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雑誌目次

雑誌文献

病院3巻4号

1950年10月発行

雑誌目次

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メーヨー・クリニツク

ページ範囲:P.2 - P.2

 この写真はメーヨー・クリニツクの建物の歴史を最もよくあらわしている。左手の低い煉瓦の建物は1914年に建てられたクリニツクの旧建築である。1929年から現在にいたるまでクリニツクは中央に高い建物があつた。右手の煉瓦の建物は兄弟が勉強した古いハブリツク・スクールである。これは今年崩されて街の一郭をしめる新しい10階の診察室がつくられる。これは1200万ドルかゝるという。

現代に於ける醫療の意義

著者: 千種峯蔵

ページ範囲:P.3 - P.7

医療の意義の変遷
 科学的医学が出現して以来の,医療上主として扱つた対象とか,一般に領解された医療観念とか,いわば医療の意義の変遷を辿つて見ると,大体4つの時期に区劃することが出来ると思う。即ち,第1期は,傷病そのもの,もつと端的に言うならば,人体の病変を対象とした時代,第2期は傷病をもつた人間,即ち個人としての傷病者を対象とした時代,第3期は,社会的係累の下に生活している傷病者を対象とした時代,第4期即ち現代は,社会人としての傷病者を対象とするばかりでなく,その社会の構成員1人残らずに医療を均霑せしめ,更に,医療と予防の区別を設けることなく,生活保障を境極の目的とするところの,生活保障としての医療の時代ということが出来ると思う。
 医療は,動物の治療動作や,原始人類の経験的治療行為で証明されるよううに,本能的要求であるから,科学的医学の時代に進んでも,傷病そのものの診断や治療を主題としたことは,当然の理である。しかし傷病者は生きた人間であり,夫々の考をもつているのであるからして,自分の傷病の治療を,全然医師に一任して,何等の不安も不満も感じないという人は少いであろう。人は自分の傷病については,たとえ誤りであろうと,取越苦労であろうと,夫々その人なりの解釈と見通をもとうとする。他から入智恵されて動搖する場合もある。又医師の治療上の指示が,傷病者の現実生活に即応しない為に,到底それを遵守出来ない場合も起つて来る。

最近に於ける米國の醫療機關(その1)

著者: 高橋正春

ページ範囲:P.8 - P.11

1,総論
 米国における医療機関の状況については,さきの本紙第1卷第5号に,1948年度のものが掲載されているが,最近目下渡米中の加納博士から,米国医師会の調査による「米国病院施設」の1949年版を送付されたので,その要点を記述する。
 米国に於ける医療機関は,1949年において最も高度に利用された。年間に於ける入院患者数は,16,659,973人で,前年に比べて237,199人を増している。又院内出産数も前年より26,510人の増加によつて,2,820,791人に達した。

醫療社會事業の現況

著者: 松尾友重

ページ範囲:P.12 - P.17

第1章 医療社会事業とは何か
 社会事業と言う言葉は常識的には社会生活の落伍者,即ち貧困者,疑病傷害に苦しむ者,犯罪人,身体不自由者等をその苦しみから救うということになるのであろう。この様な落伍者は社会事業では普通にクライエント(Client)と呼ばれるが,医療社会事業も同じく病気になつて苦しむクライエントつまりその日の生活にも困りその上に病いを得て,悲惨な生活を送つている人々をその対象とする様に考えられ勝ちである。だがよく考えて見れば現在国民生活の経済的な貧困はかゝる社会的落伍者のみではなく,僅かに日常生活を維持出来るという程度に於て落伍者の線を彷徨している労働者,農民,中小企業者,零細俸給生活者等に及んでいる。而もこれらの人々は,量的に言つて我国人口の約7割を占める現状である。今これらを社会的弱者と呼ぼう。社会的弱者が疾病傷害其他何等かの原因に依つて医療を必要とするに到れば,彼等の医療費負担は当然の結果として彼等の生活維持を不可能にする。そこで医療社会事業の対象は社会的落伍者のみではなく社会的弱者をも含めた国民大衆であることが明らかになるであろう。

米国に於ける病院欠乏の対策

著者: ,   森島

ページ範囲:P.18 - P.19

 吾々は病院欠乏の問題を解決し,病院より受ける世話に革命的新段階を得るようになつた。此の研究は過去2ヵ年間の作業であり,此の作業に関係した各位に感謝の意を表するのである。
 此の問題は簡単であり,その有效な利用に就いて合衆国内の衛生担当者や都鄙指導者の想像を惹きつけたりしたのであつた。

臨床檢査室の在り方

著者: 小酒井望

ページ範囲:P.20 - P.23

◇まえがき◇
 学校を出てから細菌学の極く狭い範囲にのみとじこもつていて,およそ臨床とは何の関係も持つていなかつた私が,つい2年前から当院の研究検査科の一員となつたばかりで,臨床検査室は如何あるべきかと云う様な大それた事を申し上げるのは誠におこがましい次第であるが,一基礎医学徒が臨床家の間に立まじつて,日常如何に観如何に考えているかを申し上げるのもあながち無意味ではあるまいと思う。
 それは基礎医学と臨床医学の間隙の些少な埋め草となろうとする私共基礎医学を学ぶ者の悲願でもあるからである。

アメリカ便り

著者: 加納保之

ページ範囲:P.24 - P.27

 小生6月17日San Franciscoに到着して以来元気でやつております。今日(6月26日)までにCalifornia University Hospital, Stanford Uni-versity Hospital, Lane Hospital, San Fran-sisco Hospitalを視て6月23日から6月25日まで丁度St. Francis HotelでAmerican college of chest physieiansの16th anual meetingが開かれましたので,それ等の見聞記をお送りします。
 California University Hospitalでもその他のHospitalでも新旧の差はありますが,とても清潔であること,設備の完備していることは内地で想像していた通りです。掃除もよく行きとどいていますが,患者も従業員も,面会の人々も清潔保持によく注意している,というより汚さないようにすることが身についているといつた方が適当かも知れませんが,そんなふうに感じます。これらの病院の設備の一端を述べそみますと,まず我々に直接関係のあるものとしてレ線設備ですが,胸部検査に使う機械は全部Rotating Anode管を使つていて,大体200—300MA.時に500MA.焦点1.3mm2120160秒で撮影しているということですが,フイルムも増感紙も非常に良いので写真は非常に鮮明であります。

私の病院はこうして設備改善を行つている

著者: 內野久

ページ範囲:P.28 - P.29

 元来,日本のお役人方は,凡そ,私立と,名のつくものは,お嫌いであるらしい。その反映か,今迄,私立病院の援助というものは,殆んど,きかれなかつた,唯矢釜しく,叱言のみで,通つて来た様である。今度,「医療法人」案が出て,やつと,私立病院救済策の第一歩が踏み出されたことは,私等病院経営者にとつてこの上もない,よろこびである。
 一方,お役人の方からいえば,私立病院というものは,営利が第1で医療は第2の様に考えているのではないか,なるほど,そういう事も考えられないではない,住宅とか,別莊とか,仲々,豪華な反面,病院は汚くてお話にならない,叱言をくうのも無理もない事が稀ではないらしい。

綜合大病院と健康保険診療(上)—一審査員の体験と感想

著者: 室賀不二男

ページ範囲:P.30 - P.36

 私はこの一年余,東京都社会保険診療報酬請求書審査委員として毎月基金事務所で都内各綜合病院より集まる一万枚前後の請求書の審査にあたつている。更に国立病院,大学病院の健康保険診療指導懇談会に招かれ或は都保険課の指導監査を委嘱され各綜合病院の実相を見聞した。これ等綜合病院の健康保険に対する努力,誤解,困惑,希望等につき親しく知る機会を得た。
 一方私は自分の勤務する都立豊島病院の外科医長として毎日健康保険診療にあたり,かたわら院内全部の健保事務の能率化を企図した。窓口で被保険者証を受とり,各科外来或は病室で診療録を記載し,事務室で請求書を作り之を基金に提出し,患者には被保険者証を返却する,これら一連の事務的処理を医師薬剤師看護婦及事務員の諸君と研究の結果,一案を作り本年2月1日より実施し,既に半ヵ年,相当満足する結果を得た。

シカゴに飛ぶ—滞米通信1

著者: 守屋博

ページ範囲:P.32 - P.33

 シカゴ市ローソンY.M.C.A.にて
 多数の人がアメリカの学問をやる為に,渡米出来る様になつて,病院管理についても誰かと云うのが我々の共通の希望でありました。日本学術会議で数十名の者が選ばれた時,最初のリストに私が乗つているときかされた時は希望の喜びよりは,責任の重大さの心配の方が感ぜられたのでありました。
 いよいよ本ぎまりになつて,すつかり手続がすんだのが6月の終り,総司令部ジヨンソン大佐の忠告で夏休みをさけて新学期をまつたり等していたので,その間6ヵ月以上の待期期間があつた。しかしその間もいつどこへ行つてどこで勉強するのがさつぱりわからなかつた。8月22日総司令部に呼ばれて「9月5日以前にシカゴに到着する事,2ヵ月シカゴの大学で勉強する事,あとの1月はどこを廻つてもよい」という命令を受けた時は,一寸ビツクリしたが来るものが来たのでかえつて落着いてしまつた。それからの1週間は目の廻るほど忙しかつたが,ようやく8月29日のNorth west air lineに席を見つけて出発する事になつた。

医療器械no規格制定(4)

ページ範囲:P.45 - P.45

日本工業規格
板付レンズ
1 適用範囲 この規格は視力検査,検影,屈折検査および集団検診等に用いる板付レンズ(以下板付レンズと呼ぶ)に適用する。
2 種別,外形寸法 種別および外形寸法は1表のとおりとする。

東京病院協会だより

ページ範囲:P.46 - P.46

A,医寮法人研究会 日時 8月3日
 講師 藤森真治参議院議員,藤森暢路氏(祕書)草間委員,河野医務課長,厚生事務官2名各理事の他京都病院協会代表出席

編集後記

ページ範囲:P.47 - P.47

 本号は東京にかえつて来た久しぶりの千種氏の論文で卷頭をかざることが出来た。これは大上段の総論であるが,ここで提示されている問題は今後各論的にほりさげられなければならない。
 渡米した守屋氏からの第1信がとどいた。現在までに第2信が手もとにとどいているが印刷の都合で第1信だけを紹介した。第2信ではMacEaehernが非常に歓待してくれたことが記されている。吹号にはかなり具体的に向うでの模様がお知らせ出来ると思う。御期待を乞う。

座談会

今後の看護婦はどうなるか(上)

著者: 橋本寬敏 ,   原素行 ,   三沢敬義 ,   木下正一

ページ範囲:P.37 - P.44

新制度をどう思うか
○橋本 看護婦制度の改善の話が出てからもう4年になるわけですが,この10月には第1回の国家試験が行われるというふうに大分具体的になつている。この看護婦制度の改善,或は看護婦の教育については,看護婦側からの意見は大分出ておるけれども,医者側からは極めて少ないのです。大事をとつて黙つておられるのか,雲行きをみておられるのか,とにかく少ないのですね。ところが看護の問題は病院の管理,或は経営からみれば大切なものである。殊に病院診療というものが診療の基本の形であるとするならば,それを完全にする看護も亦非常に重要なものである。だから病院管理に当つている院長は看護という職業の発展,これからの体制の変化ということについて相当皆関心をもつている筈だと思います。そこで,院長で,しかも看護婦の教育,或は看護婦の業務,或は制度について関心をもつておいでになる方にお集まり願つて,その話を聞くことが丁度今の時期に適つたことだ,こういうことになつたのです。
 一番先きの問題は,日本で最近行われた看護婦の新制度,新体制についての原則論から一つ伺いたいと思います。これを実行するには今の世の中では非常に難しいということはあるんですが,実行ということは次の問題にして,一番先にやはり概念といいますか,イデオロギーと申しますか,この変り方が医者からみてどうかということを先に述べていただいた方がいいんじやないかと思います。

管理者メモ

医療法人制度と課税—厚生省と島根県の照覆/助産所の構造設置の基準—厚生省から全国に注意

ページ範囲:P.39 - P.39

◇島根県衛生部長照会医療法人制度について
 今般厚生省,全国厚生文化農業協同組合連合会共同編集で発行される「厚生文化」第33号紙上において標記法人制度が特に個人経営の病院等の税金攻勢による経営面の打開策として制定せられるやの解釈を登載していますが,右はさきに開催せられました全国医務課長会議において貴課よりの説明の内容と相違するものと認めますが,この点如何なるものか至急何分の御回答を御願い致します。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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