように,患者調査によると昭和43年7月17に全国の病院・診療所に在院していた患者および当日の外来患者は,あわせて674万人であって,これを傷病の種類別にみると,最も多いのは消化器系の疾患の164万人で,以下,呼吸器系の疾患,神経系および感覚器の疾患,循環器系の疾患,伝染病および寄生虫病の順となっている.また,人口10万人に対しての受療率を年齢階級別にみると,1歳未満は9146と高いが,年齢が増すにしたがって減少し,10-14歳では3702と最低の受療率を示している.以後は,年齢の増加に伴って増加し,70-74歳では1万0467と最高の受療率を示している.今回は,おもな傷病についての受療率を年齢階級別に観察してみよう.

見のがされやすい実務の知識

病院の高圧医療ガス設備

著者: 倉持一雄

ページ範囲:P.70 - P.70

 診療技術の高度な進歩に伴い,麻酔技術の革新も顕著であって,特に最近は酸素治療(自動陽陰圧呼吸装置・間歇呼吸装置・人工呼吸器)の発達により診療レベルも飛躍的に向上している,しかし,一方,病床不足は社会問題にまで発展して,病院の新築などは大型化する傾向にあるが,また既設の増改築による増床も盛んである.しかるに,医師・看護婦はもちろん,その他の病院職員も求人難の現況であるため,病院は建ったが外来診療だけを行なっているところが見られる.この手不足とともに濃厚診療を行なわねばならない病院では二重の負担となって,経営をますます困難にしている.このような状況のもとで医療用ガス設備は,省力化による合理化として急速に普及してきた.ここにその概要を紹介するとともに2,3の問題点について述べてみる.

病院の職員教育 駿河台日本大学病院職員教育資料より・7

基本用語とことばの使い方—前回つづき

著者: 田中栄一

ページ範囲:P.71 - P.71

 9)患者さんから催促されたとき:どうもあいすみません,もうすぐでございます.長いことお待たせいたしましてあいすみません,もうすぐでございますから今しばらくお待ち下さい,あと10分くらいでございます.もう少しお待ち下さい
 10)患者さんに尋ねるとき:失礼ですがどちらさまですか,どなたさまですか,ほかにご用件はございませんでしょうか,何科をご希望でいらっしゃいますか,診察券をお持ちですか,どういたしましょうか,保険証をお持ちでいらっしゃいますか

病院経営戦前戦後・7

現場の仕事

著者: 山元昌之

ページ範囲:P.72 - P.72

 ‘よど号’の乗客を乗せた‘ひだ号’が,いま福岡空港に着陸した.この画面を見ながら,NHKの東京スタジオでは,解説委員の司会で,国際法や国際関係の専門家らの座談会が行なわれている.もちろん話題は,北鮮が‘状況が変わったから,乗客や乗務員,また機体の安全と即時返還は保証できない’という見解を表明したことに集中している.この話のなかで,‘日航ではふだんから乗取り事件の対策は立てていたようだが,やはり現実の問題になると,経験がないだけにうまくいかなかったらしいですね’という発言があった.このことばを聞いてハッとした.急いでペンを取る.

病院建築・19

財団法人竹田綜合病院リハビリテーション部の設計

著者: 筧和夫 ,   深瀬啓智 ,   岩佐義紀 ,   菅野実

ページ範囲:P.75 - P.80

はじめに
1.竹田綜合病院の地域的背景
 福島県はその地理的条件の制約が大きく,県庁所在地の福島市といえども,その規模・内容ともに県の中心的都市とはなりえず,4つの地域(いわき市を中心とする浜通り地方〔人口約52万〕,郡山市を中心とする県南地方〔人口約61万〕,福島市を中心とする県北地方〔人口51万〕,会津若松市を中心とする会津地方〔人口36万〕)はおのおの地域社会としての独立性が強く,相互に影響しあう作用がきわめて少ない.
 このような地理的条件のなかで,郡山市を中心とする県南地方では太田綜合病院,会津若松市を中心とする会津地方では竹田綜合病院が,おのおの地域中心病院として地域社会への医療サービスを行なっているなど,民間の病院が大きく発展している特異な医療施設体系を有する地域である.

救急医療に関する研究・1

病院・診療所別救急医療機関の現況分析

著者: 岩本正信

ページ範囲:P.81 - P.85

 昭和38年3月までは"国家法"上の根拠としては特に規定のない救急病院があった.すなわち,その多くは救急車を運営する都市の消防機関ごとにその都市の医療機関に対して‘救急業務を円滑に運営するためにご協力下さい’という形式の,医療行政のなかに組織づけられていない,いわゆる消防機関との関係において設けられた救急病院である.
 しかし,交通事故・労働災害などが大幅に増加し,その負傷者に対する医療に関し,国としての施策が必要になり,昭和38年4月消防法の一部改正によって〔消防法第2条9項(注1)〕で救急業務が義務づけられ,その救急業務の負傷者の搬送先として‘厚生省令で定める医療機関(注2)’を規定し,それに基づく救急病院と救急診療所が昭和39年2月20日から告示されるようになった。

講座 賃金用語の概念規定・2

賃金格差・賃金構造・賃金水準

著者: 菅谷章

ページ範囲:P.87 - P.92

賃金格差
 労働者の取得する賃金は,産業・企業規模・地域の相違によっても格差が生ずるが,職種・性別・学歴・勤続年数・経験年数・労働能力・雇用条件(本雇いか臨時雇いか)・人種などの違いによっても格差がおこる.賃金格差とは,以上あげた諸条件の違いによって生ずる労働者相互間の賃金取得額の差のことである.
 この賃金格差は,究極的には同じ労働時間に対する賃金の差としてあらわれるが,この格差を規定する要因は‘賃金を規定する要因’そのものから生じてくる.したがって,なにを賃金を規定する要素とし,各要素のウエイトをどう評定するかによって,当然賃金格差は異なった態様を示すであろうし,また賃金格差が労働の質量に見合ったものであれば,それはことさら問題とするにあたらないであろう.換言すれば,賃金が職権や熟練度の違いをよく反映した,いわゆる労働の質に見合った支払形態をとっているとすれば,賃金格差は労働の質の違いを反映した格差だけに限られるであろうし,むしろかかる格差は正当な格差であるということができよう.

研究と報告【投稿】

関東信越地方医務局管内における国立療養所の臨床検査利用状況について

著者: 橋爪藤光 ,   佐藤乙一

ページ範囲:P.93 - P.97

はじめに
 医療機関を評価する方法のひとつに,その施設で行なっている手術件数と内容・投薬・検査(レントゲンを含む)・給食の5要素をみることによってほぼ見当がつくと言われている.
 私どもは今まで主として関東信越地方医務局管内における国立病院について,とくに臨床検査部門をとりあげてきたのであるが,今回は同一管内国立療養所における臨床検査の利用状況を1968年のうち9か月分を3回にわけて収り上げ,検討を加えてみたので,その結果をここに報告し,ご参考に供する次第である.

空気調和設備と院内感染について

著者: 生田綽克

ページ範囲:P.99 - P.102

はじめに
 生活環境の向上および建築水準の向上とともに,総合病院でも全館に空気調和(エアコンディショニング)が設備されるところが多くなっている.空気調和設備が病院内感染の原因となった例はほとんどなく,むしろ病院管理上の原因によることが多いと報告されている.病院管理上の原因が解決されると,空気調和設備による院内感染が大きな問題となってくると思われる.
 以下に,空気調和設備による院内感染の原因をあげ,その対策について述べる.

院内表示標識についての人間工学的研究

著者: 中村驍

ページ範囲:P.103 - P.106

はじめに
 病院は,一種の労働集約的な産業体であり,したがって,院内における職員の流れも複雑多岐である.これに患者が加わって,駅のプラットホームさながらの混雑が起こることがあるが,特にそれは午前中の外来診察時間によくみられる風景である.一般の企業においては,これらの人の流れ,あるいは物の流れをいかに能率的に扱うかは,その会社の生産性,あるいは利益にすぐひびく問題であり,いわゆるIE (Industrial Engineering)的手法を用いて作業分析あるいは工程分析を行なって,真剣にこの問題に取り組んでいる.
 一方,病院についてみてみると,その工夫について,おそまつな感がいなめないのである.われわれが病院の前に立った場合,すぐ目につくのはその病院の表看板であり,中にはいってまずその視線が求めるのは諸種の院内標識であろう.院内の人の流れについて最も重要な役割を果たすのが,この院内表示標識である.

病院図書館

—久保 走一・荒井 宏子 共著—「カラー・モノクロ スライド作成の実際」

著者: 広瀬文雄

ページ範囲:P.97 - P.97

効果的なスライドを作成する手引き書
 最近,あらゆる分野でスライドの用途は急速に増加し,また,その種類も各様に使用されている.スライドの歴史としては,かなり古くより利用されていたもので,一般では商業・事業の宣伝用に,また学術面では教育・学会講演用に,各領域になくてはならないものとなっている.現在のスライドの用途からみれば,わずかここ数年間にして,各方面の使用量とその役割は偉大なものである.
 スライドも,最近はかなり複雑化しているが,特にスライド作成についての専門技術書の出版は数少ない.著者の意向は,スライドを作るための写真技術を,非常にむずかしいものに追いこまないで,それでいてスライド作成に必要な基礎的知識と技術を,わかりよく具体的に解説しており,このことは本書の特徴であろう.

—山元 昌之 著—病院経営概論(病院管理新書・10)

著者: 小野田敏郎

ページ範囲:P.102 - P.102

病院企業体を運営する参考資料
 日本病院協会ではいろいろのゼミナールが行なわれているが,病院長を対象としたものはなかなかむずかしくて,やっと昨年9月に実施することができた.そのときのテーマには,企業と組織,統率,人事管理,労務管理,予算統制,資材管理といったものを選び,そのことが好評を博して,2回も開催するというほど多数の方がたが参加をされた.
 Dr.CrosbyがWHOのコンサルタントとして日本に来られてから10余年になる.‘日本とアメリカの病院の最も違っているところは—’というH氏の資問に対して,アメリカの病院はプロが経営するが,日本ではアマチュアがやっていると答えられた.その後10余年,日本のアマチュアはプロとしての研さんに励んできたのである.

ホスピタルトピックス

精神病院の統計

著者: 鈴木淳

ページ範囲:P.108 - P.109

 病院統計は単にその病院の活動状況を示すばかりでなく,これからの病院運営,ひいては精神診療施設の整備をも左右するものである.WHOは1957年以来,精神病院統計と疫学的研究の重要性を認め,このための専門委員会をつくり,1960年からいくつかのレポートを著わし,地域精神衛生担当部局には必ず統計部門をもつべきと強調している.昨年はM.KramerによるApplicationsof mental health statisticsを公刊し実際に病院統計がどうあるべきかを示し,Administrative Epidemiologyを唱えている.統計部局の構成,資料収集などのこまかな点はさておき,ここでは精神病院活動に関連する2,3の数字を紹介する.

霞ガ関だより

衛生検査技師法の改正について

著者:

ページ範囲:P.110 - P.111

 昭和45年5月13日,第63同国会において,衛生検査技師法の一部を改正する法律案が可決成立し,同法は昭和46年1月1日より施行されることになった.
 そこで,以下に今回の改正の要点を,簡単に述べることとする.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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