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雑誌目次

雑誌文献

病院3巻2号

1950年08月発行

雑誌目次

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病院概史(その10)

著者:

ページ範囲:P.2 - P.2

 西欧の東漸は益々活溌となり同時にわが国からも中国,南方,印度方面へ渡るもの多く,秀吉は遂に大陸経略の野心を起す(1592)に至つた。キリスト教も天下の動搖に乗じて再び国内に伝播せられるようになり,西欧医学の移入とキリスト教病院の復興が考えられる。朝廷及び秀吉政府は従来の漢法医を信じておつたろうが,恐らく将士は南蛮外科を,当時勃興して来た商人は西欧医学を信ずるようになつて来たものと思われる。
 秀吉没後徳川家康次第に勢力を得るようになり,1600年3月英人Adams (後の三浦安針)来朝するや,家康は江戸に留めて顧問とし,その知識を尊重した。英国東印度会社が設立されたのは同年である。1603年徳川幕府が成立,伊達政宗は家臣支倉常長等68名を遣外使臣としてスペイン及びローマに派遣(1613—1620年)一行中の中条帯刀は西洋婦人科の医術を伝え中条流産科の祖となる。徳川幕府は,天下を平定し中央集権の実を上げる為に,儒教を以て教化の方針とし,秀吉にならつて再度天主教徒の弾圧を行つた。先ず1619年の京都における天主教徒の火刑,1626年の長崎における踏絵を行つた。

アメリカの病院の傾向

著者: 橋本寬敏

ページ範囲:P.3 - P.8

 アメリカの病院を他山の石として眺めることの意義は,病院というものを最もよい条件の下に育てて行つたらどういう風になるかということを観察することにあると思うのであります。
 病院は一体医学ばかり発達しましたところが,発達するものでない。病院を発達させるにはいろいろの条件が備わらなければなりません。アメリカの文明に色々の特長があります。一つは資本主義によつて集めた豊かなる富がある。その次に工業が著しく発達している。それからビジネスが発達している。それからみんなの考えがデモクラシーである。こういうようなことが,みんな一緒になつて病院を発達させるための好条件になつたのだろうと思います。

病院人事消息

ページ範囲:P.8 - P.8

◇浜野規矩雄氏 台東区上野桜木町浜野病院長の氏は本邦の開業医側の代表として約3ヵ月の予定で渡米される由。
◇荒垣恒政氏 国立埼玉病院長の新垣恒政氏はこのほど荒垣と改姓,なお電話,砧923番が開通した。

病院と管理(その14)—病院医師は如何にあるべきか——その1

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.9 - P.14

27 オープン・システムと関聯して日本の病院の医師のあり方の検討
 前号で,オープン・システムの問題に触れたが,更にこの問題から従来の日本の病院での医師のあり方について検討を加えて見る必要がある。
 即ち,現在オープン・システムの問題が論ぜられているのは,(1)開業医師の側から,医療法13条の実施に対応して,病院を開業医に開放すべきであるという声と,(2)公的病院を運営する側から,病院は民衆の為に運営するのであつて,病院の医師の為に運営するのではない。従つて,従来の如く病院と開業医が対立することは思わしくない。何どか病院と開業医が一体となつて病院を活用する方法を考えねばならない。という2つの側から考えられて来ている。そこで(1)の問題は当然取り上げるべき問題ではあるが,病院はそもそも医師の利益のみによつて運営すべきではないから,当然(1)の問題は考慮に入れるとしても,(2)の考え方を根拠として考え,更に一層根本的である病院が民衆の為に積極的に活動しうる態勢に置く為にこのオープン・システムをも取り入れるという考えを持つべきではなかろうか。

病院に於ける放射線科の管理

著者: 山下久雄 ,   藤田順一

ページ範囲:P.15 - P.20

緒言
 現在の医学から放射線医学を取除くと,それこそ鼎の一脚を失つた様で,診断学上にも治療医学上にも幾多の支障を来すことは当然である。従つて医療法並に同施行規則上に放射線に関する条項が相当にあり,エツクス線装置を持たなければ病院とはいえない位に定義されている。単科の医院でさえ,それが何科であつても或程度の放射線を取扱わないと非常に不便である。大学の各教室,大病院の各科になると,各々その必要性を認め,各教室毎或は各科毎に装置を所有する所も決して少くない現状である。此の様に放射線医学そのものは広く普及され乍ら,未だ独立の学問としての認識を欠いている向が相当にある。例えば大学の医学部で放射線医学教室の未だにない所が沢山あり,医師の国家試験科目に放射線医学が含まれていないという様な大きな矛盾すらある。現在の臨床医学は内科,外科と並んで放射線医学があつて始めて完全な偉力を発揮する実状にあり,各科と密接なる関係を有する放射線科が,病院に於て如何にあるのが最も合理的であるかを凡ゆる方面から研討して見よう。

病院圖書館試論(上)

著者: 村田弘

ページ範囲:P.21 - P.24

1 まえがき
 極く最近「刑務所」から「病院」へ勤め変えして来た私は,色々の期待と希望を,病院の組織や施設などと云つたものの上にかけていて,特に患者の「読書療法」(Bibliotherapy)には多くの興味を持つている者である。
 それで病院に赴任して間もない或る日,用事もあつて患者図書館(Patients'Library)へ出掛けて行つた処が,非常に意外だつたのは,一生懸命探してみたが何処にも「図書館」(Library)と呼ばれるべきものが見当らなくて,ただ僅かに「書庫」が,極めて無責任な状熊で放置されていたに過ぎなかつた事である。別の日,機会を得て,他の2,3の病院の図書室を見せて頂いたが,そこでも,たゞ『遺憾ながら』と申上げるより仕方がなかつた。

医師及び歯科医師調査—(医師法及び歯科医師法による昭和23年未届出の結果による)

著者: 医務局医務課

ページ範囲:P.33 - P.39

第1表 全国概況

醫療器械の規格制定(3)

ページ範囲:P.42 - P.45

日本工業規格
カテーテル
1 適用範囲 この規模は医療用カテーテル(以下カテーテルと呼ぶ)に適用する。
2 種別,外形寸法,材質種別,外形寸法および材質はつぎのとおりとする。

東京病院協会の発足と経過

著者: 上条秀介

ページ範囲:P.46 - P.46

 医師会は医師個人としての責任や,心構えや権利の主張などを規定して医師の個人的の向上に務める団体であるが,医師の個人でなくその集合体,薬剤師,看護婦技術者などの綜合的な向上発展を期して,患者に対する診療を完全にさせるためには,病院施設が必要であり,その病院の管理,計理,福利等を研究する機関が特別に必要と思う。この意味に於て,病院協会なるものの必要を痛感するのであるが,東京都に於ては戦争中よりすでに,社団法人病院連合会があつて,患者給食の世話をし,東京指定需要者協議会があつて,医薬品衛生材料の統制配給の仕事を分担しておつたが,この協議会は配給制度の改正と共に病院協同会と名を改めて現在でも各病院に対する医薬品の世話をしている。又麻薬法が出来てから,その完全実施に協力するために,麻薬協会なるものが出来て尽力している。しかし,いくつかの強力団体がちりちりばらばらに活動することは病院自体のためばかりでなく,監督官庁たる衛生局との連絡上にも迷惑をかけることになるので,これらを統合して一つの強力な団体となし,東京都は勿論のこと,ひいては全国的に同じような団体を組織することが必要と考えられたので,昭和24年9月に有志相計つて東京都病院協議会なるものを結成した。

病院管理の具体問題

特殊病院の場合,他

著者: 斎藤西洋

ページ範囲:P.25 - P.32

 特殊病院の実情と,いかに特殊な管理が要求されるかに就て一言御紹介申上げる事も満更無意味な事でもないと思われる。当院は松沢病院の分院で,非常に特殊な児童を收容する施設である。松沢が大人の精神病院ならば,ここは子供の精神病院という事が出来よう。従つて收容される子供は皆一癖も二癖もある。
 手のやける,厄介な患者ばかりである。その大部分は精神薄弱児であるが,そればかりではなく他の色々の精精神障碍児も入つている。精神薄弱児といつてもその全部が例外無しに何等かの精神症状を持つており,普通の精神薄弱児收容施設では預り切れない者が集つている。

管理者メモ

医師公務員等の職階制/社会保障制度試案成る

ページ範囲:P.40 - P.41

医員は16職種に分類
 国家公務員の職階制に関する法律は先刻公布,即日施行されたが,この職階制のうち国立の病院(厚生省関係のみならず逓信病院,鉄道病院等も含む)療養所,診療所,研究所(公衆衛生院を含む)等に勤務する医師,歯科医師,薬剤師,看護婦等に適用する職階制に就て人事院ではさきに厚生省及び関係方面の意見を徴收して検討中であるが,此の程医学職群の32の職種,能,職役の名称及び職級明細書案が決定した。
 之が実施されると現在使用されている厚生技官,逓信技官,鉄道技官等の1級乃至3級の名称は廃止され,所管官庁の種類に拘らず全て一律に職種によつて医員であれば1級内科医員,2級外科医員,3級一般医員等の名称が呼ばれることになる。又左記の如く此の職級は職種によつて1級乃至5級に分けられているが,此のうち医員は16種類に分類されており,検疫,法医学,癩科及び研究の5級を除き,全て4級制である。なお,病院長は別に「病院管理」という職種に分れており,3級に区分される。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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