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雑誌目次

雑誌文献

病院3巻6号

1950年12月発行

雑誌目次

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病院概史—その13

著者: Y.Y

ページ範囲:P.2 - P.2

 米国のペルリが始めて浦賀に来り開港をせまつたのは1853年(安政6年)であつたが,続いて英仏蘭露の諸外国が開港を要求し,遂に幕府は—59年に至つて神奈川,長崎,函館を開港せざるを得なくなつた。国内はかなえのる壺の如くなつてしまい,国論は二派に分れ新旧二大勢力の争となり最後は薩長派の勝利に帰し—67年慶応3年大政奉還となる。続いて国内平定の為戊申役となつて—69年明治元年新政府が樹立されるようになつた。この間日本の医療問題にとつては何ういう大変化がもたらされたであろうか。
 アメリカは開港の端緒を開いたものであるが—61年から南北戦争が国内で起つている状熊で,日本の内政には余り干渉せず。英国は—58年印度全土を領有した時代で,騎虎の勢を以て日本におそいかかり,明治維新の主導権を握り,和蘭は従来の最恵国の歴史の基盤に立ち,独逸は—70年普仏戦争でフランスに大勝した新進国で特に科学の中心をなす状熊であり,この日本の大変化に丁度よくその勢力を伸ばすに至つている。

長島愛生園と岡村平兵衞—癩療養所めぐりの1

著者: 下村梅南

ページ範囲:P.3 - P.5

 癩の療養処は建設前の沖繩名護と休業中の岡山邑久の外は朝鮮台湾より日本本土に通じ官公私の療養処のすべてを見学した。朝鮮の小鹿鳥,静岡の駿河療養処,草津の楽泉園,宮城の新生園には一夜を明かした。青森の松丘保養園に2回にわたり1と月近くも園内に泊り込んでいた事もあれば極診の旅をつづけた事もある。ここには先ず長島愛生園の思い出につき筆にした。
「私は岡村平兵衛で御座ります。本日はみなさまと縁故の深かつた父の遺髪と両親の写真を,ふところにしてこれまでまいりました。……」

病院と管理(その17)—病院医師は如何にあるべきか——その4

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.6 - P.10

(36)病院医師の分類
 日本においては,病院のなりたちが官僚的な独逸式を基盤としているから,一般に病院の医師は専属医師のみで,その職階が明であり,医長(科長又は部長),医局長,医院,更に修練中の副手を加えた型が大部分である。従つてその縦の責任の権限の限界は一応判然としているようである。この組織は独裁的傾向を持つものであるから,命令系統は明であつて,人を得ればその責任感によつて整然たる診療が行われ易い利益を持つ反面,人を得なかつた場合には,独裁主義の大きな弊害を蔵しているものである。最近民主々義の思潮により,良心的な医長はこゝに悩みを持つようになつて来ている傾向が現れ,そして,時には部下の意向に左右をされ,診療の命令権即ち医長としての権限と責任を放棄せんとするものさえあることは由々しい問題であると思う。
 即ち,この民主々義的良心の発動は当然としても,医長としての責任と権限の地位に自信がないならば,宜敷くその地位を下るのが民主々義的責任を果すというべきではないだろうか。かくの如き状態であるということは,単に人の良心のみに発生する問題であろうか。新しく民主々義の国是が立てられた今日,今尚独裁的制度に近いわが国の病院医師の制度というものに矛盾がある為ではなかろうかと思う。

病院規程

著者: 島內武文

ページ範囲:P.11 - P.15

はしがき 病院の規定について御尋ねがあつたので,不充分な内容ではあるが,何等かの参考になればと思つて,まとめる事にした。実例なども入れるとよいのであるが,今日病院のものとしてはまとまつたものもないので,考え方を御汲み取りいただいて実行を願い,出来たものについて御気付の点を御教示願い度いと思う。
 実際一定の規模以上の病院で,その組織管理を改善するためには,先ず病院規程の作成整理をするのが最も近道である。しかし乍らこの事はそれ自身決して簡単な事ではなく,内容的に事業目的方針の決定から,組織制度の整備研究が先立たなければならない。従つて実際的には,後にのべる様に,手近のものから逐次規程化してゆき,これをたえず改善してゆくのがよい事と考えられる。

病院のハウスキーパーとは

著者: 原素行

ページ範囲:P.16 - P.19

はしがき 病院の精神
 病院には精神がなければならない。病院の精神は病院の各部門に夫々必要な活動の方針を示し,あらゆる病院職員が人道の為めに働くべきであるという奉仕精神の教育を授けることになる。病院は活きている有機体であつて,各部門の動きは夫夫異るが,一定の流れに従つて,行われるべきもので,恰もオーケストラと同じである,ゆうまでもなく病院長がそのコンダクターでなければならない。即ち各部門の動きが別々の考え方であるべき筈はなく,又そうあつてはならない,然しこの考え方は不幸にして,我国では常識とされていないように思われる。直接の診療だけを重視して,之れに関連する種々の条件に思いを致さない弊害は何故か多年にわたつて論議されなかつた,そして,時に論議される場合があつても,之れは科学的であるとは考えてもられなかつた。
 病院が患者に対する考え方の一つとして,入院患者の全生活を預り,診療と並行して,患者の世話をするとゆうことが必要である。此の考え方は極めて単純のよおであるが,この中に病院の各部門の業務がおのずから明にされていると思う。我国では,殊に近来,患者の病院生活は極めて不便であり,且つ不愉快なものとせられ,しかも世人は之れを当然のこととして,少しも疑わぬのが常識のようであつた。

醫師は病室で何を視るか—病室環境整備着眼指針

著者: 青木義治

ページ範囲:P.20 - P.23

 医療が患者の家庭乃至社会環境に迄立ち入つてその対策改善に思を致さなくては,より完全な医療乃至予防の実績が上らない事が明かとなつた今日では,医師は只患者を診断しそれに対して医療を行う丈で能事終れりとする事は当然ゆるされない。
 病院勤務の医師は患者に対し,医療を行いつゝ絶えずこれら家庭乃至社会環境の調査対策指導に心を致すべきが当然であるが,更に入院患者の病室環境に対しても,従来医師は疾病治療に専念しこれら病室環境整備の着眼に対しては比較的無関心のものが多かつたのではあるまいか,又多少共その点に心している者があつても,どこにその眼点の重心を指向したらいゝか。その具体的事柄に就て明確なものを持つていなかつたのではあるまいかと考える。

アメリカ便り—第3信

著者: 守屋博

ページ範囲:P.24 - P.27

病院協会年次大会に出る(車中にて)
 シカゴの10日間の講習をすまして,その足で東海岸のアトランチツク市で開かれたannal conv-enton of A. H. A.即ち病院協会の年次大会に参りました。この町は紐育からも3,4時間で来られるし素晴しくキレイな砂原があるので有名な避暑地になつています。ホテルも帝国ホテルを10倍も大きくしてキレイにした様なのがブラツと天をついています。
 東京のスポーツセンターを大きくした様な市の大会場で10000粁以上の病院関係商品の展示会があります。大会はすべて米国式に民主的で総会の外に,各部会や役員会や競技会(これは病院のT.P.R.即ちTechniques Procidures Routines等の内ですぐれた物を決定して賞品を出す会です)や映画会が行われます。

病院人事消息

ページ範囲:P.27 - P.27

◇中山栄之助氏 新潟大学医学部産婦人科教授の氏は同附属病院長に就任。氏は大正14年東大医学部を卒業し東大講師から新大教授に転じた人で昭和8年東大で学位を授与された人である。
◇天児民和氏 新潟大学医学部整形外科教授で同附属病院長の氏は神中九大教授が停年で勇退したのでその後任となつたため附属病院長を辞任さる。

メーヨー・クリニツク

著者: 森島

ページ範囲:P.29 - P.30

 ロツチエスター市はミネソタ州の豊穰なる農業地方にある人口3万の市街である。此地は曾つて米国工兵隊による廠営地として用いられ其隊の車輌隊は此大平原を横断することは度々あつた。現存ロツチエスターには40のホテルと84のアパートと数多くの料理屋がある程季節的の商業地ともつている。
 そして毎年此市に来たる訪問者は15万乃至30万となつて居り,今では軍隊の廠営地ではない。今来る人々はMoyo Clnicで検査を受け或は治療を受ける為めの病人なのである。此私立の医学の中心地などはかつて移民で来た一医師と其子2人か世界で最も高名な診断的ニリニツクに築き上げたのである。

医療法施行に関する病院分類要領(昭和25年度)

著者: 厚生省医務局医務課

ページ範囲:P.31 - P.35

1 趣旨
 医療法の実施に伴い病院の内容を充実せしめ医療の適正化を図るため,一定の基準により病院を分類し,順次上級の分類に達せしめるよう指尋する。
2 分類方針
 概ね医療法の規定を標準として全国の各病院を管理,人員,構造設備の区分毎にABCDの四級に分類する

新潟県病院協会活動の一端

著者: 塚田恒助

ページ範囲:P.36 - P.36

 新潟県内の病院経営の主体を観察すると大体大学附属病院,日赤,逓信,鉄道各1,国立(療養所を含む)10県立11農協12組合其他13私立23の多きにのぼつて居るが現在迄統一して運動を起した事はなかつた。然るに本年2月病院の普及及び適正配置並びに病院管理運営の調査研究合理化,医療の普及,病院相互の連絡親睦を目的として新しく協会が設立されたのであります。
 当初は全国に於ける病院協会の運営の実例も少く,又県内に於ても各種各様の経営体の集りである為め,歩調を合せる事が非常に困難であつたが漸次目的を統合して次の様な委員会を作つて進路を明らかにした。

病院運営の民主化

著者: 雲涯

ページ範囲:P.38 - P.41

1 はしがき
 昨年の12月号に医員の活動を阻むものとして病院運営についての御高見を拝見して,共鳴を感じた点もあるが,又失礼乍ら偏見と思われる点もあると思うので,私は事務長としての立場から書いて見た。
 病院運営に従事してからの経験が浅いので理論及び実際に豊富な智識をお持ちの諸先生が寄稿せられる本誌に寄稿するのは如何かと躊躇したが,経験が浅いために多くの病院を見学しての見聞から,こうもあれば理想的に運営することができるのではないかと思う点を書き綴つた次第である。匿名とした理由は文中に苦言が多いので各方面に無用の摩擦を起させないための用意であることを諒とせられたい。

鐵道病院から—ルポルタージユ

著者:

ページ範囲:P.42 - P.44

 新宿甲州口を出て甲州街道に抜ける道を,ほんの半町,そこから泥濘道の細い道を左に折れると,鉄道病院の茶褐色の建物が,もう見えている。この細道は代々木の森に拔けているらしいが,道の傍の畑には,牧穫を忘れられた野菜がころがつている風景は,もう都会のものではない。病院のある処はそんな処だつた。
 玄関の敷石を,横なぐりの雨が叩いている。丁度その前の道端には,広告板が一つしよんぼりと雨に濡れている。そしてそれには,

研修講義録の發行を希望

著者: 米持栄次郎

ページ範囲:P.44 - P.44

 医務局内に研修所を設けられたことは日本医療機関の大きな進歩であると共に医療機関運営責任者にとつては緑のオアシスとも言えるであろう。
 扨てこのオアシスを全国病院療養所3,733施設の管理者に一刻も早く伝達することは,それだけ日本医療機関の充実発展に至大な效果をもたらすものであるから,この研修をどんどん実施してほしいのであるが,如何にせん研修所員は少数であり所属講師が沢山居るようであるが何れも兼職であつてみれば研修所側も手が廻らないであろう。また,受講生の方も院長所長は重職にあり意の如く,受講できない。院長所長だけでも年間5回実施するとしても50人宛とみて250人というわけで何年かかゝる。副院長にも必要だ事務長にも必要,又将来事務長となるべき事務員にも受講さしたいということになれば,この事業を田舍の列車2輌位の鉄道の改札口に譬えるとよい例であるが或目的へ同時にゆきたいという旅客に対して改札をしても同時に乗れないので残りの客は次の列車,その残りは次の列車に乗車することとなるように,同時に向上さしたい事業が遅いものは何年か後にならねば教養の機会を得られないことになるのである。

医療器械の規格制定(完)

ページ範囲:P.45 - P.46

日本工業規格
注射針
1 適用範囲 この規格は医療用注射針(以下注射針と呼ぶ)に適用する。
2 種別および外形寸法種別および外形寸法は1表のとおりとする。

東京病院協会だより

ページ範囲:P.47 - P.47

A,医療法人説明会 日時 9月12日
 於日本医師会館 出席者 150名
 講師 藤森参議院議員
 1,内容 当日は台風来の予報にも不拘遠くは新潟県病院協会をはじめ予想外の来会者があつたのは医療法人の問題に如何に関心が払われて居るかが伺われた。講師も長時間に亘り微に入り細に及んで説明されて全員に益するところが多大であつた。

編集後記

著者: 編者

ページ範囲:P.50 - P.50

 1950年!正月明けにはこの数字に随分みせられたものだつた。幸い日本は,経済的に少しづつ立直つて来た。昨年と今年では,人々の服裝も旅行の気分も随分良くなつて来たことは事実である。これが実力となつて進んで行けるものならば,1950年の数字も結構頂けるものといいたいところであるが,しかし朝鮮動乱勃発を含めた一連の国際事件は,講和が近づいたといわれても,どうも平和が来たとは受け取れない状態になつて来たことは何といつても良い年とはいえないようである。しかしこの雑誌も益々育つて来たし,全国の病院も確に立直つて来て,どこの病院へ伺つても,もう殆ど終戦気分が失われ,明るさ,活気,希望,楽しさ,というような生々しさが湧いて来ることを感じます。確に昨年とは一段と飛躍した年でした。まあ来年信どういう風に流されるか解らないが,少くとも病院だけは良くなつて行くでしようし,良くしてゆける自信が持てて来ましたことを感謝して,目出度く1950年を送りましよう。
 守屋委員からは「アメリカ便り」が続々とどいています。收獲の多大を思わせるものがあります。最近1月5日横浜着のクリーブランド号に予約した旨の便りがありました。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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