文献詳細
病院図書館
文献概要
医師に課せられた実存的使命を洞察
シカゴ大学で,死の病にかかっている患者の心理を,深く研究した心理学者として知られている,キュブラー・ロスの「死ぬ瞬間」という著書に,‘医学は,人道的で尊敬される学問でありつづけることができるのか,それとも,人間の苦しみを和らげるよりも,生命を延ばすことに役立つ,新しい非人間的な科学であるべきか.われわれはこう自問しなければならない’としるされている.
これまでの医療では,死は治療者の敗北であると見なし,死の否定と生命の延長にばかり,重点がおかれていたようである.このような医療のあり方の中では,もはや回復の見込みのたたない患者に対したとき,医師は,言いようのない,心理的なフラストレーションと葛藤を味わうものである.このような苦い体験をくり返すうちに,医師たちは,死の問題に対して,しだいに無神経になるか,その問題にかかわることを逃避するといった,心理的な防衛を身につけることが多い.このようにして,人間にとって最も深刻な問題に対して,これに一番身近な治療者が,一番痴呆状態になるといった,何ともわりきれぬ結果を招きやすい.
シカゴ大学で,死の病にかかっている患者の心理を,深く研究した心理学者として知られている,キュブラー・ロスの「死ぬ瞬間」という著書に,‘医学は,人道的で尊敬される学問でありつづけることができるのか,それとも,人間の苦しみを和らげるよりも,生命を延ばすことに役立つ,新しい非人間的な科学であるべきか.われわれはこう自問しなければならない’としるされている.
これまでの医療では,死は治療者の敗北であると見なし,死の否定と生命の延長にばかり,重点がおかれていたようである.このような医療のあり方の中では,もはや回復の見込みのたたない患者に対したとき,医師は,言いようのない,心理的なフラストレーションと葛藤を味わうものである.このような苦い体験をくり返すうちに,医師たちは,死の問題に対して,しだいに無神経になるか,その問題にかかわることを逃避するといった,心理的な防衛を身につけることが多い.このようにして,人間にとって最も深刻な問題に対して,これに一番身近な治療者が,一番痴呆状態になるといった,何ともわりきれぬ結果を招きやすい.
掲載誌情報