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雑誌目次

雑誌文献

病院33巻10号

1974年10月発行

雑誌目次

特集 コンピュータ・システムのメリット・デメリット

コンピュータ導入に関する諸問題—システム設計者の立場から

著者: 大島昭

ページ範囲:P.22 - P.25

コンピュータ導入の背景◇
 割合最近の新聞で,通産・厚生両省共管の財団法人「医療情報システム開発センター」の設立発起人総会が開かれ,その後ほどなく正式発足したという記事を読んだ.このほかにも,日本医師会,電々公社等々,各所で医療関係へのコンピュータ利用の議論や試みが,このところとみに盛んになってきているようだ.これらの議論に接して,私のような医療に関する素人がまず驚くのは,議論の範囲があまりにも広いことだ.検体検査のシステム・心臓検診のシステムあり,健診のシステムあり,病院内の総合システムがあれば,保険事務,処方,僻地の診療システム,地域医療情報の議論から,国家的規模の医療情報ネットワークまでの広がりがある.
 医療という世界が,それだけ広く深いのだといわれてしまえばそれまでかもしれないが,議論の背景は決して単純ではなさそうである.

今後の病院コンピュータ・システムの設計方法

著者: 木全心一

ページ範囲:P.36 - P.39

 病院のコンピュータ・システムにもいくつかの種類があり,さらに,病院外の計算センターの普及,広域医療情報システムの具体化などの要因が加わり,われわれの選択の幅が広がってきている.したがって,導入のポイントをどこにおくかによって異なったシステムが作られるようになった.本稿では,具体的に4種類の異なったシステムについて検討し,そのメリット,デメリットを述べることにする.

経済性の追究—銚子嶋田病院の場合

著者: 桜井健司 ,   嶋田賢 ,   嶋田久 ,   渡辺汎治 ,   根本祐吉

ページ範囲:P.40 - P.45

はじめに◇
 病院およびその他の医療機関でのコンピュータの利用は,他の産業界と比較すると若干遅れている.保有台数からみると,まだわが国全体の0.24%と少ないが,多方面で活用され,また医療情報システムの一端をになうべく期待されている.
 しかし,コンピュータによる病院のEDPS化は,診療内容の質的向上とか病院の経営管理の合理化といった抽象的な目的が強調され,医療の万能薬のよう的に考えられているきらいがないでもない.

アンケート

コンピュータ導入の実情と問題

著者: 池田博 ,   山田美砂子 ,   高崎亮平 ,   三浦秀夫 ,   斎藤誠 ,   鈴木康之 ,   上林三郎

ページ範囲:P.26 - P.35

 実際にコンピュータ・システムを導入・作動している病院について,管理面を中心に以下の9つの項目に関してその実情と問題を紹介していただいた.
 1)現在の適用業務 2)現在の手持ちプログラム数 3)プログラム開発期間 4)プログラム開発要員 5) CPU機種 6)費用 7)今後の開発スケジュール 8)コンピュータ・システムのねらいとした点 9)コンピュータ・システムの開発の最大の問題(3つ)

病院と統計 病院の部門別原価計算・11

補助部門原価

著者: 尾口平吉

ページ範囲:P.10 - P.11

補助部門原価
 部門自体の業務からは直接収益を産み出さないが,収益を産み出す主部門にその業務を行なうに必要なサービスを供給する部門で,この原価計算においては,医療社会事業,中央材料,洗濯(リネン),ボイラー,職員厚生,医事,一般管理の各部門に分類し,それぞれの部門の原価を把握して,これを供給したサービスの量に応じて各主部門に配賦した.病院の総原価(利子を含まない)中に占める各補助部門原価の割合は図1に示す.補助部門の全原価は,総原価の13.2%であるが,そのうちの9.85%は医事,一般管理の2部門,すなわち事務部門の原価であり,全補助部門原価の75%を占める.ボイラー部門原価が比較的少ないのは調査時点が6月のため暖房がなかったことによる.

中検管理から病院管理へ 関東中央病院 樫田良精院長

著者: 守屋博

ページ範囲:P.13 - P.13

 知らない人がみたら,大僧正か大親分と思うかもしれない.先代十次郎先生が日本橋で有名な開業医であったので,昭和12年東大医学部卒業と同時に呉内科にはいられ,臨床に進まれた.当時有名な呉—沖中心臓チームではもっぱら心電計を担当され,開発中の心電計の草分けの1人として,器械化診断に一歩を入れられた.今日MEからコンピュータに進み,さらにシステム医療の第一人者になられた端緒である.沖中チームでは神経細胞学研究のため,病理学教室の吉田教授のところに留学されている.今でもこと神経病理に関しては決して本職に負けないと自慢しておられる.
 たまたま昭和29年東大病院の新築と同時に,近代組織化のため中央手術室と中央検査室の計画が始まった.呉先生のあとを継がれた美甘教授が中央検査部長になられたので,助教授の樫田先生が副部長といいながら,実質的に創立の責任を負わされたのである.われわれ病院管理屋は,病院の近代化は諸機能の中央化,ことに中央検査室の確立から始まると考えて一般病院で苦労していたのであるが,国立大学では有名な講座割拠制度のため急には中央化は進まないであろう,場合によれば10年仕事かと考えていたが,実際にはわずか数年でりっぱな検査室ができあがった.これは中検の実績が事実をもって前近代性を圧倒したとみるべきであろう.東大で中央制度が確立したことは,結果として他の国立大学や私立大学に及び,病院近代化の突破口となったのである.

グラフ 新設医大付属病院シリーズ・1

自治医科大学付属病院・松本清一院長にきく

ページ範囲:P.14 - P.19

看護婦不足が悩みの種
--自治医科大学付属病院は,去る4月13日に開院式,そして翌15日から診療を始められたそうですが,それから半年たった現在の状況はいかがですか
 病床数は全部で850ほどあるのですが,ご承知のように看護婦が大幅に不足しておりまして,なかなかうまくいきません.最初は,内科系,外科系および産科・小児科を各1病棟ずつ,3病棟,合計132床で始めました.つい最近外科病棟を2つに分けて2病棟にしましたので,使用しているベッドはようやく170までこぎつけたというところです.

時評

全世界的な経済危機と病院

著者:

ページ範囲:P.46 - P.46

異例の2度にわたる医療費改訂
 消火を有効に行なうためには,注水量を火勢以上にするか,火勢自体を鎮静させるかのどちらかしかない.
 現在,病院では人件費が加速度的に増えており,これは,いわば火勢がますます激しくなっている状況にたとえることができる.そのために病院の赤字が急激に増加し,このままではほとんどの病院が経済的崩壊を免れないであろう,という予想さえ立てられるようになった.そうした情勢に対応して,本年度は,8か月を隔てて2回にわたるかなりの程度の医療費の改訂が行なわれた.これはかつてない異例の措置で,いかに事態が切迫していたかを物語るものである.いわば拡大の一途をたどる火の手を喰いとめるために,連続的注水措置がとられたとも見ることができよう.

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医療費改訂の影響

著者: 黒田幸男 ,   安藤秀雄 ,   松下保信 ,   近藤六郎 ,   南孝夫

ページ範囲:P.47 - P.52

昨秋以来の狂乱物価と人件費の暴騰は,多くの病院を崩壊寸前の水際にまで追いこんだ.病院関係者の必死の叫びはようやく社会をも巻きこみ,今年2月の改訂に引き続き,10月のさらなる改訂を手に入れた.さてこれでどうなるか……以下を参考にして検討いただきたい.

院長日誌

著者: 相沢豊三

ページ範囲:P.60 - P.60

わたくしの病院
 〈某月某日〉さる地方の大学教授から立川は何県にあるかとの質問である.わたくしの病院はその立川にあるので一応認識を深めておく必要がある.新宿から中央線で45分(特別快速だと26分)にして東京都立川市に達する.立川村として誕生したのは明治22年で,その年にはじめて新宿—立川間に鉄道が開通した.その頃立川は戸数320の雑木林に囲まれた一寒村にすぎなかったとのことであるが,大正12年に町制,それから17年後の昭和15年には市制がしかれ,面積も3倍,人口も約20万に膨れ上がり,三多摩地区の中央に位置するこの街は,名実ともに経済・行政・文化の中心都市として浮かび上がり,さらに大きな発展と飛躍が約束されるに至った.こうした街の福利厚生の一役を担っているものにわたくしの病院すなわち「国家公務員共済組合連合会立川病院」がある.
 国立立川病院と区別するために通称立川共済病院といわれている.昭和19年,太平洋戦争が苛烈を極めていた頃,東京第二陸軍病院として,立川市およびその周辺にある航空関係軍人・軍属および家族の福利のため創設されたもので,現在では各科の病棟535,外来・中央検査部その他,近代化した診療設備を整え,高等看護学院をも併せ,ちょっとした医学部の付属病院としても恥しからぬ陣容を備えている.

フランスの医療制度

著者: 高橋勝三

ページ範囲:P.93 - P.95

この紋章はルイ15世により18世紀に創設された外科アカデミーの紋章で中央にある百合の花は王家のシンボルである.

病院図書館

—IRVING B.WEINER 著 秋谷たつ子,松島淑恵 共訳—「精神分裂病の心理学」

著者: 村松常雄

ページ範囲:P.52 - P.52

すべての精神科医に開かれた書
 心理学者と精神医学専門家との協力研究は,わが国でも大正時代から半世紀余りの歴史を持つ.たとえば内田勇三郎氏のクレペリン・テストの研究も当時の東京府立松沢病院での仕事であった.しかし臨床心理学なる専門領域の専門家であるという資格称号が学会によって定められたのはアメリカのことで,一定の学歴,研究歴と1年以上の臨床経験というかなり高い水準が資格審査受験の基準として求められるようになる,と聞いたのが1950年のことであった.それは,筆者が終戦後における欧米の専門学界視察旅行を終えてアメリカから帰国する直前のことであった.当時英仏などでも,大学精神医学の教室でもある有名な精神病院などには心理学者が研究していたが,たとえばフランスのロピタル・サンタンヌでは心理学者がテスターとしての仕事だけしか与えられず,あまり重視されていないと不満を訴えていた.しかしこれはいずれも今から20年以上も前の話である.
 わが国における心理学者の臨床面での活動も,おそらくアメリカの影響もあって戦後著しく活発になってきた.本書の訳者の1人である秋谷君は,筆者が名古屋大学医学部精神医学教室に在職当時,1956年から何年かの間教室の研究員として10人余り集った当時の若い心理学者の1人である.当時教室では,患者に対する諸心理テストの分析による診断と,医師の側での診断との対照,検討なども繰返していた.

病院のクオレ

第10話 患者安全(1)

著者: 原素行

ページ範囲:P.53 - P.53

 患者安全といえば,必ず病院安全という言葉が返ってくる.もちろん,病院安全の欠けるところに,患者安全はありえない.しかし,病院の安全が確立されても,必ずしも,患者安全が成立するとはいいえない.患者安全問題の焦点がここにある.いうなれば,患者安全問題は,その幅が非常に広く,これを調べると,数多くの事項が山積していて,病院の心の配りかたの良否にかかわっている.そのため,問題は複雑である.ただし,へたをすれば複雑怪奇に陥りかねない.

病院職員のための医学知識・22

心身症

著者: 石川中

ページ範囲:P.54 - P.55

いわゆる‘心身症’を病名と考えてよいのでしょうか.あるいは,もっと漠然とした概念でしょうか.その定義について教えてください.
 心身症は,多くの病名や症候群を含んだ疾患群であって,特定の病気をあらわす病名ではありません.たとえば,保険の請求をする時に,ただ心身症とだけ書いて請求したりするのは正しくなく,心臓神経症+不安神経症とか,胃潰瘍+抑うつ状態などと書くべきです.
 心身症の定義は,日本精神身体医学会が編集した心身症の治療指針によれば,「身体症状を主とするが,その診断や治療に心理的因子についての配慮がとくに重要な意味をもつ病態」と定義されています.

医療事故と法律・10

治療の過程で生じた事故(2)—緊急事態における注意義務転送の時期

著者: 饗庭忠男

ページ範囲:P.56 - P.57

質問
 交通事故で当病院に緊急で運ばれてきた患者がいたが,当院では外科的手術を行なうのに人的・物的設備が不足していると判断し,応急の手当てをしておいて直ちに他の病院へ送る手配をしたが,なかなか受入れ態勢がととのわず,とりあえず一夜を経て送ったが,その後患者が死亡した.患者側は,当初の応急措置に問題があり,更に転送の時期を逸したとして損害賠償を求める旨の通告をしてきた.どのように判断すべきか.

請求事務適正化のためのポイント・4

いかに完全算定はむずかしいか

著者: 黒田幸男

ページ範囲:P.58 - P.59

誤傾向とその原因
 これまでに,診療報酬請求事務をどのようにすれば適正に行なうことができるかについて,システム面と個々の事務処理面について述べてきた.そして,とくに算定事務については問題が多いことも指摘しておいた.
 表1,2は,日本病院協会医事研究会で行なった算定例を利用して,その内容を分析したものである.

私的病院からのレポート28

—神奈川県横浜市・大口病院—神奈川県の地域医療活動に挺身—小野肇理事長にきく

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.61 - P.68

本年1月の新年会の折,小野先生は病院長を辞めて理事長に就任した.すでに十数年前から,患者を診ることはいっさいやめ,神奈川県医師会の中枢メンバーとして,地域の医療の向上とその充実に多くの時間をさいており,一病院の院長ではおさまりきれない役割を果たしていた.名刺に刷りこまれた公職は,神奈川県医師会理事,神奈川県衛生学院長から,神奈川県総合リハビリテーション事業団理事まで12にものぼる.病院は片腕ともいうべき黒川新院長と石田事務局長にまかせ,汐見台病院をベースにした看護婦の養成に夢をかけている昨今のようである(写真・ご自慢のスクラップ・ブックを背にする小野理事長)

今月のニュース

‘病院設備の近代化と安全管理’をテーマに—第3回日本病院設備学会,他

著者:

ページ範囲:P.69 - P.71

病院設備・機器の大型化,高度化が急速に進められている今日,それらの有効適切な使用と高い安全性の維持を求める声も同様に大きくなりつつある.10月11,12の両日,東京・北の丸公園の科学技術館で開かれた第3回日本病院設備学会(学会長・松原与四郎アトム(株)社長)はこうした問題に正面から挑む姿勢を示した.
 一般演題も‘病院設備の安全と保守管理’を共通テーマにし,特別講演‘激動期の病院の安全’(橋本寿三男病院管理研究所長),パネルディスカッション‘手術室をめぐる諸問題--安全と進歩の調和’(司会・都築正和東大中央手術部長)など,メインテーマ‘病院設備の近代化と安全管理’への照準はピッタリ合わされていた.

病院建築・68 関東逓信病院精神科病棟

関東逓信病院精神科病棟の設計

著者: 船窪宣夫

ページ範囲:P.73 - P.76

はじめに
 精神系疾患の増加にともない,その対策が重視されるようになってきたが,電々公社においてもこの種の患者は次第に増加してきており,その処置について真剣に考える必要がでてきた.
 公社は,全国16の企業内病院と数多くの診療所群により,職員およびその家族の医療と健康管理にあたってきたが,精神系疾患については,今まで専門の診療科やベッドがなく,外部の病院を利用せざるをえない状態であった.

現場の医師の立場から

著者: 岡田導夫

ページ範囲:P.77 - P.79

はじめに
 総合病院を拡充整備してゆく過程の中で,精神科を加えるか加えないかの問題は,それぞれの病院の考え方で変わってくると思うが,地域社会のニードも考慮しなくてはならないであろうし,総合病院の規模や合併症としての精神疾患が容易に他の施設に移せるかどうか,などによっても判断されねばならない.
 この頃,診療部門が専門化され,細分される傾向にあるが,それだけに診断治療の総合化が望まれてくるのである.しかし,わが国においては,精神疾患に対しての関心がかなり強い割に,精神疾患であることを否定したり,隠す傾向が依然としてあとを絶たず,精神疾患に対する偏見はきわめて根強いものがある.

Guest just arrived

看護をどう発展させていくか—英国の当面する看護問題を語る

著者: S.A.G.ギャレット ,   紀伊国献三

ページ範囲:P.80 - P.87

医療は,今やどの国においても,大きな社会問題となっている.そして,その中で重要な役割をになう看護においても,多面的なそして根深い混迷の状態はまた例外ではない.ここで本質を探りながらその改革に取り組んでいる英国の実情を,おりから来日されたミスギャレットにインタビューしてみよう.

今日の精神医療 22

反精神医学運動—英国で私が経験したこと

著者: 鈴木純一

ページ範囲:P.88 - P.91

むしろ本場は日本のようなのだが……
 6年ぶりで英国から日本に帰って来て,精神科関係の友人にまずきかれることの1つに,‘あちらでは反精神医学運動はどんなふうでしたか’ということがありました.それに対する私の答はいつも,‘さあ,反精神医学運動というような政治運動として直接体験はしなかったけれど,LaingとCooperはよく読まれていて,それが臨床の場面で討論されることは,しばしばありましたよ’というふうでした.すると質間者は,納得のいかないような,予想が外れたような,何となくものたりない表情をするのでした.
 私には,このものたりないような表情の意味が,はじめのうちは理解できませんでした.それが2,3か月日本で生活を続けているうちに,少しずつではありましたが,日本の状況--精神医学界,精神医療の現状が理解されるにつれて,納得がいくようになりました.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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