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雑誌目次

雑誌文献

病院31巻4号

1972年04月発行

雑誌目次

特集 老人医療と病院

老年者の医療

著者: 村地悌二

ページ範囲:P.22 - P.26

●はじめに
 戦後のわが国では,乳幼児期や青年期の死亡率が著しく低下し,老年期に達する人びとの数が増加したが,この年代の死亡率はむしろほとんど改善されていない.たしかに健康な老年者に接する機会も多くなったが,同時に,疾患に悩む年老いた人びとの数も疑いなく増しており,医療の中に占める老年者の比重は年とともに大きくなってきている.
 こうした老年者の医療はどのような態勢で行なわれるのが望ましいか,またその中で病院がいかなる位置を占めるべきか,というような問題については,他に適当な論者がおられると思う.本稿では,老年期の疾患ならびに老年患者の特性に関し,かねがね感じている2,3の基礎的な事項を記して,老年者の医療を考える上の参考に供したいと思う.

<老人>に関する主要文献リスト—単行本—

著者: 編集部

ページ範囲:P.26 - P.27

 ‘老人医療と病院’を特集するにあたり,参考文献リスト(単行本)を,"心と社会"誌のご好意でここに転載する.リストアップの任にあたられたのは,国立武蔵療養所・佐々木敏明氏,神経研究所・外池真理子さんである.

老人病棟の看護と患者の取り扱い

著者: 深谷ナカノ

ページ範囲:P.28 - P.33

●はじめに
 若い人の疾病は人生の一経験であり,老人では疾病そのものが人生だといわれている.ここ数年来,一般社会でも,成人(老人)病に対する問題が関心事になってきている.反面,社会生活の合理化に伴い,核家族とか,断絶とかの現状の中で,老人が疾病をもって入院し,人生の一部を病院という特殊環境の中で生活する場合,私たちは,いかにしてこのような患者を理解し,その問題と取り組み,適切な看護をなすべきか,十分な検討が必要である.
 当施設では,過去数年来,老人のリハビリテーション(以下リハと略)患者を多数収容しているが,種々雑多な問題をもっている老人看護は,非常に複雑で,高度な科学性に基づいた看護の実践が要求されている.老人患者は,当然個別的な問題を抱えているが,老人患者一般についても,社会(家族)的問題,老人特有の心理の問題,更に,合併症の問題などが山積している.したがって老人看護は,老人患者特有のニードに見合った適正な看護を与える必要がある.それには,専門技術的要素と,家庭看護の延長的な補助的要素を持つものがあるが,そこで,役割を果たすチームの編成は,助手要員を多数必要とする点が特徴的となる.つまり,老人患者が増加している臨床看護の現在における看護力の適正配置の手段とも関連する.

老人患者に寄せて

著者: 土屋照

ページ範囲:P.32 - P.33

 社会的に活躍を終えた後,安らかな晩年をとだれもが願っているその中で,不幸にして余生を病院で過ごさなければならない老人の方が最近特に多く,私たちの病院でも入院患者の70%が高齢者で,老人病対策に病院あげて取り組んでいるのが現状である.生命の尊厳,老人福祉と大きく叫ばれている昨今,私たちの老人看護の過程をみつめてみた.
 去る昭和42年,結核の高齢者の対策として院内の最適の敷地に暖房付2階建90床の病棟が完成され第一歩を踏み出した.老人のために建物はすべて手すりが備え付けられ,年々増加する老齢者に今はなくてはならぬ役目を果している.個室はともかく,大部屋は4人のコーナーになっており,重症度,年齢,性格,家庭状態など考慮して,ベッドの配置を定めるのであるが,長期療養のため特に女性は愁訴が多くなり,時々ベッドの移動を行なっている.サンルームは特にないが病室の南側を利用し,各々お茶を飲み交流している.

てい談

老人患者に占められつつある病院の進むべき道

著者: 諸橋芳夫 ,   一条勝夫 ,   岩佐潔

ページ範囲:P.34 - P.42

 人口の老齢化に伴い,各病院のベッドが老人に占有され,急性患者その他の入院にさしつかえているときく.ましてや老人医療費10割給付ともなれば,この傾向はますます助長され,病院医療は危機にひんするであろう.そこで,このような現状を打開するにはどうしたらよいか,現状から分析していただいた.

対談

メディケアの意味するもの

著者: 紀伊国献三 ,   平石長久

ページ範囲:P.44 - P.50

 メディケアは1966年アメリカにおいて65歳以上の老人に対して発効された.いわば自己負担を含む老人医療給付制度であるが,今日まで経過してきて,さまざまな問題を露呈し始めている.これらの問題点をさぐるとき,わが国の今後の老人医療を考える上での大きな示唆が得られそうである.

老人医療を支えて・1

老人(齢)患者に対するメディカルケースワーク

著者: 鵜沢立枝

ページ範囲:P.52 - P.52

 ‘老人’とは人間の存在状況を年齢と役割の関係状況から規制し分類した一種のsocial status (社会的身分・地位)である.医療行為は,いかなるsocial statusの患者に対しても人間の一回性を重視し,その患者の性格や歩んできた生活歴,また歩もうとしている方向性を尊重する形で計画・施行されねばならない.メディカルケースワーカーの役割をこの医療行為との関連で考えれば,上記の理念を少しでも多く実現度の高いモノにしうるよう機能することといえる.ケースワーカーがその役割を遂行するためには,人間に関する共通性の知識と個別化の技術とが不可欠である.この共通性とは,人間に関する科学的知識(主に心理学,社会福祉学,精神医学などであるが)によるモノであり,個別化の技術とは,個人たる独自性を尊重することから発するアプローチである.
 では,上の‘老人’というsocial statusに属している患者をクライエント対象者としてケースワーカーが迎えた場合,この共通性と個別化のポイントは,どのようにおかれメディカルケースワークとしてのアプローチがなされていくのか,その概略を次に示したい.

老人医療を支えて・2

老人の麻酔と手術

著者: 真壁仁

ページ範囲:P.53 - P.55

 老人とは幾歳以上をいうのか,これを定義づけることははなはだむずかしく,50歳から老化現象は既に始まっているといわれるが,40歳台で視力が衰えてきて,周囲から次第にお年寄り扱いをされる人もあり,生年月日だけで老齢層を決めるには健康上の個人差がありすぎて不適当であろう.
 60歳以上を老年期とする人,70歳以上を老年期として各種の報告をしている人などと一定していないが,われわれは平均寿命が70歳を越している今日,70歳以上を高齢者と考えている.

老人医療を支えて・3

むずかしい老人患者との接触

著者: 手塚郁

ページ範囲:P.56 - P.57

 基準許可病床数250ベッドをもっているこの有隣病院には,1日入院222名,外来41名の患者がいる.その入院患者のほとんどが胸部疾患の患者で,一般疾病の患者は24名(10.8%)にすぎない.これを性別に分けると,男139名,女83名になる.
 この222名の入院患者のうち,60歳以上の患者は113名(50.9%)で,このなかに56名(49.6%)の臥床患者が含まれている.これは全臥床患者73名の76.7%という高い比率を示している(表1).

老人医療を支えて・4

老人と病院給食

著者: 井上圭太郎 ,   長崎徹子

ページ範囲:P.58 - P.59

●はじめに
 齢をとると,健康のときにも命に対する関心は大きい.これが‘入院’ということになると,死に対する恐怖となる.老人性疾患は長期であり進行性である.その上単一疾患のみでなく合併症が多い.そこで老人の病院給食に関しては心身両面より諸種の配慮を要する.

病院と統計

職員数—管理のための統計・2

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.10 - P.11

判断の基準
 管理者にとって,各部からの増員要求ほどさばきにくいものはないようである.それぞれ管理者を信任して,部門業務の執行をまかせている以上,業務上の必要性を強調して増員を要求してきた場合,かなえてやらなければならぬ義務感はあるものの,その要求が適切妥当なものであるかどうかの判断がつきにくい.開設者も院長も間接にしか関与していないから,直接管理者の言い分を第一に尊重しなければならないとしても,なんらかの判断の客観的基準がほしいわけである.
 職員数に関する判断の基準としては, (1)制度的な基準 (2)組織や業務体制から決まるもの (3)業務能率が考えられる.

グラフ

製鉄の町,八幡の病院—九州厚生年金病院

ページ範囲:P.13 - P.17

北九州工業地帯の中心地,八幡に九州厚生年金病院はある.数千本の臣大な煙突が林立し,モクモクと黒煙をはき続けるありさまが,病院の屋上からながめられる.製鉄の町,工場の町,労働者の町の病院である.昭和30年,厚生年金病院としては,東京・大阪に次いでの誕生.当時,整形外科という領域はまだ新しく,大学の講座としてもっている所も多くはなかった.そこで整形外科を主体としたこの病院は,九州のみにとどまらず,中国・四国地方から集まる患者でにぎわった.リハビリテーション施設など,今は,ここよりもりっぱな設備を整えた病院も多くなったけれども,まだまだ当初のいきごみは十分感じられるほど活躍している.
昭和39年心臓センター,44年には成人病センターをつくった.そしてまた,日本ではいちばん最初ではないかと思われる"吸入療法"も始められた.ぜんそくなど,慢性気管支炎の患者のためである.いずれも,住民の必要性に応じてつくられたものである.院長は,もう一歩進めて,患者が来るのを待つだけでなく,病院のほうから出かけていくことも考え始めておられるという.身動きのできない老人の患者がふえてきたためである.老人は,ここでも大きな問題となっているのだ.

愛知県立総合看護学院

ページ範囲:P.78 - P.81

名古屋駅から地下鉄に乗り約20分,名古屋大学,社会福祉大学,名城大学などの集まる文京地区に,それらの大学とは少し違った趣きでこじんまりとした建物が,すっきりとみえる.これが,愛知県立総合看護学院である.井上すゑ子副学院長は,"おそらく日本一の施設と設備をもった学院でしょう"と,胸を張って語られる.
"総合"の名のとおり,公衆衛生看護学科(1学年定員40人),臨床看護学第一科(高看3年,40人),臨床看護学第二,三科(進学コース2年,各40人,4月と9月に入学),臨床看護学第四科(進学コース定時制課程3年,40人)が,併設されている.昭和46年9月に開学されたばかりなので,高看の学生は,まだ2年生までしかいない.設備費だけで4,000万円を要したというだけあって,中材,手術室,標本室など,指導にみえられる外来講師が,自分の病院にもないようなものまである,と驚かれるほどだという.だから,看護婦を志望する学生には,これらの設備を生かすためにも,総合学院の名を冠し,1か所に集めて教育をする.

病院管理学講座の誕生を祝して—東京医科大学 丹羽平氏

著者: 永沢滋

ページ範囲:P.18 - P.18

 東京医科大学において,このたび病院管理学講座が新設され,丹羽平先生がその講座主任に就任されたことは,医学教育,特に臨床教育上はもとより,わが国病院の機能向上のためにまことにご同慶にたえないところである.
 周知のように,先生は放射線医学を専攻されながらも古くから病院管理学に興味をもたれ,その広い視野と深い洞察力と特に温厚なご人格は常に職員間の融和をはかられたことなど,当時の馬詰院長の認めるところとなり,自来院内に管理科が設置され,それを主宰して院長を援け今日のゆるぎない大学病院の発展に寄与したことはまことに甚大なものがある.研究業蹟も多方面にわたり,各部門の動態研究,看護問題,手術管理の問題などがあり,その豊富な経験を生かして今後の研究に学会としても大きな期待をもつものである.

時評

大規模病院の限界

著者: せん

ページ範囲:P.60 - P.60

 最近,病院建築がまた盛んになってきた.数年前にもブームらしきものがあったが,それは戦後の応急施設の改造であった.
 今回の特徴は,著しい大規模化と近代的装備化である.単に木造建物を耐火構造にするとか,老朽建築の建替えとか増築といったものでなくて,医療機能の向上とか近代化を目ざしたものである.つまり診療専門科の分化と増加,検査など診断治療機能の著しい発達をとりこむことが主たる目的である.建物が狭隘で適合しないという機能的な陳腐化が最大の動機である.

私的病院からのレポート・4

—広島・医療法人あかね会 土谷病院—人工透析の口火を切った病院

ページ範囲:P.62 - P.68

増築はしたが,増床はしない
 一条 ここは何床おありですか.
 土谷 許可ベッドとしては220床ですが,実質は140ぐらいです.看護婦の確保がなかなかむずかしいんです.許可ベッド数に対する看護婦数は充足しているのですけれども,私どものような外科の範囲ですと,入院患者4人に対して1人ではとても足りません.220入れていいわけですけれど,実際問題としては,220入れますと機能を失いますので,140ぐらいしか入れてないと思います.

管理者訪問・49

市立四日市病院院長 久野 馨 先生

著者: 森日出男

ページ範囲:P.69 - P.69

 名古屋より近鉄に乗りかえ四日市市へ.これが四日市喘息で名をはせた公害市かと,その青い空にややとまどいを覚える.市立四日市病院は駅より歩いて約10分.鈴鹿国定公園湯ノ山温泉郷に通ずる街道に面している.
 病院は昭和11年14床の市民病院として発足,昭和14年には別の地に63床の市立四日市病院がつくられ,昭和31年現在地に新病院建築開始,先生が院長として赴任された昭和35年にはまだ130床で総合病院といえない状態であったが,現在は一般277床,結核80床,伝染45床の総合病院である.

看護管理・4

はたちになった日赤幹部看護婦研修所

著者: 編集部

ページ範囲:P.70 - P.71

 日本赤十字社幹部看護婦研修所は,ことし,20周年を迎える.この20年間にここを卒業した者は501名,いまも40名が学んでいる.20周年を迎えての記念行事の一環として,同窓生たちで記念誌を作ろうという計画も進んでいる.

医事業務あれこれ事例集・4

新患受付業務の省力化

著者: 町支義明

ページ範囲:P.72 - P.73

新患受付を一本化できないか
 新患受付という窓口は,当該医療機関へ初めて受診に訪れた患者さんを迎えて,診察申し込み書の受付,受診手続き上の相談および指示,被保険者証または各種資格証明書による受給資格の確認および保険証などの保管のほか,診察券,カルテ,会計カードなどの帳票類の作成を定められた受付時間内(おおかたの病院が午前8時30分から11時30分までにしている)においてスピーディに行なわねばならないところであることは,皆さん既にご存知のとおりである.
 したがってこの窓口の業務がモタモタしていて,スムーズにことが処理されないと,第1に診療に支障を及ぼすことになるし,第2に患者の行列待ちが続くことになる.だからいきおい診療を急ぐ患者側に病院のサービスが悪い,という印象を与えることになるし,また待たされるという感情的なイライラや苦痛がエスカレートして,病院に対する信頼まで落とすようなことにもなりかねない.

検査室の窓から・4

検査室拡充整備3か年計画

著者: 冨田重良

ページ範囲:P.74 - P.75

専門別指導者の獲得
 研究検査科において最初に感じた矛盾の1つは,生化学検査担当の女性薬学士たちを大して化学的素養のない私が指導せねばならぬことであった.こんなことで彼女らの特性をよく発揮さすことができるのだろうか,という反省は,彼女らの先輩から指導者を得たいとの願望に変わった.
 臨床生化学検査の研究は,今まで主として医師が行なってきただけに,分析化学の立場から再検討してもらう必要はあるだろう.一方,薬学側より考えてみても,病院内に薬局以外の新しい分野が開けることは歓迎されるはずである.臨床生化学検査というこの将来性に富んだ分野を,お互いに協力して切り開いていってみたら……

今月のニュース

日本医師会会長 武見氏9選/日本医学教育学会の生涯教育に関するワークショップ開かる

著者: かず

ページ範囲:P.82 - P.82

 第53回日本医師会定例代議員会が4月1,2日の両日,東京・神田の日本医師会館において開催された.この代議員会では,会長選挙がとり行なわれることになっていたが,渡辺真言東京都医師会長ら7名の方か立候補を表明し,日医内部での武見批判のすう勢が注目されていた.選挙の結果,武見氏か有効投票(総数200)199票のうち142票,渡辺氏が57票と,武見氏の9選が決まったものである.これにより,昭和32年4月から引き続き,会長としてむこう2年間その任にあたることになった.なお,副会長は熊谷洋(現),松川金七(現)の両氏が当選を決めた.

病院史のひとこま

大学における病院管理教育の芽ばえ

著者: 島内武文

ページ範囲:P.83 - P.83

病院管理学教育の必要性
 昭和24年6月に厚生省病院管理研修所が開設され,全国の病院長の研修が始められたのは,わが国の医療史上画期的なことであった.その間に感じられたことは、病院管理の改善には病院医師の理解が最も必要であるということであった.医師は医療に際して最も中心的な役割をもち,ことにわが国においては病院の管理も医師たる院長によっていて,病院のあり方に最も大きい影響力をもっている.院長が,それぞれの病院において医療の改善を試みる場合にまず遭遇するのもしばしば医局の厚い壁であった.
 しかしながら当時研修計画を立てる際,院長について予定できる期間はせいぜい1週間までであって,日常診療に追われている医長・医員についてはなかなか研修の余裕がない状態であった.そこで,医学部における医学教育において,医療のあり方,病院管理の改善について教育が行なわれる必要があるということになった.

座談会

専門病院をめぐる諸問題

著者: 宇山理雄 ,   鎌田秀雄 ,   田中孝 ,   江草安彦 ,   森日出男

ページ範囲:P.85 - P.95

一般病院あるいは総合病院に対置するものとして,専門病院と称する,高度な医療技術の提供を標榜する施設がそちこちに誕生している.しかし,この‘専門病院’をとらえてみても,医療の中での位置づけあるいは機能など,かなり曖昧なままに動いているのが実情のようである.いまここであらためて,これら専門病院がどんな問題をかかえているのか,考えてみるのもたいせつなことなのではあるまいか……

病院建築・39

チョーライ病院

著者: 石丸健雄

ページ範囲:P.97 - P.101

サイゴン市の国立チョーライ病院
 エール・フランスかベトナム航空で,羽田から7時間くらいでサイゴン市上空に達する.サイゴン市は,サイゴン河の河口から50kmくらい上流にあるが,この河は大きい船もさかのぼれる.大陸特有の曲がりくねった河であれる.人口は100万と他からの避難民を吸収して約400万といわれる.戦時下で街は汚なくなったが,食糧豊富で,日本製オートバイがはんらんしている.
 チョーライ(CHO-RAY)病院は,ベトナム共和国最大の約1000床の国立総合病院で,市の第5区(昔は隣の町ショロンCHO-LON)にあり,病院はほかにもある(図1).パビリオン型の旧式病院で,古いのは1900年の建築が残っていた.

精神医療の管理・4

自閉症児の外来治療と指導

著者: 十亀史郎

ページ範囲:P.103 - P.108

 昭和39年,三重県高茶屋病院で児童精神科病棟をもち,あすなろ学園として,外来をも含めた診療に携って以来,早いもので,もう9年目になる.その間自閉症といわれる子どもたちの治療にあたってきたが,ここで.自閉症の治療法といった技術的な問題について書く前に,その技術の生かされる場を形成し,条件を整えることが重要であることを申し上げておきたい.こうした児童精神科医療をすすめていくには,まず,どうしても児童精神医学を専攻する医師,その他の特に訓練された職員が必要であり,更に,その治療管理が明確に有機的・独立的単位を構成する必要がある.これを一般の精神科治療の延長線上に考えたのでは,その治療は,まず運営面から日を見ずして委縮するにちがいないであろう.
 ご存知の方には今さら申し上げるまでもないが,この自閉症については種々の見解があり,それが一応43年であったか,これを疾患単位としてでもなく,性格としてでもなく,症候群としてみる点で,おおかたの一致がみられている.原理的にも器質的側面,養育的側面,その他多種の背景があると想定されるものであり,その改善可能性についても,症状・年齢によって相違がある.したがって,その指導方法は各個人によってかなり違うところがあって当然だが,この原稿の目的から,以下に述べるような一般論をあげるにとどめておく.

報告

WHO地域セミナーに参加して—第2回 病院管理と地域計画

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.109 - P.111

会議出席の人びと
 昭和46年11月19日から同29日までマニラのWHO西太平洋地域事務務局で第7回地域セミナー公衆衛生管理‘病院管理と病院計画’(Seventh Regional Seminar on Pu-blic Health Administration:Hospital Administration andPlanning)が開催されて,わが国から私(岩佐)と厚生省医務局総務課の仲村英一技官とが出席した.私は昭和38年5月に医務局病院課の神辺嘉秋技官とともにやはりマニラで開催された‘公衆衛生分野における病院の役割’1)というWHO地域セミナーに出席したことがあるが,病院管理に関連したセミナーとしてはこれに次ぐものであるので,Second Regional Seminar on HospitalAdministration and Planningとも呼ばれていた.本来は11月18日から開催される予定であったが,17日にマニラ空港のストがあって1日開催が遅れたのであるが,次の日曜日にも会議を続行するといった熱心さで29日には予定どおり終了した.
 地域の18か国から24名が出席した.各国からの出席者はそれぞれの政府が推薦した者で政府職員も多かったが,政府代表としてではなく個人の資格でこの会議に参加し自由に発言することになっていたのは前回と同様であった.

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昭和47年度日本病院協会役員名

ページ範囲:P.112 - P.113

社団法人日本病院協会
会長 東京 神崎 三益 武蔵野赤十字病院
副会長 茨城 内藤 比天夫 茨城県立中央病院

霞ガ関だより

診療報酬の改正

著者: M.O

ページ範囲:P.114 - P.115

改正に至るまでの概要
 診療報酬体系の適正化に関するいわゆる‘審議用メモ’に端を発した1か月間の保険医総辞退という健康保険の歴史上始まって以来の事態が収拾され,半年ぶりに中央社会保険医療協議会(以下中医協という)の第46回総会(昭和46年8月5日)において,診療報酬問題について改めて,各側から審議項目ならびに意見を提出するということで意見の一致をみた.続いて,第47回総会(昭和46年8月13日)の席上において,支払者側および診療担当者側のそれぞれから診療報酬の適正化についての審議項目が提出されるとともに,これに対する具体的な討議が開始された.以来中医協においては,診療報酬体系の適正化と引上げ問題とを交互に審議することとなったが,昭和46年9月30日の全員懇談会以降は,これらの問題を同時に並行審議することに決定するとともに,昭和46年10月9日の全員懇談会の席上においては,中医協の会長から特に発言があり,診療報酬の引き上げおよび薬価基準の改定を昭和46年12月から実施するという目標で審議を促進してほしい旨の協力依頼がなされた.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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