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雑誌目次

雑誌文献

病院32巻8号

1973年08月発行

雑誌目次

特集 週休2日制

病院における週休2日制導入の意義

著者: 橋本寿三男

ページ範囲:P.22 - P.24

はじめに
 週休2日制は,欧米ではすでにかなりの実績を重ねているはずだが,わが国では,最近に至るまで遠い夢のように感じられていたのではないかと思う.しかし,今や切実な社会問題になりつつある.例によって,これもわが国独得のマスコミ先導型社会のひとつの現象であるのかもしれない.
 ここで,静かに週休2日制の本体を見きわめておくことも,意味のないことではないであろう.この小論は,そのようなつもりで,問題を整理することから始めようと思う.

医療労働者が週休2日制を要求する根拠—労働時間短縮を土台として

著者: 宇和川邁

ページ範囲:P.26 - P.29

高まる労働者の労働時間短縮運動
 労働者の労働時間短縮運動の全経過は省略することにして,最近のそれは,国際的にみると,1955,56年頃から発展しはじめており,1958年,世界労連第4回世界大会は「労働時間に関する決議」を行ない,多くの先進資本主義諸国で週40時間制をめざした.これらの運動が背景にあり,1962年,ILOは第116号勧告——週40時間制の段階的達成——を採択した.このような動きとともに,各国で年次有給休暇の延長が進められ,この影響のもとで,1970年,ILO総会で,3労働週の年休を最低とする改正年次有給休暇条約(第132号)が採択されている.労働時間短縮は進んできているが,これは労働者が要求し,ストライキさえも行使して運動してきた結果であり,社会主義諸国での労働時間短縮の影響も強くうけたものである.さらに,1971年,ILO理事会は,レクリエーションのための有給休暇とは別に,職業訓練,一般教育,労働組合教育のための‘有給教育休暇’を,総会の議題とすることを決定している.週休2日制は,これらの労働時間短縮運動,日あたり労働時間短縮を土台とした週40時間制,さらに週35時間制と結びついて具体化されてきたものである.
 日本の労働時間短縮運動は,1960年頃からはじまっているが,国際的にみてそのテンポはおそかった.しかし,ここ数年,この運動は急速に高まっている.

週休2日制導入の前提条件と方法

著者: 斉藤公男

ページ範囲:P.30 - P.34

客観的条件(その1)
 わが国の労働時間短縮問題が,週休2日制とのかかわり合いで問題とされるようになったのは,昭和37年ILO総会で労働時間短縮に関する116号勧告(1935年の1週40時間に短縮することを目的とした47号条約を具体的・段階的に実施することを勧告したもの)が採択されたことを契機とする.

実施後2年目を迎えた診療5日制—医療法人財団・常盤台外科病院

著者: 望月和昭

ページ範囲:P.35 - P.35

 週休2日制は,企業が実施する,しないは別として今日常識的となり経営者も反対できにくい情勢となっている.常盤台外科病院では,46年初めより患者アンケートを数か月にわたり何回もとり検討するとともに,診療5日制のPRを行ない,46年11月より実施に踏みきった.

ユニークな週休2日制—豊洲厚生病院の経験報告

著者: 水野精己

ページ範囲:P.36 - P.39

病院をたとえば土・日連休の週休2日制にした場合,外来2日休診,回診2日なしという事態も招く.患者にしてみれば,病院の‘公共性’に疑問を感じることにもなりかねない.地域唯一の病院,あるいは救急センターとあらばなおさらのことである.しかし,週休2日制が時のすう勢だとすれば,病院もこれに対して拱手傍観はできないであろう.ここに掲載するレポートは,1年365日無休外来診療体制を保ちながら,チームのローテーションによって,職員の週休2日制実施にふみきった豊洲厚生病院(本誌32巻5号‘私的病院からのレポート’で紹介)からの興味ある‘実験的’報告である.

現在にみる週休2日制の経験

著者: 品川要 ,   土谷太郎 ,   玉城東振

ページ範囲:P.40 - P.43

東洋工業付属病院
本社・工場に同調して実施したが……
 ‘日本人は働き過ぎである’とある有名な学者殿がおっしゃったせいでもないが,最近は欧米なみに,土曜日も休む週休2日制が,だいぶ普及し定着化してきた.そうしたなかにあっても医療関係の週休2日制の実施は,まだ数少なくようやく緒についたという感じである.これは働く人びとへの配慮より,患者への配慮がより優先しているからかもしれない.
 とはいえ当院は昨年の8月16日から月2回の週休2日制を実施している.あれからもう10か月,確かに2日続きで休めることは魅力のあることだが,後述の諸問題を抱えては,正直なところ週休2日制も,月2回が限界かなあと思ったりしている.また金曜日の初診患者は当然3日後の月曜日の再来となるが,病状によっては,土曜休日のその1日が問題であったりして,週休2日制にも悩みは多い.少ない経験だが簡単に述べてみたい.

職域病院における週休2日制の問題点—愛知県実態調査から

著者: 阿久津慎

ページ範囲:P.44 - P.48

 週休2日制の実現をめざす企業は,急激に増加しつつあり,企業体に属する職域病院においては,すでに,その企業とともに週休2日制へ移行している病院もある.
 そこで,職域病院が,週休2日制に移行する場合の事前調査として,職域病院はどのような姿で週休2日制にはいっていったらよいかを研究する必要に迫られた.

ニュース

病院の週休2日制をめぐって熱心な討論—病院労務関係講座でパネルディスカッション

ページ範囲:P.25 - P.25

 去る7月23日午後,‘病院における週休2日制をどう実現するか’というテーマのもとにパネルディスカッションが行なわれた(東京神宮前・食品衛生センター講堂).これは,10回目をむかえた‘病院労務関係講座’(主催・日本労働協会,全国病院労務管理学会)の一環として企画されたものである.石原信吾氏(病院管理研究所)の司会のもとで討議に加わったのは,いずれも週休2日制を実施している病院の代表者で大久保才一(天王寺病院事務局長),有泉豊作)杏雲堂平塚病院事務長),王城東振(足立共済病院事務長),渡辺勝三郎(北品川総合病院外科部長),水野精已(豊洲厚生病院常務理事)の各氏と,病院以外の企業から幾田菊男氏(キャノン株式会社厚生課長代理)であった.
 はじめに,上記の各氏から週休2日制実施の経験が順に語られ,休憩ののち,‘週休2日制と診療体制・労働日数・労働時間・休日・配置人員および給与体系の運用’といったテーマをめぐって討議が行なわれ,講座に参加した150名を越す全国の病院関係者は,時に質問を出しつつ熱心に聞きいっていた.

座談会

病院の週休2日制を模索する

著者: 本誌編集委員

ページ範囲:P.49 - P.57

週休2日制の波が病院にも押し寄せてきている.患者のニードに即した形で病院はこの制度へ向かって足がかりをつかまねばならないだろう.しかし,病院業務の実態からすれば確かに厳しい問題だ.だが,病院も社会の動向から離れて存在できないとすれば,また医療労働者の欲求が強いとすれば…….本誌編集委員に,週休2日制導入の可能性,条件,その前提,そして方法などについて,忌憚ないところを吐露していただいた.

病院と統計

国民所得と消費性向

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.10 - P.11

 経済の高度成長という言葉は,いまではもうすっかり聞きふるされた言葉になってしまったが,ここに掲げた‘国民所得1人あたりの年次推移’の図をみると,その‘高度成長’という言葉が今さらながらの実感をもって迫ってくる.42年から47年までの5年間で,それは文字どおり倍増している.その前の5年ごとをとって見ても,32年から37年までが85%増,37年から42年までが90%増と増加率はきわめて大きい.とにかく,30年にはまだ約8万円で10万円にも達していなかったものが,わずか15年あまりの間に9倍近くの70万円にもなっているのであるから,ちょっと信じられないほどの増加ぶりである.
 経済企画庁の発表によれば,今年の1月から3月期の調べでは,国民1人あたり年間所得の推定額はついに3千ドルを越したという(1ドル=297円03銭).これまでの各国の経験からすると,国民1人あたり所得が3千ドルを越すと,一般の人々の意識はガラッと変わるというから,わが国にも当然同じような現象が起こるものと見なければならない.ことさらに‘立身栄達’を求めるという後進貧乏国の一般的風潮から,もっと楽天的な身辺的安逸を求めるという方向への変換が大きくかつ急速に見られるようになるのではなかろうか.

グラフ

天城高原に開花した‘基幹総合施設’—農協共済中伊豆リハビリテーションセンター

ページ範囲:P.13 - P.17

構想6年,着工後1年を経た本年4月,天城高原の約60万坪という敷地内に,巨費21.5億円を投じて社会福祉法人・農協共済中伊豆リハビリテーションセンター(滝沢敏理事長)が完成した(施設用地約3.5万坪).西の別府とあわせて農協共済事業のアフターサービス事業として計画され,とくに農村にも激増しつつある交通事故障害者を中心に,身障者の社会復帰をはかる施設である.建築・設備など多くの面に最新の技術をとりいれ,わが国におけるリハビリのモデルセンターたらんとして5月1日より開設された.

富山県・上市厚生病院の地域医療活動

ページ範囲:P.78 - P.81

 富山市から東に15kmの上市町は,東南に細長く延びた人口2万3000人の町である.剣岳(3003m)を主峰とする山岳地帯に接するこの町は,名だたる北陸の豪雪地帯でもある.町を流れる早月川・上市川の上流には,5地区,12の集落が散在している.これは,全部をあわせても世帯数は336,人口1379人にすぎないという典型的なへき地である(昭和47年末).
 この地区を対象に,上市厚生病院では,昭和30年から巡回診療を始め,諸種の検診や健康調査を実施してきた.現在,この地区の過疎化はますますその度合いを強め,それとともに住民の医療の確保も深刻な様相を呈してきた.

病院界のリーダーとして数々の問題を提起し,取り組む 有隣病院院長 近藤六郎先生

著者: 村上正敏

ページ範囲:P.18 - P.18

 お若い先生である.明治30年生まれ,75歳とはとうていお見受けできない.また,行動力と鋭敏果断な決断力はいつも周囲の人を驚かす.大正12年東大医学部を卒業.在学当時,三田教授・真鍋教授の下で血清化学・内科学を専攻され,若き日の情熱はいきおい結核亡国論が叫ばれる中で,敢然とこれに取り組むこととなられたようだ.以来50年,結核一筋に歩み続けられ,死ぬ病院から治る病院に変わった.この間,結核の予防事業に貢献した功により,昭和44年保健文化賞を受賞されている.
 しかし,今なお150万の潜在患者が放置に近い状態にあるのに対し,結核の恐しさを説き,軽視の風潮を戒めておられる.老人性結核が多いことが契機となって,近時老人病問題にも熱意を傾けておられるが,現実にベッドサイドで脈をとる先生の胸中には,見せかけが先行する老人病政策に,同世代を共に歩んだ患者への共鳴といたわりが混然となって,きびしい批判が口を開かせることもある.

時評

老人の入院

著者:

ページ範囲:P.58 - P.58

 48年1月1日から国による老人医療無料化制度の実施後,病院における老人の入院の増加が指摘されている.今年3月実施された自治体病院協議会の‘自治体病院における高齢患者調査’の報告でも,全入院患者中70歳以上の高齢者の占める割合が一般病院での16.4%から18.6%と上昇し,老人患者の伸びもわずか3か月の実施で18%の上昇があったことを示している.
 全人口の中に占める老齢者の増加傾向,そして若年者と老齢者が医療にかかる率の高いことから考えて,老人の入院は今後の病院にとってまことに大きな問題となることは,容易に想像がつくことである.おそらくこのままの上昇傾向が続くならば,現在の病床の多くが老齢者の入院によって占められること,その結果多くの専門職種が急速に不足し,医療費のかなりの部分がそのため消費されるであろうことが確実なものとして予測される.

私的病院からのレポート・20

—東京・牧田総合病院—病院が医者を養成し,技術者をつくる—牧田 中病院長にきく

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.59 - P.65

義理と人情を尊ぶ心いきと時代を先どりする冷静な見通しが,矛盾なく備わっている——そんな感じの牧田院長(下写真)である.専門は内科とのことであるが,聴診器はここ10年ばかりもったこともないという.経営一筋のワンマンリーダーである.今日は,7歳下の副院長(令弟),ドックのほうを中心にやっている笹森副院長,それと,小島事務長も同席してのインタビューである.

問いかける沖繩・8

離島診療の実態

著者: 伊波茂雄

ページ範囲:P.66 - P.67

北・中・南部の3群島に分かれる
 沖縄県は全国唯一の島県である.弧状に九州南方海上から台湾近くまでのびていて,太平洋と東支那海にまたがり,東西約450km,南北約650kmの海域に散在する40の有人島を有する島県である(無人島を含めると約70の島がある).
 県全体が日本プロパー(沖縄では本土と呼んでいる)から遠く離れているうえ,最大の島であり,県庁所在の島である沖縄島でさえ,佐渡ケ島より小さい.この沖縄県の40の有人島集団は大別して3つの群島に分けることができる.すなわち,県の北部に位置する沖縄群島,中部の宮古群島,および南部の八重山群島である.地理的・行政的にこの3群に分けられ,かつ珍しいことに3群島の住人の使用する言葉はお互いに異なっている。

病院史のひとこま

麻酔の事始め

著者: 山下九三夫

ページ範囲:P.69 - P.69

‘7人の侍’の努力
 日本の麻酔科の草分けの人々はその大部分が外科出身であり,しかも胸部外科に関係のある者が多い.最近中国では開胸手術までハリ麻酔で行なうと聞いたとき,われわれはすぐ開胸直後には患者に奇異呼吸が起こり,呼吸困難を訴える者が多いはずだが,いったいこれにどのように対処しているであろうかとの疑問がすぐ思い浮かんでくる.わが国の全身麻酔は実にこの開胸時の苦心から生まれたともいえるのである.
 昭和26年の外科学会会長前田和三郎教授は,‘麻酔学の発展は喫緊の要がある’という旨の会長演説をされた.その当時アメリカからサクラード教授が来日し,ハイドブリンク型の全身麻酔器を供覧し,われわれはその精巧さに目をみはったものである.日本の近代麻酔はまさにこの頃開花したともいえよう.昭和27年にはわが国最初の麻酔学講座が東京大学に開設され,山村秀夫教授がその任に当たった.その当時は麻酔を専門とする者も少なく,麻酔は外科のアクセサリーか,アシスタント程度しか考えられず,専門を志す者も少なく,麻酔科の独立は各病院とも遅々として進まなかった.それでも昭和33年には東京で麻酔を専門とする者は20数名となった.

看護管理・20

新採用者の教育計画

著者: 嶋崎佐智子

ページ範囲:P.70 - P.71

技術習得から技術応用の方向へ
 新採用職員の教育は,卒後教育の第一歩として重視され,これまでも種々の検討がなされてきたが,看護学校における教育の目標が,在来の技術訓練重視から,人びとの健康に対する援助者として,習得した基本的な知識や技術を応用できる能力を育てる方向にすすんできた現在では,その重要性がさらに増してきている.
 看護は,常に患者にとって安全で,より良い状態で行なわれなければならない.そのために,新採用者に対しては新しく所属した組織集団の一員として,適切な行動ができ,看護婦の不慣れな行動で患者に不安を与えることがないよう,必要な教育を行なわなければならない.

病院職員のための医学知識・8

難病対策 現状と今後の問題点

著者: 宇尾野公義

ページ範囲:P.72 - P.73

 いわゆる‘難病’とはどういう病気を指しますか.
 最近‘難病’という言葉がよく使われますが,これは医療従事者や行政の側よりもむしろ患者団体が医療福祉,病因の究明などを国や地方自治体に強く訴える場合に用いていましたが,この俗語がいつの間にか一般的な名称になったわけです.国では‘特定疾患’,東京都では‘特殊疾病’という名称で昨年から調査研究を開始しました.
 この‘難病’の範疇にはいる条件としては,一般的に,①原因が不明である,②適切な治療法がなく,死亡率が高い,③長期慢性経過をとり,後遺症を残す,④療養に高額の費用がかかり,患者や家族の物心両面の負担が大きい,などの諸条件を有する場合に一応難病として取り扱われるように思います.

病院におこりやすい法律問題・8

病院と労働問題

著者: 饗庭忠男

ページ範囲:P.74 - P.75

事例
 病院職員に対し,配置転換を指示したところ,その配置転換を命ぜられた職場での労務が,当初の労働契約により合意した労務と異なるからこの命令に従う義務はないと主張している.配置転換の合理性はどのように考えるべきであろうか.

院長日誌

小児ベッドのとり換え論議

著者: 菊池俊雄

ページ範囲:P.76 - P.76

 <某月某日>看護部長から,小児病棟看護婦の意見でもあり,現在のベッド乳児・幼児用23床を柵付ベッドに変更してほしいとの申し出があった.そのうち6床は乳児用で,破損した柵がはずれやすく危険であるということであった.そしてその6床は即刻とり換えることとし,残りの17床については,その種類,利害得失を十分考慮してから決定することにした.
 小児ベッド交換の動機は,最近小児の転落が多いので,このさい未然に転落による事故を防止しようということで一応うなずけるが,転落ごとに脳外科の診断を受け,時にはレントゲン撮影を要するなど,たとえ大事にいたらないまでも担当医から看護の怠慢を叱られることの不満にも原因があるらしい.事故といえば,隣接の医大病院4階小児病棟の古い網戸がはずれ,もたれていた患児の墜死を招いたことがあって私たちを慄然とさせた.この種の事故は非がいずれにあるにせよ責任は病院が負うべき運命にあるのが現状である.早速に私たちの病院でも小児病棟外窓に枠をつけ,階段の手摺りにまたがって遊ぶ子供があり片側の地下へ直結するほうへ網をはりめぐらした.私たちの周辺には大小様々の事故につながる原因が潜んでいるものである.

病院建築・55

徳島県立中央病院の設計

著者: 土肥耕一

ページ範囲:P.83 - P.88

はじめに
 最近では医療技術の進歩,医療形態の変化により,病院建築は10年たてば何らかの増改築の必要に迫られるようである.その場合,医療機関として地域との密着度,利用圏の変化による経営への影響,土地取得の難易,都市公害,駐車場問題などと事業予算とのからみあいの上で,移転新築か現在地での改築かのいずれをとるかが大きなポイントである.ここに述べる徳島県立中央病院ほその後者の例である.
 徳島市の西北,眉山を南に間近かくひかえた旧陸軍練兵場跡に,徳島大学医学部と隣合う当病院は,増改築を重ねて図1に見られるように,敷地内所狭しとパビリオン状に広がっていた.その上建物のほとんどが木造の平家か2階建ですでに老朽化し,機能上も環境上も劣悪な状態であったし,敷地の拡張ということもその立地条件から不可能であった.

今日の精神医療・8

松沢病院10年間の改築を顧みて

著者: 岡田敬蔵

ページ範囲:P.89 - P.94

全面改築に至るまで
 大正7年3月5日に府立松沢病院新築工事が起工され,翌8年11月7日に同院の前身である東京府巣鴨病院の在院患者すべてが府下荏原郡松沢村の新築病舎に移った(この11月7日をもって松沢病院の開院記念日と定められた).
 爾来,星霜を重ねること53年.開院当初の新築工事がすべて竣工したのは大正10年3月であったが,建物だけを顧みても,関東大震災(大正12年)による損壊,近くは昭和20年の空襲による被災のほかにも,たびたびの増改築があり,幾多の変遷を経て,激しく老朽化した病院の全面改築は,全職員の切なる願いであった.

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大阪府立病院と近隣医師会との連携

著者: 田辺孜 ,   飯田喜俊

ページ範囲:P.95 - P.99

はじめに
 病院のあり方,とくに地域と密接な関連をもちながら医療を行なうことの重要性が最近しきりにいわれている.
 われわれ大阪府立病院(以下‘病院’と記す)ができたのは18年前であるが,大阪府における唯一の府立総合病院として今までいろいろと地域医療のために努力が払われてきた.その歩みはわれわれの理想からはまだほど遠いものであろうが,今後の病院のあり方を考えるさいにご参考になればと思い,紹介したいと思う.

‘待たせない外来’への挑戦(その2)—病歴保管システムの変換計画

著者: 上林三郎

ページ範囲:P.100 - P.103

先月号では受付の整備までを紹介した.今月は,受付に来る患者の診療記録を整理保管し,要に応じて迅速に出せるようシステム化する——‘待たせない’ための第2の挑戦である.

ばらんす・しーと

ソ連の食糧不足とわが国の医療の統制/"世の中変わっちゃいない"—水銀汚染と食生活

著者:

ページ範囲:P.103 - P.103

 ウォーターゲート事件で辞職するかしないかの瀬戸際まで追いつめられているニクソンを,予定どおりブレジネフ書記長は訪問した.しかも,資本主義の尖兵,商社の外国駐在員または売込み社員顔負けのショウマン・サービスをふりまきながら.
 その理由または動機は,いったい何であろうか.

調査と報告

医師・看護婦不足と病棟閉鎖の実情—日本病院協会

著者: 河北恵文

ページ範囲:P.104 - P.106

 本年正月の初の日本病院協会理事会で,神崎会長が本年は看護婦対策を最重点に取り上げねばならない情勢にあるとのあいさつがあり,また,どこの院長と話しても,話題に出るのは看護婦確保の問題である.2月13日の日病の理事会で,病院の職員,ことに看護婦不足状況とそのための病床閉鎖の全国の実態調査を行なうことを議題に上呈したところ,地方の理事者より,看護婦よりも医師の不足が地方においては慢性化し,そのために診療科の閉鎖がかなりみられるので,その調査も同時に行なうようにとの希望があり,今回の調査となった.
 調査方法は,会員940病院に職員部門別不足状況と,病床および診療科の閉鎖状況の回答を求めた.

研究と報告【投稿】

調剤業務のフローチャートと問題点

著者: 相良悦郎 ,   中川冨士雄 ,   木全心一

ページ範囲:P.107 - P.114

 病院薬局の業務をいくつかの部門に分けてみるとたとえば図1のように分けられる.
 このように業務内容別に分けおのおのについて問題を検討してみると,病院薬局には共通した問題があり,すでに解析され改善されてきたものが多い.この中で調剤業務のフローチャートを処方箋の流れを中心に書き,その中から業務上の問題点を指摘し,それが何に基因するのかを検討した.

トピックス

都養育院病院のデイホスピタルでチェロリサイタル

ページ範囲:P.114 - P.114

 さる6月30(土)の午後,都養育院病院では,デイホスピタルに河合楽器K.K.よりグランドピアノが寄贈されたのを記念して,チェロ独奏による小コンサートが開かれた.演奏者はイソ弦楽四重奏団のチェロ奏者中島隆久氏,ピアノ伴奏が当院のリハビリテーション部長の荻島秀男氏.
 演奏のはじまる30分前には車椅子の患者や看護婦たちで小ホールはほぼ満員,演奏が始まる寸前には寝たきりの患者までがストレッチャーのまま運び込まれ,1時間半にわたるチェロ独奏に熱心に聞きほれていた.1曲終わるごとにストレッチャーの上の患者たちの拍手が印象的であった.

霞ガ関だより

医事紛争研究班の発足

著者:

ページ範囲:P.115 - P.115

 厚生省は,このほど医事紛争研究班を発足させ,その第1回会合が7月9日(月)帝国ホテルで開催された.
 メンバーは,次のとおりである.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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