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雑誌目次

雑誌文献

病院31巻10号

1972年09月発行

雑誌目次

グラフ

14年ぶりに九州につどう—第22回日本病院学会

ページ範囲:P.9 - P.13

北九州市は人口104万,1963年に門司・小倉・戸畑・八幡・若松の5市が合併してできた都市である.ことしはしたがって,北九州市としては10年めにはいったことになる.第22回日本病院学会は,5月25,26日,この北九州・小倉の地で開催された.会長は九州厚生年金病院長・杉岡直登氏.5月の九州はすでに緑濃く,南の国らしい樹木の枝ぶりも盛んで,参会者の目を楽しませてくれた.
会場は1年間の研究の成果を発表する演者の張りのある声がみなぎった.本誌ではできるだけ多くの演者を追いかけグラフを構成してみた.

記念撮影

ページ範囲:P.60 - P.60

学会第1日の昼休みを利用して記念撮影が行なわれた.学会の会場となった小倉市民会館は,元の小倉城址現在の勝山公園内にあり,近くを紫川が流れ,緑も豊かである.心配された空模様も,なんとかもち,こんごの病院界の姿をそれぞれに思い描きながらパチリとカメラにおさまった.

ホスピタルショウ

ページ範囲:P.100 - P.101

ホスピタルショウは昨年に続き,こんどで2回め.会場は北九州総合展示場を使い,会期は一般市民への病院PRに便利なようにと土曜・日曜を倉め3日間をさいた.地元新聞もこの催しに注目し,1週間前から予告記事をのせ,所期の目的は達せられたように思われた.特に,血液の自動分析の実演には市民の関心が集まり,同時に九州の地にふさわしい展示もくふうされるなど,ホスピタルショウという場を通して,病院関係者以外に広く‘病院医療’を知ってもらう試みは定着した感がある.

第23回日本病院学会へのバトンタッチ—第23回日本病院学会長 河野 稔 氏

著者: 杉岡直登

ページ範囲:P.14 - P.21

 河野稔先生のお人柄はいまさら私が述べるまでもなく,日病ばかりでなぐ病院人なら,だれひとり知らぬ人がないくらい有名で,一度でも病院学会に出席した人は先生の声を聞き,北品川総合病院の活気に満ちた姿を心にきざみつけられたでしょう.先ごろ大阪で開かれた病院協会合同準備委員会のあとの夕食会で,岡山の川崎,大阪の内藤両院長とともに現代三大モーレツ院長のひとりに選ばれたことだけでも十分おわかりいただけるでしょう.
 次々期会長に内定された時から学会の構想を練り,私からのバトンタッチと同時に会場として帝国劇場を使うことをはじめとし数々の具体案を発表されました.今までにないユニークな学会になることでしょう.九州での学会で会期を2日に短縮することを強く支持し勇気づけていただいたのも先生であり,座長として誌上発表者に1分演で説を許されたのも先生でした.河野会長は2日間をフルに活用し,多数の演者に発表の機会を与えられるお考えと聞きます.華やかで内容豊富な学会なることは,だれも疑いません.ご成功を祈ります.

第22回日本病院学会一般演題抄録 第1日 5月25日(木) 一般演題 1-63

第1群検査・薬剤管理—演題1-(8)

著者: 徳岡三郎

ページ範囲:P.23 - P.27

 1.尼崎病院における検査室管理(第3報)—病理部門のあり方
 兵庫県立尼崎病院研究検査部 冨田重良○淡河秀光
 尼崎病院では診療内容の高度化に伴い,病理業務は増加の一途をたどっている.昭和46年度は組織診4,114件,細胞診6,073件および剖検126体となっており,これらの業務を制限することなく,臨床側の要望を満たすには,病理医1名では不可能である.しかし,深刻な病理医不足の現状において増員は期待できない.そこで,検査技師を組織診スクリーナー,細胞診スクリーナーおよび剖検専門助手としてそれぞれの分野で専門的にトレーニングした結果,病理医の業務に必要な時間数の約50%を節約しうるようになった.
 技師に今後のいっそうの成長を期待するわけであるが,病理部門の問題がこれで解決するわけではない.病理医の数が少ないこと,さらに,病院病理医としての道を進みながら途中で臨床に転向したりするのはなぜかということを,今こそ真剣に考えねばならない.それは,病院側の病理医受け入れ態勢——すなわち,職制の確立,研究的な仕事のための予算化,優遇措置など——の貧弱さによるものと思われる.

第2群 人事・労務—演題9-(16)

著者: 河野稔

ページ範囲:P.27 - P.32

 9.医事職員の適正配置とその周辺
福岡県病院協会医療事務研究会 福岡赤十字病院○森田 和義 永利 義明 中原 宏治江崎 栄一 古賀 正雄
 福岡県病院協会医療事務研究会は,人材難からライン管理の必要を感じ,全国114の主として一般病院によるアンケートの回答を得た.ここに,そのまとめの一部をご報告する.
 最初に3つの特徴点をご紹介する.(1)人的依存度が高い企業形態としても,経営主体により,人的構成の差が大きい.(2)求人難に地域差,男女差が目だつ.(3)賃金体系に刺激給的要素が少ない.

第3群 建築設備—演題17-(21)

著者: 副島謙

ページ範囲:P.32 - P.35

 17.病院建築設備の諸問題(5年間使用しての反省)
大阪回生病院管理部長 ○阿部 武瑛保全課長  柴田 頼一管理部係長 八尾三十郎
 当病院は創立70年の歴史を有する私立総合病院であるが,建物が老朽化したため,昭和41年12月に新築移転した.病床数356床,外来数1日平均約800名である.5年を経たので使用者側からの反省を試みた.
(1)設備はしたが使用しなかったもの——①ビルクリーナー,②ダストシュート,③喫茶室のリフト.

第4群 環境・保全・ハウスキーピング—演題22-(28)

著者: 左奈田幸夫

ページ範囲:P.35 - P.39

 22.病院環境計画(第11報)—ヨーロッパの病院環境造園について
東京白十字病院 ○藤井 常男地域計画研究所  相馬 正弘
 これまでに病院の環境計画について,造園的な立場から,日本の病院環境に関する報告を行なってきたが,今回は1971年7月および10月,ヨーロッパの都市病院を中心に,病院環境の視察をした結果により,日本の病院環境造園に参考となる事例について,スライドによりその造園的手法を述べる.
 たとえば,ロンドンの市街地に位置しながらも,森林の中にあるような,イギリスのロイヤル病院は,樹木にかこまれた芝生の広場が,入院中の老人と見舞人や地域社会の人びととのふれ合いの場となって,老人にありがちな孤独感をやわらげている.同じく,イギリスのセントバーソロミュー病院は,緑樹におおわれた中庭をもち,ベッドのまま,あるいは車いすで,病室から中庭へ出て,読書に,団らんに,昼寝に,患者の生活を中心に構成された造園手法である.

第5群 看護管理 I—演題29-(35)

著者: 井上ユキエ

ページ範囲:P.39 - P.42

 29.退院指導と通院患者指導の一貫性について
虎の門病院看護研究委員会代表 高橋 正子
 繁雑化する医療の中で,問題点を残したまま退院する患者が少なくない.入院から外来通院に至るまでの継続した保健指導の必要性を痛感し,看護研究委員会では年間の研究テーマとして取り上げた.
 これを実施するにあたり,病棟と外来間の一貫した指導をする,全科を一形式におさめ繁雑さを防ぐ,1人の患者に対し3交代の看護体制の中で誰もが系統的に指導にあたれるようにする,などの目的のもとに退院指導用紙を試作し検討を重ねた.第1案,第2案と改良を加え,現在の業務の流れの中に適応させることを前提として,1つのサイクルを決め実施した.その間病棟と外来のスタッフの意見の交換会を行なって意志の統一を図った.

第6群 診療管理—演題36-(44)

著者: 井手一郎

ページ範囲:P.42 - P.47

 36.牧田総合病院における予防医学活動(第5報)——人間ドック受診後の成人病教育入院について——
牧田総合病院予防医学センター○大野 君江 熊谷八千代田村 和恵 高木 初子
 当院の人間ドックは開始以来13年を経ており,受診者総数も1万2,000名に達している.
 私たちは,既に本学会で人間ドック受診後の追跡検査について,その成果を報告してきた.今回は受診後の死亡例を検討し,追跡検査でコントロール不良例に対して教育入院の必要性を痛感し,その内容と入院状況について報告する.

第7群 病歴管理—演題45-(50)

著者: 高橋政祺

ページ範囲:P.47 - P.50

 45.各科共通診療録の管理と実態(第3報)
日本バプテスト病院榊田 博 ○平島 紀子 大町 文子
 1患者1病歴制診療録の長所が診療の実際面にどのように具現されているかを当院での16年間の管理実績をもとに調査した.現在保管している診療録を登録後5年未満,6-10年,11-16年の3群に分かち,それぞれの群の中で登録時0歳(当院で出生),15歳未満,60歳以上の者を選び,保存期間中の診療録の活用頻度を観察した.
 診療録の活用度は最近5年間に1回以上受診して業務のために提供された数の全診療録に対する比率で表わした.登録時15歳未満および60歳以上であった者の診療録の活用度は,第Ⅱ群すなわち登録後6年から10年経過した診療録において他のいずれの群よりも活用される頻度が高く,第Ⅲ群すなわち登録後11年から16年経過した場合に,10年未満の第Ⅰ群,第Ⅱ群に比べて活用度が低下する傾向にあることが判明し,法定保存期間5年を超えて経過観察するとき,小児科受診対象年齢層の遠隔観察の対比に1患者1病歴制診療録が有利であることを知った.

第8群 事務管理—演題51-(63)

著者: 阿久津慎

ページ範囲:P.50 - P.57

 51.武蔵野赤十字病院における過去10年間の入院部門医療行為別稼働統計上の推移とその分析
武蔵野赤十字病院森 直一 田中幸二郎 ○緒方 広市
 昭和29年以来,1行為1伝票制を基に作成してきた.部門別,医療行為別の稼働統計のうち,入院部門医療行為別稼働統計を昭和37年より昭和46年の10年間,その推移を稼働額と構成比の変動に求め,その問題点を探ってみた.昭和37年の型が正しいとか,昭和46年の形が正しいとかの論議はともかく,昭和37年を100とした場合の年次毎指数,また構成比がどういう形の変化を示し,10年間の流れは病院としてよい傾向になっているのか,またはその逆によくない傾向になっているのか,この2つの問題を追ってみた.
 まず入院部門の総稼働について,指数の上で約2.4倍に達しているが,途中の40年から45年の間の5年間の物価指数と賃金指数をあてはめていると,総稼働は物価指数を上回り,賃金指数に対しては下の位に位していることは,病院経費のうち約50%を越す割合を示す人件費を考え合わせると現段階でももちろん,今後社会の趨勢として人件費の上昇が見込まれている以上,その差はますます開くことが予想され憂慮すべき事態といえる.

第2日 5月26日(金) 一般演題 64-98

第9群 看護管理Ⅱ—演題64-77

著者: 緒方カヲリ

ページ範囲:P.61 - P.70

64.患者の安全をめざして
関東中央病院岡本 恒美 中島シヅオ 大屋キイ子森田 歌子 林 玉江 阿部 鈴子甲村 節子 浅島 郁子 半田理恵子○平沢ユキエ 柴田恵美子
 患者の安全を図ることは医療に従事するものの当然の任務でありながら,注意の不足あるいは器械器具の整備不十分などで医療過誤のそしりを耳にする.病院は未熟児から老年層までの方がたが,なんらかの不安を持って集まった社会である.私たちは患者が安全に心身ともに安心して治療看護が受けられることを願い,当然のことながら患者の安全を目標に努力してきたが,その具体的一部を発表する.

第10群 病院給食—演題78-(87)

著者: 赤星一郎

ページ範囲:P.70 - P.76

 78.病院中央配膳による新しい試み
北里大学病院栄養科 ○城井美子 脇坂由紀子青木弥生 田嶋久子
 患者サービスをモットーに,医療チームとして栄養業務を遂行するため,次の方針,中央化,電算化,省力化,準衛生地区,食品基準案作成,専門職などを定め,日常業務を実施しているので,その幾つかを紹介する.

第11群 職員教育—演題88-(90)

著者: 古賀康八郎

ページ範囲:P.77 - P.78

 88.卒業後の臨床教育のあり方
新千里病院長 吉岡 観八
 医学教育の概念としては,次の3つの場合が考えられる.1)卒業前教育,2)卒後すぐ臨床教育,3)いわゆる生涯教育.
 また,教育病院の概念については,かつてインターン病院というのがあったが,これは廃止された.現在は国公私立大学付属病院以外の実地修練病院と,さらに内科学会専門医制度準備委員会の規定する教育病院というのがあることはご承知のとおりである.私はこの際,これら教育病院の立場からみた広義の卒後臨床教育のうち,いわゆる生涯教育に重点をおいて検討した.

第12群 救急医療—演題91-(98)

著者: 土屋呂武

ページ範囲:P.78 - P.82

 91.第一線病院における救急医療活動を阻害する内外因子について(第2報)
社会保険小倉記念病院整形外科 手島 宰三
 昭和30年ころから交通災害が急増し,その特徴は歩行者ことに幼児や老人が被害者となり,全身損傷ことに脳脊髄損傷を合併する症例が多い.また都心部では減少傾向があっても,ドーナツ現象といわれるように地方小都市に多発しており,従来の公的第一線病院の救急医療施設や体制では不備であり,適切に処置できない.
 個人診療所,公的病院と最終病院との間には目下のところ連絡がなく,患者の移行,ことに難治な脳脊髄損傷患者の移行が悪く,病床の回転が悪くなって長期臥床患者の看護に多くの人手を要し,医師も多くの複雑な書類をもてあましているために,救急患者の受け入れにいっそう抵抗を覚えている.

パネルディスカッション

専門ナースの現状と将来

著者: 前田マスヨ ,   吉岡ハツ子 ,   今村節子 ,   森日出男

ページ範囲:P.84 - P.93

 司会(前田) ただいまから,標題にございますテーマにつきまして,パネルディスカッションを始めたいと思います,不慣れな点をおゆるしいただきまして,ご協力をお願いいたします.
 さっそく講師の先生方の簡単なご紹介をさせていただきます.臨床の立場から,九州中央病院副総婦長の吉岡ハツ子先生.次に医師の立場から,国立京都病院で,診療と共に病院管理の分野にもご活躍でいらっしゃるので,すでに皆さまよくご存じの森日出男先生です.次に,現在鹿児島女子短大の教授をしていらっしゃいますが,この3月までは九州医療短期大学看護学の教授をしていらっしゃいました鹿児島の今村節子先生でございます.今村先生には長年看護教育をなさったお立場からこのテーマについて将来の展望にもなるようなご意見まで承りたいと存じております.

特別講演

病院における精神身体医学的アプローチ

著者: 小川暢也

ページ範囲:P.94 - P.99

 杉岡直登学会長 最近,精神身体医学が急速に発展してまいりました.われわれもこの精神身体医学をどういうふうに病院にアプローチするかということを,小川先生に特別講演をしていただくことになりました.
 小川先生の略歴をご紹介申し上げておきます.小川先生は昭和28年九州大学を卒業され,29年に九大の第一内科に入局,34年から2年間,アメリカ合衆国のペンシルバニヤ州ピッツバーグ大学で精神身体医学をご研究になりました.37年に帰国,われわれの九州厚生年金病院に心身症センターを設立し,非常勤の医師としておいでを願っているわけでございます.昭和42年に九州大学薬学部ができまして,その助教授に就任されて,向精神薬の基礎および臨床について研究しておられますし,現在もなおわれわれのほうの精神身体医学関係のめんどうを見ていただいておる方でございます.

座談会 第22回日本病院学会をかえりみて

日本病院学会で獲得されるものは何か

著者: 緒方カヲリ ,   鍋島健一 ,   黒田幸男 ,   塚本俊明 ,   赤星一郎

ページ範囲:P.102 - P.108

第22回日本病院学会は九州・小倉市で開かれました.九州での病院学会は第8回(福岡市・三宅博学会長)から14年ぶりです.演題も多く集まり,やむをえず‘紙上発表’形式という試みも採用しての2日間でした.病院人が学会を通して何を引き継ぎ,受け渡していくのか,学会をふりかえって話し合っていただきました.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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