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文献概要
特集 ホスピタル・インダストリー
1973年の病院の進路
著者: 石原信吾1
所属機関: 1虎の門病院事務部
ページ範囲:P.22 - P.29
文献購入ページに移動病院は一個の社会的存在体である.したがって,その存続と発展については社会的存在の法則の支配はまぬがれない.同時に,病院は一個の目的体である.したがって,そのあり方としてそれ本来の目的の追及は放棄できない.この病院の両側面は,当然ともに関わり合うものであるが,その関わり方は常にプラスの関係に立つものではない.時にはマイナスの関係にも立つ.すなわち,互いに反発し合い,また矛盾し合うこともあるのである.そのどちらの関係に立つにせよ,そこに最も大きく作用するものは,言うまでもなく,環境条件およびその変化である.
病院をめぐる環境条件が,十分でかつ良好な状態にある場合は,病院はその本来目的を十分に達成しながら存続し,また発展していくことができる.そこでは,病院の機能性と存在性は相互に助長し合う関係に立つ.機能性の向上とその発揮は経営的繁栄をもたらし,経営的繁栄はまた機能性の充実と発揚につながる.もし,病院にそうした良好な環境条件の与えられる日があるならば,それは病院にとってはまさに願ってもない恵まれた時節であると言えるであろう.過去にさかのぼれば,わが国の病院にもそれに近いぐらいの幸せの日の経験は,必ずしもなかったとは言えない.今にして,そうした時節をふり返ってみれば,ひとしお懐かしさの感に堪えないのである.
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