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雑誌目次

雑誌文献

病院30巻5号

1971年05月発行

雑誌目次

特集 臨床検査を点検する

病院で臨床検査は適正に行なわれているか

著者: 木島滋二

ページ範囲:P.23 - P.27

はじめに
 スタートをして,まだ20年そこそこの歴史しかもたない中央検査室が,現在では全国ほとんどすべての病院に整備されるようになり,医師会の検査センターや,市中の衛生検査所の数もふえて,一般診療に占める臨床検査の比重が大きくなってきた.これは医学の進歩と,その大衆化を反映するものであり,また,診療を科学的に処理しようとする医師の良心の現われとして,喜ぶべき現象である.
 しかし一方では,検査の伝票を整理するだけで便宜上の病名をつけ,問診や診察を省略する医師が生まれたとか,検査のうちで,もうかるものばかりを,患者のことはおかまいなしにやたらに行なう病院があるとかいった非難の声も聞くようになった.

健康保険の統計からみた臨床検査の推移

著者: 古市圭治

ページ範囲:P.29 - P.31

検査の推移
 保険医療のなかにおける検査について,社会医療調査の数値は次のような動向を示している.
 表1によると昭和40年度6,月審査分(以後年度と略)では,保険診療の総点数のうち87.9%が一般診療(=医科診療)であり,検査は3.3%であった.検査点数の占める割合は42年度には4.5%,44年度には5.0%と増加してきている.国民総医療費から概算すると,44年度に1000億円近くが検査(レントゲンを除く)にあてられたことを示している.

病院における臨床検査の自動化とその限界

著者: 林康之

ページ範囲:P.33 - P.37

 病院における臨床検査件数の増加は,熟練技師の不足とあいまって,検査業務の機械化・自動化の原動力となり,今や臨床検査の自動化は流行となりつつある.
 検査室側は,(1)検体数の増加に伴う人手不足(2)検査項目数の拡充を望む臨床からの要求(3)検査成績の安定化(4)検査室の狭さなどを理由にあげて自動化を要求するはずである.

検査成績の管理—現状と問題点

著者: 斎藤正行

ページ範囲:P.39 - P.42

データに対するクレームが少ない—ーあきらめか?
 毎日膨大な臨床検査データが各科に配布され,診療に大きく貢献しているが,データが生み出されるバックのわりに臨床では十分にデータの咀嚼がなされてないような気がする.理由は,思ったよりデータについての臨床側からのクレームが少ないからである.
 臨床検査は一般に次のような必要性から提出される.

検査部の管理体制の問題点

著者: 土屋俊夫

ページ範囲:P.43 - P.46

 管理ということばが,しばしばでてくるこの頃であるが,管理とはなにかということになるとそれだけでなかなか解釈がむずかしいようである.
 ここではその議論を避けて,企画→組織による実行→結果のコントロール,および全体的なフィードバック,もっと簡単にいうならば,業務の調和をとりながら木来の目的に向かって推進させてゆくことだと了解したい.

座談会

検査部と他部との業務分担

著者: 三村信英 ,   内田卿子 ,   佐藤和身 ,   栄田ツヤ ,   河喜多龍祥 ,   小酒井望

ページ範囲:P.48 - P.57

医師と看護婦,それに検査技師の3者は,患者を中にして,その診断に密接な連けいが求められる.しかし,往々にして自分の持ち分から他のそれへのバトンタッチがうまくいかず,チームワークが乱されることが多い.
その原因の大部分は,説明不足に由来するというのだが……

病院と統計

医師・歯科医師・薬剤師数の年次推移

著者: 前田行雄

ページ範囲:P.10 - P.11

 医師・歯科医師・薬剤師についての統計には,医療施設調査によるものと,医師・歯科医師・薬剤師調査によるものとがある.いずれも12月31日現在で調査が行なわれているが,前者は,病院・一般診療所・歯科診療所を調査の対象とするものであるから,これらの施設に従事する者に限られ,1人で数施設に勤務しているものは重複して計上されている.これに対し後者によるものは医師・歯科医師・薬剤師を調査の対象としており,業務の種類,従業地,免許取得資格の種類,登録年,性,年齢,診療科目などがとらえられている.
 今回は昭和44年12月末の後者の統計を中心に,全国の医師・歯科医師・薬剤師の状況を観察しよう.

グラフ

特殊医療に積極的に取り組む神奈川県小児医療の前進—神奈川県立こども医療センター

ページ範囲:P.13 - P.17

 神奈川県は県民の健康福祉のために,総合的医療対策を立てている.そのひとつとして小児専門病院‘こども医療センター’を開設した.わが国の小児専門病院は,昭和40年に開設した国立小児病院だけというまずしい状況であった.しかし近年ようやく小児の健康に開心がもたれ,小児医療の特殊性が注目されるようになった.そして兵庫県にも小児病院が開設されるようになった.
 こども医療センターは,昭和45年5月に一部開院し,11月に落成式をあげた.特徴のひとつとして,240床の小児病院だけでなく,50床の肢体不自由児施設,養護学校,40床の重症心身障害児施設から成り立っていることである.このほかに研究普及室,指導治療部がある.職員は医師約50人,看護婦約220人,医療技術職員約70人,その他70人である.

第18回日本医学会総会

著者: 小野田敏郎

ページ範囲:P.79 - P.81

日本医学会総会雑感
 千鳥ケ渕の桜はいま満開である.会場の日本武道館にいたる池は春の水をたたえている.第18回日本医学会総会は,武道館の外廓にテントを張りめぐらして,万に達する参会者の受け付けに大やらわである.
 開会式に続く総会の記念講演は谷川徹三先生.もうおいくつになられるのであろうか.円型のスタジアムの一方に巨大な衝立,そこには本総会のテーマ‘医学の進歩と医の倫理’と記され,そして記念講演は‘医学とヒューマニズム’である.この老哲学者は,ヒューマニズムとはprotestすることである,医学は何に対してprotestするか,それは本来の目的をもたない科学の進歩に対してprotestすることであると説かれた.

病院危機突破全国大会—全国公私病院連盟が開催

ページ範囲:P.82 - P.83

 去る4月21日東京千代田区の久保講堂に約1000名の病院職員が会合し,病院と患者を守るための"病院危機突破全国大会"を開催した.この大会は全国公私病院連盟(会長・近藤六郎の主催で.全国自治体病院協議会など11団体が参加して行なわれたもので,人件費・物価上昇による病院経営の困窮がもたらす国民医療の危機を突破するため,病院関係医療費緊急是正の即時実施を広く訴えようとするのが目的であった.大会は,病院危機の実態報告,中医協審議の経過報告にひきつづいて‘入院関係費87%引上’などの大会決議案を満場一致で採択し,その後,国民にアッピールするため,都心の目抜通りを東京駅までデモ行進し,午後5時流れ解散した.

国立療養所の今後の新しい担い手として—全国国立療養所長会議より

著者: 野津聖

ページ範囲:P.18 - P.18

 全国の国立療養所の所長先生方153名が,恒例によって,年度初めの所長会議の場で一堂に会きれました.
 先生方の顔ぶれも,わが国の結核医療の中心として,結核対策に大きな貢献をされて,今なお,この道一すじに努力しておられる先生,ちょうど,新旧交代の時期にあたるために,長年のなじみであったお顔がみられなくなり,一抹のさびしさを禁じえない反面,新進の先生方が,今後の国立療養所の担い手として登場して来られております.

病院の広場

過疎地帯にあってよき人材を確保するには

著者: 大塚哲也

ページ範囲:P.21 - P.21

 昭和28年11月1日,京大より本院へ医長として赴任して以来,医務部長,副院長を経て足かけ19年,こんなに長く山陰の地にとどまろうとは夢にも思っていなかった.初代塩津徳政院長のこ推挙により,本年4月1日付で2代めの院長となった.塩津名誉院長のすぐれた人がらと,卓越した技術には,とうてい及ばない私である.
 ‘院長になられておめでとう’と人びとは言ってくれるが,昔ならばいざ知らず,現在の日本における医療制度のひずみによる病院経営の種々の面での困難さを,副院長時代からよくわかっているので,いっこうにおめでたい気持ちにはならないどころか,これはたいへんなことだと頭も痛いし,肩の荷も重くなるばかりである.

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読者より

著者:

ページ範囲:P.37 - P.37

2月号の特集について
 インテリアデザインというコトバが何を意味するのか,建物の内部の計画すべてなのか,そのとりあげ方がまちまちなので,全体として訴えるものが少ない,という感じをもちました.いや,インテリアデザインと病院の関連といったものがバク然している現在,啓蒙的なものを—というのでしたら,写真を多くして実例的に上げたほうがアピールすると思います.
 さて守屋氏の論文(病院のインテリアデザイン)では,既成概念を打ち破れといっています.ところが,写真5(27ページ)のようなデイルームがはたして標準的日本人患者にとって居心地のよいものかどうか,いすに座ってくつろげる人は何パーセントいるのか,という疑問もわいてきます.

精神医療と精神病院・5

精神病院の外来診療—東京都立松沢病院・松江精神病院・小坂診療所

著者: 金子嗣郎 ,   渡辺宏 ,   小坂英世

ページ範囲:P.59 - P.67

精神病院の外来診療・1
東京都立松沢病院の場合
入院か外来か
 精神医療の体系の変化が言われている.その根源にあるのはクロールプロマジンをはじめとする向精神薬の治療への導入によって,いわゆる生活療法が行なわれるようになり,精神病,とくに精神分裂病の治療に明るい見通しを持つ精神科医が多くなってきたし,現に長期入院患者のうちからも退院者が出てきたことなどの事実もあるが,理論的に考えて精神分裂病を中心とした精神疾患という慢性疾患を‘どうやって’‘どこで’‘だれが’治療するかという反省もある.
 医療における入院中心主義に対する反省が出始めて,すでに10年以上にもなろうか.この反省の出発点となったのは,入院中心では医療費がかかりすぎることと,一貫性のある医療は入院中心主義では行なわれえず,むしろ地域中心の医療で行ないうるのではないかということであり,急性疾患は入院中心主義で,慢性疾患は地域中心主義で,という方針が出てきた.

管理者訪問・38

医療法人福井心臓血圧センター福井循環器病院院長 田中孝先生

著者: 森日出男

ページ範囲:P.69 - P.69

 ‘国境の長いトンネルを抜けると雪国だった’——日本一の北陸トンネルをぬければ,白一面.地球上に,まだこんな純白さが残っていたかと,眼も心までもうるんでくる.
 今年はひとつ,地方の機能的専門病院をまわり,管理者のご高説を聞き,勉強させてもらおうと,まずは福井より.どうも退屈さをきらう貧乏性の小人私は,常に刺激と型破りでもいいから新鮮な‘生きているもの’‘のびていくもの’をみつけたい.

ミズーラだより・5

高等教育にみる医学・歯学の教育方針

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.70 - P.71

 カーネギー委員会 医療の変革が70年代の焦点になりつつあるこの国ですが,この変革を大胆に求めたものの1つとして,1970年10月に発表された‘高等教育に関するカーネギー委員会’の報告書,‘高等教育と国民の健康’は,次回にお伝えするアメリプランとともに,現状を強く批判して,思い切った変革を求めている点で注目されています.
 巻頭に‘全国民の健康は,国の幸福と力の基礎をなすものである’とのディスレリイのことばの引用で始まるこの報告書は,1972年に最終報告を予定している高等教育(大学および大学院)に関する調査研究のうち,特に緊急性の高い医学,歯学教育方針に関する報告部分を占めています.

麻酔科医日誌・5

ある先輩(S)との対話"麻酔科医の開業"

著者: 山下九三夫

ページ範囲:P.72 - P.73

管理職に向いている
 S 君も国立病院が相当長いようだが,麻酔なんかやっていて将来どうするのかね.
 Y なにも麻酔をやっているからといって,他の先生方と変わりませんよ.ただ,私ども麻酔をやっている人に,私より先輩が少ないので,どうなるかは,むしろ後輩の連中から注目されているのでしょうね.

新管理技術講座・5

VA

著者:

ページ範囲:P.74 - P.75

 名称と沿革 VAはvalue analysisの略語で,普通価値分析と訳されている.しかし,この原語も訳語も,ともにそれが1つの名称として適切であるかどうかには疑問がある.というのは,その名称から推測される内容と,その名称が表明している事がらの内容とは必ずしも合致しないからである.
 沿革としては,それは1947年(昭和22年)にアメリカのゼネラル・エレクトリック社で始められ,翌年購買課長のL.D.マイルズ氏が専任者(バリュー・アナリスト)に任命された.同じころ同じような試みがフォード社でも始められたが,ここではパーチェシング・アナリシスと呼ばれ,やはり購買部門が担当した.そして,その目的とするところは,ともにコストダウンであった.

病院の職員教育 駿河台日本大学病院職員教育資料より・17

仕事のしかた—前号つづき

著者: 田中栄一

ページ範囲:P.76 - P.76

8.改善のしかた
 日常われわれが行なっている仕事のなかには改善することがたくさんある.その中には大きな問題もあり,また小さな問題もある.小さな問題だからといって軽視はできない.小さな改善を行なうことによって大きな改善へ発展してゆくのである.自分自身の仕事を合理的,能率的に改善してゆくことは組織の機能を高めることになり,これはわれわれに与えられた大きな任務である.
1)問題点をみつける--‘問題がない’ということこそ問題であって,必ず問題があるはずだ.常に問題意識を持って仕事にあたるように努めよう.

病院建築・29

オランダの病院(1)

著者: 小滝一正

ページ範囲:P.84 - P.87

はじめに
 国際病院連盟(International Hos-pital Federation)の主催する病院見学会が昨秋9月にオランダで2週間にわたって開催され,それに参加する機会を得た.この病院見学会は2年ごとに行なわれるもので,過去にフィンランド・スイスでの見学会にもわが国から何人かが参加し,本誌でもその報告がされている.なお次回は来年スコットランドで開催の予定である.
 各国から病院長・事務長・医療行政の担当者・病院コンサルタント・病院建築家など,多彩なメンバーが200人あまり集まって,病院見学と情報交換を行なった.オラング病院協会長のバーヶンス博士を中心にした組織委員会の周到な準備とオランダ人特有のもてなしに迎えられて,ほとんど国中を回った旅行であった.

おなかを開く話・3

抜糸をしたあと

著者: 今村栄一

ページ範囲:P.88 - P.92

早期歌唱はいかが
 7針縫った手術創の回りをおさえながら,うつむき加減に歩いている姿は,自分で考えてもみすぼらしいものである.おなかをおさえていないと,歩きにくいのである.うがいをしようとすると,おなかの皮がつっぱり,首のすじもいうことをきかず,水がのどへたまらない.ニワトリはじょうずに水を飲むものだ,首が長いためかなと感心する.
 しかし7日たって抜糸してもらったらば,少しそり返ることができるようになった.立ったままで天井を見ることもできるようになり,ニワトリをうらやましく思わないでもすむようになった.

講演

アメリカの医療システムの最近の動向

著者: ,   紀伊国献三

ページ範囲:P.93 - P.100

今日は"アメリカの医療システムの最近の動向"ということで,ジョンソン大統領の政権下において通過した4つの医療関係法案
 ①Medicare ②Medicaid ③Regional Medicalcare Program ④Comprehensive Healthcare Planningについてお話をしたいと存じます.
 アメリカの医療システム,health care systemは他の国と違って複数的,pluralisticであることが特徴です.その1つの例として,アメリカの医療の中の1/4が公的,3/4は私立の部分が占めていたのですが,その後しだいしだいに変化してきて,現在では1/3がパブリック,2/3がプライベートなものに変わりつつある.すなわち公的なものの占める位置が非常に大きくなりつつあるというのが特徴です.この4つの問題もそれを表わしています.

国保医学会第10回学術総会パネルディスカッション

国民健康保険直営診療施設(直診)の将来像(2)

著者: 田中富也 ,   諸橋芳夫 ,   久保俊郎 ,   繩田皆夫 ,   吉沢国雄 ,   田中富也 ,   一条勝夫

ページ範囲:P.102 - P.109

県の立場より
1.直診施設衰退の原因
 私は,県の立場から申し上げたいと存じます.
 直診の将来を考えるにあたり,現在の状態をどのように認識し,把握するかが,基本的に重要であると思います.今日,しばしば直診は曲がり角に来たといわれております.このことばは抽象的ですが,このようにいわれる背景をなす現象として,少なくとも次の2つがあげられると思うのです.

研究と報告【投稿】

70年代の経営者の意思決定の場所について

著者: 永沢滋 ,   三宅史郎 ,   植松宗悟 ,   中村晃

ページ範囲:P.110 - P.113

はじめに
 昭和45年6月に意思決定をする場所(ManagementBriefing Room-M.B.R.)の設計の権威者である米国のユナイテッド・エアー・ラインズ社統計部長John A.Murphyによる国際セミナーに参加し,そこで得た資料を紹介し,今後発展する(大規模化)病院管理上にも多々参考になると思われるので,われわれはこれをまとめてみた.
 Murphyは,このセミナーで米国企業でのトップの意思決定がどのような過程を経て行なわれているか,M.B.R.はどのような機能を果たしているかについて具体例を引きながら明らかにしてくれた.

霞ガ関だより

小児医療対策について—小児医療センターを中心として

著者:

ページ範囲:P.114 - P.115

はじめに
 最近わが国の母子保健の水準は,乳児死亡率の急速な低下をはじめ,かなり改善を示しているが,新生児死亡率,周産期死亡率,妊産婦死亡率などについてみると,まだ欧米諸国に比べ相当高率となっており,今後更に努力する必要がある.
 わが国の将来の人口の推移を考えると,人口の老齢化が予測され,小児が全人口の中に占める割合が低下することとなり,個々の小児の健康を確保することが,きわめて重要になってくる.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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