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雑誌目次

雑誌文献

病院32巻13号

1973年12月発行

雑誌目次

第23回日本病院学会演題選

病院における賃金決定要素とこれからの賃金体系試案

著者: 落合勝一郎 ,   石山稔

ページ範囲:P.11 - P.15

賃金体系と賃金決定要素
 賃金管理には,個別賃金の公正さを維持することと,総額賃金の適正さを維持することの2つの面があるが,今後労働力不足,高賃金時代に直面するにあたって有能な人材を病院事業に確保し,定着させていくためには,公正な個別賃金決定方式を確立することが重要な課題の1つであると確信する.
 公正な個別賃金を論ずる場合,水準と配分とに大別して考えることができるが,本論では,後者について述べることにする.賃金体系とは,まさにこの個別賃金を公正に維持するためのルールである.

当院における過去6年間の看護婦の退職事由別分類と再就職についての意向調査

著者: 西本長吉

ページ範囲:P.15 - P.18

目的
 昭和41年10月から47年10月までの約6年間における当院看護婦の退職事由を明確にするとともに,退職後の動向と再就職についての意向と再就職を困難にしている実情を分析して,定着率の向上,潜在看護婦の再就職の方策を検討することが小論の目的である.

就業時間の合理化を目標とした夏季診療の試み

著者: 有賀槐三 ,   平野栄次 ,   星沢政枝

ページ範囲:P.19 - P.21

 一般産業界では週休2日制の導入が進んでいるが,病院でもこのような趨勢に対応して勤務体制の再検討,そして休日増の研究を行なう時期にはいったものと考えられる.
 駿河台日本大学病院では病院での週休2日制の可能性を見いだすためのテストケースとして,昭和47年の夏,下記のごとき診療を行なった.すなわち7月の末から9月の初めに至る6週間の土曜日の外来は, 1.当日知らずに来院した新患 2.緊急患者 3.通院中の継続治療を要する患者(予約) 4.通院中で当日病状に急変のあった患者 5.とくに希望する患者

小型コンピュータによる病歴管理

著者: 山田治 ,   山田美砂子

ページ範囲:P.22 - P.24

はじめに
1.研究目的と時代的背景
 何か大きな発明・発見があると,文明はまったく性質の異なるものに生まれ変わる.鉄の武器ができると銅の時代は終わり,蒸気機関の発明は手工業を押しつぶし,電気の発見とその利用は人びとに明るい夜をもたらした.そして最近では原子力利用技術の発明とコンピュータの発明が人びとの未来に明るい光を投げかけている.
 しかし,われわれ日本の病院人にとっては,コンピュータは高嶺の花であり,たとえ一部の病院で導入されたとしても,その利用法はほとんどが医事業務と自動問診システムとにとどまっているのが現状である.

東大病院医学データ統計解析システム—MERS T−2について

著者: 桜井栄光 ,   大山啓子 ,   小林康雄 ,   開原成允 ,   三枝正裕 ,   坂元正一

ページ範囲:P.25 - P.27

 今日の医学の進歩発展は目ざましく,診療においても研究においても,医学データの量は飛躍的に増大している.その厖大なデータを処理するために,従来どおりの手作業では事実上処理することは不可能になってきた.このため,これらの貴重な医学データを処理するために,電子計算機を利用することが多くの場所で試みられている.
 一口に医学データといっても,研究者によりその内容はまちまちであり,これを一般的に開発された統計解析用プログラムを用いようとすると多くの不便な点があり,実際に使用できる場合は意外に少ない.したがって通常の場合は問題ごとにプログラムを開発し,処理することが行なわれている.

コンピュータの適用を目的としたX線照射(撮影および透視)記録のプログラムとデータコードについて

著者: 小倉佐助 ,   西村正司 ,   田辺正和 ,   亀山一 ,   山本律

ページ範囲:P.28 - P.29

 京都桂病院では,病院の業務,とくに医療事務についてコンピュータの利用を計画し,その準備をすすめている.当院では各科(課)の連絡には伝票制を採用しているが,X線照射による検査では,1枚の伝票(照射録)で,医師からの依頼票と放射線科から医事課などへの連絡票を兼ねられるようにしている.
 この伝票(照射録)で,放射線科から医事課などへ照射の事実の連絡に,コード化した記号を試作し,この記号によりコンピュータの端末機へインプットしようと計画した.本院の伝票の流れを紹介し,試作したデータコードについて報告する.

病棟クラーク採用後の看護管理

著者: 伊藤勝子 ,   池田寿子

ページ範囲:P.30 - P.31

 全国的な看護婦不足の中で,当名鉄病院もこの悩みは深く,対策の1つとして,かねてより念願としていた病棟クラークを3年前から採用に踏み切った.
 クラークを採用した経緯は,もちろん看護業務の分析から得られたものであって,看護婦の仕事の中には,一般的な記録のほかに連絡事務や,一般事務など,その範囲は量・質ともに非常に多い.これらの仕事を果たすために看護婦の指導のもとに,他の職種の援助を得るシステムを考えついたのが病棟クラークである.

医療機器の中央化について

著者: 松尾月子 ,   宮田メリ子 ,   吉川喜代子

ページ範囲:P.31 - P.33

はじめに
 医学は技術革新に伴い日進月歩し高度化している.その反面には病院の設備の近代化と精密な医療機器導入による専門技術を発揮した医療内容の拡大の影響がある.それだけに医師部門,看護部門,検査部門,事務部門(特に施設課,営繕課,資材課)の医療用機器の管理の認識が急速に複雑になってきている.医療機器は人に対し使用するものだけに安全でなければならない.この基本に対し医療機器の保全管理が安全対策としていかに重要であるか痛感する.
 外国では病棟における物品管理が婦長の手を離れユニット・マネージャーに委ねられ,婦長は看護専一のリーダーの方向に進んでいる病院もある.また病棟への薬剤師の導入,ホスピタル・エンジニアの育成など,日本も外国の真似をすることもないが,従来と異なり,診療機能が細分化・専門化してゆく医療,複雑多岐にわたる業務内容の中で,患者中心に高度な設備,医療用機器が目的に対し効果的に機能を発揮する安全・保全対策ができているであろうか.多様化する医療チームのしくみの中で保全部門(専門家)の役割はどうあるべきかが責任と業務を明確にして相互関係を密にし,協力体制で医療が行なわれるだけに機器の管理責任について検討を要する時期にきていると思う.

医薬品副作用情報の処理

著者: 高杉益充 ,   嶋川治巳

ページ範囲:P.34 - P.36

 医薬品が本質的に人体にとって異物である以上,なんらかの副作用の発生が予想されるが,副作用を考慮する上で重要なことは,その発生頻度と症状の程度との関連,さらには薬効とのバランスである.
 副作用を知らなければ重大な事故を生ずる危険性がある反面,逆に副作用を極度に恐れるあまり,的確な薬物療法が妨げられる場合が考えられる.このような危険を防ぐためには副作用に関する情報をできるだけ多く収集し,解析し,その対策を講ずる必要がある.

IE手法による調剤室レイアウトの一考察

著者: 菅井利治 ,   豊吉欣一

ページ範囲:P.37 - P.38

調査方法と内容
 当院では昭和38年の新築にあたって薬剤科を地下1階に設けて発足し,約10年を経過した.その間患者数,また所属職員の増加、処方剤型も大きく変わり,薬品,機械の配置にも無理をきたし,不経済なスペースの使用状況は人や物の流れを悪くし,これらが重なって業務処理能力の低下をもたらし,結果は患者へのしわよせとなり,待時間にも大きな影響を与えているのが実情である.このような事実から業務処理能力の向上と,そして患者サービス向上を目標として,今回,慶応大学工学部管理工学科師岡研究室の協力を得て,管理工学的見地から調査分析を行ない,レイアウト改善への資料を得ようと試みた.主な調査方法とその内容を下に記す.
 (1) KJ法:薬剤科職員に対してのインタビューの内容をKJ法で処理し,直面している問題点の抽出と,その把握を行なった.図1はKJ法による問題点の把握(略図)で,この手法によって処理されたものが解決されるべき問題を集約していると考えられる.最終的に抽出されたこれらの問題は,ひとつひとつ独立しているのではなく,他とそれぞれ関連し合っている.

救急患者のテレビによる管理方式

著者: 岩本正信 ,   武田久尚 ,   新井清一

ページ範囲:P.39 - P.41

 外傷患者の処置はとくに第2次世界大戦が始まって以来絶えまなく改善されてきた.ことに外傷患者を含めて一般救急患者に対する十分適切な初療の必要性が叫ばれるようになった.そのため救急車による緊急救助の場合でも,事故現場で十分適切な処置を行なった後で搬送を開始し,受傷してから病院到着までの間は一貫して医師の管理のもとにあることを理想としている.しかし,実際に救急車を運営する場合,救急車ごとに医師を乗務させることは事実上困難とされており,現状では救急隊員に初療を委ねていることが多い.
 したがって,児玉俊夫らは外傷の予後は初療にもっとも大きく支配されることを強く指摘し,これはたんに医師だけの問題でなく,緊急救助に実際面であたる消防署や工事現場の救急隊員を十分指導すべきである.いかに外傷にたずさわる医師が完全な救急処置が行なえても,救急隊員の処置が完全でなければその救助に当然限界がある.実際面より見れば,むしろこの後者の教育を徹底させることがたいせつである1)と述べている.

地域病院における新生児救急医療システムの運営

著者: 橋本武夫 ,   中嶋博文 ,   中島哲也 ,   田中矩子 ,   藤木律子 ,   久能恒子 ,   武谷茂 ,   井手一郎

ページ範囲:P.42 - P.45

はじめに
 ふえ続ける未熟児,そして危急新生児.しかも現行医療制度のもとで最近一般の救急医療に関する問題はよくとりあげられるが,新生児救急医療はまだなお遠い地におかれている.これらの新しい生命に対し聖マリア病院は15年間にわたり新生児救急医療を行なってきた.そして現在では定床60床ながら常時70-80名の入院児を収容し,年間700名の未熟児,危急新生児をとりあつかい,地域と密着した新生児救急医療の中心センターとして発展してきた.
 そこに従事するものは,けっしてこのセンターの運営に満足しているものではないが,やらねばならないという責務と奉仕の心で,院長はじめ病院一丸となってこの地域医療にまい進している現状である(図1).

調理室のドライシステム実施について

著者: 新井万里子 ,   城井美子 ,   青木弥生 ,   戸田由紀子 ,   中村侃美

ページ範囲:P.45 - P.46

 集団給食における衛生管理は非常に困難である.とくに,対象が患者である病院において,必要性を感じながらもその徹底はむずかしい.私どもは病院新設時に調理室の準衛生地区化を目標にかかげ,その一環として調理室のドライシステムを実施した.

食器洗浄機の導入による労働時間の短縮と夕食時間のくり下げについて

著者: 平野栄次 ,   神田紀子 ,   京須寿雄

ページ範囲:P.47 - P.49

 われわれの病院ではサービスの一環として,患者の夕食時間をくり下げることと,労務管理上の問題点であった給食作業員の長時間拘束を解消することを,10年来の念願としていた.昭和45年4月食器洗浄機の導入が実現したさい,この2つの課題に取り組むことになり,1年目の効果として患者の夕食時間を5時から5時30分にくり下げ,2年目には洗浄機による現場の省力化と業務基準の作成による合理化によって,仕事の質を低下させることなく作業員の労働時間を週拘束60時間から45.5時間にまで短縮し,残業をゼロとすることができた.人員の節減はしないまでも労働時間の短縮による経費の節減をはかることができ,職員の健康管理上にもよい結果がもたらされた.
 次に現在の栄養科における仕事の運営内容を述べてみたいと思う.病床数420床で人員構成は栄養士10名,調理師8名,作業員14名の計32名が時差勤務配置についており,主な役割としては,治療の一環としての患者食の作成と,患者に対する栄養指導,それに栄養士養成学校の学生の指導があげられる.厨房は作業動線を考慮して設計され,中央配膳方式を採用している.その内容は下記のとおりである.

非常勤医の推移

著者: 山本剛史 ,   中野進

ページ範囲:P.49 - P.52

 1968年および'72年に,非常勤医と私的医療機関を対象として,アンケートによる調査を行なった.
 '68年の夏,京大医学部三回生に課せられた公衆衛生学の学生実習を手取り早くかたづけてしまおうなどと考えた連中が集まって行なったのが「非常勤医実態調査」('68年12月)である.当時,大学では無給医の問題が大きくとりあげられていた.一方には医学部の学生なんぞ卒業さえすれば人並(以上?)に飯を食べているではないか,との目があった.学生にとっては最も身近な問題のひとつであった.山本,三河,内山ら,10人が調査にあたり,'69年7月に60頁あまりのレポートとなった.

X—レイフィルムのマイクロ化の経験

著者: 鎌田力三郎 ,   栗原龍太郎 ,   高間良夫 ,   福田多美子 ,   黒羽隆夫 ,   橘川剛 ,   横田浩雄 ,   榊原聡彦

ページ範囲:P.53 - P.56

はじめに
 X—レイフィルムは,撮影した時点における患者の身体状況を,客観的に評価しうる資料である.欧米諸国の放射線科でなされているように必要に応じて,迅速に抽出できるよう,一元的に保管整理されていることが望ましい.
 X—レイフィルムの法的保存期間は医療法施行規則第20条12で,同一疾病については,その治癒した後2年間の保存が義務づけられている.2年以上を経過したフィルムの整理については,多くの病院では整理に頭を痛めているのが実状のようで,管理が円滑に行なわれている施設は意外に少ないようである.

オンラインによる窓口会計システム

著者: 庭野隆司 ,   三浦秀夫 ,   松沢利行 ,   石田秀弥 ,   松本雅道 ,   佐野久美子

ページ範囲:P.57 - P.60

はじめに
 本院は,病床数318,外来患者1日約800人を数える総合病院である.昭和50年,外来棟新築予定により,病床数500,外来患者1日約1,200人を見込み,それにともなう求人難に対処するため,昭和45年,中型電子計算機(図1)を導入,以来,病院管理システムの開発にあたってきたが,その一環として,外来入院レセプト作成処理に引き続き,外来窓口会計および退院時会計をオンラインで処理することを開発した.

給食管理業務の電算化について

著者: 菊池順一郎 ,   福島悦子 ,   城井美子 ,   青木弥生

ページ範囲:P.61 - P.63

はじめに
 当院新設にさいし,北里総合情報システムを企画し,その一環として電算機が導入され,薬品管理・物品管理・給食管理の電算化が進められ,まず給食管理業務が実施された.給食管理業務において,一般に事務業務とされている献立作成より,発注・月報の作成までの一連業務について実用化されている現状を紹介する.
 目的は次のとおりである.

病院における自動火災報知設備の誤報

著者: 榊田博 ,   鈴木伸 ,   安川桂太郎

ページ範囲:P.64 - P.67

 消防法の一部が昭和44年4月に改正され,建築延べ面積300平方メートル以上の病院には自動火災報知設備の設置を昭和46年3月31日までに完成することが義務づけられた.
 火災警報装置のもつ予報性と機械の自動的作動などの性能を生かし,火災の早期発見と初期活動に備え,病院の安全を保つには警報装置への信頼性を高める意味で,警報装置の誤報防止とその処置について院内体制を整える必要がある.

中小病院における防火管理体制改善の試みについて

著者: 石金昌晴 ,   西田恒久 ,   大西正晴

ページ範囲:P.68 - P.70

 最近の精神病院事故の大多数は火災によるものであり,患者大量焼死など悲惨を極めている.当院は203床の中規模精神病院であるが,約5年前より病棟を耐火構造とするなど防災設備の整備に力を注ぐ一方,毎月1回開かれる防災会議において,防火管理のあり方について精神科の特殊性を考慮しつつ真剣に討議を重ねてきた.その結果,試みたうちの3つの改善点について述べさせていただく.
 改善点の第1は防火管理組織の改編である.

医療器械・備品などの中央管理について

著者: 神門昇三

ページ範囲:P.70 - P.71

 病院で使用する医療機械器具や備品什器などは,それぞれそれらのものを使用する部署に配置され,管理下におかれているのが普通であり,一般的なかたちである.しかし汎用のもの,または共通的に使用できるものについては,その配置・管理を固定化して細分化するよりも1か所,すなわち中央に集めて院内各部署で必要とする時に貸し出して使用させることがより効率的であり,また使用する側にとっても便利であることが多いと思われる.現に病院で中央材料室に各種医療器具の一部を備えつけて,外来各科・各病棟の必要に応じて貸し出し使用しているのはその具体的な1例である.
 しかし,ここで中央管理の対象として取り上げようとするものは,中央材料室で一般的に管理しているものより, 1)形は大きく 2)構造機能などが複雑で保守やその管理に専門的知識・技術を必要とするもの 3)利用頻度が間歇的で必ずしもその部署に常備しておかねばならない必然性の少ないもの 4)しかし必要な時には速かに使えなければ困るものなどの条件によって区別することができる.もちろん,その区別について確立した一線があるわけではなく,また上記4項目にしても全部の項目を具備している必要はなく,場合によればその1項目でも適合するか,またはその各項目のかかわり合い方も軽重があっても支障はないと思う.

外来窓口における老齢患者接遇のための基礎調査

著者: 別府勇

ページ範囲:P.72 - P.73

 現在日本の老齢人口は加速的に増加しつつある.平均寿命は男子が70歳,女子が75歳と10年前に比較すると4歳強も延びている.これら老齢者は有病率も高く,昭和45年国民健康調査によると65歳が最も受療率が高くなっている.当院の受療率を調査してみたところ(表1),47年1月と48年1月の60歳以上の受療率を内科初診患者について調べた結果,1割弱は60歳以上の患者であった.48年1月より政府による70歳以上の医療費無料政策の影響で,これら患者は増加が見込まれたが,予想に反し「よこばい」になった.原因は調査期間が医療無料化制度のスタート月であったために行政指導が末端まで行き渡っていないことや,60歳以上の受療平均年齢が当院の調査によると67歳であったため今回の制度の対象である70歳以上とは3歳も較差があったことが原因にあげられる.現に東京都が7月より65歳以上の医療費無料化制度を実施したところ,これら老齢患者は6割弱も受療率が延びている.
 次にこれら老齢患者の来院分布を見るために,1か月の60歳以上の内科初診患者を調べたところ,図1に示すように,その24%もが30km以上も離れた東京都以外のところから来院しており,患者の来院分布が広範囲に及んでいることがわかった.一方,医療機関は昨今機能の高度化が進み,その機構的複雑さも著しく増してきているために,来院した患者が迷わずにスムーズに受診することは非常にむずかしくなってきた.

外来患者の番号登録制と保管方法の変更について

著者: 上林三郎 ,   渡辺勲 ,   白畑文明 ,   湯浅誠 ,   星野龍子 ,   小関道子 ,   斉藤寿明

ページ範囲:P.73 - P.76

番号制に変更したのはなぜか(保管方法のむずかしさ,検索の困難,請求業務の困難)
 当院は従来完全中央保管方式(外来1日1000人)であるが,変更前は,健保,自費,渡航内科,特別診察科目(主婦・乳児の健康管理・妊婦検診)などが年代別になっており,患者が診察券など忘れた時,混乱がみられ,病歴検索に時間を費やした.また,氏名によるアルファベット保管であったため,同姓同名,類似名によるミスファイルが多く,患者に生年月日を確認しなければならないことが数多くあった.さらに行先の指定,確認の方法もなく,紛失あるいは書類が行先不明になっても探しだすことが不可能であった.かつ病歴,診療料金表とを診療終了時に照合する作業をしてから,ファイルしなければならず,いったん他のところにミスファイルされたり,診療各科に置かれたままでも追跡の方法がなかったし,時間的ロスも非常に多かった(表1).
 このような業務上のマイナス面が多いため,従来の保管方法を改める必要を痛感し,健保請求と病歴保管を分離して考え,保管方法に番号登録制を導入したら整理しやすいとの結論を得るようになった.また番号登録制は将来コンピュータを応用してデータの整理,あるいは料金請求事務などを行なう場合にも必須のものになると考えたわけである.

聖路加国際病院看護部院内教育の実情

著者: 細貝怜子 ,   吉井良子

ページ範囲:P.76 - P.78

はじめに
 病院職員に対する院内教育の重要性はだれもが認めるところであり,近年,この問題に関して,どの病院でもかなり真剣に考えられるようになってきた.
 聖ルカ病院での院内教育の歴史はかなり古く,約20年前から専任の教育担当者をおき卒後看護婦の教育を推進してきた.現在は教育婦長を委員長として教育委員会を設置し,臨床看護の質の向上と看護職員の能力開発を目ざして種々の教育プログラムを企画実施している.より効果的な教育を行なうために看護職員をいくつかのグループに分け,それぞれのグループのニードに合わせた内容のものを計画して,対象別に教育する方法をとっている.

当院における看護教育の問題点—ことに看護学院実習病院として問題点をさぐる

著者: 奥田幸造 ,   姫野スミ子 ,   坂井栄子

ページ範囲:P.79 - P.83

 当院では,能登地方の基幹病院として各方面に積極的に活動を行ない,その実態を関係学会などに報告してきたことはご承知のとおりである.一般職員のうち看護職員を中心とした教育方面については,すでに本学会において述べてきたが,今回は看護学院実習病院としての問題点をさぐる……ということで述べてみたい.当院の全病床は405床であるが,ここ10年来,病院増築などの施設拡充に対し急ピッチをあげ,一応,癌センター,救急センター(鉄筋5階)などの診療施設部門の完成についで鉄筋5階のデラックスな高等看護学院の施設を近年完成したものの,高等看護学院,准看護学院,県立女子高校衛生看護科の実習病院として,臨床指導者の不足,また3校の専門教育をまかされていることから,講師不足,ことに医師不足の折柄、診療にまで影響される.また一般教養の講師については金沢大学などから汽車で片道1時間以上もかかるうえしかも新進気鋭の魅力ある講師を得られず,看護教育に苦しんでいる.しかし,一方これらの統合的な看護教育を行なっていることから正看の地元養成が能登地区にも不十分ながら人材供給をなし,また北信越各県をはじめ,全国的に集まっていることから,斬新なムードがおきて,看護教育として能登に新風がふきこまれるようになった.以下,私どもの調査した概要を主として図表などにまとめてみた.

病院管理におけるインフォメーションの効用について—当院のテレビシステムの実態

著者: 織本良子

ページ範囲:P.84 - P.87

 この小稿は頭書の演題で,第22回には——われわれの行なっている院内有線テレビ放送の実態を中心として——という副題で,さらに第23回には——どのようなテレビ番組がよく受け入れられ効果をもたらしたか——という副題で発表したものに,学会では短時間のため発表できなかった部分を追加して,その全貌をまとめ直したものである.
 当院のインフォメーションセンターはごく小規模のもので,1人のテレビ技術者を常任としているほかは,院長織本正慶が企画方針のリーダー,医事部長岩瀬英二(演題発表者),ME部長宮田泰一が撮影放送活動の中心となり,筆者が総点検をするという役割で実施されているものである.それで学会発表は以上4名の共同研究という形態をとったのである.

人工透析食—自己管理への工夫

著者: 榊原和子 ,   伊藤晃

ページ範囲:P.87 - P.89

 人工透析療法の進歩により,腎不全患者は単なる延命のみでなく,社会復帰をも可能とした.しかし,そこに至るには,十分な食事管理が必須条件である.
 透析食においては,表1のような注意を要する.すなわち, 1)水分・塩分は浮腫に関係するので,摂取量が制限される. 2)カロリー不足は体蛋白崩壊をきたし、窒素成分の上昇となり,結果的には食事で蛋白質を多くとったのと同じことになる.この体蛋白崩壊を防ぐため,高カロリー食が必要となる. 3)体蛋白合成には,アミノ酸組成の良い蛋白質が必要であり,その選択が重要である. 4)カリウムは心臓の興奮性に影響を与え,高カリウムは直接死につながる危険性があるということである.

オーストラリア抗原陽性の急性肝炎患者における看護の一考察

著者: 寺崎明美

ページ範囲:P.91 - P.93

はじめに
 オーストラリア抗原(以下Au抗原)が,問題にされはじめて数年になる.現在医学的にはAu抗原は、B型肝炎の病原体と密接な関連を有し,経口的,非経口的に感染しうることが明らかにされ,病院管理上,Au抗原に対する対策は,早急に対策を確立する必要に迫られている.とくに輸血,人工腎臓などによる感染伝播を食い止めることや,医療従事者に対する危険防止,院内感染を防ぐため,患者および医療従事者についてAu抗原の検査がなされ,現在判明しているかぎりの感染経路の遮断や,感染防止対策を立てることに努力が払われなければならない.医学的にAu抗原の概略をまとめると,以下のことがいえる.
 1) Au抗原の本態は,解明しつくされていない. 2) Au抗原は,B型肝炎ウイルスと密接な関連を有する. 3) Au抗原は,経口的,非経口的に感染しうる. 4) Au抗原の発見により,従来の流行性肝炎と血清肝炎の分類は,Au抗原の関連する肝炎(B型肝炎,HB)と,関連の認められない肝炎(A型肝炎,HA)の分類が承認された. 5)急性肝炎→慢性肝炎→肝硬変→肝癌の進展過程に,Au抗原の関与する場合が少なくない. 6)激症肝炎では,Au抗原が証明されぬか,低力価のことが多い, 7)その他

手指消毒の実態と消毒薬の効果について

著者: 宮田メリ子 ,   松尾月子 ,   大畠カネ子 ,   幸保文治

ページ範囲:P.94 - P.97

緒言
 手指消毒には消毒薬としてクレゾール石鹸液,逆性石鹸液,クロルヘキシジン・グリコネート溶液がよく用いられており,従来用いられていた昇汞水は,ほとんど使用されなくなってきている.
 手指消毒については消毒液を1日何回かえたらよいか,また何人くらい手洗いしたら効果がなくなるものか,日常使用しているのにもかかわらず正確な解答は出ていない.個々の消毒薬の濃度と殺菌力との関係についての実験的なデータはたくさんあるが,実際に基づいた報告はきわめて少ない.われわれはまず手指消毒の実態を調べ、その実態に基づき,各消毒薬の効果について実験的に検討を加え,着干の知見を得たので,ここに報告する.

整形外科用ベッドの一考案

著者: 山崎志通子

ページ範囲:P.98 - P.99

 医学の進歩に伴い,さまざまな医療器機が開発され,生産されているが,実際に患者のベッドサイドに働く私たちに関連の深い患者の運搬,安楽,排泄,食事介助に役立つ身近な看護用具の工夫がなされていないように思われる.そこで私たちは特に股関節を含めた下肢ギブス固定患者について,その排泄をいかにしたら安楽にし,介助を容易にすることができるかを考え,昭和47年1月より昭和47年11月までの11か月間,いろいろ工夫の末,特殊のベッドを試作してみた.

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編集にあたって

著者: 本誌編集委員

ページ範囲:P.5 - P.5

 「病院」の臨時増刊号は,昨年までは,その年の日本病院学会の特集号として発行されてきた.とくに,全演題の抄録が余さず集録されていて,学会での発表内容の概略をうかがううえからも,それを記録として残すという文献的な意味からも,かなり高い評価をえてきたことは事実である.
 もし事情の変更がなければ,本年においても,従来の方針は当然そのまま継続されるはずのものであった.ところが,本年度の第23回日本病院学会においては,河野学会長の発意で,各演者の発表時間を短縮する一方,学会時に出す抄録集は,発表内容とほとんど変わらないぐらいのくわしい内容のものを収載することになった.

第23回日本病院学会プログラム

ページ範囲:P.6 - P.10

会場 帝国劇場(東京・丸の内)
第1日 5月17日(木)

講評

著者: 黒田幸男 ,   田中栄一 ,   郡司篤晃 ,   岩間千代子 ,   原田益夫 ,   多田信夫 ,   大内正夫 ,   宮川哲子 ,   長崎太郎 ,   原沢美智 ,   寺本千枝 ,   船橋哲哉 ,   三浦秀夫 ,   石原英世 ,   矢壁昭文 ,   永嶋一雄 ,   弓倉藤楠 ,   江本俊秀 ,   古川正 ,   谷宗雄 ,   戸畑ナツ子

ページ範囲:P.101 - P.112

104題にものぼる一般演題の参加をみて,今回の学会では,22の群にそれらを分けるとともに,進行にあたっては複数座長制が取り入れられた.
本号では104題の演題の中から,30題を選び掲載したが,これとは別に,各副座長をつとめた方がたに,担当した群の講評をまとめていただいた.これによって,全体の印象と評価に代えさせていただきたい.

パネルディスカッション 中小病院の問題点

1.経済実態調査から眺めた問題点,他

著者: 遠山豪

ページ範囲:P.113 - P.120

 中小病院とは20床以上200床未満の病院を指すものとして申し上げます.
 統計的な経済実態調査から問題点をとらえるには,できるだけ特殊な例を除き,普遍的な対象から得た成績を検討する必要がございます.100床未満の小病院の経営は,院長の特性が非常に大きなウエートを示しますので,一応これを除外いたしまして,100床以上200床未満の医療法人病院と同規模の公的病院を取り上げ,200床以上の大病院と比較いたします.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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