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雑誌目次

雑誌文献

病院31巻7号

1972年07月発行

雑誌目次

特集 患者を護る

患者環境を身近にふり返って

著者: 前田マスヨ

ページ範囲:P.32 - P.36

●はじめに
 ‘病院の科学的管理技術’(倉田正一著,医学書院刊)より"ブレインストーミング"を引用させていただく.
 ‘環境条件は思考をときには促進し,ときには阻止しゆがめる作用をもっている.周囲の独創的活動が高くなるとそれに刺激され独創的活動は高くなる,新しい考案が作られるとただちに別の方法で新しい考案の作られる例がきわめて多い.これは新しい思考発表が次の思考を勇気づける事実を示している.科学技術の発展が加速度をつけて進行するのも一つの発展が次の発展を促進するためである.同じ環境に長く生活すると思考発展が徐々に減退することが起こる.マンネリズムとなるとさらに従来の方法から脱却することについて,従来の考え方を逆にしたり縮小したり,あるいは変更するもので以前の物の範囲,それを中心とした領域で新しい考え方をすすめる方式や逆に従来の考え方に束縛されず自由に新しい方法を発見することも重要である.(略)発見に必要な要素が無限といってよいほど多数あるため,そこから必要なものを見つけ出すことは多分に幸運が関係する’と.

病院人は患者を軽視していないか

著者: 大図重弘

ページ範囲:P.38 - P.47

●はじめに
 編集部より表題のようなテーマを与えられたが,本当に病院人によって患者は軽視されているのであろうか,それとも軽視されていないのであろうか.病院人が決して患者を軽視していないにもかかわらず,患者である国民が軽視されていると思いこんでいる場合もあるし,逆に,病院人が軽視していないと思い込んでいることが実はよく考えてみると結果的に患者を軽視していることになっている場合もある.2-3の例を取り上げて考えてみたい.

座談会

死への配慮

著者: 石井兼央 ,   三浦勇 ,   中村ヒサ ,   光永慶吉

ページ範囲:P.22 - P.30

 医療技術が専門化し細分されていく今日,とかく患者の心理面の配慮がおろそかにされがちであるが,特に回復の望みの薄い患者,あるいは死期の迫っている患者に接するとき,技術をこえた,さまざまな配慮が必要になってくる.

入院生活とプライバシー

著者: 柳瀬禎子 ,   森田松実 ,   大図重弘 ,   小滝美智子 ,   紀伊国献三

ページ範囲:P.48 - P.57

病気を直してもらうためには,こんなことまで我慢をしなければならないのか——病室の白い天井を見つめながら唇をかみしめた経験をもっている人は,かなりおおぜいおられるのではあるまいか.世の中の技術万能主義に毒されて,かんじんの患者の神経をいたわることが忘れ去られているからである.
 このあたりの告発も含めて,患者のプライバシーとその周辺を論じていただこう.

病院と統計

傷病量の動向

著者: 前田行雄

ページ範囲:P.10 - P.11

 病院や診療所で受療した者だけでなく,買薬で治療した者,薬も飲まずに寝ていた者などを含んだすべての傷病量をとらえるものとしては国民健康調査がある.この調査は,毎年1回10月頃に行なわれており,世帯を通して観察する傷病調査である.各世帯には,あらかじめカレンダー式調査票が配布され,各世帯員ごとに毎日の健康状況を自計し,さらに調査員が各世帯を訪問してそれを確認し,別の調査票に転記する方法をとっている.なお,この調査でいう傷病の定義は次のとおりである.
1)身体または精神が異常状態になったため,なんらかの治療処置をした場合.2)身体または精神が異常状態になったため,治療処置はしないが床につくか,1日以上日常の業務を中止した場合.

グラフ

病院高層化への挑戦—順天堂医院新館

ページ範囲:P.13 - P.17

 市街地の病院は,敷地面積を増すことの困難さから,いきおい高層化していかざるをえない.高層化によって生まれた敷地も,危険物の燃料,医療用ガスなどの大貯蔵庫,医療廃棄物の処理場,駐車場など法的にも必要なものが,あとからあとからめじろおしに顔を出し,当初は空地は緑の広場にと考えながらも,いつのまにかその構想も消えてしまうことになる.

1000床を有する16階高層病院の完成—国立医療センター

ページ範囲:P.78 - P.81

 東京の副都心新宿駅から車で10分,戸山ケ原に建つ国立東京第一病院が,国立医療センターとして生まれかわることになったのは,昭和40年のことであった.それは,病院を中心として,研究所・教育研修部門・医学図書館・講堂などを含んだ"医療のための大総合センター"としてのものである.
 そしてこのたび,中心となる16階建の病院病棟部分が完成したのである.看護婦不足などにより,まだ全部のフロアが使用されているわけでもないし,診療棟・管理棟などは現在工事中であることなどから,総合的に機能をとらえるわけにはいかないが,高層のシステムやくふうなどを,写真でごらんいただくことにしょう.

ヘンリー・ジャクソン氏

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.18 - P.18

 ことしの日本病院学会には,国際色豊かな外国からの病院関係者の参加が目についた.学会2日めの総会でその紹介が行なわれたが,異色だったのは,大柄なアメリカ人が日本語であいさつをはじめたことで,記憶されている方も多いであろう.
 このアメリカ病院協会理事,アメリカ病院管理学会理事の要職をつとめるヘンリー・ジャクソン(Henry Jackson)氏は,ロサンゼルス郊外のバレー・プレスビテリアン病院の院長をつとめながら,研究費を得て日本の医療提供システム,その中での病院の役割の研究のため,4週間を精力的に過ごしたところである.まだまとまっていないが,第一印象として日本の病院のかかえる問題点を"国民の病院に対する無関心,病院の利用者に対する無関心"と指摘したのには,さすがにマッケクレンのもと,ノースウェスタン大学の病院管理大学院の第1回卒業生らしい鋭さを感じた.

時評

防災常識の徹底と訓練

著者: てん

ページ範囲:P.58 - P.58

相次ぐビル火災と横市大付属病院長の辞任
 昨年の暮,韓国ソウルの大然閣ホテルの大火の時多くの日本人は‘まさか日本ではあんなことにはなるまい’と心のどこかにひそかな気のゆるみをもったのではあるまいか.ところが,それから半年もしないうちに118人の死者を出す大阪千日デパートの大火である.昔,日本の家屋は木と紙でできているから,外国の石の建物に比べて燃えやすいものと考えていたせいか,近代ビルがどうしてあんなによく燃えるものなのか,日本人にはピンとこなかったのではないだろうか.
 建物は,現在,建築基準法,消防法,労働基準法医療法など,法的基準を作って,それぞれの立場から利用目的によって,よりよい安全な建物にするよう指導はされているが,必ずしも満足のいくものではない.過去,温泉地のホテル火災などのたびに関係当局はなにをしていたか,平素の訓練がたいせつ,諸設備の強化だなどと,テレビ・新聞でくり返し叫ばれるが,ひと月もすると,防災のボの字もなくなってしまうのが常であった.

病院建築・42

高層病院の意義と問題点

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.59 - P.63

 最近,病院にもようやくいくつか高層建築の例がみられるようになった.筆者自身が現に取り組んでいる国立医療センターも,地下2階・地上16階というかつてなかった高さのものである.そこで本稿では,病院の場合,どのような条件のときに高層化が必要とされ,そうすることによってどんな利点が期待でき,さらにまたそこにはいかなる問題が横たわっているか,などといったことがらについて考えてみたい.
 実をいうとこのテーマは,5年ほど前の病院学会のシンポジウムに取り上げられ,筆者もそれに参加したのであったが,当時はなにぶんにもまだ机上論の域を出なかった.今あらためて,経験を通じて学んだところをも含めて,問題点を整理しておこうとするゆえんである.

招待席

被爆地にとどまって診療しつづけた25年

著者: 秋月辰一郎 ,   岩佐潔

ページ範囲:P.64 - P.68

 昭和20年8月9日,長崎は一瞬のうちに火と灰の街と化した.その瞬間からひたすらに患者の診療に打ちこんで25年,今日にみる聖フランシスコ病院が築かれるまでの模様をうかがった.

管理者訪問・52

財団法人竹田綜合病院長 川上平太郎先生

著者: 車田松三郎

ページ範囲:P.69 - P.69

 会津若松は,明治元年の戊辰戦争のときに会津藩の少年隊(白虎隊)が鶴ガ城の炎上をみて,飯盛山で自刃したという有名な話を連想させるところである.また今日では,人口10万を越し,産業も種々にわたり,とくに,良質な会津米を原料とする日本酒や伝統を誇る会津漆器,それに民謡にまで歌われ全国民に親しまれている会津磐梯山や,鶴ガ城などの観光事業でもよく知られているところである.
 竹田綜合病院は,この市のほぼ西部に所在し,堂々とした近代的な高層建築(地上8階と7階の中央病棟,リハビリテーションホールや精神病棟5階)で,私的病院では全国的にもめずらしいベッド総数1,226床を有する大規模な病院である.

看護管理・7

オープンシステム病院における看護婦の役割

ページ範囲:P.70 - P.71

 山口県徳山市にある‘オープンシステム総合病院徳山医師会病院’は,日本全国で41(昭和46年度現在)ある医師会病院の1つである.医師会病院は,その大部分がオープンシステムを打ち出し,地域社会と開業医に病院の施設を開放することを建前として開設されたものである.しかし,なにぶんにも,日本では新しい試みであり,なかなかオープン化の実は上がっていないのが実情のようである.
 昭和46年8月づけで,日本医師会から発行された"医師会病院の諸問題と将来の見通し"(第9回医師会病院現状調査報告書別冊・昭和45年3月31日現在)には,オープン化に関して,33の医師会病院からのアンケート調査の結果が載っているが‘完全オープン化を実施している’と答えた病院は,徳山医師会病院ほか3施設にすぎない.

医事業務あれこれ事例集・7

病床の効率的運営とその管理(3)

著者: 町支義明

ページ範囲:P.72 - P.73

 前号では病床中央管理実施要綱のうち,病床中央管理の意義,中央管理に関する基本的事項,業務分掌の1)医師,のところまで記載したので今回も引き続いて,業務分掌の2)診療科,から述べることにする.

検査室の窓から・7

尼崎病院の検査技術者たち

著者: 冨田重良

ページ範囲:P.74 - P.75

 専門化された検査技師たちは,尼崎病院の医療の高度化に大いに貢献してきた.もし彼らの活躍がなかったとすれば,はたして尼崎病院の現在の姿があったであろうか.

今月のニュース

日本看護協会看護教育研修センター完成/米国医療のコンピューター応用についてセミナー開かる

ページ範囲:P.83 - P.83

 日本看護協会の看護教育研修センターが完成し,6月23日同センター内で落成式が行なわれた.この4月,看護婦養成機関の教師を育成することを目的として看護研修学校が開かれていただけに,この研修センターの1日でも早い完成が待たれていた.式のなかで小林富美栄会長は"本年4月の25周年記念式典につぎ,新しい里程標としてこのセンターの完成を見ることになり喜ばしい"とあいさつ,建設関係者への感謝状贈呈などのあと,落成記念パーティーか行なわれた.
 センターは日本看護協会の建物に背続きに建ち地上3階地下1階の鉄筋コンクリート造り.延床画積は984m2.教室のほか実験実習室,学生集談室など施設内容もくふうされている.

病院史のひとこま

揺らん時代の日本病院協会

著者: 神崎三益

ページ範囲:P.84 - P.84

 編集から‘日本病院協会の誕生’というテーマを引き受けたが,後から考えると荘寛先生や守屋博君などが適任だったと思った.
 よく病院協会は,戦争中の物資配給の機関として生まれたといわれるが,そうだったろう.なにしろあの頃はどうやって生きのびるかを考えるのが精一杯で,病院の働きを高めるためにうんぬん,なんていえる時代ではなかった.だから物資配給のための連帯組織として生まれたのも無理はない.

精神医療の管理・7

精神病院における老人の問題

著者: 高橋清彦 ,   長坂五朗

ページ範囲:P.87 - P.93

 精神病院の老人患者のすう勢と病院管理,医療管理上の諸問題をわれわれの病院をベースにして論じてほしいという求めに応じ,わが国の現状を通覧し,われわれの経験およびこれからの計画を述べ,与えられたテーマを考察してみたい.

私的病院からのレポート・7

—福岡市・福岡総合健診センター—福岡に開設された3時間健診のセンター

著者: 中村京亮 ,   田尻豊実 ,   一条勝夫

ページ範囲:P.96 - P.103

 この健診センターがオープンしたのは,昨年10月のことである.東芝総合健診センター,愛知県総合保健センター,PL東京健康管理センターに次いで,わが国で4番目のセンターである.開設されたのは,西牟田忠夫氏で,整形外科の診療所をやっておられる.
 健診センターは,東芝総合健診センターにみられるシステムをそのまま導入したもので,したがって検査項目なども全く同じである.1人の検査に要する時間は2時間前後1日20人の受診を目ざしておられる.

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病院のゴミ(2)—始末におえないゴミ・ゴキブリ

著者: 上林三郎

ページ範囲:P.106 - P.108

 前回はおもに紙類のような,燃えやすく始末しやすい‘ゴミ’について書いてみたが,今回は不燃物というか,医療用デイスポ製品のような始末しにくい物を取り上げてみたい.

研究と報告【投稿】

外来食堂・売店の損益計算—付帯事業の独立会計

著者: 大野武雄

ページ範囲:P.109 - P.111

付帯事業経営成績の把握
 一般的に付帯事業にかかわる計算は,当該企業の主たる事業とは区分独立計算されること,企業会計原則がこのことを前提としていることから明らかなことであり1)病院会計準則もまた第3条において明示している.だから病院経理が付帯事業の経理を医業の計算から除外し独立計算を行なうなら,その結果算出された損益尻は損益計算書で医業外収益または医業外費用の区分に表示されよう2)
 しかし病院会計準則は‘患者外給食’に対して‘患者外給食収入’を医業外収益に,‘患者外給食材料費’を医業外費用に表示することとしている.かなり大きな規模の病院で仮にこのとおり経理することとなれば,人件費・減価償却費を主とする諸費用が医業費用に混入し患者外給食という付帯事業の経営成績が明らかにならないばかりか,医業費用・付帯事業のいずれも損益の対応表示に矛盾が生じよう3).つまり原則的に付帯事業については独立会計が採用されるべきであること,特に公益性の強い医療事業にとって要請されるということである.

病院金銭管理合理化の実際

著者: 守宮之輔 ,   守源治 ,   大川潔

ページ範囲:P.113 - P.114

 ‘名医必ずしも名管理者たりえず’ということばがあるが,現在ではそのことばにあまえているわけにはいかない.院長としては,労務経理の専門である事務長の立場を十分理解し,とかく問題のありがちな両者のコミュニケーションを綿密にしなければならないし,われわれ中小病院においてもガラス張りの健全経営を行なっていかなければならない時代である.われわれは薬剤在庫管理の合理化を考えているうち,この点においても有意な方法を見いだしたのでここに発表する次第である.
 われわれの用いた機械は,‘神鋼メモリアン800’であるが,その特長については前述MM式薬剤管理の実際(31巻5号111ページ)において述べたので省略する.

薬剤管理の断面—差益の計算方法について

著者: 角田信三 ,   寺西年一 ,   今井美千雄

ページ範囲:P.117 - P.120

はじめに
 病院管理運営の面において,使用薬剤の占める地位は大きく,その基準薬価と実勢薬価との差益については,各病院管理者として,おろそかにできない関心事である.
 この差益の実態を把握するためには,全品目ごとにその差益を算出し,全集計を求める実計算が本筋ではあるが,その作業量は想像以上に繁雑なものである.この点に立脚して推計的に簡易的方法がないものかと探究した結果1つの方法を得たので,ここに報告しご批判を得たい.

霞ガ関だより

日本医療食協会の概要

著者:

ページ範囲:P.122 - P.123

 医学の進歩とともに疾病構造も多様化し複雑となってきたため,医療食は治療の一環としての重要性をいっそう高めてきたが,病院などの給食の現状は,必ずしも患者の症状に適応した医療食が提供されているとはいいがたいのが実情である.一方,最近食品の保存技術,とくに冷凍技術が急速に進歩した結果,品質のよい冷凍食品が普及してきたという状況より,医療食への応用も検討される時期となってきた.
 このような事情を背景として,医療食の改善のための調査研究,冷凍食品をも含めた規格基準の作成,安全衛生に関する試験・検査,病院への導入システムの開発研究,情報の収集などの事業を行なうため,財団法人日本医療食協会(東京都新宿区本塩町21 木田ビル内 電話357-8221)の設立許可申請が厚生省に提出された.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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