icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院30巻6号

1971年06月発行

雑誌目次

特集 ボランティア活動

ボランティア活動の考え方

著者: 小林玄一

ページ範囲:P.23 - P.27

Voluntaryismについて
 奉仕の精神というか,報酬をあてにしないで,社会のために奉仕するという精神は,どこの国にも強弱の差こそあれ,昔からあったことで,歴史をひもとけば幾多の仕事事業が列挙できると思う.米国ではこれをVolunta-ryismと称し,‘自由意志で何か人のためあるいは社会のためになる仕事をするあるいは支持するシステム’と定義している.
 この場合のVoluntaryはfreeの精神と関連するもので,個人の自由,結社の自由,企業の自由が民主主義の社会ではその根底精神であると米国的に説明している.キリスト教と民主主義思潮の深い影響を受けて発達していったものである.宗教の自山と個人の自由を求めて新大陸に移住して来て,インディアンたちの敵意の環境で相互に扶助していかなければならなかったという初期の植民者たちの経験が,そのままVoluntaryism発生の土壌となったものともいえる.

病院にボランティアの種をまき歩く—病院ボランティア国の推進者に聞く

著者: 広瀬夫佐子 ,   落合勝一郎

ページ範囲:P.28 - P.38

‘自分さえよければ——’からいい社会は生まれません
 落合 私も何回かアメリカへまいりまして病院ボランティアの働きを実際に見てきましてね,シカゴのノースウェスタン・メディカル・センターにあるウェスレーメモリアル病院の院長のハートマン氏を訪問した時のことですが,インフォメーションにかわいいお嬢さんがいていろんな話をしましたらお父さんが外科のお医者で自分は今ボランティアとしてお手伝いをしていることでした.それからシャーマン・ホスピタルへまいりましたら,ボランティア部の主任のMrs.Thiesがおりまして,熱心にボランティアの働きを教えてくれました.
 エバンストンの病院へ行きますと,そこにも売店やキャフェテリアなどで楽しそうに働いておる.キャンデイストライプとか,あるいはピンクレディという呼び名がありますね.だいたいかわいらしい感じのいいお嬢さんが,ギフトショップとか,コーヒーシッップに働く,あるいはインフォメーションの仕事をしている,こういうことを見てまいりました.

病院ボランティア活動の実際・1

聖路加国際病院

著者: 桑田春子 ,   松下和子

ページ範囲:P.40 - P.43

動機から具体的着手へ
 教会関係で親しくおつきあいをしているT夫人から,昨年の夏ごろ,結婚された姪ごさんがまだお子さんがないので,今のうちに看護についての素養を身につけさせたいと,その姑にあたる方が強く希望しているが,なにかよい方法はないものかと相談を受けた.そこで,私の知っているかぎりの都内各所で行なわれている保健所の看護教室,家庭生活研究会で行なわれているいろいろなプログラム,日赤東京支部主催の家庭看護講習会などをご紹介してみたが,なかなかぴったりとはヒットしなかった様子である.
 たまたま,昨年11月ごろ,私どもの聖路加国際病院で,すでにある50代母の会のボランティアとは別に,若い結婚前のお嬢さん方や若夫人をグループにして,病院と一体感をもったよいボランティア活動を生長させてみたいという考えをもちはじめていたので,友人のT夫人に‘姪ごさんが聖路加病院のボランティアとして奉仕して下さるのはいかがか,もしそのお気持ちがあるなら,奉仕して下さっている間に,私どものほうでも,一般の女性,一般家庭夫人に必要な看護講座を企画してみましょうか’とお話をもちかけたところ,‘自分たちが,ただ一方的に教えていただくのみでなく,なんらかの形で病院に奉仕できるなら,それが一番望ましいことでうれしい’との返事だった.

病院ボランティア活動の実際・2

武蔵野赤十字病院

著者: 大嶽康子

ページ範囲:P.44 - P.46

 当院には現在2種類のボランティア活動が3団体によって行なわれている.その1つは病院の衛生材料作製の奉仕で,これは2つの団体が奉仕してくれている.もう1つは,直接患者さんを対象とした.つまり長期入院の小児のお遊びの相手,買物,電話をかけること,手紙の代筆など,患者の身の回りの手助けなどをする奉仕活動である.

病院ボランディア活動の実際・3

横浜赤十字病院

著者: 高瀬松子

ページ範囲:P.46 - P.49

 人手不足・看護婦不足に悩んだころ,ボランティアを受け入れたことはどれほどありがたいことであったか,またどれほどむずかしく思ったことか,経験したことについて,述べてみよう.

病院ボランディア活動の実際・4

日本バプテスト病院

著者: 小山和子

ページ範囲:P.49 - P.50

 日本バプテスト病院(総合病院,140床,高等看護学院併設,京都市左京区北白川)にかかわるボランタリーの活動は,病院の開設時(昭和28年)にまでさかのぼることができる.医療活動,特に総合的な医療の場としての病院にとって,本来社会的な,なんらかの支えが必要であることは,米国その他の国々では,むしろ通念のようになっていた.
 日木のバプテスト(キリスト教新教の一派)が病院を建て,水準の高い医療・看護を通じて社会に貢献したいという願いをもったときに,これにこたえて米国南部パプテストの諸教会が,婦人層を中心としたクリスマス募金運動を起こし病院開設に必要な資金の調達に協力するとともに人材を送ってこれを支えたことは,ボランタリーな活動であった.日本のバプテスト諸教会も,‘病院デー’を設けて,病院の働きを支え婦人会・少年少女会などによって,療養環境整備のための奉仕,在宅奉仕としてのリネン加工,長期療養小児患者のための文庫寄贈,その他多彩にわたる篤志奉仕活動が続けられてきた.地域社会と密接に結びついたボランティア活動が芽ばえる以前から,このような海外をも含めた全国的な支援奉仕活動が行なわれてきたことは,他の多くのキリスト教病院の場合と同様,当院の特色であるといえよう.

病院ボランティア活動の実際・5

大阪市立小児保健センター

著者: 大谷ヨシエ

ページ範囲:P.51 - P.53

はじめに
 ボランティア活動には,老人ホームや養護施設などで,雑用を引き受けたり,キャンプ場で子どもの遊び相手をしたり,海岸で事故防止のパトロールをするなど,その他さまざまな奉仕活動がある.医療が画期的に進歩するにつれて,看護業務の量的増加と質的複雑化は,急上昇カープを描き,そのことはとりもなおさず看護職員の不足の現象にますます拍車をかけているが,最近,家庭の主婦や学生たちがその余暇を利用して,病院ボランティアとして奉仕する姿が全国的にしだいにふえつつあることは,いろいろの意味で喜ばしいことである.
 当センターでも学生や地域婦人団体の会員の奉仕を受けているが,最近では奉仕するものとこれを受け入れる側との間の気持ちがしだいに緊密となり,奉仕活動も漸次軌道に乗り出してきた.現在当所で行なわれているボランティア活動のありのままの姿を述べてみよう.

病院ボランティア活動の実際・6

大阪赤十字病院

著者: 礒野博志

ページ範囲:P.53 - P.56

はじめに
 ボランティア活動は,昭和30年ごろから急激に発達してきた傾向がうかがわれる.そして活動は,社会福祉施設や,その関係団体が中心的役割を果たしている.しかし施設への訪問活動といえども,計画的・継続的に活動がなされているのはごくわずかで,無計画的・短期的奉仕活動や物品・金銭寄付に関係した活動が圧倒的に多いといわれている.
 病院におけるボランティア活動は,欧米においては早くから発達し活動しているといわれるが,日本では歴史が浅く,ボランティア活動が行なわれているといっても,ボランティアの認識を深めつつある段階で,まだまだボランティア活動の役割が明確化されていない.

病院ボランティア活動の実際・7

大阪赤十字病院付属大手前整肢学園

著者: 辻和子

ページ範囲:P.56 - P.59

はじめに
 当園は3-18歳までの肢体不自由児施設で,活発なリハビリテーション活動を行なっている.大阪府立ではあるが,赤十字病院が経営を受託し,公立民営の形態をとっている.
 本院である大阪赤十字のボランティアは3年の歴史があり,発展しつつあったので,当園のボランティア活動が抵抗なく受け入れられた.しかし学生が大部分を占める特殊なグループであるので,それなりの問題をかかえ迂余曲折があった.開園後満4年となり,ようやく土台ができそうなので,ご参考までにその経過を紹介しよう.

病院ボランティア活動の実際・8

淀川基督教病院

著者: 竹村好香

ページ範囲:P.59 - P.60

 約10年ほど前,ボランティアということばがまだ耳なれないころ,広瀬夫佐子氏から,日本婦人のボランティアを受け入れないかと申し込まれて受けたのが,現在のボランティアグループ結成のはじまりであった.氏は米国の病院をみて帰られ,日本にもぜひと,ボランティアづくりの運動を始められたところで,当院が外国系の病院であったことから話を持ち込まれた.実際に,その3年ほど前から米国婦人らによるボランティア活動が1年あまりあったが,帰国する人が多く,それ以上は続かなかった.
 この申し入れを受けて,はたしてどのようにしてボランティア活動を理解してもらえるか,どの程度の協力援助が受けられるか不安ではあったが,受け入れに対してはだれも異存がなく,看護部がその係りをとることになった.

病院ボランティア活動の実際・9

兵庫県立西宮病院

著者: 楢崎茂登子

ページ範囲:P.61 - P.61

どういうきっかけで始めるようになったか
 発起者の身内の者が大阪の某病院で長らくお世話になり,たいへんよくしていただいた感謝の気持を,なんらかの形で報いたいと思ったことが1つである.もう1つは,看護婦不足が叫ばれていながら,看護業務の中には,まだまだわれわれにでもできる雑用が組み込まれており,そうしたことをお手伝いさせていただくことによって,専門の手を,もっと暖かく患者にむけていただきたいとの願いから,その病院へ奉仕を申し出たが,地域の病院でやってみてはということになり,広瀬先生を紹介された.幸い西宮病院で,院長・総婦長のご理解により受け入れて下さることとなったので,ある期間の準備体制を整えてから,10名ばかりの人員で発足した.昭和41年7月から始めた.

病院ボランティア活動の実際・10

市立芦屋病院

著者: 山崎たか子

ページ範囲:P.62 - P.62

 昭和42年はじめ,ボランティア活動を,この方面の大先輩広瀬夫佐子氏と中病院長との話い合いでボツボツ始あた.
 まず試験的にレントゲン室の受付から始めたが,現在は主とし病院玄関の受付で外来患者・見舞客その他おおぜいの人にいろいろこまごました案内や各所への連絡をしてもらっている.

病院と統計

患者統計の分析

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.10 - P.11

 病院経営管理の基本資料として,取り扱い患者数が最も基本であり重要な役割をもっていることはいうまでもない.そしてまた,どんな形にせよ,患者統計はほとんどの病院で把握しているものである.しかし,その分析のしかたとなるとまだ不十分であって,効果が上がっていないように見受けられる.そこで,解析目的別に患者統計の分析のしかたを説明しよう.

グラフ

病院移転作戦の成功—社会保険小倉記念病院

ページ範囲:P.13 - P.17

 病院は繁華街の中央にあるべきだろうか.交通は便利かもしれないが,騒音・排気ガス・スモッグにおそわれる.また敷地は狭く,医療の進歩を取り入れるには施設が不十分となってくる.この悪条件を切り捨て,新しい土地に新しいアイディアを生かした病院を建てた——それが小倉記念病院である.
良い環境で,高い水準の医療を提供し,そして地域社会の健康管理も担当するという理念のもとに,従来の敷地の約5倍の土地に,地土9階地下1階の病院(550床)が建設された.50余年の歴史をもつ旧病院が売却され,70で年代の発展を期待される新病院は,昭和45年11月から診療が開始された.そのとき入院患者の計画的な移転が成功したことも注目されたのであった.(北九州市小倉区貴船町1 副島謙院長)

式場病院のバラ園

ページ範囲:P.78 - P.80

 ここ,千葉県市川市の式場病院では,今年もまた3万3000m2の広い庭いっぱいに,バラのまっ盛りを迎えた.ここでは,例年バラの開花期には,バラ園を広く市民に開放している(毎年5月下旬の10日間くらい).
 食べる物にも事欠く戦後の混乱期に,せっぱつまった人の気持ちをなんとか豊かにしたいと令国に広まった‘バラ運動’にあわせ,ここでもいち早く,精神障害者の作業療法のひとつとして,バラの栽培を取り入れた.バラは1年中人の手が必要とされる.松しか育たないといわれた国府台の土地に,患者さんと職員との心をこめた丹精が,この豪華なバラ園を作り上げたのである.

第21回日本病院学会開催—1971年5月20-22日名古屋市

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.82 - P.83

 第21回日本病院学会は,文字どおり盛会裡に終わった.
 鶴舞公園のバラ園は花のまっ盛り.そのとりどりの色彩とふくいくたる香りに包まれた学会場・市公会堂の演壇もまたいっぱいの生花で飾られていた.看護学院生徒のニコヤカな出迎えに始まる学会の運営もすべてがソフトムード.ただし,日ごろの研鑽の成果を発表する会場内は熱気がみなぎっていた.シンポジウム4題.一般演題71題.

日本に病院管理を学ぶ—南ヴエトナム,チョーラィ病院看護部長 アン氏

著者: 三宅史郎

ページ範囲:P.18 - P.18

 今,南ヴェトナムのサイゴンでは日本の経済協力のひとつとして,1110床のチョーライ病院がモダンな高層病院として全面的に改築されようとしている.もちろん,日本とヴェトナムとでは,気候や風俗習慣などまるで違うので,日本の病院のようなものをそのまま作るわけにはいかないが,病院の運営・管理については,日本式のそれを取り入れたいという.
 そこで,本年4月から3か月の間,このチョーライ病院の看護部長アン氏(ヴェトナムでは,男性の看護婦さん(?)が全体の1/5はいる)が施設課長のチョン氏といっしょに日本を訪ずれ,びっしりのスケジュールを組んで日本の病院管理の実際をくまなく見て回っておられる.この日は,規模の点で似かよっている日本大学板橋病院に来られての見学である.

病院の広場

病院ボランティア活動について

著者: 三浦理一

ページ範囲:P.21 - P.21

 ‘病院のひろば’ということばは非常に薀蓄あることばと思う.昔から病院ということばのひびきより受ける暗い冷たい厳格な,いわば人を遠ざけるような感覚から‘ひろば’という字を加えただけで,地域の人びとに親しまれるような,行ってみようかという暖かい感じをいだかせる.
 現代の医療は早期診断,早期治療,予防医学へと進んでいかなければならないのであるから,恐ろしがられたり,敬遠されたりしていては病院の使命が失われてしまう.標題の‘病院ボランティア’は病院が住民とつながりを持つ,また住民の中に溶け込んでいく1つの試みと思っている.

病院建築・30

朝日新聞西部厚生文化事業団経営 社会保険小倉記念病院

著者: 青木正夫

ページ範囲:P.63 - P.67

はじめに
 55年という長い歴史をもつ病院が,全く新しい地に移築するという珍しいケースである.もともと私立の病院として発足し,戦後,厚生省が買収,これを朝日新聞西部厚生文化事業団に経営を委託し,国有民営というユニークな経営をとっている病院で,その位置は,小倉の目抜きも目抜き,100万都市最大のデパートに隣接する地にあった.公共的交通手段をとる患者には至便な場所ではあったが,騒音,排気ガス,スモッグなど都市公害としてあげられているすべての公害をうけ,そのうえ敷地も狭く,駐車場の不足はもちろん,今後の医療の進歩に対応する施設の拡充も望めないことから,移転が決意された.
 ひとくちに病院建築は10年しかもたないといわれるが,新築して10数年を経ると,大改造もしくは増築が必要となるのが一般的である.狭い敷地に建つコの字型のR・C5階建の旧病院を,新築して10数年になる今日,更新する方法として,移築するのが最善の方策であろう.市心の病院の発展方法の1つといえよう.ただ問題は利用国の変化である.地域医療施設として地域に密着していればいるほど影響は大きい.

管理者訪問・38

財団法人福井病院 染村舜輔先生

著者: 森日出男

ページ範囲:P.69 - P.69

 廊下で会った方に刺を通じ応接室に通してもらう.ところが,その方が院長先生.‘失礼しました’.この飾りけのない院長らしくない先生のムードが,職員に慕われる大きな原因であろう.あるいは,地方性豊かな病院においては,家庭的・家族的管理が必要であろう.それがたくまずして出ているといってよかろう.現に,医師の定着性の少ない地方病院でも,ここでは医師の間が非常にうまくいっていて,やめる人が少ない.‘これも,院長の人格ですよ’とは事務長の弁.
 さて,おもむろに病院の歴史からとインタビューを始めたところ,‘サァー僕何も知らんので……今事務長が来ますから’とのこと.もともと,本誌よりインタビューの予約をしたとき,‘私は院長だが,管理者ではない’と断わっていた由.病院管理は理事がやれ.院長は,診療の責任をとろうということで,医師団のチーフとして,本来の医業に専念されているようであるが,しかし,そこから生まれる病院への必然的な希望・要求は,常に理事連をつるし上げる結果となっていると聞く.ここに,日本の院長という名のひとつの解釈と,病院のあり方の一面をみるような気がする.

ミズーラだより・6

最大の国内問題

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.70 - P.71

 医療費は年間15%の上昇 1970年代は医療の年だといわれています.これはアメリカだけではなく,世界的な問題なのでしょう.特にこの国では,医療費の急激な上昇で,現在年間750億ドル(27兆円)を消費し,年間15%もそれを上昇させながら,乳幼児死亡率は世界の10位以内にはいれないとか,平均余命が日本より下回るとかの成果しか上げていないことの批判が強く,特に財政の問題では私的保険料はうなぎ上りに上昇し,しかもそれが賄ってくれるのは全医療費の1/3弱ということで,ケネディ案・グリフィス案など全国民医療保険法案が目白おしに提案されて,1972年の大統領選挙で公害とならんで最大の国内問題になるといわれています.
 百家争鳴の医療論議 そしてその変化は,ここ数年,特に顕著な気がします.1965年からの数年におびただしい数の医療関係の立法が生まれたことも,この変化の現われでしょうか(そういえば昭和23年以来の立法を大事にしている国もありますが).そして外国人から見ると,驚くほど自己の医療提供システムを効果的でない,ノンシステムであると強く批判しています.米国医療の危機,医療の貧困,病院の悪夢などと,マスコミも加担して百家争鳴の感じがします.ある意味で,この姿は進歩を促す健康的な姿ともいえるでしょう.専門家以外は批判できないという発言が見られる国との差を感じさせるといっても,あながち皮相的観察ばかりでない気がします.

麻酔科医日誌・6

社会保険点数をめぐって

著者: 山下九三夫

ページ範囲:P.72 - P.73

まず資料を‘昭和23年頃に麻酔に関する社会保険診療報酬が制定されたが,当時は日本に麻酔を専門とする医師がいなかったので,手術者の責任において手術料のほかに低廉な麻酔点数が設定されていたにすぎなかった.たとえば心臓手術の麻酔に際しても,手術料2万300円に対し麻酔料は2000円にすぎず,更に術前術後の監視,管理料もなかった.大部分の麻酔は手術料に含まれるものとの判断で,独立請求の習慣がなかったため,今日の大きな不合理が招来されている.すなわち乙表では脊椎麻酔は1512円以下の手術または処置でなければ麻酔料はとれない.また乙表には筋注麻酔や注腸麻酔の点数がない.麻酔科医師が独立して開業しても,他の病院に出張して麻酔を行なった場合,独自の麻酔料を自ら請求できない不合理がある’--
 これは昭和42年5月24日,‘緊急措置を要すべき社会保険診療報酬の資料’の‘麻酔料についての歴史的展望’として提出されたものである.

新管理技術講座・6

DIA

著者:

ページ範囲:P.74 - P.75

 管理上の実践運動 Democracy in Actionの略.‘実践デモクラシー’などと訳されている.M.J.Evans氏が提唱した.
 わが国では昭和28年ごろから取り入れられ,ある程度の普及をみた.管理技術というほどのものではなく,一種の管理上の実践運動とみてもよいものである.また,特に‘新’と銘うつほどのものでもない.しかし,一応管理の働きを任務とする者にとっては,かなり示唆に富む面があると思われるので,あえて紹介することにした.

病院の職員教育 駿河台日本大学病院職員教育資料より・18

病院の保安防災について

著者: 田中栄一

ページ範囲:P.76 - P.76

1.保安防災の重要性
 われわれの病院は,大学付属の医育機関病院で患者を収容している特殊な施設である.災害に対しては職員の1人ひとりが平素からこの予防に心がけ,常に病院を災害から守らなければならない.また災害は1人の不注意が他のおおぜいの人に大きな迷惑をかけることになる.われわれは,次のことを十分に認識し,保安防災の重要性を知っておかなければならない.
1)病院は身体不自由な患者を収容している施設である.2)われわれは患者や患者の家族から生命の保護を委託されている.3)大学病院として高度な医療を行なってゆくための医学の研究に必要とする貴重な資料を数多く保管している施設である.4)希少で高価な医療器械,器具を多く保有している施設である

精神医療と精神病院・6 座談会

私立精神病院の機能

著者: 伊藤圭一 ,   武藤寿剛 ,   岩佐金次郎

ページ範囲:P.84 - P.93

全国1300余の精神病院,23万2000余ベットのうち,8割が私立の精神病院であるという.こういう状態の中では,実際に精神衛生行政の肩代わりをせざるをえず,性格的にも機能的にも公的医療機関として働くことを余儀なくされている.ここから生じた問題が,経営の危機と医療のひずみとをもたらしている.ここで,あらためて私立精神病院は,どうした形態で存続するべきか,考えていただきたい.

研究と報告【投稿】

到着郵便物の分類

著者: 藤田延男

ページ範囲:P.95 - P.97

まえがき
 到着郵便物の分類については,すでに第20回日本病院学会において発表させていただいたが,時間の制約などのため一部発表できなかった面もあるので,ここにあらためて発表させていただく.
 郵便物が日々到着することは病院のみならず社会に存在する企業全般に共通することであり,到着する数量・内容などのおのおの異なるのは当然のことと思うが,特に病院へは全く千差万別の郵便物が到着する.

精神病院におけるこづかい銭の管理

著者: 佐々木重雄

ページ範囲:P.99 - P.103

はじめに
 精神病院において,患者のこづかい銭の管理は重要な問題の1つである.というのは,その管理が拙劣であったなら,患者と職員,特に看護者との間に,いたずらなトラブルが起こりがちであり,ひいては治療的信頼関係を乱し,病院全体に対する患者およびその家族の不信感をも,かもし出す結果になるのである.
 一方,積極的な精神科看護の面からいうならば,患者のこづかいの管理のしかたによっては,生活指導の強力な手段にもなりうるのである.

中小病院における未熟児室管理の実態

著者: 入来典 ,   空閑チエ子 ,   平山祐子

ページ範囲:P.105 - P.108

 未熟児収容施設はいかにあるべきか,その管理,看護はどうあらねばならないかということについては,すでに多くの著書に詳細に述べられている.また,日本小児科学会新生児委員会よりはきわめて理想的な未熟児管理基準が示された.しかしながら,これらの諸条件にかなった施設がはたしてどれくらいあるだろうか.大多数の地方都市や町村にある中小病院では,この理想にほど遠いのが現実ではないかと思う.
 私どもの病院においてもこれらの条件のすべてが満足されているわけではないが,私どもはこれをしかたのないことだと考えているのではない.常によりよい医療,看護ができるように努力しているが,今回その作業の一環として,全国の中小病院における未熟児室管理の実態をアンケートにより調査したので,その結果を報告するとともに若干の考察を加えたい.

病院における経営協議会システム

著者: 横山達治 ,   中村彰吾 ,   斎藤寿明

ページ範囲:P.109 - P.110

はじめに
 周知のとおり,病院における労務管理は,一般の企業に比べて遅れているといわれている.その遅れの要因を作り出しているものに,病院に働く人的構成の複雑さがあると思われる.それはあちらこちらの病院の組織図をみても,非常に多種多様の職種の存在が明らかであり,またその職種に属する人たちの学歴も多岐にわたっていることである.
 このような複雑な要因をもとにして給与基準の大きなひらきと,種々の労働条件を作り出し,ここから生ずる問題と,その解決が病院における労務管理のキーポイントとなってくる.

病院図書館

—監修 橋本寛敏 吉田幸雄 編集 石原信吾 一条勝夫 菅谷章 針谷達志—病院管理大系 第4巻 「経営」

著者: 西村豁通

ページ範囲:P.98 - P.98

 経営管理の適切な指導概説書今からちょうど10年ほど前,いわゆる病院争議の勃発が人々を驚かせた.それは聖職といわれる医療従事者が一般労働者と変わりのない存在であり,また病院といえどもひとつの経営体として,ことに‘大福帳的’ともいわれた前近代的経営のもとでは労使間の対立が必然化する要素を多分に内蔵しているということをあらためて思い知らせたのである.
 そればかりではない.わが国の医療制度全般のなかでの病院の占める位置づけや,病院の経営とその財務が基本的には医療保険制度の外枠にしっかりとしばりつけられている点もまた国民の大きな関心事となって登場したといってよい.

話題

映画"病院のはたらき"(日本大学板橋病院製作)が産業映画奨励賞受賞

著者:

ページ範囲:P.103 - P.103

 5月22日,第21回日本病院学会で紹介された日本大学板橋病院作製の映画病院のはたらきが,第9同日本産業映画コンクールの奨励賞を受賞した.
 この映画は,日本大学板橋病院が1200床という東洋一の大病院に新築されたのを機会に,病院のはたらきを目で見てもらえるようにと企画したもので,1人の女子高校生が心臓疾患を発見され,手術し,治療退院するまでのストーリーをもって構成され,病院内の組織や各部門のつながり,チームワークがどのようになされているかが,病院関係だけでなく,一般の人にもわかりやすく理解されるように描かれている.30分,カラー.

ホウピタルトピックス

米国医療の変化

著者: 八坂敏夫

ページ範囲:P.112 - P.113

 high sLandardをもって自ら信じているアメリカの医療システムも,自己矛盾を内蔵していないわけではない.‘medical care in U.S.is expensive and poorly distributed’という一句が,端的にその問題の所在を示している.
 医学的知識の劇的な増大や,それに伴う技術革新,大衆の医学への目覚めによって,医療へのneedが飛躍的に高まってくる現状に対して,医療コストの高騰のために高度な医療の医療費を支払いうる者はわずかしかいないのが実際である.これを救済する意図で発足したnational health insuranceも,人材不足・施設不足のため画餅に等しい結果になろうとしている.

霞ガ関だより

理学療法士及び作業療法士法の一部改正について

著者: R.K.

ページ範囲:P.114 - P.115

一部改正法の成立
 昭和46年3月24日,第65通常国会の参議院本会議において‘理学療法士および作業療法士法の1部を改正する法律’が可決成立し,4月1日,法律第28号をもって公布,即日施行された.この改正法の施行により,昭和40年6月29日に法律第137号をもって公布された‘理学療法士および作業療法士法’の附則第4項中,昭和46年3月31日の年月日は,昭和49年3月31日に改められ,改正後の本項の全文は,次のようになったのである.
 この法律の施行の際,現に病院,診療所その他省令で定める施設において,医師の指示の下に,理学療法または作業療法を業として行なっている者であって,次の各刀に該当するに至ったものは,昭和49年3月31日までは,第11条または第12条の規定にかかわらず,それぞれ理学療法士国家試験または作業療法士国家試験を受けることができる.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?