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雑誌目次

雑誌文献

病院32巻2号

1973年02月発行

雑誌目次

特集 人を募集する

病院の求人難と大学改革

著者: 尾崎盛光

ページ範囲:P.31 - P.35

●病院の求人難は当然のこと
 今日,病院は人手不足で困っている,という話だ.これは医者が不足しているという意味ではない.医者のほうはむしろ過剰である.過剰であるというと誤解を招くから,偏在しているといったほうがいい.貧しい県とか市町村の病院や診療所の類は,医者の過疎に悩んでいる.が他方,大都市の富裕な大病院,とくに大学付属病院などは医者が過密である.
 こうした大病院には,タダ同然の待遇でも,いくらでも医者が集まる.とくに若い医者は競ってこうした病院に集まる.極端な場合には,患者3人に医者1人などということになる.つまり庶民にとって必要なところ,庶民の手の届くところには医者が過疎で,庶民には縁の遠いところに医者,とくに若い働きざかりの医者が密集している.

医師の募集と雇用条件

著者: 弓削経一

ページ範囲:P.36 - P.39

 職員の採用をどのように進めてゆくかという仕事は,採用管理とよばれるらしい.医師募集業務,雇用条件の検討なども,その中に含まれる(日本病院協会雑誌,16:505,1969).
 医師も労働者であるから(労基法第9条),その就職の斡旋などに関しては,責任者はだれでも法律に規定する必要な制約に違反しないようにしなければならない.しかし,法規の面は私ごときものが口をさしはさむまでもなく,どの病院にも専門家がいるので,これから述べる部分に法規に関係するところがあっても,法の要求する手続きはすべて満たしてあるものとすることとする.たとえば,大学が卒業生の就職を斡旋する場合の職業安定法第33条2項の規定のごときである.

家庭労働力の募集

著者: 平野栄次 ,   石黒一男 ,   阿部武瑛 ,   関武矩 ,   片岡正

ページ範囲:P.40 - P.47

1 駿河台日大病院効果的な投入を積極的に企図
 看護婦不足に悩まされてきた病院界では,最近は社会全般にわたる人手不足の影響を受けて,看護婦以外の職員の雇用難というダブルパンチを受けている.それでなくとも運営面に多くの問題を抱えている病院にとって,さらにひとつの悩みが加わってきているわけである.
 もともと労働集約性の高い事業体である病院では,人が集まらなければ仕事にならず,とにかく何としてでも職員を充足させておくことがまず第一ということになるのである.

座談会

看護婦募集アノ手コノ手

著者: 武井清次 ,   島岡等野 ,   吉田浪子 ,   大嶽康子 ,   錦織ハナ子 ,   内海昭之 ,   一条勝夫

ページ範囲:P.22 - P.30

最近の看護婦不足は各地で病棟閉鎖という事態まで生み,深刻の度を加えている.看護婦を集める何かいい手だてがないものか,よそではどう対処しているのか.そこで本座談会では看護婦募集を手がけて,いろいろ苦労してこられた総婦長,事務長の実際の体験談をうかがった.

病院と統計

看護婦飢饉

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.10 - P.11

 看護婦飢饉とでもいいたいような状態が現在起こっている.それは,まず大都市に起こって,それからだんだん地方にまで広がっていっている.また,病院種別では,まず高度の総合病院や重症心身陳害児施設などにおこって,それが他の病院にも移っていっている.
 そうした状態を的確に把握するのに手がかりとなるような現象はないか.そう考えてとってみたのが"看護学雑誌"(医学書院刊)の看護婦募集広告欄に広告を出している病院の地域別数の推移である.それを,昭和38年,43年,48年の各1月号についてとってみた.

グラフ

老人病院の開設と明日の医療—東京都養育院付属病院をたずねて

ページ範囲:P.13 - P.17

 東京・池袋から私鉄で5分,大山駅で降りてすぐに白い11階の建物が目にはいる.東京都養育院付属病院である.通称を老人病院という.患者対象を65歳以上に限っているのである.
 1000万都市東京でこの病院ほどに注目されながら建てられた病院はない.都内に2万を超すといわれる寝たきり老人がいるという社会的背景と老人医療の無料化に先鞭をつけた都政の方向,および成人病を中心とした老年医学の深まりの3つがこの専門病院の開設をうながしたといってよい.健康と医療に対する社会的関心の高まりがこの病院を建てたと言いかえてもよかろう.都養育院も明治5年の創立であるから昭和47年6月のオープンは100年の歴史の上にさらに飛躍を期すことにもつながっていたわけである.

まず患者へのサービスを優先させるということ—福岡市・長尾病院

ページ範囲:P.77 - P.80

 福岡市の郊外,住宅地区として開発されはじめた上長尾の地に,その土地の名をとった長尾病院がある.いまから8年前,昭和40年に開院した110床ばかりのこじんまりした病院である.
 標榜科目は内科だけ,ほかの診療科はおかれていない.これは,福岡市という,比較的専門科のそろった大都市にあることももちろんであるが,医師同士のチームワークをうまくとるためと,総合病院にみられるようなムダを省き,診療全体に統一性をもたせるためである.しかし,内科に関連した境界領域の疾患は,できるだけ広く,重視して扱っている.どの専門科からもはじき出された疾患がこの病院の主な対象というわけである.

淀川キリスト教病院長フランク・エ・ブラウン先生

著者: 藤森速水

ページ範囲:P.18 - P.18

 わが国に数少ないキリスト教の病院として,大阪の淀川キリスト教病院は昭和31年2月21日,宗教法人として設立が認可され,爾来今日まで18年間院長を勤めておられるのがブラウン先生である.先生は1915年,北米合衆国テンネッシー州アシュヴィル市に生まれ,デヴィドソン大学で理学士の学位を獲得して生物学を教えたことがある.1942年ミズリー州セントルイス市大学医学部卒業,M.D.をとられ,その後内科,外科,産婦人科,皮膚科,結核,伝染病,麻酔学につき各科12か月ずつ合計7年間にわたりインターンシップをとられたことは,日本の医師ではまねのできないことであり,将来院長としての病院管理の下地が,すでにこの時から涵養されていたということができよう.その後,北海道,東北地方軍政部公衆衛生勤務後,さらに外科学を専攻し,アメリカ南長老教会外国伝道局から医療宣教師として中国,日本に派遣されたのである.
 先生は日本の医師国家試験にも合格し,日本語もじょうずであるが診療上には英語を使い,病院は米国式であるから若い医師で米国へ留学する準備の研修には好適な病院である.‘癒しの奉仕に依り人の救と神の栄光の為にこれを棒げる’ということを病院のモットーとし,‘医師は患者のために在るのであって,患者が医師のために在るのではない’というのが先生の基本的医療理念である.

時評

医療事故対策への最近の動きに期待する

著者:

ページ範囲:P.48 - P.48

3584万円と12億円
 昨年3月,千葉大付属病院の採血ミス事件で死亡した献血者の遺族に対して,国が3584万余円を支払うようにという高裁判決が下され,世間の耳目をそばだたせたことはまだ記憶に新しい.この金額は,わが国の医療事故に対する賠償額としては,これまでのところ最高額だというが,それが果たして妥当な額であるかどうかについては,患者の立場に立つか,医療担当者の立場に立つかで見解の大いに分れるところであろう.
 ところが,最近の新聞の報ずるところによると,今度アメリカでは,誤診の代価に12億円余りを支払えという判決が下されたという.もちろん,アメリカでも訴訟史上最高の賠償額で,これには,世間の人々もさすがにびっくりしたらしい.新聞によると,ケリーという13歳の少年が学校で野球の打順をめぐるけんかに巻込まれて頭にけがをし,頭痛を訴えるので,父親がサンフランシスコの病院へ運び,小児科医の診療をうけたところ,医師はたいしたことはないといって,注意書だけを与えた.ところが,夜になってケリー君の状態が急変し,再び病院にかつぎ込んで診察をうけてみると脳に出血をしており,すぐ手術をしたが手後れで,生命だけはとりとめたが,全身まひで口もきけず,車いすの生涯を余儀なくされることになったので,訴訟を起こしていたものであるという.

病院図書館

NHK海外取材班「世界の医療」

著者: 赤井知英

ページ範囲:P.49 - P.49

一読,日本の医療の将来を考える
 NHK海外取材班による"世界の医療"なる書物中の資料として‘医療問題に関する調査’という藤沢市において46年に行なわれた調査が記されている.その調査が行なわれて約2か月後,藤沢市民病院が開設せられ,今日に至っている.
 さて本書の‘Ⅱ.新しい医学教育’については米国のベッドサイド教育などについて論ぜられ,また西独とわが国における臨床の不足を記している.これについて医学部入学者を考えてみるなら,学力のみによる考査以外に,医師たらんとする者は患者に対し全力で奉仕し科学的関心を有する者を選ぶことがさらに強調されてよいのではないか.

—Carol Taylor著—"in horizontal orbit—hospitals and the cult of efficiency (病院における水平思考—病院と能率主義)"

著者: 姉崎正平

ページ範囲:P.86 - P.86

病院管理における官僚主義的垂直構造の解明
 この本の題をあえて直訳すれば"水平軌道において——病院と能率崇拝"となる.この題の中の‘水平軌道(horizontal orbit)’という字句が,ひところベストセラーになったデボノ博士の‘水平思考’を連想させ,興味をそそられページをめくっていくと,病院関係者や世間一般の人々が,あまりにも慣れ,あるいは慣(馴)らされすぎて常識化している病院内あるいは病院と地域社会の関係における‘しきたり’や制度に対する女流社会(人類)学者特有の丹念な観察と手際よい理論的整理に,少なからずハッとさせられる.この点では,先ごろ,わが国で公開され,たくみに病院に対する常識の裏をかき,観衆に衝撃を与えたアメリカのスリラー映画‘病院(The Ho—spital)’の幾つかのエピソードがオーバーラップしてくる.
 入院の中で‘水平’に寝かされている患者にとって,めんくらい困惑するのは,‘水平的体位’ではなく,むしろ,病院組織の拡大や医療技術の発達により導入された能率的管理のための官僚主義的‘垂直’構造すなわち縦の権威であり,また,横の連絡・協力の悪さである.

—一条勝夫著—病院管理新書「病院管理のための統計技法」

著者: 米沢治文

ページ範囲:P.87 - P.87

統計理論を実践的に肉づけした書
 本書のような立派な著述が病院管理新書のなかの一書として出版されたことは,われわれ統計学に志している者のひとりとして心から慶賀したい気持である.この本をこれまでに行きとどいた形に仕上げるのに著者一条勝夫氏の払った労苦はいかばかりだったろうとまずそれに思いを致した.
 本書は「病院管理のため」となっているが,そこに扱われている統計技法はもちろんそれ以外にも広く応用のできるものである.だから著者はこの本を一般的な統計学の本として書き著わすこともできたはずであり,著者はじゅうぶんそうした資格をもった人である.それをあえて「病院管理のための」と限定したのは,いちめんで口惜しいような気がしないでもない.けれどもそれがじつにこの本の真骨頂なのである.たしかに統計学的理論としては高度の発展をとげ,適用の範囲も広くなったが,それだけどうもその理論が実践から遠ざかって行く嫌いがある.だから統計理論をただ理論として解説したのでは,それを実践に利用しようと思う人には,まったく取りつく島もないようなことになってしまう.そしてじつはそうした取りつく島のない統計学の本がたくさん現われている.一条氏のこの本は,そうした類のものとはまったく姿勢のちがうもので,われわれが双手をあげて待ち望んでいたものなのである.

座談会

兵庫県にみる医療への取り組み

著者: 平田美穂 ,   山本善信 ,   居村茂徳 ,   日笠譲 ,   伊藤忠 ,   冨田重良

ページ範囲:P.50 - P.61

兵庫県では,国民背番号方式の住民健康管理体制や‘不幸なこどもの生まれない運動’などユニークな医療への取り組みをしていることで知られています.これらの動きの端初はどうだったのでしょうか.‘県’という地域レベルでの医療の取り組みの実態を話してもらうことにしました.

今日の精神医療・2

私立精神病院のあり方

著者: 関信男

ページ範囲:P.62 - P.67

わが国では,全精神病床の85%が私立の精神病院に依存しているというきわめて特殊な状況にある.この事実を踏まえたうえで,一般病院とのちがい,あるいは国公立の精神病院との対比などから,私立精神病院のあり方を探ってみると……

病院吏のひとこま

一人前になりはじめたころのハウスキーパー

著者: 長谷川一子

ページ範囲:P.69 - P.69

GHQの指導のうらで
 最近,病院のハウスキーピング,すなわち環境整備についての関心が高まりつつあり,非常に重要な仕事のひとつであるということが人々にわかりはじめてきたように思われ,喜んでいる.しかし二十数年前,最初に日本の病院にハウスキーパー制度がしかれたころのことを思い出すと感無量の気持ちである.当時はかくあらねばならないというような明白な指導指針もなく,毎日のようにGHQより来られる指導官の指導により無我夢中で歩んできた.しかしそれだけでは足りなく,お互いに集まってはグチをこぼしたり,経験を語り合ったりしていたが,この集まりがだんだんと大きくなり,全国組織のハウスキーパー会の発端となり現在に至っている.
 全国組織といっても会員はまことに少なく,日本には医療機関が8000を越えるというのに,いまだ会員数は150名に満たない現状である.しかしこの小さな会が講習会を開催したり,病院協会に協力をいただいて書物の出版,勉強会の開催などをしながら各自の啓発,会員の増加運動などを続けている.近い将来,もっともっと発展してゆくものと確信している.というのは各病院のハウスキーパーもすでに転換期を迎え,最近退職していかれる方が多くなった反面,新人の有望なハウスキーパーがあちらこちらに生まれつつある状態なので,希望を持って次の時代を期待しているのである.

看護管理・14

看護における情報管理

著者: 小山和子

ページ範囲:P.70 - P.71

 病院における看護業務は,定められた看護手順,看護計画,週間行事予定表などにしたがって,計画的に遂行されている.
 近年の医学の進歩に伴い,患者のニードを満たし,他の専門職種よりの期待にこたえるためにも,bedside care (臨床看護)とin serviceeducation (院内教育)のための時間を少しでも多くとらなければならない看護婦にとって,実態はこれとはうらはらに,伝票記入,記録整理,報告書作成といった書記的業務時間を費やしているのが現状であり,はたしてこのように書く仕事が看護婦の業務なのか,という疑問が常になげかけられている.看護業務の円滑な遂行のために利用されないような報告書は,この際‘報告の原則’に照らして徹底的に再吟味され,思い切って廃止されるべきである.

病院職員のための医学知識・2

消化器内視鏡の進歩

著者: 崎田隆夫

ページ範囲:P.72 - P.73

消化器内視鏡にはどんな種類がありますか
 1)胃内視鏡としては,胃カメラ,胃ファイバースコープ,ファイバースコープ付胃カメラ,細胞診または生検用ファイバースコープ,これらすべてを兼ねた万能式ファイバースコープ付胃カメラなどがあります.そのほかに,2)食道ファイバースコープ,3)十二指腸ファイバースコープがあります.これら3つ(食道・胃・十二指腸)を兼ねた万能式ファイバースコープもあります.4)大腸ファイバースコープとしては直腸S字結腸用のシグモイドファイバースコープ,結腸も見えるコロノファイバースコープ,5)腹腔鏡の5つがあります.
 ファイバースコープのなかった時代の内視鏡は,硬性鏡(管がかたく真直ぐのもの)として,胃鏡,食道鏡,直腸鏡および腹腔鏡の4つでしたが,腹腔鏡を除き,最近はほとんどファイバースコープにおきかえられてしまいました.また小腸ファイバースコープが最近試作され近く完成する予定です.

病院におこりやすい法律問題・2

病院と診療契約

著者: 饗庭忠男

ページ範囲:P.74 - P.75

事例・1
 病院に交通事故で救急患者が運びこまれてきた.意識不明で重体である.もちろん保険証なども持っていない.服のネームで名前だけが判明した.意識がないため,通常の場合のように,診療を求める意思表示もできないが,診療行為はしなければならない.こうしたときに,病院と患者との問の法的な関係はどう考えるべきだろうか.

病院建築・49

老人病院の設計

著者: 浦川満

ページ範囲:P.81 - P.87

基本構想
 都養育院付属病院は近年の老齢人口の増加に伴って増大している都内老人患者を対象とし,老人福祉対策の一環として計画された.老人特有の病気,心身機能の減退に対処し,治療およびリハビリテーションを行なって能力の維持回復をはかり,慢性化をできるだけ防いで,自宅あるいは都内老人ホームへ復帰させることを基本理念とし,リハビリテーションを充実すること,老人の医学,心理学,社会学などの研究機関を付置することに特色をもつ.

私的病院からのレポート・14

—神奈川県川崎市・新川橋病院—眼科100床を誇る総合病院—内海栄一郎院長長と木島茂事務局長に聞く

ページ範囲:P.88 - P.97

国鉄川崎駅から徒歩5分,24時間自動車のとだえる時がないという第1京浜国道に面した四辻の一角に,しょうしゃな7階建の病院がある.眼科に関する名声は広くとどろき,患者は全国から集まってくるという病院である.院長は2代目で,いま44歳,働き盛りである.昭和39年に総合病院の形態を整え,46年には新館を増築し,あわせて全面改修を行なってカラフルな明るい病院をつくり上げられた.伝統と若さのうまくミックスした発展しつつある病院である.

話題

「中華医学雑誌」再刊

ページ範囲:P.97 - P.97

 中華人民共和国成立以来の,漢方医学と西洋医学を結合するという,世界で初めての医学研究は多くの臨床実験をへて,いま各分野で驚異的発展をとげていることが,訪中者の報告,新聞報道などで紹介されている.
 針麻酔,聾唖の治療,小児麻痺後遺症の完治のほか,腹部急病の非外科的治療は南開病院だけで,5,700余の臨床例のうち急性虫垂炎の8割,急性膵臓炎と同虫性胆道炎の9割,潰瘍性急性穿孔患者の7割,急性腸閉塞患者の半数を治療したと発表されており各分野で驚異的発展をとげていることがうかがい知られている.

講演

医療はいまどのような問題をかかえているのか

著者: スタルR・J ,   紀伊国献三

ページ範囲:P.98 - P.103

 1972年の8月21日から23日まで,東京・ホテルニューオータニで,ACHA (アメリカ病院管理者学会)の国際医療問題セミナーが開かれた.ACHAは約1万の会員を擁するアメリカの病院管理者の学会で,本部はシカゴにある.ACHAはそのユニークな行動のひとつとして1967年以来,英国,スウェーデン,オーストラリア,今回は日本と,現地でその国の医療の問題を研究するセミナーを行なっている.
 今回講演されたスタル氏(Richard J.Stull)はACHAの会長である.彼は医師ではなく理学部の出身で,メディカル・スクールへ行くはずがフットボールでけがをされ,デューク大学の病院管理学を専攻,卒業後幾つかの病院を実際に管理されたあと,カリフォルニア大学の副総長と同時に,カリフォルニア大学の病院管理学の教授もつとめられた.東北大学の島内武文教授がカリフォルニア大学に留学されたときの教授でもあった.

研究と報告【投稿】

臨床検査技師学生の病院実習について—現状と問題点

著者: 平沢政人 ,   大谷英樹

ページ範囲:P.104 - P.107

 臨床検査技師学校の技術修得を実践的に行なう場として,技師学校依頼の形で病院実習が実施されている.その歴史は1),昭和27年に東京文化医学技術専門学校の前身である医学技術研究科生10名が国立東京第一病院研究検査科で実習されたのが最初で,その教育方法は米国の医学技術学校の教育法2)を参考とされてきた.
 その後,衛生検査技師法施行に基づき各教育機関(各種学校,短大,大学)が設立され,それぞれ学校の事情によって教育内容および病院実習の依頼内容が異なることは別として病院実習は一応定着したように思われる.そして現在多くの問題を残しながらも全国で1000名以上の学生によって病院実習が実施されていることは,病院実習の重要性が認識されたと考えてもよいであろう.

EOG滅菌器の使用経験と今後の消毒業務のあり方

著者: 安達宮子 ,   雁部春枝 ,   加藤貞夫 ,   鎌田忠夫

ページ範囲:P.108 - P.110

はじめに
 近代社会は第2次大戦後四半世紀を経た今日,抗生物質の相次ぐ発見,麻酔の進歩により外科手術は長足の発展を遂げた.しかしながら臨床の第一線にある市中の中小病院においては,麻酔や手術に関連した基本材料の消毒業務の改善はこれらに比較すればかなり遅れをみており,即座に使用できるディスポーザブルの注射器セットや滅菌パックの針付き縫合糸などの採用を除けば,ほかにとくに見るべきものはなく,大勢は依然としてシンメルブッシュによる煮沸消毒法,乾熱滅菌法,あるいはオートクレーブによる高圧蒸気滅菌法がほとんどその主体をなしている現状である.
 戦後わが国は高度経済成長政策の結果,GNP世界第2位の経済大国といわれるまでに至ったが,医療経済は依然として貧困の域を脱却せず,健保財政の赤字と逐年上昇する人件費,それに加えて看護婦その他医療従業員の慢性的な不足問題を抱えた市中病院は,いかにして合理化と設備投資のバランス点を見いだすかに苦心している.

病床管理の現状とその考察

著者: 藤村吉弘

ページ範囲:P.111 - P.113

 病床の管理運営の優劣は,その病院の浮沈にもかかわる重要なことである.この管理方式にはいろいろあり,各病院においては,その実情に即応したそれぞれの方式により行なわれているのが現状であると思われる.

読者の声

虚空遍歴—本誌昭和47年8月号から考えたこと

著者: 津田順吉

ページ範囲:P.110 - P.110

 島内教授の‘スタッフ化の進展’を読んだ.島内教授の20年以上の努力を知った.
 20数年前の島内教授,新宿の病院管理研修所のいわば生徒だったころ,吉田所長も同じような存在だったと思う.遠慮深く,研修生たちを世話したり,教育したりしてくれた守屋氏,私は島内教授を‘ヤロッコ’のように見ていた.町医者的な日本の医療に,これから病院管理学などいうものが育つようには思われなかった.それをこつこつ研究する.

問いかける沖繩・2

琉大病院の構想

著者: 鈴木淳 ,   大城喜久次

ページ範囲:P.114 - P.115

背景
 戦前の沖縄は全国府県衛生状況比較で最下位群に属し,ことに伝染病罹患率は全国一であった.この状況に恐れをなして県衛生部長の希望者はなく,内務省は人選に苦慮したという.
 戦闘下の受傷罹病の悲惨さはさておくとしても,収容所・バラック住居などの戦後の生活環境の悪化は伝染病をはびこらせ,ある島ではマラリヤで廃村となり,フィラリアは蔓延した.米軍は公衆衛生対策に力を注ぎ,なかにはマラリヤのようにWHO推奨の業績をあげたのもあり,全般的にも短い期間内に戦前の水準以上に復した.だが,琉球政府財政の乏しさもあって,慢性疾患対策は難渋し,いまもなお新発生の結核患者が年間2000名あまり登録され,性病患者は4000名を数えるし,精神障害者は本土の2倍と推定されている.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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