icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院3巻5号

1950年11月発行

雑誌目次

--------------------

病院概史(その12)

著者:

ページ範囲:P.2 - P.2

 Sieboltの来朝以来,蘭学の普及は著しく,古法はそれに対抗して1849年幕府をして医官に外科眼科以外は蘭方参用を厳禁せしめたが,時代の流れに抗すべくもなく,1857年にはこの蘭方禁令を解き官医の西洋医方研修を許さざるを得なくなつた。
 Edward Jennerが牛痘接種による天然痘予防法を発見したのは1796年であるが,それより40年後の1847年佐賀藩医官伊東玄朴は藩主鍋島氏を説き,前年長崎に医塾大成館を興して居つた楢林宗建を通じ和蘭カピタンに牛痘苗取寄方を依頼,翌年和蘭軍医Otto Mohmke牛痘苗をもたらす。楢林宗建,吉雄圭斎はMohmkeに親炙して種痘普及に努力す。1849年には既に,佐賀,広島,京都,大阪,江戸,福井に普及。1857年には北海道の痘瘡流行に応用されるようになつている。

病院經營文獻について

著者: 山元昌之

ページ範囲:P.3 - P.14


 今回,新著「病院経理の理論と実際」の出版が一段落して振返つてみると,云い足りなかつたところや,研究不足のまゝで済ましたところが目について汗顔の至りであるが,特に参考文献について其の感が深い。即ち著書の中に,主要参考書としてあげたものが若干ある。これは筆者が参考にした文献の中の主なものという意味と,将来この方面の研究に興味を持たれるかも知れない読者にとつてよい参考書となるであろうと云う意味と二重の意味を含めてある。併し筆者が参照した其の他の文献中にもいろいろの点で教を受けたものもある。又そうでないものでも病院経営についての乏しい本邦文献の中に存在していたという事実だけでも,この方面の研究に一里塚としての役目はそれぞれ果しているのであつて等しく貴重な文献である。こう考えてくると,病院経営について従来本邦文献は皆無であつた,で済ましてしまうのは誠に相済まないので,これら先賢の業績を紹介すべきであると考えた。又こゝ両一年の間に我国に於て,病院経営研究が格別盛になり,偉観と云つてもいゝ位にまで発展したので,この辺で一応在来の病院経営文献を纒めておくのも一つの義務であり,又将来,この方面の研究者に便宜を与えることにもなるので,拙著の補遣の意味も含めてこゝに病院経営文献の紹介をしたいと思う。

病院と管理(その16)—病院医師は如何にあるべきか——その3

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.15 - P.18

33 病院医師の型について
 日本の病院医師の型は,欧米の所謂閉鎖式closed systemである。即ち,日本の病院医師は病院専属として雇傭された俸給医師のみで占められている。然しながら,西欧においては,その外に開放式open systemという型がある。これは病院と雇傭関係にない,独立した開業医師が病院を利用しうるように約束された病院である。このことについて,既に前述(3卷2号参照)したが,日本では一般に,このopen systemというのは「如何なる開業医師も自由に病院を利用することが出来て,病院の利用法については一応制約が加えられるとしても,診療方針については制約がない」と解せられている向が多いが,の様な自由な利用に任せられる,いわば病院は単なる病人のホテル的存在でしかないというあり方は,アメリカでは強く排撃され,その様の病院はアメリカでは極く僅に残存するに過ぎない状態であり,亦College of Surgeonsではその様なものを病院としては認証していないものである。この式のものはunorganized open systemの病院といわれ,旧時代的なもので,近代社会的観念からは既に受け入れられないものになつてしまつている。従つて現在では次の二型が考えられている。

シカゴ研修會—滞米通信2

著者: 守屋博

ページ範囲:P.19 - P.20

 本日から愈よ第18回病院管理シカゴ研修会(18th Chicago Institute for Hospital Adominist rators)が始まる。30日に当地に到着して以来,先ずこちらの生活と街になれる事が第一だと1人で電車に乗つたり,公園や博物館を見たり食堂に行つたり,百貨店や映画館に入つたり仲々いそがしい。明日研修会のある当International会館に移住する。ここは大学構内といつても東西何十町の芝生と立樹の公園の様な内に所々教室が建つているので晴れ渡つた秋室の下にすばらしい所だ。会館は8階建で数百の居室の外に食堂講堂図書室何でもある。外国人学生の為の建物を夏休み中利用した物らしい。
 午前9時から受付があるが参加者100名米国各州の外にカナダから数十名と外国からはメキシコからと小生と2名。

アメリカ便り

著者: 加納保之

ページ範囲:P.21 - P.24

Bellerne Hospital見学記
 之はNew York cityの病院で1st Avenue 27Sstにある。Eest Riverを背にした赤練瓦の大病院で約3100床,この内結核は850床で之が1つの建物の中に入つて居ります。ニューヨーク市民は無料です。あらゆる種類の診断と治療を行います。こゝにDr Champerの手術も一例見ましたが彼もヨーロツパに明日出掛けると云うので忙しくてゆつくり話すことは出来ませんでした。Dr Fordの手術を見たのですが,之の人はまだ若い人で残念乍ら細い意見を聞くことは出来ませんでした。
 小生の訪問した週は右の様な次第で手術が非常に少ない時で,第2次脳成術と右側中葉及下葉切除術しか見ることが出来ず,しかも後者は結核でなくcancerでした。この病院では胸部外科医が結核でも癌でも,他科から来たのを手術して返すと云うやり方です。

綜合大病院と健康保険診療(下)—一審査員の体験と感想

著者: 室賀不二男

ページ範囲:P.25 - P.34

(3)都立豊島病院の健保事務処理法
 都立豊島病院ば元来伝染病院であつたが,今次大戦の末期に普通科を設置した。伝染病患者の増減によりその病床数に異動があつたが現在のところ予算定員は普通科90床,結核科150床,外来患者1日500人である。図表1の示す如く昭和25年8月の入院患者数は1日平均普通科111名,結核科88名(今夏の伝染病流行のため臨時手段として結核科病床を半減した)普通科外来患者数は1日平均510名である。普通科患者の半数近く,結核科入院患者の7割が健保である。図表2の示す如く健保取扱件数は全部で約1400件,その額は170万円をこえる。図表3に1件当り請求額をかかげた。これを扱う病棟事務室には患者係長以下8名が居り,別表の如く健保専任としては窓口係,外来係,入院係各1名である。この外に生保係,伝染病係も居り各自責任の分担はきまつている。互に援助して円満に運行しているが,相当の勤務時間に無理があり,特殊能も必要であり,過労で病気となつた場合に代りが得られない。健保専任として4名位ほしいものである。
 昨年中は請求書が数ヵ月分も山積し処置にこまつた状態であつた。健康保険診痛録を使用し初めたがその使用に慣れず,点数その他健康保険に関する知識は少かつた。医師側と事務側の意思も時に疏通を欠きすべては悲観的であつた。しかし,事務としても滞積している請求書を一応整理する責任があり,他方医師としても診療録整備の責任がある。

最近に於ける米國の醫療機關(その2)

著者: 高橋正春

ページ範囲:P.43 - P.47

7,一日平均在院患者数
 年間の入院患者数の場合と同じく1933年から1945年にかけて増加したものが其の後3ヵ年に減少傾向をたどつた。之が49年には再度増加して1,224,951名となつた。
 従つて新生児を含まない年間患者延数は447,107,115名である(前号第1表)

衞生設備リノリューム

著者: 小早川龍男

ページ範囲:P.48 - P.48

(1)吾国の衛生設備は戦前より一般的関心が欠如し,外国よりの訪問者により度々その不完全の点を指摘せられて居る処であるが,GHQの厳格な注意により戦後甚だしく改善せられたととは,誠によろこばしい次第である。
 然し乍ら政府は豫算不足との理由に依り,衛生設備に重点を置くに至らず,現在迄遷延せられていることは誠に遺憾の次第である。之も要するに従来の日本人の衛生に対する感覚の鈍さによる処多き次第で,今後の絶えざる指示をあおぐ次第である。

東京病院協会だより

ページ範囲:P.49 - P.49

医療法人報告会
 九月二十七日東京病院協会に於ては医療法人が会員諸君の重大関心事たるに鑑み本法律に関する医界の権威である藤森真治参議院議員を日本医師会館に招き,講演会を催した。講演後会員からの質疑応答があつて洵に意義ある催しを盛大に終了した。会員並に会員外出席者数百五十名を数えた。
 内容の概略は次の様である。

「病院」バツクナンバー目次

ページ範囲:P.50 - P.50

第3卷第3号
医学関係の職階制…11佐葉  賢
医療報酬の総合原価に対する一つの提唱…橋本寿三男

編集後記

ページ範囲:P.51 - P.51

 守尾博編集委員が,8月未に羽田を飛び立つてから,刻々と音信を伝えて来る。日本人離れ(但し欧米人とも離れている?)のした偉大な容躯で,日本の病院人として活躍されている様を想像すると愉快である。アメリカ病院協会総会にも東医務局長と出席して,彼の食指は益益旺盛であるようで,帰朝後の土産話に大きな期待がかけられる。皆さんと一緒に健闘を祈りましよう。東医務局長も10月20日には帰朝の予定であるので,アメリカ病院協会の盛大な活動の有様についてのお土産話を伺うことが出来ると思うので,12月号を御期待願いたい。
 各地の病院協会の動きも,愈々活動期に入ろうとしているので,恐らくその活動に拍車をかけることになるだろう。

病院人事消息

消息

ページ範囲:P.34 - P.34

◇高橋新次郞氏 中村平蔵氏が東京歯大附属病院長を辞任したのでその後任に補せらる。高橋新院長は大正9年日歯専を卒業し東京高等歯科教授となり現在に至つた人である。
◇中島 俊郞氏 国立療養所石垣原病院長に就任。

座談会

今後の看護婦はどうなるか(下)

著者: 橋本寬敏 ,   原素行 ,   三沢敬義 ,   木下正一

ページ範囲:P.35 - P.42

広尾病院改革の実例
○三沢 患者が給食をみて食慾が必ずしも出るという食物はむつかしいようです。中には生活程度のよくない患者には家庭にいるより御馳走かも知れないけれども,上流の人からみるとあまり食慾の出ないようなものを食べさせることになりますから給食を二段にしたいと思つております。並等と上等ですね。いまは一種類の均一にしておりますから,患者が食べないで,それを附添に食わせるということの起る状態です。
○橋本 どうしてもいい看護婦が沢山出てこなければならないというわけですね。そうしますと,実際にあなたの方でそういうような看護婦養成もしておいでゞすが,すでにいる看護婦の頭の切り換え,或は技能の向上ということについてお考えになつておられるでしようが,いま望むような新体制の看護婦がその中からどんどん出てくる可能性があるでしようか。

ニュース

第5回医務局研究発表会/新潟県 第1回甲種看護婦国家試験の模擬試験

ページ範囲:P.47 - P.47

 第5回医務局研究発表会は10月23,24,26,27の4日間次如く開かれる
◇第1部会=23,24日(大阪府立大午前会館)45項にわたる研究発表あり

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?