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雑誌目次

雑誌文献

病院3巻1号

1950年07月発行

雑誌目次

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病院概史(その9)

著者:

ページ範囲:P.2 - P.2

 僧忍性は奈良に癩人院を建て(1243)18,000人を收容,食を給し八関齊戒を授けたという。尚桑ガ谷療病院は20年間に57,250人を收容し,癒ゆる者46,800人,死する者10,450人といわれているが,吾国文献に現われた病院死亡率の嚆矢というべきか。その收容患者の疾病内容は別としで,死亡率18.2%である。
 鎌倉時代から南北朝時代を経て足利時代に入る。長い間,世は戦乱の為疲弊したに違いないが,足利義詮は京都に療病院を復興(1367)し,医師但馬道直を院長にしたが,後義満が京都に相国寺を創建(1381)したことと合せて幕府の人心收攪策に違いない。

病院は誰がタクトをとるか

著者: 橋本寬敏

ページ範囲:P.3 - P.5

 日本の病院に比較してアメリカの病院は色々の点で違つて居るが,最も著しい差異は管理者の在り方である。
 日本の院長は医師であつて,医員を統率するだけの才能があると認められ,敬われるだけの人物が選ばれ,病院の管理者として,病院の行政全般をすべくくつて居るのであるが,経営事務には深入りしないのが普通だ。ところがアメリカに今ある大多数の病院の管理者は,医員をまとめることは,医員の主脳者に一任して,医療の指揮統制には関与しないで,医療を除いた病院行政にだけ専念して居る。職名は何とつけても,実際にホテルのマネージャーの様な仕事だけをして居る。従つて医療陣の主脳者に比べると,すこぶる目立たない存在である。アメリカの多くの病院は所謂開放式医員制をとつて居り,病院に働く医師は病院の職員ではなくて,病院から俸給を払わず,唯病院に患者を連れ込んで,病院内で診療することを病院が承認するだけであるのだから,病院の管理者は病院で診療する医師の守るべき規則を概括的にきめておくだけで,その指揮,統制などは殆ど出来ないのである。

国立結核療養所の統計

ページ範囲:P.5 - P.5

国立結核療養所薬品使用状況
 1,内服薬

表紙の人環—皆力を合して病人を救いましよう

著者: Y.Y

ページ範囲:P.6 - P.7

 本誌の表紙で一番目につくのは毎月いろいろと変つて行く円形の写真である。既にお気付きでしようが隔月に病院の外観が,その間の月には病院内のはたらきが表われている。偖,その写真のまわりに,それを引立てる様な役目をしている,花環が日暈の様な薄色の模様がある。これは毎月色は変つているが,内容は同じもので,多勢の人々の姿が画かれている。そして幾人かずつグループになつて色々の仕事をしでいることが認められる「ハハア,病院の人逹を表わしたものだナ」と最初一目見たとき,少くとも病院関係の人なら興味を感じて,画かれた1人1人を理解しようとするに違いない。ところが,この人々の群の中で理解に困難な存在があるのにブツかる,そこで私はこの人環について一応の解説を試みて御参考に供しよう。
 この人々は何処か外人くさいことに気付かれるだろう。実はDr. MacEachern著"HospitalOrganization and Management"の扉になつている,Howard Cox氏原画から引移つて来た人人である。原画ではベツドに横たわつた年若い病める婦人を中心に,楕円形の環になつていた人々である。即ち,原画は病院の組織をなしている総ての人々は,病人を中心に協力して奉仕している事を表現したものである。

最近の人事管理の問題

著者: 上野陽一

ページ範囲:P.8 - P.14

管理法の発逹
 ワタクシドモのシゴトには2通りあります。その1つは病院であれば病人を治すという本業であつて,それには医学という技術が要るわけであります。その技術を身につけている人のことを技術者,エンジニヤと申します。ところが1つのシゴトをやり遂げるためにはこういう技術を心得た人,病院でいえばお医者さんだけではムズカシイのであつて,この他にもう1つ大切なシゴトがある。それは英語でいうマネージメントであります。そのマネージメントをやる専門家をマネージヤーというのであります。このマネージメントという英語に相当する適当なドイツ語はないのですが,ドイツ語では,このコトをBetrieboführungと申します。このエンジニアリングの方は学問を土台とし,多年の経験を重ねた技術を体得した人でなければできませんから,この方は大学などで教えております。ところがマネージメントの方は少し常識の発逹した人ならばダレでもできると思われています。病院でいえば,総務部長とか庶務課長といつた位地の人のするシゴトがソレでありますが,こういうものにはいままで学問的の基礎がなかつたのであります。医者になるには非常に高度の教育を必要としますが,庶務課長には必ずしも庶務ということに関する学問をする必要はないと思われていたので,いままでの日本では大体法科のような学問をした人が庶務課長になつておつたのであります。

病院と管理(その13)—オープン・システム

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.15 - P.18

 創刊号から書き始め,毎月何となしに筆を進めてここに12ヵ月が過ぎ去つた。本を読んで得た知識と,自分の考えを取まぜて書き綴つて来た。日夜多忙な公務に追われながらその余暇を見付けて書いて行くということは,自分の様な怠けものにとつては容易なことではない。然し,日本の病院が進歩し,普及し,何んな地方の人々でも容易に気持ちよく病院を利用することが出来,又医師やその他医療に働く人々が皆働き易い病院が国中を満すという夢が私を激励している間は,筆を進められるものと思つている。大方の御叱声,御鞭撻を乞う。

病院人事消息

ページ範囲:P.18 - P.18

◇小畑 英介氏 東大医学部附属医院産婦人科教室に於て研究中の氏は,同数室を辞し父君小畑惟清博士の経営する浜田病院の副会長となる。氏は昭和19年東大医学部を卒業し引続き東大産婦人科教室に入り白木,長谷川両教授の指導を受け今日に至つた人である。
◇古畑 積善氏 5月12日開かれた東京都医師会代議員会で次期会長(昭和26年度)に当選された。氏は前日医理事で都内世田ガ谷区池尻町の古畑外科病院長である。

研修所の一年

著者: 守屋博

ページ範囲:P.19 - P.20

 今日は5月30日なので,昨年病院管理研修所の開所があつてから,ちようど満1年になる。研修所とすれば,僅か数名の專任職員だけで仕事をしているので,研究にしても,講習にしても,思うにまかせぬ事が多いが,それでも,2回の長期講習と,4回の一般病院長研修会と,其の他に数回の病院監視員の講習を行う事が出来た。研修所も今までの間借りの講堂から,専用の教室と研究室と事務室を持つ事が出来る様になつたのは一進歩と考えられる。病院管理に必要な基礎的な会計学,経営学,社会学,其の他の雑誌,著書や,各病院の統計文献,外国費料等,着々と集つて,今に完全な研究室が完成する事を夢みている。
 実際に病院で用いる各種用具だとか薬品等も実物を集めて,展示室も計劃されているので,近く研修所においで願うだけで色々の新しい知識が得られると云う事になるだろう。各病院の毎年の実数に関する資料はなるべく一部づつ御送付願いたいと存じます。

病院管理研修所の誕生日に当つて

著者: 島內武文

ページ範囲:P.23 - P.25

 設立に至るまで終戦当時の悪夢の様な時代を私逹は今日やつと忘れはじめた所である。当時の病院内の状況といえば,各病棟の廊下は配給の炭や薪が所狭いまでに立ちならび,食事時ともなればバタバタとあおぐ七輪からは赤い焔が明滅して,真黒い煤煙が病院の天井を田舎家の様にすゝけさせて居たのであつた。病院至る所に従業員が住み込んで居て,仕事はそつちのけでさゝやかな畠を見廻り,明日の生活の資の採集に余念がなかつた。
 この様な病院の実情を視察したGHQの係宮の目に,当時の日本の病院が中世紀の状態に映つたのも今から思へば決して不思議でなかつた。

國立病院の歩む道

著者: 小西宏

ページ範囲:P.28 - P.32

 国立病院が発足して今年は丁度5年目になる。5年間の足跡を此の辺で一応振りかえつて反省を試みるのも無駄ではなかろうと考え,敢えて筆をとることゝした。

病院用地選定及び病院建築設計要領案

著者: 厚生省医務局

ページ範囲:P.35 - P.37

 従来わが国の病院は往々にして病院の機能を円満に活動せしめるには不適当と認められる用地に存在し,又その構造も適切でないものが少くないから,こゝに一般的基準として病院用地選定及び病院建築設計の要領を示して,病院の新設又は改修に当つての参考の用に供せんとするものである。
 尚本要領によるの外,医療法,該施行規則,建築基準法,該施行規則,その他関係法規,条令等によらなければならない。

日本に於ける病院建築の実際(その4)

著者: 小林仙次

ページ範囲:P.38 - P.42

病棟篇
4)特殊病棟
a)伝染病棟
 1900年に,パストール伝染病院が出来て以来,完全な隔離と厳重な消毒を施すことによつて,院内の二重伝染がほとんどあとを絶つに至つて今日に及んでいる。
 隔離を必要とする関係から,従来我国では一般病院と離れた敷地に建設されることが多かつたが,管理上不便が多いので,近来は同一敷地内に一区劃をなして建設される傾向を示している,更に進んで,一般病棟と並べて建設されることもあり得るし,鉄筋コンクリート構造であれば,直接外部からの出入口さえ設ければ,同一建物で階を異にして,伝染病棟を設置することも可能である,要はその建築的取扱方法と設備如何である,病院管理の面からこの傾向は喜ぶべきことであるが,あくまで伝染病棟の計画の要締は隔離と消毒を完全にする手法でなければならない。

—外国の病院建築を見る—手術室廻りの設計

著者: 吉武泰水

ページ範囲:P.43 - P.49

 外科手術室・同附属諸室及附帯設備之等を総称して手術室廻り或は手術ユニツトと呼ぶならば,これこそは一つの精巧を極めた医療器械であり,これを完備すると否とでは治療能力に著しい差を生ずるのであつて,建築物が高度の機能を発揮する著しい場合である。医療器械が医療技術の進歩と共に急速に変化して行くように,手術ユニツトも亦新しい手術方式に則し,新しい設備や手法を積極的に取入れるべきであろう。
 最近の欧米の建築雑誌にみられる手術室廻りの設計はこの様な意味で注目すべきものがある。とりわけ関係諸室の配置や連絡は建築の面から直接問題となるので,本稿の焦点も一応こゝにおき,図面を主として簡単に紹介することにした。

管理者メモ

ページ範囲:P.52 - P.53

伝染病院隔離病舎設置要綱
昭和26年度より5ヵ年計画
 伝染病院,隔離病舎の整備計画については,厚生省に於て本年1月から立案しているが,本計画と密接な関係をもつ社会保障制度も遠からず確立されることであり,且又平常時防疫態勢を整える立場からしても本計画の具体化を図るべく目下伝染病院,隔離病舎の現状の基礎調査を実施しており,その資料に基いて昭和26年度から5ヵ年計画をもつて全国隔離施設の整備が実現されることを期待されている。本計画樹立に際し施設の設置,形態,構造及び運営等についての方針を明かにする必要があるので,この点について厚生省では協議を重ねているが,構造については今後検討を要するも取り敢えず左の伝染病院,隔離病舎設置要綱によつて一般医療機関の整備計画との調整を考慮の上立案を進めることとなつたが,本施設のうち伝染病院は医療法の適用を受け,隔離病舎は医療法の適用はないがその構造設備等については医療法に準じ整備するように指導されたいと三木公衆衛生局長から全国府県知事宛て通牒した。

「保健婦助産婦看護婦法」の実施をひかえて

著者: 厚生省看護課

ページ範囲:P.54 - P.56

 本年9月1日から,保健婦助産婦看護婦法の看護婦に関する部分が実施されますが,実施を目前にひかえて,この法律は果して正しく理解されているでしようか。こゝに一文をよせて,正しく理解される一助としたいと思います。
 そもそも国の法令というものは,すべて国民の福社というものを,究極の目的として作られるものでありまして,この法律の第1条にある,医療及び公衆衛生の普及向上をはかるというのはとりもなおさず国民の福社をはかるということであります。

医療監視と療養所の缺陷

著者: 厚生省国立療養所課

ページ範囲:P.59 - P.60

 新しい医療法に基づいて,昭和25年度に始めて全国の病院に医療監視が行われたのであるが,その結果と,並にそれに基づいて判定された「格附け」は逐次医務局医務課で整理されて,処理されると思うが,その発表については,仲々影響するところが大きいと思う。しかし医療監視の結果発見された我国病院の欠陥というものは,成可く早く各当事者が認識して,改善の資にすべきであると思うので,幸い全国各地に散在している国立結核療養所の82ヵ所分の資料があるので,その内欠陷として指摘された事項で,比較的各所に共通な事項を掲載して,病院関係の方々の御参考に供する次第である。

病院会館が出来ました—東京病院協会新生のスタート

ページ範囲:P.60 - P.60

 昨年9月発足以来,会員147名を擁して発展して来た東京病院協会では病院会館の開館式を兼ねて6月17日午後0時牛から東京医科歯科大学講堂で総会を開催した。
 従来東京都病院管理協議会と名のついていた同会は会則を変更して東京病院協会と改称することになり,全国各地に盛り上りつゝある病院協会結成の中核体となろうとし,また将来国際病院協会への加入を期して全国的な病院協会連合絹織の確立に努力することになつた。

病院統計

著者: 森福省一

ページ範囲:P.61 - P.62

 厚生省統計調査部では昭和24年1月以来毎月病院月報を発表してきたが,昭和24年中1ヵ年分が集録完成されたのでその概要を紹介解説する。病院総数は,年始2,866,年未3,144であつて,年間の壇加数は443,減少数は165,都合278の病院が増加した。種類別病院の増減は第1表に示されているが,特にその他の病院の増加が目立つている。
 病床数の年始年末及びその増減は第2表に示される。病床総計は年未254,271であつて,年始に比較して約4%増加している。種類別にみると,結核療養所の病床の増加が大きく,一般病院の結核病床も顕著な増加をみせている。一般病院のその他の病床は年末はやゝ減少しており,一般病院のその他の病床が結核,精神病床にふりかえられたものがあると思われる。

新潟県病院協会設立まで

著者: 尾口平吉

ページ範囲:P.65 - P.66

 新潟県の病院数は74,病床数は5702床であるが,人口200万を有する大県としては必ずしも普及率がよいとは言えない。
 しかし病院の都市偏在が比較的少なく農山村に一応分布され,その上経営主体は約十種類にも分類される状況にありながら競合が小さいことも一つの特色であろう。

質疑応答

質疑応答

著者: 私立病院生 ,   守屋博 ,   上野陽一

ページ範囲:P.57 - P.58

 問 患者輸送車は乗用車のみに許可されるものですか。私の病院では小型乗用車を持つていましたが急患(例えば子癇,子宮外妊娠等)を運搬するのには小さくて不便でしたので,今度小型トラツクを改造した患者用輸送車と交換購入したのですが,その筋の検査で患者を乗せることは出来ないと許可されなかつたのですが,患者輸送車には何か規格があるのでしようか。患者の福祉のためこの車で何とか許可される様な手続はありませんか。御教示下さい。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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